『夢鬼』 – 洒落怖名作 – 有名な怖い話【長編】

『夢鬼』 - 洒落怖名作 - 有名な怖い話【長編】 長編

 

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夢鬼

 

「ねー、夢鬼って知ってる?」

この一言から全てが始まった。

その当時、俺はまだ小学5年生。元気のいい、普通の男の子だった。

いつものように、放課後の教室で仲の良い友達としゃべっていた。
友達を仮にA、B、C、D、E、Fとする。

男はA、B、Cと俺の4人。
女はD、E、Fの3人。
いつもこの7人で遊んでいた。

他愛のない話を皆でしていると、急にDが口を挟んだ。

「ねー、夢鬼って知ってる?」

その瞬間、皆の顔から笑顔が消える・・・

「夢鬼って・・・あの怖い話のやつだろ」

「皆、知ってるよ。よく小さい時に悪いことをしたらお母さんに、夢鬼さんが来るぞって怒られたもん。」

「うんうん、俺の家もそうだった。」

夢鬼・・・夢鬼というのは俺の地域に伝わる怖い話。だが実態は何も分からない。

ただ夢の中に、怖い鬼が出てくるという事だけしか聞かされていなかった。
それだけでも小さい時は、恐怖を感じていた。

「その夢鬼がどうしたの?」

EがDに質問をする。
いや、Eが言わなくても俺が言っていただろう。
何故ならば、夢鬼というのは俺達子供にとって恐怖でしかない。

怖い話をする時でもまず、夢鬼という言葉は出てこない。

夢鬼という言葉を言うだけで親にひどく怒られる。
子供が口にしてはいけない事のようだった。

だから何故急にDが夢鬼と口にしたのかが気になった。

「夢鬼が何なのかが分かったんだ。」

Dはそう言うと得意げに、一枚の紙と一枚の写真を皆の前に出した。

その紙と写真はひどく汚れていて、最近の物じゃないことがすぐに分かった。

「その紙は何だ?」

当然のようにAがDに聞く。

「これは夢鬼について書かれている紙。前に図書館に行ったときに、本の間に挟まってたんだ。この写真と一緒にね」

Dはその紙と写真を図書館で見つけたらしい。
俺たちの地域は大きく分けて3つに分かれている。

そしてその3つの地域の中心にこの図書館はある。
図書館はこの一つしかない。
なので、対外の本はそこで皆借りている。

Dは読書好きだったからよくその図書館に通っていた。

そしてその紙を指差しながら、Dは説明を始めた。

「まず夢鬼っていうのは夢の中で鬼ごっこをする事なんだって。
鬼は最初から夢の中に居て、その鬼に捕まらないように皆で逃げる。
そして捕まった人が次の鬼になる。
それを最後の一人になるまで続けるんだって。」

皆が思わず吹き出す。

「夢の中で皆で鬼ごっこ?」

「そんなの普通に考えて無理だろ。」

「夢は一人でしか見れないんだし。」

予想していたものよりもあまりに違ったため、皆しばらく笑いが止まらなかった。

夢鬼の正体ってただの鬼ごっこなのかよ。
なんでそんなものに今まで恐怖を感じてたんだ・・・
なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたな。

「そんな事言うなら実際やってみようよ。」

Dは少し怒った口調で言った。

「やるって言ったってさ。どうやるんだよ。皆で同じ夢なんて見れないだろ。」

Bが口を挟んだが、そんなことは関係ないと言わんばかりに、Dが説明を続けた。

「ちゃんと最後まで話を聞いて。ちゃんとした手順を行えば出来るんだよ。
ほら、この紙に書いてあるでしょ?」

そう言って紙に書いてある手順を読み始めた・・・

1、 鬼ごっこをする場所を決める。

2、 決めた場所を特定できるものを用意する。(住所が書かれている物や、写真などでも構わない。様は特定できれば良い)

3、 その特定できる物を参加者全員に配る。

4、 その裏に自分の名前を書く。(簡単に消えないような物で書く。絶対に自分の名前は自分で書かなければならない)

5、 深夜12時にそれを枕の下に敷き、

「夢鬼さん、夢鬼さん、私と鬼ごっこをしてください。」
と唱えて目を閉じる。

「ここはどこだ?やけに暗いな…あ!」

ズボッ…

俺は不意に冷たい何かに片足を突っ込んだ。

和式のトイレだった。

「うわーきたねー、最悪だよ。とりあえずここから出よう。」

俺はトイレのドアを開き、外へでる。そのさきは廊下だった。

そのトイレの扉の上にはには男子トイレと書かれていた。

この景色、見覚えがある。俺達の学校だ。

俺達は夢鬼をやることに成功したんだ。

でも何でだ?灯りが無さ過ぎる。そして静か過ぎる

夜の学校ってこんなに暗くて静かなのか…

それよりも皆はどこにいるんだ?

