ふさふさのしっぽ
コレは、一年位前に私が体験した話です。
その時期私はとある事情で絶望を感じたていた。いや、生まれて初めて絶望を知った。
自分自身でも「気を病んだ」か「狂ってしまった」と思えるほどだった。
東京で一人暮らしを続ける事が出来ず帰郷して半ば精神崩壊のまま、家で静養する日々・・・。
地元は田舎と言っても都会に近く、都会とは言えない田舎・・・中途半端な田舎だ。
私の部屋は、死んだ祖母の部屋、一階の和室、玄関の直隣だ。
障子が敗れてもそのままだ。母が
「張りなおそうか?」
と言うも、どうせ何時かは破けるからそのままで良いと言い、そのままだ。
前に気紛れで買った哲学の本が、「道標を与えてくれるれる」ような気がし、
本を読み齧る毎日を送っていた、「何か」を自分自身を納得させようとする為に。
窓から夜空を見る、雨戸など閉めない、
朝が来ればまた空けるのだから閉めなくていい・・・少しタバコが吸いたくなる。
妹から家の中でタバコを吸う事を禁じられている為に玄関でタバコを吸っていた、
所謂「蛍族」と言う奴だろうか?。タバコを吸っていると、すると・・・
「お兄ちゃんっ!居たの?!」
帰ってきた妹だった、何でも、私の気配が無く近づくまで気付かなかったそうだ。
「気配を消すか・・・バトル漫画の世界でよくあるなぁ」と少し頭の中でよぎったが、
その後も郵便配達員や、近くの人も、まるで私に気付かないようだ、
たまに気付く人がいる、その少し驚いた顔を見るのがちょっとした楽しみだった。
日が過ぎてゆく
その日、玄関でタバコを吸いながら・・・夜空を見上げていた・・・
すると黒くてスマートな猫が、そうウチで飼っている猫だ。
外に出してしまう大変だ。何故って隣の人間にかわいいウチの猫殺されかねないっ!
・・・コレは比喩では無い。そういったとお隣なのだ。
ウチで飼っている猫が外にっ!私は直に家の中の妹にその事を言い、
妹と一緒に猫探し、しかし見当たらない・・・
散々探すも見当たらない、仕方なく家に帰ると・・・
「みゃ~」
居る。かわいいうちの猫が。妹は私になんとも言わず、
猫を嬉しそうに撫でまわす回す、それに満足すると私に冷たい視線を向けた・・・。
私の勘違い?見間違い?いや・・・ウチの近くに、
ウチの猫以外でスマートな黒猫など居るのだろうか?
母に聞くもやはり居ないと言う・・・まぁ一件落着だ。
幾日か過ぎる
その日も、玄関でタバコを吸いながら・・・
夜空を見上げていた・・・その時、物音に気付いた。
すかさず、周囲を耳と目で確認するが、「その物音」の対象は見つからない。
おかしな音だった、生き物が木を揺らすような・・・
庭の中央の柿の木の上に視線を動かす。それ以外は全て確認済みだったから。
しばらく凝視する。
しばらくすると、太い尻尾・・・
いやふさふさの尻尾の奇妙な動物がいるのは解かった・・・
ゆっくりと家に入り母に
「ふさふさのしっぽの動物がいる」と言って母を連れて、庭の木に行く・・・
がそこには何もいなかった。
少し「黒猫の一件」を思い出す・・・
「ある思い」が頭をよぎる、直に「その考え」は捨てた
幾日か過ぎる
「ふさふさの尻尾の動物」を目撃する事は二度三度ではなかった。
だが、母や妹を呼ぶと・・・
そこには何も居ない・・・
なぜか私だけ目撃し、人を呼ぶといない・・・。
「ある考え」が私の頭の中で”芽が出て”、”葉を持ち”、
”小さな木へなろうとする。育ってほしくない「嫌な可能性」の”木”だ。
幾日か過ぎる
その日も、タバコを吸い、眠りにつこうとした、
私の部屋は1階で玄関見える、眠りにつこうとすると、
破れた障子の隙間から光の玉のようなものがっ!
