【動物怪異譚】『狐につまされた思い』など 短編 全5話【5】|洒落怖名作まとめ – 動物編

【動物怪異譚】『狐につまされた思い』など 全5話【5】- 怖い話・不思議な話 - 短編まとめ 動物系

 

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動物にまつわる怖い話【5】全5話

 

且つての猟犬

昔、愛知県豊根村の猪古里にある猟師がいた。
永年飼い馴らした一匹の猟犬を連れていたが、次第に彼を襲う気配を見せるようになった。
今までに何匹もの獲物を捕えた功労ある愛犬だったが、気味が悪くて仕方がなかった。

日毎に犬の態度はおかしくなり、殺すことも継ならずに過ごして来たが、ある日、思い切って山の中に連れ込み、隙を見て一発で仕留めてしまった。
そして彼は家に戻り、その場所には再び足を向けなかった。

それから丁度三年が過ぎた日のこと、且つての猟犬を思い出してどうなったか気になり出し、かの場所へ赴いた。

犬は、枯れ草の間に三年前のあの日と同じ姿で前足を立てて座っていた。
骸はカサカサに干からびて骨ばかりになっていた。
それを見た猟師は恐ろしさも感じたが、犬の執念の方が次第に憎らしく思えてきた。
「もう、これで歯向かいも出来めえ」と罵るりながらひと蹴りすると、骸は他愛もなくカサカサと崩れ落ちてしまった。

その時どんな弾みだったのか、その枯れ骨の一つが猟師の足に刺さった。
その傷は次第に痛みを増し、どうしても治らない。
そして遂には分けの分からない言葉を口走り、数日後に息を引き取ったという。

 

狐につまされた思い

高校二年生のときにバイク買ってもらって、得意になって乗り回してたんだよ。
ちょうど夏休みだったんでさ、夜明け前に家を出て、山に向かったんだよ。
そしてさ、朝日を浴びながら山の中を走り回り森の木陰に「沼」を発見したんだ。
沼って言ってもさ、護岸が石垣で固められていて、クルマを停めるスペースもあったんだよ。
そこにバイク停めてさ、バックパックからぬるくなったコーラ出して、護岸に座りながら飲んだんだよ。

ふとみたらさ、俺の親父とお袋くらいの夫婦っぽい人がいたんだよ。
どうみても地元っぽくなくてさ、気品のある上品な感じ…どっちかって言うと、ハイソな人がピクニックに行くって感じの格好してたんだよ。
まあ、別に違和感もなかったし…目が合ったら会釈してさ。
で、俺…急に尿意を催してさ…森の木陰に立ちションに行ったんだよ。
そして、元の場所に戻ったら…二人ともいないんだよ。

俺は「?」と思ったんだよ。
だってさ、道は林道みたいなところで、軽トラかジムニーみたいなクルマがやっと通れるような道でさ。
俺のバイクは中古のレーサーレプリカ。
多少は辛かったけど、何とか通れるほどの道。
沼の周囲は森でさ、あの二人が入れるような状態じゃない。
もちろん、沼に入水した形跡もない。
考えてみれば…あの二人はどうやってここに来たんだ?クルマ停まってなかったし、かなりの山奥で民家も施設も何もないんだよ。

不思議に思ったけど…別に怖く感じなかったんで、俺は帰途についたんだよ。
それで、この場所が気に入ったんで、入った道の目印や…道を出た場所にあった民家の特徴や…近くにあった商店の名前や電話番号などをメモして家に帰った。
一週間後、またここに来ようと思って向かったんだけど、どうしても辿りつけなかった。
道は一本道で…分岐点も何もない。
それでさ、目印にしていた民家や商店のおばちゃんたちに聞いたんだけど…「そんな沼なんかないよ、嫁に来て五十年だけど…」
狐につまされた思いが残る。

 

お犬様伝説の地

2001年の秋、ある山中での体験です

どんな目的でそこへ行ったのかは記憶にありません。(今思うと茸を探していたのかも知れません)