そんな事を思いながら、夜の学校の中を進んだ。

カツン、カツン。

その時、階段から誰かの足音が聞こえた。

「だ、誰だ!」

俺はビビりながら声をかける。

「よかったー、私1人じゃなかったんだ。」

そう言ってきたのはEだった。

俺「他の奴には会ったか?」

E「いや、○○(俺の名前)が初めて。本当にこれ夢の中なのかな…なんか凄い怖いんだけど…」

俺「夢にしては凄いリアルだよな…でもいつもの学校と雰囲気が違い過ぎる。
そうだ、お前最初どこにいた?俺はあそこの男子トイレだった。」

E「私は2階の廊下からだったよ。そして階段を降りてきたら○○が居たの。」

どうやら皆スタート時は別々の所かららしい。
ということは他の奴等もどこかにはいると言う事か。

俺「まず皆を探そう。そして鬼がいるかもしれないから静かにな。」

E「うん、わかった。でも○○、さっきでかい声出してたよ。」

俺「………」

まあいい、これからは静かにだ。

さっきの声で誰か気付いたかもしれないしな。

俺とEは静かに進んだ。
内心ビビっていた。本当にあの夢鬼をやっている。

正直怖い…今更ながら後悔もしていた。
でも隣のEはもっと怖いはずだ。だから男の俺がしっかりしなくては…

「ねえ、鬼って誰なんだろうね?鬼は最初からいるって言ってたじゃん。あれって私達ではないって事だよね?」

Eが小声で俺の耳元で話した。

俺「ああ、多分な。最初の鬼は俺達ではないだろうな…
最初の鬼には捕まりたくないな…誰だかわかんない奴になんか…」

E「私も!絶対最初だけは嫌だ。」

そう二人で決意し、暗い学校の中を進んだ。
進むと、玄関が見えてきた。

外に出られるのか…そう思い、扉を開けようとする。

俺「ダメだ、開かない…ここもダメ…じゃあ窓とかは。」

玄関の扉、廊下の窓、全てを試したがどれも開かなかった。

ガン!ガン!

試しに辺りにあった消火器などで割ろうとしたがビクともしない…
割れても夢の中だから問題ない。そう思い試したがダメだった…

俺「ダメだ、開かないし、割れない…俺達…閉じ込められたかもしれない…」

そう言うとEは泣き始めた。
Eは最初から乗り気じゃなかったみたいだし…
仕方なく参加した程度だろう。

俺「大丈夫、鬼ごっこが終われば出れるよ。だから最後まで頑張ろう。」

E「そうだね、ただの鬼ごっこだしね。所詮夢なんだし。なんで泣いてんだろ私。」

よかった、泣き止んだ。そう、これはただの夢。

鬼ごっこが終わらなくても目が覚めれば終わる夢。
何をそんなに怖がる必要がある。

そう思っていた時、遠くの廊下から足音が聞こえた。

段々近付いてきている…

しかも走ってきている…

誰だ…あいつらの誰かか?

でも、もしかしたら鬼かもしれない…

しまった…さっき窓を割ろうとする時、でかい音を立てすぎた…

今更ながら失敗に気付く…

俺「E、とりあえず隠れるぞ。あいつらの誰かかもしれないけど、鬼かもしれない。姿を確認したら声をかけよう。」

E「うん、わかった。」

俺とEは玄関に置いてある掃除道具が入っているロッカーに身を隠した。

ロッカーの隙間からちょうど玄関が見える。

玄関は月明かりのおかげで他の所よりも明るい。

だから姿が確認しやすい。

カツン、カツン

誰かが近付いてくる。

もうすぐそこまで来ている。

カツン、カツン

人影が見えた。

!!!!!

思わず声を上げそうになったが必死に自分の口を手で押さえる。

Eも同じ行動をしていた。

カツン、カツン

近付いて来る。

そいつはあいつらじゃなかった。

いや、あれは人間なのだろうか…

姿は人の形をしているが全身が真っ黒だ。

廊下などだったら見えないかもしれない…

月明かりのおかげで姿が確認出来た。

カツン、カツン

そいつは尚も近付いてくる。

そして俺達が隠れているロッカーの前に立ち止まった。

そいつと目があった気がした。

だがそいつの目は目と言えるものじゃない…

目の部分が空洞になっている。

分かりやすく言うと影だ。自分の影が目の部分だけ影になっていない。

つまり目の部分だけが黒くなく、何もない。

大きさは拳一個くらいだろう。

そんな奴が今、俺達は目の前にいる…

なんなんだこいつは…

もう恐怖でしかなかった…

その時…

「おーい、誰かいないのかー?」

遠くから誰かの声がした。

そいつはその声に向かって走り出した。

一瞬の出来事なのに、とても長く感じた。

もう汗どころか失禁してい
た…

だってまだ小学生なんだ。いや、小学生じゃなくてもあれは怖いだろう…

俺「E、まだ出るな!近くにいるかもしれない、まだだ!」

E「………」

もう恐怖で言葉が出ないのだろう…

間違いない。

あいつが鬼だ!

夢鬼だ!

俺達はとんでもない遊びをしてしまったらしい。

早く夢が覚めてくれ…

今はそう願うしかない…

あんなやつが鬼?

あいつから逃げることがどれだけ怖いことか…

たとえ夢だとしても、怖すぎる…

そう思いながらくロッカーに居た。

「うわー!なんだお前!来るなよ、こっち来ん…○☆◎◇★…」

遠くで誰かの叫び声がした。

誰だろう…

誰かがあいつに捕まったのかな…

でもあいつが鬼じゃないなら別にいい。

他の奴は知っている奴なんだから…

その時はそう思っていた…

俺「よし、そろそろいいだろう・・・出るぞ。」

俺とEは恐る恐るロッカーから出る。
よかった・・・誰も居ない。ロッカーという密室はあまりにも暑かった。

それに、俺の失禁のせいもあり、匂いにも我慢できなくなって・・・
二人して気分が悪くなり、その場にしゃがみこんだ。

いや、正確には腰が抜けて立っていられなかった・・・

俺「何だったんだ、あいつは・・・想像していた鬼とは違いすぎる・・・
夢の中っていうのがせめてもの救いだよ本当に・・・」

E「うん・・・そうだね・・・でももう私嫌だこんなの。
早く目が覚めたい!鬼ごっこなんかもうしたくない。」

Eは顔をグチャグチャにしながら泣いて俺にすがってきた。
失禁して汚い俺なんかに・・・

俺なんかより、Eの方が怖いんだ・・・俺がしっかりしなきゃ!

俺「大丈夫だ。いずれ目も覚めると思うし。それに多分誰かがもうあいつに捕まった。
だからもうあいつは鬼じゃない。な、それだけでもマシだろ。」

慰める言葉がこの程度しかない・・・でもこの時の俺にはそれが精一杯だった。

二人で重い腰を起こし、俺達はまた進んだ。
次は誰が鬼なのかは分からない。いや、誰でもいいから知っている奴に会いたい。
そう思いながら進んだ。

どこかの教室に入るのは危険だ。いざと言う時逃げられないかもしれない・・・
俺を先頭に、静かに、少しずつ進み、階段を上がり、2階へ進んだ。

「あいつ・・・捕まったのかな・・・凄い悲鳴あげてたし・・・」

「わからない・・・もうわからない・・・何なのよもう・・・」

「・・・・・・・・・」

?????