その位置に光る物が見えることはまずない。暗い庭の階段が見えるべき隙間だから。
霊等、信じた事は一度も無いが流石に一瞬頭をよぎった、
しかし、考えうる可能性の内、最もありえるのは・・・
「懐中電灯を持った人間がうちの庭にいる?」
そう考えた瞬間、脳裏を恐怖がよぎる。
が、反射的に外に出る、先手必勝。
「泥棒」だったのなら「先手を取らないと勝てない」と即時に考えた。
私はよく「攻撃的な性格」だといわれるのは、この為だろうか?。
「光」が懐中電灯の光であったと確信する、
「黒い人の影」が庭の玄関への階段の途中から私の部屋に向けていた光を私へ向ける
逃げる黒い人影
追跡する私
私は腕力にはすこぶる自信が無い、格闘になったら負ける自信は9割はある。
だが、迂闊な事に何も持っていない、素手だ。
私の部屋の隅の何処かにあるはずのモーニングスター(玉だけだが)はきっとこの時の為にあったのだろう、
しかし、あいにく追跡して走っている途中で思い出すほど忘れられた存在、
役に立たない鉄の塊はおそらく唯一の機会を逃した。
「ビルジーから金的へ・・・か」「それともタックルで・・・」
ジークンドーの本と傭兵の本を必死で思い出し、
作戦を考えるが相手がどんな相手だろうと勝てる気がしない、
それくらい腕力に自信がない。
そもそも”不法進入”では「下手に有効な攻撃ができない・・・」、
などと考えながら・・・。
少し大きな道路に出る、”黒い人影”が止まっっている車の陰に入る
それををみると直ぐに私は道の真ん中に出る、車を止める為にだ。
通行人などは周囲にはいなそうだ、だが少しは交通量はある。
通りがかったトラックを止め、事情を話、警察に連絡してもらった。
トラックのあんちゃん、いや、”おっちゃん”という年か?
タバコを一本くれた、トラックの助手席で待たせてくれるそうだ。
そんなやさしい気遣いで私は自分が裸足だった事を気づかせてくれた、
”止まっっている車”からおっちゃんと私は目を話さなかった。
タバコが半分ほどまでになると、警察が来た、意外に早い
間単に事情を説明し、警察官の二人はその車の陰に近づくとそこには・・・
誰もいなかった。
トラックのおっちゃんは軽く警察と話し、去っていった。
一人の警察官はパトカーから無線で連絡している、
一人は私と話す、少したつと、3、4名の警察が来た。そして
警察はウチの庭のを調べるが・・・状況は、「人影」は「土の上」にはいなかったため「靴の後」も採取できず、
勿論状況的に指紋も残らない。
そう、私の証言のみだ。
数日が過ぎる
それから、母と父、妹の視線が気になる。
その視線の理由は・・・おそらく・・・
私は思う、私は狂っているのだろうか?
気が滅入ってくる。幻覚が見えている?
黒猫、ふさふさの尻尾の動物、黒い人の影・・・そのすべてが・・・
自らの「自信」が崩れ落ちてゆく、自らの記憶への疑い・・・
私は・・・ひとつの可能性が「ありうる」事、
その事へ、思考を傾けることが多くなっていった
「・・・」
幾日か過ぎる、ある日、母から
「”あの”犯人、捕まったわよ」
「へ?」
私は・・・。あの少ない証拠でつかまるとは到底思えない。
聞くと、他の家に侵入した泥動が自白、その内容から、
ウチに侵入を試みた事が解かったそうだ。私が見た”黒い人影”は事実だったようだ。
何か自らの中で自信が取り戻されてゆく。
そして、また、何日か経つ
その日もよるタバコを吸っていると、あの木にふと、目をやると・・・
ふさふさの尻尾が三つ
野鳥の為の柿を食べているっ!姿も良く見える、
オコジョかフェレットかハクビシンか解からないが、
そういったヤツが今日は三匹もだ。コッソリと母と妹を呼ぶ
「本当・・・かわいい」
「まさか、本当に居るなんてねぇ」
こうして、黒猫以外、私がみたものは事実だった事が確かに成った。
恐らく黒猫も、ウチの猫以外に似たようなのが居たのだろう・・・
どうやら私は「幻覚が見えている」事は無さそうだ。
私の(私の中での?)ちょっとした「幻覚(?)」騒動も幕を閉じた。
私の中で、少し糸がほぐれた気がした。
そして、私が経験した中で、一番の絶望、そして一番の恐怖だった、
”あの恐怖”つまり
”自らが見たものを、自らが信じられない”事・・・。
「オコジョに感謝しないといけないかもな・・・いや、ハクビシンか(微笑)?」
モーニングスター(玉だけ)はいつでも手に取れるところに飾っておくことにした、
”部屋の隅の何処か”の鉄の塊は、インテリア(?)へと昇格。
三匹はもう来なかった。冬になるとまたやってくるかもしれない、季節は春が近かい。
私も新たな一歩を歩みながら・・・
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