【山にまつわる怖い話】『テング』『死にびと』など 全5話|洒落怖名作まとめ – 山編【52】

【山にまつわる怖い話】『テング』『死にびと』など 全5話|【52】洒落怖名作 - 短編まとめ 山系

 

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山にまつわる怖い話【52】全5話

 

 

テング

私が猟を始めた頃の出来事を。

車で1時間ほど走り、更に2時間ほどえっちらおっちらテクりまして、
奥山に入りました。
煙草を一服し、銃を袋から出してノンビリ歩き出します。足元には
親父から譲り受けた愛犬が獲物の痕を追ってジグザグに忙しく走って
いました。
夜の開ける前に家を出たのですが、思ったよりも徒歩で時間を食ったため、
周囲の山からは時々銃声が響いています。
まぁ、今ならば「人は人、俺は俺。ノンビリまったりヘタレの歩み」なんですが、
当時は気が逸りまして・・・。犬を一番険しい方面に誘導していきました。
険しい=人があまり来ない=獲物沢山 バンザイ!という安直思考です。

気がついたら原生林 という言葉が一番ぴったり来るようなところにいました。
犬もサーチをやめ、足元にぴったりくっ付いてしまっています。
「ヲイ!ちゃー君。匂いはないのか??」と急き立てても、私の顔をじっと
みて、尻尾を巻いてます。何か異様な雰囲気がするのに、そのとき気付きました。
静か過ぎるんです。広葉樹が多いので、太陽の光は燦燦ときらめいています。
こんなところなら、小鳥の囀りは常に聞こえるのですが・・・・。
急に、戻りたくなりました。で、来た道を戻り始めます。
犬はといえば、元気すぎるほどトットと前を小走りに戻ってます。
マテをかけても、とっとと。 私も小走りになりました。
喘ぎながら走っていると、変な音が聞こえてきます。
ハァハァと喘ぐ声。
自分の喘ぎが、周りに反響?とおもいましたが、つばを飲み込むために
息を止めても、ハァハァ言うあえぎ声は私の後方から聞こえてきます。

「チャー!ストップ!ホールト!」と叫び、私も止まって後ろを振り返りました。
が・・・・なにもいません。木立の間を透かしてみても・・・なにもいない。
声をかけても・・・・返事なし。
で、水を一口飲んでまた走り出すと・・・・また聞こえます。走っては止まり、
又はしって・・・・。頼みの犬はもう見えません<薄情な犬
結局、車に戻るまでずっとその喘ぎ声に追尾されてしまいました。
なんだったのか?あれは・・・・。
去り際に、天狗伝説がある山だったのを思い出して、手持ちの握り飯を
(昔読んだ話にしたがって)、「テング!!」と叫びながら頭上の梢に向かって
放り上げて帰ってきました。
薄情な猟友?は、車の横で寝ていやがりましたっけ。

放り上げたムスビが、落ちてこなかったら・・・テングが機嫌がよい。
落ちてきたら・・・・機嫌が悪いのでとっとと撤収しろと・・・その物語にはありました。

落ちてこなかったんですよ・・・・。
でも、怖くなって逃げ帰りました。

 

死にびと

ひとりで山を歩いている男がいた。
夕闇が迫り、自然と足早になる。
木が風に揺れ、ざわざわと音をたてた。
びゅうっと風が通り抜けた。
男は奇妙な感覚に襲われた。
誰かが、自分を見つめている。
それも大勢の誰かが、息を殺して。
急に寒けを覚えて立ち止まる。
ふと後ろを振り返ると、女の子が立っていた。
「おめは死にびとか?」
女の子は不思議そうに訊く。
逃げ出したい気持ちを抑えて首を振った。
「こっち」
女の子に手を引かれ、けもの道を夢中で走った。

ハッと我に帰ると、山道の入り口で
一輪の花を持って立っていた。

 

鎌と鉈のまじない

父方の田舎に帰省したとき、山歩きした。小5ぐらいだったかな

墓が二ヵ所ある家で町を通る道路を見下ろす開けた斜面にあるごく一般的な墓地
の他にもうひとつ墓地がある。

本家の裏の竹林脇の道から入っていくんだけど男手が足りなくなって手入れが出来てないんで、蔦やら腐った倒木放置ですごい迫力あるロケーションになってた。

本家のおばさん二人は途中にある物置小屋から鉈と鎌を取ってきた。

墓の草取りに使うんだと思った。

昔は山の向こうに続く道や寺や石の階段なんかもあったらしい。

寺は明治維新のごたごたで、どうにかなってしまい荒れたあと、他所から来た尼さんが住んでたんだって。

健脚な年寄二人に両親、叔父、自分の順で草延び放題の山道を黙々と小一時間

すると長いしめ縄みたいのが蔦にからまっているのを見つけた。

本来墓の入り口にある大きな石に掛けてあるものが、蔦の成長に巻き込まれてはずれ、木の幹の辺りにぶら下がる変なことに。

なんだか気持ち悪いなあと思った。で、そんな気分をぶっ飛ばすトンでも行動に老婆二人は出た。

鎌と鉈で草を払った土の上に振り上げた鎌をグサツ、鉈をズブリと刺すように叔父と父に指示。

黙って従い言う通り叔父と父は力を込めてグサツズブリ。

戸惑いの母とおれ。

そこから三メートルほど離れて苔むしてヤバイ風情の家の山墓があって、掃除して線香あげて合掌して山を降りた。

あれは何なのか聞いてもその時は説明してくれなかった。

中学に入ってから、あの鎌と鉈を突き立てた所は土まんじゅうという古い墓だと教えてもらった。

鎌と鉈はまじないなんだが、廃された古い寺が関係してる話

山中の廃れた寺に住み着いた尼さんは集落の男衆からもてたけど自分は尼だから、そういうことはしない、と断っていたんだと。

なのに他所から来た中年の学者とそういう関係を持った。

反感買ったのがかなり堪えた尼さんは、村の男衆を受け入れるようになった。

よそ者の学者と村男が尼さん巡って揉めて、などがあって、人が死んでしまった。

あの土まんじゅうは、その人のものだって。

鎌と鉈のまじないにどんな意味があるのか、そういやまだ聞いてない。

山奥の村ってどこもこんな感じなのかな

 