誰かの会話が聞こえた・・・慎重に近づき、姿を確認する。
BとDだった。

俺「おい・・・お前ら。大丈夫か?」

B「うわ!・・・なんだ・・・〇〇とEか・・・お前らこそ大丈夫か?
なんだよお前・・・ズボンが濡れてるぞ。」

俺「いや・・・正直大丈夫じゃない・・・ズボンの事は触れないでくれ・・・お願いだ。
それよりもお前らは最初どこに居た?」

B「俺は最初は音楽室に居たよ。そして進んだらDに会った。」

D「私は理科室からだった。廊下に出て皆を探そうと思ったら、まずA君に会って・・・
その次にB君に会ったの。そしてA君が皆を探そうと一人で大声で叫んでたら・・・
A君の悲鳴が聞こえて・・・私達怖くなって・・・A君を置いて逃げてきちゃったの・・・」

そう言うとDは黙り込んだ。そのかわりBが口を開く。

B「大丈夫じゃないって・・・何があったんだ?そのズボンも何かあったからそうなったんだろ?
一体何があった?」

俺とEはさっきの出来事を必死に説明した。
鬼の正体、外には出られない、そして鬼は悲鳴を聞いてどこかに行ったことなどを話した。

B「マジかよ・・・じゃあAは今頃・・・その変な奴に捕まって・・・
ああ、もうこんな鬼ごっこ嫌だ。俺は最初からこんな事したくなかったんだ。
D、お前責任取れよ!」

BはDに怒鳴りつけた。

D「私だってこんな事になるなんて思ってなかったよ!皆だって乗り気だったじゃない!
私だって怖いし、早くこんな鬼ごっこ止めたいわよ!」

BとDが喧嘩を始めてしまった。マズイ・・・こんな大声を出していたら見つかる・・・

俺「おい、二人とも止めろ。ここで喧嘩をしても何の意味もない。
それにこんな大声を出していたら、鬼に見つかるぞ。
まだAが捕まったと確定してないんだ。俺はあの変な奴にもう会いたくないんだ・・・
それにこれは夢だ。目が覚めればもう終わるんだ。」

そう言うとBとDは「ごめん」と一言言うと黙り込んだ。

よかった・・・なんとかまだ冷静でいられる。でもいつまでいられるか・・・
俺だってまだ小学生だ・・・怖いに決まっている。そう皆怖いんだ。

E「ありがとう、〇〇。」

そのありがとうの一言が嬉しかった。それに今は4人いる。
そしてもしAが鬼になっていたとしても、あの変な奴よりはマシだ。
そう思い、俺達4人は静かに進んだ・・・

その時・・・

ダダダダダダダ・・・・

足音が聞こえる。向こうの廊下からか・・・
走ってきている。誰だ?Aか?他の奴か・・・それとも・・・

やはりさっきの大声で気付かれたか・・・
俺達4人は歩くのを止め、その足音の正体を確認しようとしていた。

でも廊下は暗い・・・確認するにはこの窓からの月明かりが必要だ・・・
だからそれが最低限見える位置に下がり、足音が近づくのを待った。

ダダダダダダダ・・・・

まだ聞こえる・・・でも近づいてきている・・・
でもまだ姿は見えない。
そしてついに姿を現した・・・

!!!!!!!!
「うわー!なんだよコイツ・・・」

「またアイツかよ・・・Aが鬼じゃないのかよ・・・」

「きゃー!もう嫌・・・」

「こっち来ないで・・・」

俺たちは姿を確認した瞬間一斉に逃げた・・・
逃げるしかなかった。間違いない・・・
また奴だ。あの真っ黒い姿・・・そしてあの目・・・
あの恐怖が再び襲い掛かる。

もうがむしゃらに逃げた。
後ろは振り向けない・・・
怖くてとてもじゃないが振り向けない・・・

息が切れるまで走った。
どれくらい走っただろう。俺は無意識にどこかの教室に入った。

「はあ、はあ、はあ、・・・」

もう走れない・・・息が続かない・・・
俺はその場に崩れた。

皆は?どこに行った?はぐれたか・・・
俺は3階に上がった。そしてこの教室まで必死に走ってきた。

もう足音は聞こえない。よかった・・・逃げられた。
でも他の奴らは・・・皆、どこに行ったのだろう・・・

まさか捕まったのか・・・落ち着け、今は体力を回復させることだけ考えろ。
悪いが今は皆の事を考えている余裕はない・・・
自分の事で精一杯だ。

俺は深呼吸をし、冷静になろうと努力した。
足がガクガクいっている・・・無理もない。
こんな恐怖・・・今まで味わったことがない・・・

足の震えが止まるまでしばらくかかった・・・
一応、冷静さを取り戻し、辺りを見渡す。この教室。
家庭科室だ。

「家庭科室か。それなら何か使えそうな物があるはず。
何かないか。」

俺は流しが付いているテーブルの引き出しを開ける。

取り出したのは包丁。家庭科室だから調理実習で使う包丁があった。
もしまたアイツがきたらこれで・・・

おれはもう恐怖でそんな事を考えていた。今思えばこれはただの夢。

夢の中なのに・・・でも本当にリアル過ぎる。
この時の俺は夢であることを忘れていた。

そして鬼ごっこであることも。
アイツに捕まったら殺される。なら俺が反対に殺してやる。
その様な事を小学生ながら考えていた。

このままここに隠れているか?それとも皆を探すか・・・
隠れているのも一つの手だったろう。だが俺はここに一人では居たくなかった。

誰もいない、暗く静かな家庭科室・・・俺の息遣いしか聞こえない。
そして電気も付けることができない・・・付けたらここに居ることがバレてしまう。
この暗闇の中、居るしかなかった。

そしてもしここに奴が来たら・・・逃げられない・・・

それだけで十分恐怖だった・・・

ふと窓を見る。
窓からは中庭を挟んで、廊下の窓が見えた。

「ん?誰かが走っている。いや、逃げている。誰だ?」

月明かりのおかげで確認できた。
Cだった。でもC一人なのか?

