山にまつわる怖い話【41】全5話
山頂の剣
どこの地方の山にも伝説のような話は残っていて、
その中にたまに聞く話で、山頂の剣、みたいなのがある。
ある山歩きの好きな知人が、東北のそんなに有名でもない山で
初夏の頃に登山に出かけた。地元の登山家にルートを聞き
地図とコンパスを手に半日ほどの行程だった。
仲間二人と登山道をたどって山頂を目指した。
山頂に着くと、ルートマップに無い獣道を見つけた。
知らない山で迷うのも嫌なので無視しようと思っていると
木々の間から立て札のようなものが見えた。
文字はすでにかすれて読めないが、その先に何かあるようだった。
好奇心から少し入っていくと、見晴らしになっていてそこには大きな岩があった。
注連縄に柵、あぁ、何か祭ってあるんだなと思って回り込んでみると
その岩の上に横たわる人影。初夏だというのに冬山装備で岩の下を
覗き込むようにしている。声をかけてみた。「何かあるんですか?」答えない。
近づいてみるとすでに白骨化している。それを見て全員が思わず息を呑んだ。
遭難者は珍しくなかったが彼等を驚かせたのは、その遺体の背中には
錆びた鉄剣が突き立っていた。急いで麓の警察に連絡。
じきに大勢の人が上ってきて現場は騒然としていた。
「あぁ、殺人事件に巻き込まれるとは・・・」そう思っていると少し様子が違った。
地元の人々が、「またか」というような事を話している。
身に着けていた服を切り裂いて白骨体をその岩から下ろすと
さっきは気づかなかったが、足元に倒れていた立て札を誰かが立て直している。
「また馬鹿が触りにいったんだな」そうつぶやくと岩を拝んで立ち去った。
立て札に目をやるとこう書かれていた。
「鬼の首落とし。立入禁止。触るな。」
いつの頃に立てられたものかは解らないが、すでに数百年は経っているという
大きな鉄剣はその昔、この山を荒らしていた鬼の首をはねたものだという。
抜けない、切れない鉄剣。数年に一人は犠牲者が出るという。
「あぁ」という声
去年の夏に兄と相模湖へ
ツーリングに行った時の話です
行きと違う道で帰ろうという話になって暫く山道を走っているとちょっとした林の中に入りました
夏らしく蜩がメット越しでも分る位に大きく鳴いています
先行する兄がバイクを端に止めたので倣って止めると左側の雑木林の中に鉄パイプで作られたゲートがあり
錆びきった看板に『~ハイキングコース』と書かれていました
ゲートからは中途半端に舗装された道が山頂に向かって伸びていますが
長い間放置されていたのか雑草に覆われていました
欝蒼と生い茂る木々で日差しが遮られ昼尚暗い場所に余りにマッチしていて
チープなホラー漫画みたいだったので暫く指差して笑ったりデジカメを撮ったりしました
さんざん笑った後にまだ日も高いのでそこを登る事になり二人でゲートをくぐると
兄にデジカメ持って行かないのか?と言われ
確かに上でも面白い物が撮れるだろうと思い無意識にメットインに閉まっていたデジカメを取り出すと
するっとデジカメが手を滑り地面に激突メディアカードがいかれたのか撮れない状態になってしまいました
自分で言うのも何ですが
私は慎重なタイプの人間なのでこのようなミスは滅多にしないのですが
壊れてしまったものはしょうがないと諦め登山道を登り始めました
道は急勾配で膝を手で押しながら登る程でした
雑草や蜘蛛の巣を掻き分けながら10分程登ると頂上に着きました
頂上には腐り果て原型を留めていない木製のベンチとテーブル真っ赤なペンキで塗り潰された標識がありました
DQNさんでもいらっしゃったのかなと兄に言おうと思ったその時です
先程登ってきた道の左側登山道より更に角度の厳しい位置から
「あぁ」
と子供と言うか赤ん坊の声が聞こえました
幻聴かと思い確認を取ると兄も聞いていました
どうしたものかと固まっていると再び
「あぁ」
と聞こえました、もう言葉は要りません
二人して一目散に登山道を駆け下ります
と言ってもとても急なので身体を横に向けながらカニ歩きになったりしながらでしたけど
帰り道も半ばに差し掛かった時
地面に白い液体が大量に撒かれているのを見ました
何だろうと思い兄を呼び止めようと思ったのですが兄も怖かったのでしょう
既に遥か遠くに先行していました
取り残されるのが怖くて急いでその場を後にしバイクの処まで辿り着きました
