『ウサギのぬいぐるみ』『鬼ごっこ』など短編 – 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】

『ウサギのぬいぐるみ』『鬼ごっこ』など短編 - 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】 短編
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弱気になったらダメ

 

夏の出来事。
学生だった俺達は、夏休みに男5人でキャンプに行こうってことになった。

ボロボロのワンボックスカーで**県の山に向かった。
道中、キャンプ場はいくつもあったんだけど、酒を飲んで騒ぐことが目的だったので、周りに他のキャンプ客のいない(当然民家も無い)山奥の河原にテントを張った。

誰に気を使うことなく、BBQを食いながらビールとワインを飲んでドンチャン騒ぎをした。俺達の声以外には、川の音と虫の鳴き声しか聞こえない。

深夜になるとみんな酔っ払って、誰からともなくテントで寝だした。
俺も寝ようとテントに入ったんだけど、山の夜は寒くて寒くて寝れたもんじゃなかった。

俺はテントで寝るのをあきらめて、車で寝ることにした。
車の後部座席をフルフラット(ベッド状態)にして毛布をかぶって寝ていると、後部座席のドアを外からコンコンって誰かがノックした。

俺は「テントで寝ていて寒くなった誰かが避難してきたな」と思いながら、スライドドアをガララと開けた。

その瞬間、幼稚園児ぐらいの男の子が車内に入ってきた。

「!!」

俺はビックリして車の一番後ろまで転がった。

車内に入ってきた男の子は後部座席から運転席に行き、シートに立って、オモチャの車で遊ぶようにハンドルを動かしている。

こんな山奥にこんな小さな子供がいるわけない!
俺はハッチバックを内側から開けて外に転がり出て、裸足で河原まで走って行き、テントで寝ていた4人を叩き起こし、今起こった事を半泣きで説明した。

「寝ぼけてたんじゃないのか?」
と1人の友人が言ったとき、

ビーーーーーーーッ!!
ビビーーーーーーーーッ!

と俺達の車のクラクションが鳴った。

「…これはやばいな」

震えた声で1人がそう言った。

俺達はテントで夜が明けるのを無言で待った。クラクションが鳴ったのはその2回だけだった。

30分ぐらい経った頃、イライラしだした1人の友人が、

「幽霊かナニか知らないけど、こーゆーときは弱気になったらダメなんじゃね? 子供なんだろ? 『どこか行け!!』って怒鳴ったら消えるんじゃないか?」と言い出した。

そのとき、テントの入り口から男の子がヌッと中に入ってきて、

「 お 前 た ち が ど こ か 行 け 」

と無表情で言った。

そこから記憶が無い。気付くと朝になっていた。逃げるようにその場所を離れた。

 

 

ウサギのぬいぐるみ

 

正直、今でも鳥肌が立つんだけど、これは去年付き合ってた彼女の友人、Tっていう女の子の話。

Tは非常に霊感の強い家系の育ち。
幼少期におばさんからウサギのぬいぐるみを貰ったそうだ。
Tはそのぬいぐるみを大事にしていたんだって。

だけど高校上がってからの話。
もうボロボロで、目もほつれてポロンってなっちゃってるうさぎのぬいぐるみ。
それだけ大事にしてきたんだろうね。

ある日、お母さんが掃除をしてる最中にこんな事を言ったらしい。

「ねえ、このぬいぐるみ覚えてる? 昔おばさんにもらったうさぎのぬいぐるみ」

Tはびっくりしたらしい。

だって、うさぎのぬいぐるみは今自分の部屋のベッドの上にいるのだから。
お母さんが持ってきた真新しいウサギのぬいぐるみは、ちょっと小さくて、まだボロボロじゃないきれいな状態。

お母さんが言うには、おばさんにもらったのはこれで間違いないらしい。

気味の悪くなったTは、今までもってた人形を押入れにしまったらしい。

ある日、お母さんがTの部屋を掃除しにきたとき。

ごとん

押入れから何かが落ちた音がした。開けてみると、あのぬいぐるみが落ちてきたようだ。
お母さんは元の位置にぬいぐるみを戻すと、再び掃除を再開した。

ところが…

ごとん

再びぬいぐるみが落下していた。

元に戻す。

ごとん

何度もそれが続くため、気味が悪くなり、今度は物置状態のベランダの隅にブルーシートをかけて置いたそうだ。
そのベランダの隅っていうのが、またTの部屋のところにあるんだけれども。

ある日、Tはふとベランダに目をやったんだ。
すると、ブルーシートの上にあのぬいぐるみがこちらを向きながら置いてある。
気味が悪いからシートの下へ戻す。 しかしまたこちらを見てる。

今度はとうとうゴミ捨て場に棄ててしまった。
しかし再び人形はTの部屋にあった。

Tの家族はさすがに恐ろしくなり、人形を供養に出したそうだ。

 

 

鬼ごっこ

 

当時中3だった私。師匠ってゆうあだ名の女の子と仲が良くてよく騒いでた。
確か冬の雨の日。その日あたしたちはノリで鬼ごっこをはじめた。

初めの内に校舎の説明しとくと、四角い建物の真ん中が四角く空洞になってて…上から見ると『回』←こんな感じ。
で、各階に東階段と西階段があって。
まぁ鬼ごっこを始めたわけだ。始めの鬼は師匠。