!!!!!!!

俺は思わず窓から顔を離し、隠れる。
月明かりで一瞬見えた。

あの真っ黒い奴だ・・・

Cは今、アイツに追われている。じゃあもうB、D、Eは捕まったのか?

いや、捕まっていたらアイツが鬼な訳ない・・・
まだ誰も捕まっていないのか・・・

それもおかしい、一人くらいもう捕まってもいいはずだ。
また恐怖で足がガクガク震える・・・
怖い・・・ただの鬼ごっこのはずなのに・・・

それより今何時だ?
結構時間が経ったと思うが・・・

俺は家庭科室にある時計を確認する。

「そんな・・・まだ12時じゃないか・・・」

そう、時計は動いていなかった。
ここの時計だけ壊れているのか・・・でも偶然過ぎる。

俺たちは12時にこの夢鬼を始めた。
そしてこの時計も12時で止まっている。

まさか・・・ずっとこの暗い夜のままなのか・・・
朝が来れば少しはマシになると思っていた俺にとって、それは凄いショックな事だった。

「少し、落ち着いてからここを出よう。もう一人でなんか居られない・・・」

そう独り言を言い、体力が回復した所で、俺は右手に包丁を持ち

家庭科室を出た

俺は家庭科室から出た。右手に包丁を持って・・・

誰かに会いたい・・・一人は嫌だ。でも・・・アイツに会うかもしれない・・・

ここで気が付いた。最初の時よりも辺りがよく見える。
でも暗いのには変わりはない。

正確には目が暗さに慣れたのだろう。だからさっきすぐにBとDだと確認出来たんだ。
でも奴だけはすぐに確認できない。

奴はこの暗さと同化している。近くに来なければ確認できない。

それか月明かりでしか・・・そして足音だ。
これからは足音が聞こえたら奴だと思った方がいいかもしれない。
近づいてからでは遅すぎる・・・

そう思いながら静かに進む。慎重に・・・
各教室も確認する。
アイツがいるかもしれないから、いつでも逃げれる体制を保ちながら・・・

ここにも誰もいない・・・ここもだ。早く誰かに会いたい・・・
そう焦りながら各教室を確認していく。

そして6年3組の教室の前に来たところでまた足音が聞こえた・・・

カツン、カツン・・・

奴かもしれない・・・
怖くなり、不意に教室に入ってしまった。
しまった・・・もしここで見つかったら逃げられないかもしれない・・・

大丈夫、奴に気付かれないようにやり過ごすんだ。

もう教室からは出られない。出た瞬間、奴がいるかもしれないからだ・・・
奴の足音が過ぎるまでここに隠れるしかない・・・

ガタガタ・・・

そう思っていると、掃除用具が入っているロッカーの辺りから何か音がした。

誰だ?ここに誰か居るのか?奴か?
細心の注意を払い、教壇に近づく・・・
右手に包丁を握り締めて・・・奴だったらこの包丁で刺す。

そして一気に近づき、ロッカーを開ける・・・

「うわ!なんだ、〇〇か・・・よかった・・・」

ロッカーの中に隠れていて、軽く悲鳴を上げたのはEだった。
もう泣き疲れている様だった。体もブルブル震えている。

俺「大丈夫だ。俺だよ。
それよりもE。BとDはどうした?一緒じゃないのか?」

E「うん、それが・・・あの時私たちは1階へ逃げたの。
でもアイツが追ってきて・・・もう捕まるかと思った・・・
そうしたらBが・・・Dちゃんを・・・」

俺「Dがどうかしたのか?何があった?」

E「・・・Dちゃんをね、捕まえて盾にしたの・・・Dちゃんその時凄い叫んでた・・・
でもBは・・・そのままDちゃんを・・・」

俺「・・・じゃあDとBは捕まったって事か?」

E「分かんない・・・分かんないよ・・・私はその隙にここに逃げてきの・・・

二人を見捨てて・・・でも・・・本当に怖かったの・・・」

俺「・・・もう分かったよE。誰もお前を責めないよ。俺でもそうしてるよ。」

そう言い終えたEはまた泣き出してしまった。無理もない。
目の前で友達が、アイツに襲われそうになっているのに、見捨ててしまった。

凄い罪悪感なんだろう・・・そして恐怖なんだろう・・・
俺でも泣いてるよ。

その時

バタン!

何だ?

ドアを開ける音がした。
まだ距離はありそうだ。誰かが各教室のドアを開けているようだ・・・

バタン!

まただ。前より近い・・・確実に近づいてきている・・・

バタン!

今教室を出たら確実に見つかる・・・アイツなのか・・・それとも他の誰かなのか・・・

バタン!

もうすぐそこだ。
マズイ・・・このままだと見つかる・・・

俺「E、よく聞け、俺は今からこの教室を出る。
この教室に誰かが近づいて来ている・・・
このままだと二人共見つかってしまう。

もしかしたらアイツじゃないのかもしれない。でもそれは分からない。
だから俺が誰なのかを確認してくる。」

E「ダメだよ、危ないよ・・・一緒にいようよ。」

俺「もしアイツだったらどうする?お前足あんまり速くないだろ?
それにいざとなったらこの包丁がある。だから大丈夫だ。

大丈夫、絶対また戻ってくるから。だからお前はここで待ってるんだ。」

E「うん・・・わかった。ちゃんと戻ってきてね。約束だよ。」

俺「うん、約束だ。」

そう言い残し、俺は教室を出た。
廊下には誰もいない・・・でも・・・

!!!!!!

