【山にまつわる怖い話】『狐の尻尾』など 全5話|洒落怖名作まとめ – 山編【50】

【山にまつわる怖い話】『狐の尻尾』など 全5話|【50】洒落怖名作 - 短編まとめ 山系

 

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山にまつわる怖い話【50】全5話

 

 

声の源

馬場島は北アルプス北部の名峰、剱岳の登山口である。冬山シーズンになると豪雪の剱岳を目指して
多くのアルピニストが訪れる。夏はオートキャンパーでにぎわう馬場島も雪が舞い始めると途中、
伊折部落から先で道は冬季通行止めとなる。剱岳を目指す登山者は重荷を背負って馬場島までの長い道路を延々と歩かなければならない。馬場島の少し手前、ゾロメキ発電所の近くにトンネルがある。
(正確にはスノーシェード)延々と歩いてきた登山者が風雪を避けて最後の一本をいれるのに最適の場所だ。
3月初旬のことである。我々大学山岳部一行は早春の剱岳を目指していた。小雪こそ舞っているものの、
早月川添いの林道は風もなく、我々は重荷に汗を流していた。トンネルにつくと、リーダーのTさんの
「一本いれようか」の一言で休憩となった。くだらないことをしゃべりながら、行動食のチョコレートを食べたり、たばこを吸ったりしていた。と、突然「ウォー」とも「おー」ともつかない、うなり声のようなものがトンネルの中に響いた。「何でしょう」と不思議に思って誰にともなく聞くと「動物かなんかの声だろ」と先輩。あまりにもはっきりと聞こえるので恐怖を感じるほどではなかったのだ。

僕は休んでいる所と反対の出口まで音の源を探しに出かけたが、どこから聞こえてくるのか分からない。
場所を移動してもいつも同じ大きさで声は響いていた。「幽霊ですかね」「こんな昼間に出るもんか」
しばらくして声が止むと、不思議な気分を抱えつつ、馬場島を目指して出発した。馬場島の派出所には
県警のK隊長がいて、我々を迎えてくれた。富山県警の山岳警備隊がちょうど春山訓練で入山しているとことだった。
山に入ると結構な雪でラッセルも深く、その晩は早月尾根でテントを張り翌日になって早月小屋に入った。
テントに入り、ラジオを聞いていると「今日、剱岳の早月尾根で訓練中の・・・」とやりだした。
どうも警備隊のKさんが獅子頭付近で雪崩に巻き込まれ、池の谷に落ちたらしい。山岳部の中にもKさんと
顔見知りの先輩がおり、どうすれば良いか、と悩む。結果的には当時の我々の実力では冬の剱で何もお手伝いすることは出来なかった。
Kさんの遺体は7月になって池の谷の中程で発見された。ビバークの体制をとってうずくまるような格好だったという。あの日、我々がトンネルで聞いた声は何だったのだろう。その後土地の人に訊いても
「そんな声の動物はいない」という。僕は山の神様が何か伝えたくて叫んでいたのではないか、と思う。
その後、早月小屋で「Kさんの落ちた日は結婚記念日、発見された日は誕生日だったんだ」と聞いた。
何ともやりきれないことだった。

 

十六人谷

ある老人の屋敷に一人の美しい女性が尋ねてくる。
老人と女が会う場面で回想シーンに―――

ある山の中に、1本のそれはそれは立派な柳の木がありました。
とある理由から、その柳の木を切らなければならなくなり、
16人の木こり達が集められ、その木を切ることになりました。
木を切りはじめてしばらくしたある晩に、木こり達の前に一人の美しい女が現れ、
柳の木を切らないでほしいと強く訴えました。
しかし、女の言葉は聞き入れてもらえず……
結局、柳の木は切り倒されてしまいます。

場面は再び老人と女の会話に。
老人が何やらぶつぶつ言っているのを聞きつけて女中が老人のいる部屋を覗くが、
女中の目には老人の前にいる女の姿は映っておらず……
年寄りのことだからとその場を立ち去る女中。
老人の回想譚は続く―――

柳の木を切り倒した晩のこと……
山小屋の中で、疲れでぐっすり眠っている16人の木こり達。
深夜、若い木こりが妙な音で目を覚ます。
「くちゃくちゃ・・・くちゃくちゃ」
暗闇の中で、昼間の髪の長い女が木こりの一人と口づけをしている。
―――が、目を凝らしてよく見るとそうではなかった。
木こりは女に舌を食いちぎられていたのだった。
既に木こりに息はなく、血の滴る「ぴちゃぴちゃ」という音が鳴り響いている。
慌てて辺りを見回すと、自分以外の15人は、既に舌を食いちぎられ血を吐いて死んでいた。
若い木こりが再び女を見ると、女も若い木こりに気づいたのだろう。
食いちぎった舌を口に咥えたまま木こりを睨みつけ、恐ろしい速さで木こりに襲いかかってきた。
木こりは、とっさに斧を手にして、襲いかかってきた女の頭めがけて振り下ろした。
女の頭は2つに割れ、斧は首元まで食い込んだ。
女の絶叫が響く中、木こりは一目散に逃げ出した。

三度場面は老人と女の会話に戻るが…
突如響き渡る老人の絶叫。
女中が駆けつけると、そこには女の姿はなく、老人が口から血を流し死んでいた。
その口の中に舌はなかった―――

この話、もともとは富山県に伝わる民話だったようです。黒部峡谷だったかな?