「いい? 追っ掛けるよ!」

そう言って師匠が追い掛けて来たとき、かなりの距離が空いてたんだ。
で、ほぼその距離のまま2階を何回もぐるぐる。

さすがに疲れてきた私は、一気に階段を登って4階の自分たちのクラスにかけこんでしまおうと考えた。

急に曲がって階段をかけ登り始める私。

ここからがおかしいんだけど…。

3階に差し掛かるころでふと振り向くと、師匠が急に私のすぐ後ろに迫ってるの。
しかも、なんか下むいて頭から突っ込んでくるような走り方。
顔がよく見えなくて、今まではギャーギャー叫びながら走ってたのになんもしゃべらないし。

あたしはなんか恐くなってそのまま4階にかけ登って、師匠が真後ろに付いてきてるのを確認してから廊下を曲がって教室にかけこんだ。

教室に駆け込んだあたしの目に入ってきたのは…一番前の席に座ってる師匠。

「は!?」

後ろを振り向くと、今まで追い掛けてきてたはずの師匠がいない。

「ちょっと師匠どうやったの!? すぐそこまで追い掛けて来てたじゃん!」

あたしはパニクって問い詰めた。
するとポカンとした師匠は信じられない話をし始めた…。
師匠の説明によると、彼女はあたしが階段を登り始めた時点で追い掛けるのをあきらめて、反対側の階段から教室に戻ってたんだってさ。

…あたしは一体誰に追い掛けられてたんだろう。

 

 

後部座席

 

これは、俺の友達が経験した実話。
そいつのことを仮にSとするけど、Sは肝試しとか好きで、よく地元のツレとかと一緒に心霊スポットに行ってたらしい。

ある秋の夜、いつものノリでツレ二人と、R寺というスポットにSの車で赴いたんだ。

R寺は県内でもそこそこ有名な場所で、特にその寺に続く下り坂がヤバいらしいんだが、S達がその坂にさしかかって車を停めたんだが、何ともない。
雰囲気も普通で、全開にした窓から秋の涼しい風が吹き込んできて心地いいくらい。

あまりにも期待外れだったので、Sは車のエンジンを切り、ライトも消してツレと談笑しはじめた。

数分後、後部座席に座っていたやつが、急に寒くなったと言い出した。
まぁ、秋も深まる季節だし不自然ではなかったし、Sは大して不審には思わずに「脅かすなら上手くやれよw」とか言っていた。
だが、後部座席のやつが寒い寒いとあまりに言うものだから、切り上げて帰るかということになった。

そして、車を発車しようとキーを回す。
が、セルが回る音がするだけでエンジンがかからない!

何度も何度も試すがかからない。
さすがに肝を冷やしたが、Sは冷静に考えてバッテリーがあがってるか確認しようとドアレバーを引く。

しかし、ロックは解除されているにも関わらずドアが開かない。
慌ててガチャガチャやっている間に車内の体感温度がどんどん下がってくる。
もう車内はパニック状態で、後部座席のやつなんかは失神しそうな勢いだった。

そして、Sがヤバい!! と思った瞬間、後ろから強烈な光に照らされた。

次の瞬間、エンジンがかかったんだが、後ろから照らしてきたタクシーの運転手が降りて、慌てて駆け寄ってくる。
そして運転手はしきりに「大丈夫か? なんともないか?」と聞いてきた。

タクシーの運転手の慌て様があまりにもすごかったので、Sは「な、何が大丈夫なんですか?」とか聞いちゃったらしい。

すると運転手が神妙な顔でこう言った。

「今、あんたらの車の後部座席の窓から、車内に入ろうとしてる女がいた…」と…。

もう一目散に逃げ帰って、心霊スポット探索は自重したそうな。

 

 

母親の舌打ち

 

自分は以前広島に住んでいたのですが、そこに住んでいたときだけ、いろいろな怖い体験をしてきました。その中でも一番怖かった話です。

確かその日は、小学校の運動会でした。
父と母は運動会を見に来てくれましたが、お昼を食べた後にすぐに帰ってしまいました。
運動会が終わったのは5時位で、疲れていたのですぐに家に帰りました。

自分の住んでいるマンションに帰ると、家の中には誰もおらず、自分はすぐに部屋で寝てしまいました。
その後、洗面所のドライヤーをかける音で目を覚ました僕は、母親がいる洗面所にいき、「きょうは疲れたなー」などと話をしていました。

すると父親がリビングのほうから、「今日は外で食べに行こうか」と言っていたので、僕は「お腹はすいてないから寝るよ」と言って部屋で寝てしまいました。
そのとき、母親が小さく舌打ちしたのを覚えてます。

その後、起きたのは12時位でした。
さすがにお腹がすいてしまった僕は、リビングに向かいました。

すると、洗面所から(ジャージャー)とドライヤーの音がしたので、見てみると母親がドライヤーをかけていました。3,4時間前と同じ光景でした。

僕は母親に「お母さんいつまでやってるの?」と聞くと、

「別にいつでもいいだろ、殺してやろうか」

他にも何か言っていた気がしますが、目は充血していて真っ赤で、あまりにも怖かったので無我夢中で家族の話し声がするリビングへ走りました。

すると、リビングは真っ暗でテーブルに置いてある一枚の手紙に目が留まりました。
内容は半分くらいしか覚えてないのですが、こうでした。

「お帰りなさい。午前中しか居れなくてごめんね。今日はあなたが帰って来る前に出かけちゃうから。おやつと晩御飯はキッチンに置いとくね。お腹がすいたら食べてね」

…その手紙を暗いリビングで読んだときは死ぬほど怖かったです。

そのすぐ後に家族は帰ってきたのですが、母親に泣きながら飛びついたのは言うまでもありません。

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