2つ隣の教室から出てきた・・・アイツだ!真っ黒いやつだ!
廊下の窓から差し込む月明かりのお陰で見える・・・

ヤバイ・・・逃げろ・・・逃げろ・・・逃げるんだ・・・
だが足が動かない、恐怖で動かない・・・

動け、動け、動け!

ダダダダダダ・・・
やっと足が動いた。だが奴との距離は無いに等しい・・・
このままだと追いつかれるかもしれない。

俺は廊下の角を曲がった所で止まり、両手で包丁を持つ。
そして奴も角を曲がってきた。

「うわーーーー!」

奴に向かって思いっきり包丁を刺す。もう恐怖で何もかもが分からなくなっていた。

「やった・・・殺した・・・俺の勝ちだ。」

あまりの恐怖でその場に崩れ落ちる。もう力など入らない・・・
包丁がその場に音を立て、落ちる。
手がブルブル震えている。

!!!!!!

奴は死んでいなかった・・・
何事も無かったように立ち、俺に向かって手を伸ばしてくる・・・

もうダメだ・・・捕まる・・・いや殺される・・・

そう思い、目を瞑り、自分の顔を腕で覆いつくした・・・

「・・・・」

あれ?何も起きない・・・何も起きないぞ・・・
俺は恐る恐る目を開けた。

奴が居ない・・・あるのは転がっている包丁だけだった。

「一体何がどうなっているんだ・・・アイツが居なくなってる。」

俺は理解が出来なかった。確かにさっきまでアイツは俺の目の前に居た。
もうダメだと思った。でも今は居ない・・・消えたのか?

手足がまだ震えている・・・

「そうだ、E!」

俺はEの事を思い出し、震えている足を叩き、起き上がった。
そしてEの元へ向かう。とにかく俺は無事なんだ。

多分心配しているだろう・・・早くEの所へ行かなくては。

Eの所へ急ぐ。

バタン!

教室に入り、Eが入っているロッカーに近づく。

俺「E、大丈夫だよ。俺だよ。俺は無事だよ。
さっきアイツに追いかけられて、捕まりそうになったけど、何でか分かんないけどアイツが居なくなってたんだ。

だからもう多分アイツは居ないよ。俺が包丁で刺したから消えたのかな?
・・・E?ねー聞いてる?」

俺はEが入っているロッカーに向かって話しかける。
だが、Eは何の反応も見せない。俺の言葉が聞こえていないみたいだった。

俺「おい、Eってば」

俺はロッカーを開けようとする。だが開かない。
中から力いっぱい、開かないように引っ張っているみたいだ。

E「い、い、いや・・・来ないで・・・こっち来ないで。」

俺「おい、E、俺だってば。開けろよ!何で閉じこもってるんだよ!」

さらに強くロッカーを引っ張り、開けようとした。

E「いや・・・いや・・・あっちいって・・・来ないで。」

俺の声が本当に聞こえないのか?・・・

俺「だから俺だってば!いいかげんにしろよ!」

思いっきり引っ張った。するとロッカーは開いた。

E「きゃー!!!!来ないでー!!!!」

俺「何でだよ!俺だよ。〇〇だよ。おい、E・・・」

俺はEの肩を掴んだ・・・

バッ!

俺はその瞬間に目が覚めた。ここは・・・皆で寝ていた所だ。
皆まだ寝ている・・・やった・・・夢から覚めたのか!!

でも服は汗でグチョグチョになっていた・・・枕も涙で濡れていた・・・
そしてズボンは・・・濡れていなかった。よかった・・・

そうだ、時間は!今何時だ。

時計を見ると朝の6時頃になっていた。
辺りも明るくなっていた。
一応、自分のほっぺたをつまみ、確認する。

痛い・・・よかった・・・もう夢の中じゃないんだ。
そう思い、安心し、また眠りに入った。

パン、パン

「はーい、皆さん、朝ですよ。よく寝れましたか?はい、起きてください。」

先生の声でまた目が覚める。
先生の顔を確認する。クラスの皆の顔も。
よかった。これはもう夢じゃない。現実に戻ってきたんだ。
そう思い、心から安心した・・・

「はい、皆さん、まずは顔を洗って、目を覚ましましょう。
朝ごはんもありますから、それを食べたら体育館に集合ですよ。
あれ・・・Eちゃん?Eちゃん、起きて下さい。Eちゃん?」

先生がEの所へ行き、揺さぶる。
Eがまだ起きていない。他の皆は起きているのに・・・

仕方ないか・・・俺もまだ凄く眠い、夢の中の出来事だったのに体が疲れている・・・
本当に逃げ回って、鬼ごっこをした様な感覚だ。

「しょうがないですね、Eちゃんは少し寝かせておきましょう。
はい、皆さんは布団を片付けて。早く朝ごはん食べて。」

俺達は自分の布団を片付ける。
そうだ写真、俺は枕の下にある写真を手に取る。

「あれ?名前が書いていない・・・確かに昨日の夜に書いたのに・・・」

写真の裏に書いたはずの名前が消えていた。
俺だけかな?そう思い、E以外の5人(Eはまだ寝ているから)にも確認する。
皆の写真からも名前が消えていた。

D「ねー見て、この写真からも名前が消えている。前はあったよね?」

それは最初にDが、皆に紙と一緒に見せた写真だった。
確かに前はちゃんと名前が書かれていた。でも消えている。
なんでだろう・・・Eのも消えているのかな?