日本昔話ではより聞き手に恐怖を与えるつくりになっていますね。
実際に見た子供時代には、しばらく眠っていてもあの女が舌を吸いにくるのではないかと怖かったものです(^^;
あとは、「飯降山」も怖かったなあ・・・。

女だけのお参り

私が小学校の頃、お盆になると毎年女だけで山の祠みたいなとこに
お参りに行きました。
真夜中2時頃から登り始めるんですが、
皆裸足で登ります。
アスファルトは途中までで、石ころが混じった道を
懐中電灯を持って歩くのですが、
その女だけっていうのが、月経がある女だけなんです。
私は小学校6年のお盆から大学に進学するまで行きました。

そのあたりの家みんなが集まってするので
友だちの顔も見えたりするのですが、
なんせ懐中電灯が1個だけなのでよくわかりません。
集まった中の一人の人が祠の前でお経みたいなのを唱えて、
みんなはそれを真っ暗やみの中聞く、
終わるとまた同じ道を通って帰るのです。
その間、誰も口を開いてはいけないのです。
小さいころから普通に行われていたので
なんにも不思議は感じませんでした。

高校最後の夏、お経が唱えられている時に、
私は虫に刺されて、
「痛ッ」
って声出しちゃったんですね。
真っ暗だったからみんな無言で、
誰だ誰だ、みたいに当たりを伺ってて。
もう私はドキドキしちゃって、
でもバレたらマズイと思って
みんな見たいに、キョロキョロしました。

お経を唱えていた人(毎年持ち回りでした)がこっちに走って来て、
私の隣の子の顔を懐中電灯で照らすと(その人だけ懐中電灯を付けていました)
バシバシ叩きはじめました。
周りの大人もです。
怖くて、私はなにも出来ませんでした。

それからの記憶はなくて、気付くと自分の部屋で朝になっていました。
母に昨晩のことを聞いてもなにも知らないと言うばかりです。
かといって、私だったなんても言えない雰囲気で…

結局その叩かれた子が誰かもわからず、
私は大学に入るために上京してしまって、
そのまま結婚したのでお盆のその行事には参加せずじまいです。

まだ行われてるかも、わかりません。
叩かれた子には悪いことをしました…

 

墓地だった場所

弟が通っていた中学校は小高い山の上にありました。この山はつい30年ほど前まで人も分け入らぬ森で覆われていて、山の中腹に隠れるようにあった小さな墓地へ続く舗装もされていない細い道が一本あるだけだったといいます。学校を建てる際この墓地をずらしてグラウンドにしてしまったので、生徒の間では様々な怪談が生まれました。

それらの怪談の中に、夜中グラウンドに立って自分の影を見てみると、頭が半分ない影が見える、というものがありました。そしてそのような影を見てしまった者は、近日中に命を落とす、というのです。当時その中学校で生徒会役員をしていた弟も、どこにでもある学校の怪談だといって真剣には取り合っていませんでした。

その日は、間近になった文化祭に備え、弟は他の役員達と一緒に夜中まで学校に残って準備をしていました。作業もようやく一段落し、残っていた教員と校舎を出て別れて、帰路が同じ方向の友人達とグラウンドを横切って外に出ようとした時です。

弟はふと例の怪談を思い出し、何気なく振り返ると自分の影を見ました。月明かりに照らされて長く伸びきったグラウンドに映るその影には、頭の左半分がありませんでした。目の錯覚だ、一瞬そう思って左右の友人の影に目を移すと、友人の影にも頭左半分が映っていません。
弟は血の気の引くような悪寒に襲われましたが、何も気づかず談笑する他の友人には黙ったまま憂鬱な面持ちでそのまま家に帰って行きました。

数日後弟は高熱を出し、左目の周囲が赤くはれ上がって二晩ほどうなされていました。
眠っている間、髪を振り乱した女に首を絞められる夢を何度も見たそうです。

翌年、グラウンドの土砂の入れ替え作業中に、人間の骨の一部らしきものが見つかりました。
医者である父が鑑定を頼まれ、調べたところ、女性の頭蓋骨の左目の周辺の骨と分かりました。警察も、以前墓地を移す際に漏れた骨であろうと判断し、どの墓にあったものかまでは分からなかったので、移転先の墓地の無縁仏の墓に葬られました。

爾来この怪談はこの中学では聞かれなくなりましたが、これは開発が進んで子供達の間に怪談など広まる余地もなくなったのもひとつの理由かもしません。

 

狐の尻尾

ちょと昔に聞いたお話

その頃いろんな事に嫌気がさした爺さんは、会社を休み山に登った
四時間位登り、少し下界を眺められる様な所で休憩をとった
おにぎりを頬張りながら美しい展望を眺め、その景色に癒されながら、ふと水筒に手を伸ばした

無い…後ろを振り替えると、自分の座っていた所から10m位先にちょこんと立っていた
首を捻ながら水筒を持ち上げると妙に軽い
試しに降って見ても液体の音がしない

がっかりしながらさっきまで座っていた所に戻ると、今度は残りのおにぎりが無い
余りの事に言葉を失っていると後ろから

クスリ

と子供の笑い声が聞こえた
振り替えってみると、ちょうど狐の尻尾が林の中に消えていくのが見えた
もう行こう…と思い荷物を片付けようとしたら
おにぎりの容器の中にこの時期には珍しい山菜が沢山入っていた
余りの量の少し後ろめたい気持ちになったが、麦茶とおにぎりのお礼として受取りその場を後にした

今でも爺さんは「おにぎりと麦茶だけで、あの量の山菜を貰うのには気が引けた。」
と目を細めて語る

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