山菜採り

俺の兄貴が小学生のころの話(俺が生まれる前の)

兄貴が小5の春ごろ、おじいちゃんと一緒に近くの山に山菜採りに入ったんだって。
狙っていたのはタラっていう植物の芽で幹に棘が生えてるんだけど
春頃に生えるその芽がてんぷらとかにするとすっごく美味しいんだ。
兄貴はそこの山でよく遊んでたらしくて、山菜の種類は知らなかったけど
おじいちゃんより山道には詳しかった。
そんなこともあってどれがタラの芽かを知ったら
兄貴は一人でずかずか山に入っていったんだって。
兄貴は山菜取りに夢中になって普段は見えているけど行かない
ような山にも入って結構な量が手に入ったのに
満足して帰ろうとすると近くに人の気配がして振り返ったんだって。
すると10メートルぐらい離れた大きな岩の上に
ガリガリに痩せた汚い着物姿の白髪の爺さんが座ってたんだって。
兄貴はちょっとビビッタらしいんだけど、足元に山菜籠があったから
同じ山菜取りの人かと思って挨拶して帰ろうとしたんだ
するとその爺さんが
「坊主・・・・タラの芽探しとるのか?」
っていいながら所々歯の抜けた口を開けてニタリって笑ったんだって。
兄貴は気持ち悪いとは思ったんだけど
「うん、お爺さんも山菜採ってるの?」
って聞き返したんだって

するとその爺さんは山菜籠に手を伸ばすと
「わしもタラの芽じゃ、知ってるか坊主、タラの芽は生でもいけるんじゃぞ?」
っていいながらその場でワシャワシャ食っている。
兄貴はそれをジッと見て目が離せなかったんだって
なぜならそれは「タラの芽」じゃなくて、かぶれることでおなじみの「ウルシの芽」
だったんだ。芽の形自体は似ているけど全然違うものだしむしろ身体に悪い
(ひどいかぶれをおこすから)
それをワシャワシャ食ってるじいさんに
兄貴は怖くて声も出せずただ涙をぽろぽろ流してそこに立ち尽くす事しか出来かった
その爺さんは見ていると体中どろどろにかぶれていって口からは噛むたびに
血が湧き出てきてたんだって。それによく見ると足が折れているのか
変な方向に曲がっている。
「こいつはやらんぞ?ここら辺にはもう食える物は残ってねぇ他の場所を探しな。
坊主も、もう村には食いもんは残ってねぇから山まで入ったんだろうが残念だったなぁ。」
そう言うとじいさんはまたニタリと笑う。そして次の瞬間
スウッと消えていなくなったんだって
その後兄貴は叫びながら走って山を下りて帰ってきたらしい
その事を大人に話しても誰も信じちゃくれなくてふてくされてた時
地区の地区長さんがその地域の昔話を教えてくれたんだって
「お前の入った山は昔姥捨て山だったんだよ、それに飢饉のたびに口減らしもあった。
多くの人があそこで食べ物を探して死んでいったんだ。
捨てられた人は食えるものは何でも口に入れたんじゃろうな。
お前さんがあったのはその時代の人だろう。」
地区長さんはそういうと「この土地の過去は皆知らないからあまり話すなよ。」
と兄貴に釘を刺した。それと
「豊かな時代にそだったことを幸せに思いなさい。」
といって家に帰されたらしい。

兄貴はその山が何処にあるのかは未だに教えてくれない
それと好き嫌いを言うとものすごく怒るんだ。

 

戦いを記した古書

叔父さんは古書集めが趣味で、暇さえあると古本屋巡りに出かけていた。
とある古本屋で叔父さんは、アメリカ人がインディアンと戦ったときの記録を、当時のアメリカ人が日記風に記した古書を見つけた。
オリジナルではなく、複製だったけど、その当時の年代に複製されたのは間違いないらしくて、叔父さんは大枚はたいてそれを買った。

叔父さんは、その本を自分の部屋の書斎に大事にしまっておいた。
その日依頼、なんとも寝付けない日が続いたと言う。仕事から帰ってきて自分の部屋に入ると、すでに空気が重く、悪夢もほぼ毎日見たと言う。

そんな日が数ヶ月続いて、別段体調は悪くないので「部屋に何かあるんじゃないか」と叔父さんは思い、知り合いの霊感が強い占い師に、
家に来てもらった。 占い師(おばさん)は部屋に入るなり、
「アンタ、何てもん置いてるの!!」
と凄い剣幕で怒鳴ったと言う。その目線の先には、書斎。つかつかと震える足取りで占い師は、書斎のガラス戸を開け、例のインディアンとの戦いを記した古書を手に取り、こう言った。

「これ人間の皮膚よ!!皮で作ってるのよ!!表紙!!」

その日のうちに、その本は近所のお寺に預け、供養してもらったと言う。それ以来、部屋の異様な空気も消え、悪夢も止んだと言う。
叔父さんは、話の最後に最後に俺にこう言った。
「叔父さんが買ったの(1巻)だし、あの本の続き、まだ古本屋に4冊あるんだよなぁ・・・」
都内の古本屋、とだけ記しておく。

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