俺たちは写真を鞄にしまう。

そして顔を洗い、朝食を食べる。
夢鬼を行った俺達6人(Eはまだ寝ているので)は一緒の所で食べた。

そして昨晩の夢鬼の事について話す。

A「いやー本当に怖かったな、夢鬼。でも今思うと面白かったかな。俺はすぐに捕まったけど・・・」

B「そうだな、夢の中じゃないみたいだった。やっぱりあの後、お前捕まったんだ。
それにしても、本当に皆で同じ夢を見れたんだな。すげーや。」

C「分かる、分かる。俺は廊下で黒い奴に捕まった。でも捕まる前は誰にも会っていない。声とかは聞こえたけどね。その後に〇〇に会ってさ。

声かけたのになんか逃げてって・・・最後は包丁で刺してくるし。
でも何ともなかったんだよね。まー夢だからか。」

ちょっと待て・・・俺はCの事は家庭科室から見えたが、会ってはないぞ・・・
そして包丁?俺が包丁を刺したのはCじゃなく、あの真っ黒い奴にだ。
なんかおかしい・・・

D「私はA君と、B君と〇〇君、そしてEちゃんに会ったよ。でもB君が私の事を・・・」

B「ごめん、ごめん。本当にごめん。でも夢の中の出来事じゃん。許してよ。
でもお前が黒い奴に捕まったと思ったら、お前消えたんだよ。
そして俺、ソイツに捕まってさ・・・

その後にCを見付けたんだ。Cは何故か逃げてさ・・・
追いついてCに触ったら、目が覚めた。」

C「は?俺お前になんか会ってないぞ!会ったのは〇〇と黒い奴だけだ。」

D「私は真っ黒い奴が消えたのは分かるけど、私は消えてないよ。ちゃんと居たよ。
そしてB君に触ったら私、目が覚めたの。

結局鬼ってあの真っ黒い奴だけだったのかな?でもそれって何かおかしいよね?Fちゃんは誰かに会った?」

F「私は最初、1年1組の教室からだったの・・・すぐに教室を出たら皆の言ってる真っ黒い奴がいたの・・・怖くて動けなくて・・・捕まったと思ったら、真っ黒い奴が消えていて。

その後、玄関の方でガンガンって音がしたの。誰か居るのかと思って玄関に向かったけど誰も居なかった。廊下に消火器が落ちていたから、前に誰かは居たんだろうけど・・・。」

まてよ・・・消火器で窓などのガラスを割ろうとしていたのは俺だ。

そして俺とEは玄関を覗けるロッカーに隠れた。
でも玄関に来たのはFじゃなく、真っ黒い奴だ。
F「そして誰かの声が聞こえたの。声の方に行ったら、A君が居て。私を見て叫んで逃げて行ったの。だから追いかけて、私だよ。Fだよ。って言っても返事が無くて・・・

A君が転んだ時に、私、A君に触ったの。そうしたら目が覚めた。」

A「え?俺、Fには会ってないぞ。最初に会ったのはDで、その後にBに会ったんだ。
会ってしばらくしたら、黒い奴に捕まってさ・・・
でもソイツは何故か消えた。

その後、BとDと〇〇とEに会ったんだよ。
そういえば俺も、その時、なんか逃げられたんだよな・・・
追いかけたらBがDを盾にして。何でこんなに怖がってるんだって思ったよ。俺なのに。

そしてDに触ったら、目が覚めたんだ。〇〇は誰に会ったんだ?」

まただ・・・俺はAには会っていない。B、D、Eと一緒に居たときに会ったのは、あの真っ黒い奴だ。何がどうなっている・・・

俺「俺が会ったのはBとDとE、そして黒い奴だけだ。それ以外会っていない。Cの事は家庭科室から見えたけど・・・Cには会っていない。Aにもだ。

俺は最初Eに会って、一緒に玄関に行ったんだ。外に出ようとして、廊下の窓とかも割ろうと思ったけど無理だった。玄関の戸のガラスも割れなかった。

そうしたら誰かが走ってくる音が聞こえてさ。怖くなってEと一緒にロッカーに隠れたんだよ。ロッカーの中から覗いたら、真っ黒い奴が居てさ・・・そして誰かの声がして、ソイツ、どこかに走っていったんだ。

その後、ロッカーから出て2階に行った。そこでBとDに会ったんだ。
BとDとEと一緒に居たときにまたあの真っ黒い奴が来て・・・。」

A「だからそれは俺だってば!大声が聞こえて、そこに向かったらお前らが居たんだよ。
なのにお前ら逃げるんだもん・・・」

D「ちょっと待って、その時、私たちが見たのはA君じゃなくて、黒い奴だったよ。
そして私、ソイツに捕まったんだもん・・・〇〇君はその後どこに行ったの?」

俺「俺は3階に逃げた。そして家庭科室まで逃げたんだ。そこで包丁を手に入れたんだ。
その後いろんな教室を見て回って・・・そうしたら足音が聞こえて・・・
怖くなって、6年3組の教室に入ったんだ。

そしたらそこにEが居たんだ。でもドアを開ける音が廊下から聞こえて、だんだんその音が近づいてきて・・・もしあの真っ黒い奴だったら、このままだと二人とも見つかるかもしれない。

そう思ってEに、調べてくるからここで待ってろって言って、教室を出たんだ。
教室を出たら近くの教室からあの黒い奴が出てきた。だから逃げた。
そして捕まったら終わりだと思って・・・ソイツに包丁を刺したんだ。

でもソイツ、死ななくて・・・もうダメだと思ったら、ソイツ・・・急に消えたんだ。」

C「それ俺だよ!俺あの黒い奴が消えた後、誰か居ないかって教室を調べて回ったんだよ。
6年1組の教室を出た時に、廊下に〇〇が居たんだよ。

声かけても返事しないし・・・
何か逃げるし・・・やっと追いついたと思ったらいきなり包丁で刺してくるし・・・
そしてお前に触ったら目が覚めたんだよ。」

何だ・・・皆言っている事が違う・・・どうなっている・・・
F「〇〇君はその後どうしたの?」

俺「俺はその後、Eの所に戻ったよ。アイツ、ロッカーに隠れてたんだ。
でもアイツ声かけても返事しないし・・・
なかなかロッカーが開かなくて、やっと開いたと思ったらアイツ、何か叫びだしてさ。
そしてEに触ったら俺も、目が覚めたんだ。」

