『モニター』|洒落怖名作まとめ【短編・中編】

『モニター』|洒落怖名作まとめ【短編・中編】 中編
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モニター

 

去年の夏の話です。
自分、配達の仕事やっていて最初に研修という形で先輩と配るんです。
その時教えてもらったC先輩とはすぐに仲良くなり、飲みに行ったりしてました。
ある時先輩から「オレ、幽霊見ちゃうんだよ」って言われた。
自分、そういうの好きだから茶化さず聞いてたんです。

「オレの車、研修の時乗っただろ。あれさ、何でバックミラーにガムテープ張ってると思う?」

その理由は車の中にいる幽霊を見ないようにしてるって言うんです。
うちの車は立派な物じゃなく普通の白いワンボックスカーで座席は運転席と助手席だけで荷物を後ろに積む形になってます。
それでマジかよとか思ったんですが、すぐにウソだと感じたバックミラー割れてるだけだろうって

自分の配ってる地域には先輩の家もあるんです。先輩はその日休みで携帯に

「悪いけど駅まで送ってくれないか」と言われた。

夏は忙しいんですよ、でも送りました。

□ □ □

次の日、仕事場のオッサンに「お前ら、昨日さぼっていただろ」って言われた。

すぐに言い返した

「さぼってないですよ、先輩を駅まで送っていっただけです、それに夏じゃ忙しくてさぼれないですよ」
オッサンは「そうか、あれ、後ろに乗ってたのCの彼女か?駄目だよ助手席に乗せてやらなきゃ」

乗せてないんですよね女なんか
先輩はこわばった顔で

「その女、赤いアロハシャツ着てました?」

オッサンは「何言ってんだ、着てたじゃないか昨日の事覚えてないの?」

それ聞いて朝から気味悪くってバックミラー見ないようにしてた。
夜になって仕事が終わり事務所に帰りみんなと話してたらその中の一人が「これ見てみろよ、面白いよ」って言いバインダーを差し出してきた。その中にはみんなの履歴書が入っていて結構暇つぶしになるんです。そのバインダーが置いてある棚には退職者の履歴書が入ったバインダーもあり、パラパラ見てた。
自分は8月の始めに入社したんですけど、7月に3人も辞めているんです。その履歴書の右上には赤いペンで(研修担当者C)って書いてある。C先輩の事です。

□ □ □

最初は夏だから辛くて辞めたのかなと考えた、でも今はこの3人は赤いアロハシャツの女を見てしまったんだなって思っています。

ある日先輩の家で酒を飲む事になりました。2人ともアロハシャツの女については触れないようにしてた。
いつもどおり盛り上がっていたんですけど、やっぱ気味悪いんですよあの女の事が気になって。先輩にひっついてるなこの女はと薄々と感じていましたから。
話はすこし飛びますが先輩の家にあるテレビはコンセントが抜いてあるんです。おまけに画面にタオルが掛けてある、辺りを見回すとパソコンと鏡にも掛けてあるんですよ。

それで酒の方は先輩が先につぶれちゃって今にも寝そう、暇だからパソコンでネットやらしてもらうことにしたんです。先輩は一言「夢中になるなよ」と言って横になった。

でも夢中になってしまい随分やっていました。
これがいけなかったんです。

□ □ □

パソコンのモニターなんですけど何かある。反射して部屋の中が映っている。
目を凝らすと自分の2メートル後ろに赤いアロハシャツの女が立っているんですよ、こっちを見てる。
「うわっ!」目をモニターから、そらしちゃいました怖くってそれで再度モニターを見ると、背後にピッタリと移動してる。
モニターには胸から下が移りこんでいて顔が見えない。
もう目をそらせないんですよ、だってそらした瞬間に背後まで来てる。次そらしたら、どうなるか分からない。
ずっとモニターを凝視してるんですが、その女からは息ずかいもしてないし、ただ立ってこっちを見下ろしているんです。
部屋に聞こえるのはパソコンから出る「ウィーン」と言う音だけ朝方、先輩が声を掛けてくれようやく開放されました。

先輩から聞いたんですが、この女が現れてもう3年になるそうです。
前に住んでいたマンションの廊下に立っていて、先輩は通り過ぎる時、女の顔を見てしまったんです。
片目が無かったらしいです。

□ □ □

上に書いた出来事で自分はこの女について聞かずにはいれませんでした。先輩は廊下であの女を見て「ああ、まずいな」って直感したそうです。なにせ片目が無かったから。
でも、まずいなと言いつつもすぐに忘れてしまったらしいです。
それで夜になって配達が終わり家に帰ったんです。先輩はマンションの5階に住んでいてエレベーターに乗った。
閉まる瞬間、何気なく乗ってきたそうですアロハシャツの女が先輩はまだ幽霊だと思ってなかったんですって、でも動揺が隠せない。
エレベーターが動かない・・
先輩はボタン押すのも忘れてたんです、それぐらいこの女に意識が向いてた。
先輩はオレにこう言いました。

「何であの時あんな動揺しちゃったんだろ・普通に何気なく行動してればあの女ついて来なかったんじゃないかな・・・でも動揺しちゃうよ・・」

エレベーターが動きます、女は先輩の後ろに立っていたそうです。
5階について先輩は逃げるように部屋に向かいました。先輩は

「あの時、おかしいって感じたよ、オレ横目で見たんだよエレベーターの中、女は中で立ってて出る気配なかったよ。5階までしかないのに」

□ □ □

先輩は恐怖を感じつつ部屋に戻った。この恐怖を消すためにテレビを見始めたんですけど、少し経って

「ドスッ」

先輩の肩に、あごを乗せてきたらしいです。アロハシャツの女が振り返ると何もいなかった。
先輩はすぐに引っ越したのですが、その女は追ってきてた。

「オレは極力あいつと会う確立を減らす努力をしてるよ」

まず、夢中ならない事だそうです、特に家の中では。
だから、テレビやパソコンにタオルを掛けてる。

先輩はエレベーターであいつが乗ってきて動揺したんですが何でそんなに動揺しちゃったのか女が何気なく乗ってきた時、喉にタンが、からまったような声で

「ゴ・・ゴポ・・一緒にいて」

と言われちゃったんです

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