白い液体について兄に
登っていた時あった?と聞くと
無かったと言いました
膝を手で押しながら登る様な道だと地面が目の前に有るので二人して見落とす事は考え難いですよね
とにかく不気味だったのでさっさと帰路についたのですが
哀しいかな方向音痴帰る方向に向かっていたはずなのに
また先程の山道に入ってしまいました
件の朽ちたゲートの前を通り過ぎる時フルスロットルだったのはご愛嬌です
持ち主のいないラジオ
あれは確か1977年の7月下旬から8月上旬でしたから,もう20年ほど前のことでした。
私は友人と3人で北アルプスの裏銀座コースという3000m級の尾根を縦走していました。
縦走というのは山の頂上を巡り歩く山登りのことです。
第2泊目,野口五郎小屋という所に泊まったのですが,割合すいていて,自家発電による電灯,TVもあり,食事も良く快適でした。
それでも登山者は早朝に出発するものですから夜9時前には消灯して寝るのが普通です。
寝るところはセンベイ布団はありますが,いわゆるザコ寝です。
皆が寝入って静かになった頃,ラジオを聴いているヤツがいるのです。
小さな音でしたが,静かなだけに気になりました。
皆が疲れているのに迷惑だな,と思いながらもそのうちスイッチを切ってくれるだろうと待っていました。しかし,だんだん腹が立って,起きあがって小屋の従業員に,注意してくれるように言いに行きました。
しかし,誰もラジオなど聴いている客などいなかったのです。他の客も起き出して調べたところ,あるリュックの中のラジオが鳴っていたことがわかりそのスイッチを切って事は収まるはずでした・・・
従業員がぽつりと漏らしました。そのリュックの持ち主は今夜の客の中にいないんです。恐らく本人の荷物を置いたまま,身軽で下山したのではないか,と言うのです。
野口五郎岳から一日で麓に下山できるコースはありません。夏場とはいえ装備無しで下山するなど自殺行為とも言えます。ラジオのスイッチはずーと入りっぱなしだったのかもしれないし,荷物を動かした際に入ってしまったのかもしれません。
静けさの暗闇の山頂で聞こえたラジオは,電波状況のため音量にウエーブがかかっていて,断片的に番組提供者名が聞こえていました「・・・霊友会です・・」
鈴の音
6年位前、妙義山にひとりで登ったことがある。
ふもとの神社のさくらがきれいと聞いて、見に行ったんだ。
以前家族でも登ったことがあったし、軽い気持ちで途中まで行ったのね。
いくつかの鎖場を越えて、いちおう区切りのいい場所まで出たから満足して、
さあ下りようと思って歩き出した。
もともと登山道としても舗装や整備がされてるわけじゃなく、いくつか目印があるとはいえ
先人の歩いた跡を辿って登るような道だったため、20分くらい歩いて道に迷った。
ほかに登りに来ていた人もなく、熊がと言われていたのですごく不安になり、しばらく
しばらく立ちすくんでしまった。
実際には5分くらいだったと思う。
頭上から突然、ちりんちりん、と熊よけの鈴みたいな音が聞こえてきた。
ああ誰かいるんだ!これで帰れると思って、急いでその音の方向に向かって歩き出した。
すると3分も行かないうちに、登山道の目印が見えたんだ。
精一杯急いで下りたんだけど、山から下りてきたひとの姿はなかった。
もしかしたら登ってく人だったのかもしれないけど、迷ったとき夕方4時を過ぎてたんだよね。
これからどんどん暗くなるし寒くなるし、行った先には山小屋とかもないのに…
怖かったので、自分の中で山の神様に道案内されたってことにしてる。
一本だたら
一本だたらについて一つ
この妖怪は名前にもあるようにたたらが深く関係していると
聞いたことがあります。
それは、たたら製鉄の内容と関係するものでした。
たたらは脚でふいごを踏み、空気を送り高温を得るため
これを三日三晩続けなければなりません。
さらに、製鉄中は炉の周囲を火花が飛び散ります。
一本だたらは一つ目、一本足の妖怪です。
火花で目をやられ、ふいごを踏み続け脚をだめにして
しまったたたら師の成れの果て
ではないかと言うものでした。
この話を中学の理科の先生から聞かされたときはよく分からない
怖さみたいなものを感じました。
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