D「ちょっと待って!さっきから皆、言ってること違くない?皆嘘を付いているの?」

A「嘘なんか付いてねーよ!俺は本当の事しか言ってねーよ!」

皆があーだこーだと喧嘩を始めた・・・
俺も嘘など言っていない。多分皆も嘘は言ってないだろう。

じゃあ何で皆、言っていることが違う。一つ確かな事は皆、学校に居て、夢鬼をやったという事だ。

ここで話を整理しよう。

まずAは最初にDに会い、次にBに会った。その後に黒い奴に襲われた。
そして黒い奴は消え、俺とBとDとEに会った。
その後、Dに触り、目が覚めた。

Bは最初にAとDに会った。だがAは黒い奴に襲われて、Aとははぐれた。
そして次に俺とEに会う。
4人で黒い奴に追われ、そしてDを盾にした。
そうしたらDは消え、黒い奴しか居なくなった。
そして黒い奴に捕まったら、黒い奴は消えた・・・
その後、Cに会い、Cに触って目が覚めた。

Cは最初に黒い奴に会った。黒い奴に追いかけられ捕まる。
そして黒い奴が消え、各教室を調べている時に俺に会う。
その後、俺に包丁を刺されたが無傷。そして俺に触り、目が覚めた。

Dは最初にAに会う。次にBに会い、Aが黒い奴に襲われ・・・Aとはぐれる。
その後俺とEに会い、黒い奴に追われた。
そしてBに盾にされ、黒い奴に捕まる。だが黒い奴は消え、Bだけが居た。
Bに触り目が覚める。

Eは最初に俺に会う、その後二人で玄関に行き、黒い奴に会う。
そしてBとDに会い、また黒い奴に会い、BとDが襲われている隙に、6年3組の教室に逃げ込んだ。
そして俺にまた会い、俺が黒い奴に襲われ、戻ってくるまでそこに居た。
その後は分からない、早く目が覚めてくれればいいが・・・

Fは最初にあの黒い奴に会った。そして捕まったと思ったら、黒い奴は消えた。
その後、Aに会い、Aに触った所で目が覚めた。

そして俺。最初にEに会い、その後玄関に行き、黒い奴をロッカーの中から見た。
その後BとDに会い、黒い奴に追われる。
家庭科室まで逃げ、包丁を手に入れ、各教室を見て回る。
6年3組の教室にEが居て、教室を出た所でまた黒い奴に出会う。
追いつかれ黒い奴に包丁を刺したが、死ななかった。そして捕まる。
すると黒い奴は消え、Eの所へ戻る。
そしてEに触り、目が覚めた・・・

以上だ。

待てよ・・・、考えろ、考えるんだ。

分かった事は、黒い奴に捕まると、黒い奴はその場から消える。
捕まった後に誰かに触ると目が覚める事。これは皆同じだ。

そして捕まった後は自分の声が人には聞こえないらしい・・・
また、誰かを見付け、近づいても逃げられる・・・

!!!!!!!

もしかしたら・・・黒い奴に捕まると、自分も黒い奴になってしまうのか・・・

よく考えればこれは鬼ごっこなのだ。鬼に触られればその人は鬼になる。
鬼ごっことはそういうもの。
鬼になると・・・黒い奴になってしまうのか。

という事は本人だけ、自分が黒い奴、鬼になった事を知らないで、追いかけていたのか・・・
話を聞く限りそう言うことだろう。黒い奴が鬼、それは間違いない。

そして、自分が鬼から鬼じゃなくなった時、目が覚める。
そう考えればつじつまが合う・・・

待てよ、でも鬼は最初からいるとDが言っていた。俺たちの他に鬼が居たはずだ。
最初の鬼が・・・
俺はもう一度皆の話を聞き、考え、整理した。

最初の鬼はFが会った黒い奴だった。
何故ならば誰もFの事は見ていないから。

そして、鬼になった順番はA、D、B、C、そして俺。
最後は・・・Eだった。

Eが最後の鬼になったのだ。そしてEはまだ眠っている・・・

もしかして・・・

俺はEの元へ行く。

「おい!E!起きろ!起きるんだ!」

ダメだ、いくら声をかけても、揺さぶっても起きる気配が無い・・・

皆、鬼になってから、誰かに触り、目が覚めている・・・

だがEはまだ目が覚めていない・・・

まさか・・・まだEは夢の中で、鬼ごっこをしているというのか・・・

捕まえる相手が誰も居ないのに・・・

その時、Eの枕下から、写真が少し、見えているに気が付く。

そして俺はその写真を手に取り、裏を見る・・・・

「ある!名前が書いてある!Eの名前が・・・」

Eの写真にはちゃんと、名前が書かれていた・・・

俺たちの写真からは消えているのに・・・

「〇〇君、どうしたの?何でそんなにEちゃんを起こそうとしているの?
そりゃ、先生も起きて欲しいって思っているけど・・・」

俺「いや・・・別に・・・ただ・・・ちょっと・・・」

先生が俺の行動を不思議そうに、見つめながら俺に話す。

先生「もう少しだけ寝させてあげましょう。初めてのお泊り会で興奮して、昨日なかなか寝付けなかったのかしら?それよりも〇〇君は早く朝ごはんを・・・」

!!!!!!

先生が急に俺の手を掴んだ。Eが枕の下に敷いていた写真を握っている手を・・・

先生はその写真を取り上げ、裏を見る。その瞬間、先生の顔色が変わった。
そして俺を廊下へと連れて行く。辺りに誰か居ないか確認し、俺に話しかける。

先生「この写真はEちゃんのなのね?そして〇〇君はこの写真が何なのかを知っているのね?どうなの!答えなさい!」

いつも温厚な先生が明らかに怒っている・・・
今までこんな顔の先生は見たことが無い・・・

俺「いや・・・その・・・」

先生「早く答えなさい!」

俺「はい!それはEのです!そして俺は・・・いや・・・俺達は写真が・・・何なのか知ってます。
でも先生!俺、こんな事になるなんて思っても・・・」

バチン!!