車道脇に車を止め友人の滝沢君と2人で山頂の方向へ向かう林道(獣道かも知れません)を小1時間歩き、見晴らしの良い場所で煙草を吸い始めました。

時刻は正午を10分ほど過ぎたところです。

何気なく谷を挟んだ反対側の尾根から30メートルほど下を犬が歩いているのが見えました。
私自身、犬の種類についてはよく知りませんが、どちらかと言うと和犬だったと思います。
やがて木に隠れて犬は見えなくなり、2人は煙草を消して立ち上がりました。
15分くらい歩いた後、肌寒くなってきたので車に戻ることにしました。

車まであと10分くらいの場所で滝沢君が変なことを言ったのです。

「あの犬やけに大きくなかったか?」
「向こうの山まで500m以上あったよな」
「あんなに大きく見えたってことは、3m以上の大きさだろ」

・・・・・・お犬様伝説の地  での不思議な出来事です。

 

タヌキのせい

愛媛某所で、ぽっかりと時間ができたのでぶらぶらしていた。四国は
初めてで、何より珍しかったのはミカン収穫のためのモノレール。乗っ
てみてぇな、なんて思いながら畑の側をうろうろしていたら、地元のお
っちゃんと知り合った。最初は怪しまれていたけどね。
暇にかまけていろいろな話をした。近所に若者が少なくなっているの
と、おっちゃんが話好きなのとで、ずいぶん仲良くしてもらった。

その時にタヌキの話を聞いた。畑の上の方の道は隣村まで続く一本道
で今でこそ車が通れる道だが、昔は軽トラも通れない道だった。夜この
道を行き来するとタヌキに化かされて、道に迷うのだという。

話に対する俺の食いつきが良かったので「じゃあ、実際に見せてやる
よ」と、おっちゃんが案内してくれた。
その道の左は山、それも見上げるような斜面で登ろうと思っても登れ
るものではない。そして右は谷、木がうっそうと生い茂り、木を抜けた
としてもどこまで転がり落ちるかわからん急な傾斜だった。「いまは車
も通れる」なんて言っていたが、すれ違うのは難しそうだ。

俺 「ホントに一本道ですね」
「おうよ」
「ここで迷うんですか?」
「おう、ここで道に迷うんじゃ」
「どうやって?」
「そんな事知らん、タヌキに聞けや」
「狐じゃなくてですか?」
「ここは四国じゃ」
「あー、そーか」

俺が、でもやっぱりこの一本道で迷う事はあり得ないと言うと、
「だから不思議なんじゃ。入り組んだ道で迷えば不思議でもなんでもな
いじゃろ?この一本道で迷うから『タヌキのせいだ』って話になるんじ
ゃ」
と言われた。納得できたような、いまいち納得できんような。

その後、行政に対する愚痴が始まったので切りの良い所で逃げてきま
した。えーと、大した話でもなく長文すみません

 

狐の嫁入り

子供の頃山の中に住んでた。家は山の斜面で谷を挟み反対側の山には過疎が進み誰も住んでない部落が見え、はるか遠く東には富士山が圧倒的な存在感でそびえている。

ある夏の夜遅く、母親に起こされた。向かいの山を見ろという。眠い目を擦りながら言うとおりにした。夜空には無数の星と眩しいほどの月。濃いブルーの静かな世界が神秘的だった。

暗闇に目が慣れてきた。すると、向かいの山の中腹に弱い光を見つけた。一つではない。10ほどの光の列がゆっくり動いている。時折木の影に隠れチラチラと…。人が歩く早さぐらいに見えた。

「何…あれ?」声をひそめて聞く。「狐の嫁入りだよ。」と教えてくれた。母親は随分前から見ていたようだ。
人が通る道なんかないことは知っていた。変わった山歩きが趣味でもまさかこんな夜中に歩く人はいないだろう。やがて、一つまた一つと光が消えていく。不思議なもんだなと光が消えるまで母親と眺めていた。

今は町に下り、あれほどの静寂さはまず体験出来ない。月夜の山は本当に神や天狗の存在を感じさせる。山に泊まる機会があったらぜひ、そっと外を覗いてみてください。不思議なものが見られるかも。

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