「角人形」という人形を聞いたことは無いだろうか?
「角人形」というのは恐ろしい呪いの人形である。
「角人形」によって呪いをかけられた相手は、必ず笑顔で死ぬ。
。これは、よくある何処かの誰かが、ナニカを体験したというような話ではない。
ただ、私が田舎などに語り継がれる伝承を調べる中で、聞きかじった話なのだ。
私はこの話に大変興味を持った。
この話をしてくれたーーーAさんとしよう。
Aさんは、四国地方の出身であった。
Aさんの祖父は、四国地方の今は無い小さな村の出身で、よくその村の話をしてくれていたそうだ。
大きな口を開けてニタニタと笑う祖父は、幼心には少し不気味で、聞いた話もよく覚えていないという。
しかし、その中でAさんがよく印象に残った、いや忘れられなかった話がある。
「角人形」と呼ばれる人形の話だ。
作り方は簡単で、まずは丸く分厚い板を用意する。
この時、木の種類は何でも良い。
そしてそれを、
・四角形
・六角形
・八角形
のどれかの形に切る。
角が多いほど、呪いの力は強くなる。
九角形以上が無いのは、苦を超える(=9を超える)ため。
上記の形に切り終えたら、切断面に軽くヤスリをかける。
この際、角を少しでも丸めてしまうと、呪いの効力は消えてしまう。
そして、板の側面のどちらかに、顔を“針”で掘る。
顔は好きに描いて良いが、必ず笑っていなくてはならない。
これにて人形は完成。
この人形をいくつか作る。
人形が出来上がったら、それを人形が、呪いたい相手を見つめられる所に置く。
人形から相手が見えない場所に置いてはならない。
例えば、階段の端、天井の隅、米櫃の中…
など。
そしてここからが大事な所。
呪いたい相手を閉じ込めるように、人形を置かなくてはならない。
例えば、呪いたい相手が長時間滞在する場所…寝室、仕事部屋、或いは…家そのもの。
これで呪いは完了。
人形によって閉じ込められた相手は、眼球を抉り出し、代わりに人形を無理やり目に嵌め込み、眼を抉り出した血が、人形に染みきったその時、笑顔で死ぬ。
人形を設置した場所を、「鳥目」と呼ぶ。
鳥は、夜は目が見えない。人形も、夜…暗い所に置けば、最期の死ぬ時まで気付かない。
一説によると、「角人形」というのは、元は呪いの人形等では無く、家を建てた際に取り付ける、守り神の様な存在だったそうだ。
ただ、人形を作る際、顔を彫る為に針を使う。この針をうっかり仕舞い忘れて、足で踏んでしまい、怪我をする事がよくあったのだとか。
そんな事があってからは、人形に針を使い終えたら、庭に投げ捨てる様になったらしい。
すると、その針を良い藁だと勘違いした鳥が針を巣作りに使い、巣が出来あがった頃、藁の重みで起き上がった針が、鳥の目にグサリと刺さったそうだ。
それから、人形を作ったらその時の鳥の怨念が宿り、呪いの人形に変わってしまったんだとか。
何故、針を設置した場所を「鳥目」というのか、もしも夜に目が見えていたら、それが藁なんかでなく、冷たく光る針だと気付いたろうにという事らしい。人形でも、暗い所に置いてしまえば、人間は気にもとめず、気付きもしないだろうと言う皮肉なのだろうか。
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