俺が言いかけた所に先生は、俺の頬を平手で殴った・・・
先生は泣いていた・・・そして俺を抱きしめる・・・
すると先生は一旦、皆が居る教室に戻った。

先生「少し皆は待っていて下さい!先生が戻ってくるまでちゃんとこの教室に居てください!」

そういい残し先生は俺の手を握り、校長室へと連れて行った。
教師に殴られるなんて・・・俺は何がなんだか分からず頭が真っ白になった。
ただただ先生の後を付いて行った・・・

先生「校長先生!この子、昨晩、夢鬼をやったみたいなんです!
この写真が証拠です。」
先生は、校長にそう話し、写真を見せる。俺はもう泣いていた・・・

校長も写真を手に取ると、顔色が変わった・・・

校長「まさか・・・あの夢鬼をこの子がやったのか・・・なんて事を・・・
あの事件以来、もう絶対こんな事は起きないと思っていたが・・・
君、昨日何をしたのか詳しく話すんだ!特に誰とやったかだ!
早く!」

校長も俺に怒鳴りつける・・・やはり先生達大人は、夢鬼について知っているらしい・・・
俺は精一杯昨日の出来事を説明した。

校長「もういい、十分分かった。
〇〇先生!(先生の名前)この子が言った、夢鬼を一緒にやったという生徒もここに連れてきて下さい。そして、その子達以外は家に帰してください。
そしてEという生徒もここに連れてきて下さい。」

先生「分かりました。他のクラスの先生にも伝え、他のクラスの生徒達も家に帰します。」

校長「決して他の生徒には、夢鬼について知られないように・・・」

先生「もちろんです!」

そういい残し、先生は勢いよく、校長室を出て行った。
そして校長は誰かに電話をかけていた・・・

何と言って他の生徒を家に帰したかは、俺には分からない。
ただ夢鬼の事は一切語らずに帰したのは確かだ。

バタン!

しばらくして、先生が校長室に入ってきた。背中にEをおんぶしながら・・・
その後に、A、B、C、D、Fも続いて入って来た。
彼らは何が何だか分からない様子だった。

B「おい!〇〇!何がどうなっているんだ?」

俺「・・・・・・・・」

俺は答えられなかった・・・もう頭の中は真っ白・・・
あるのは、もの凄い罪悪感だけだった・・・

先生はEを校長室にあるソファーの上に寝かせ、校長に向かって口を開いた。

先生「校長先生、この子達以外の生徒達は家に帰しました。
私は今から、この子達の親御さんに連絡します。」

校長「分かりました。親御さんにはあそこに来るように伝えてください。
その後、私と〇〇先生、教頭先生とで、この子達も連れて行きます。」

先生は教務室へ戻った。その後すぐに、他のクラスの先生、教頭が入ってきた。
皆顔色が悪い・・・その状況が俺達に、事の重大さを分からせるには十分だった。

校長「いいか、君たちはとんでもない事をしてしまったんだ。
そして君たちはまだ小学生だが、この事について知る義務がある。
だから〇〇先生が戻ってきた後、ある所に連れて行く。

私と、教頭先生、〇〇先生以外の先生方は、他の生徒の親御さんから電話が来るかもしれないので、学校に残って対応して下さい。

急に家に帰されたとなっては、何かあったと思うのが普通です。
その時は正直に夢鬼を行った生徒がいて、帰したと伝えてください。

そしてお子さんには絶対に夢鬼について言わないで下さいという事も。」

他のクラスの先生達「分かりました。」

そう言うと、他のクラスの先生達は教務室へ戻って行った。
しばらくし、〇〇先生が戻ってきた。

〇〇先生「この子達の親御さんに連絡が取れました。あそこに来てくれるそうです。」

校長「分かりました。では私たちも・・・」

校長はそう言い、俺達を自分達の車へと連れて行く。
校長の車にはAとBとCが乗り、教頭の車にはDとFが乗った。

そして〇〇先生の車には俺と、Eが乗った。
〇〇先生はEを後部座席に寝かせ、俺を助手席に乗せた・・・

そして俺達を乗せた車は、どこかへ向かう・・・

俺「先生・・・俺達・・・どうなるんですか?・・・Eは大丈夫なんですか。」

先生「・・・・・・分からないわ・・・今は何も言えない・・・
私がもっとしっかりしていれば・・・こんな事には・・・ごめんね、叩いたりして・・・」

先生は泣いていた・・・泣きながら車を走らす。
俺は先生の顔を見ることがもう出来なかった・・・

俺は後部座席で寝ているEを見る。本当にぐっすりと寝ている。
このまま・・・目が覚めなかったらどうしよう・・・
もしそうだったら、俺のせいだ・・・俺がEに触ったから・・・
そのせいでEは最後の鬼になったんだ・・・

まだあの暗い学校に一人でいるのだろうか・・・

しばらくし、車は止まった。止まった場所は俺の地域にある小さな寺だった。
ここには来たことがない・・・
なぜなら、親に絶対にここには近づくな、と言われていたからだ。
多分他の皆もそうだろう・・・子供は皆、ここに来ることを禁止されていたと思う。
先生「着いたわ。降りなさい。」

先生はEをおんぶし、俺と一緒に寺に向かう。俺とE以外の奴らも校長、教頭に連れられ、寺に向かった。

皆顔色が悪い・・・校長、教頭にある程度の事は教えられたらしい・・・

寺の近くに大きな岩があった。その岩の周りには誰かが入らないように、ロープで囲われていた・・・

校長「電話をした〇〇小学校(俺たちの小学校)で校長をやっている〇〇(校長の名前)です。
そして・・・この子達が夢鬼をやってしまった子達です・・・」

寺の前で待っていたのは、年を取った住職だった。この人が何か知っているのか・・・

住職「そうか・・・この子達が・・・
そして彼女が背負っている女の子が、犠牲になった子かい?」

先生「はい・・・この子が最後の鬼になったみたいです・・・
まだ小学生なのに・・・。」

住職「やはりそうか・・・まさかまた夢鬼をやる子供がいるとは・・・
立ち話もなんだ、こちらに入りなさい。」

そう言うと住職は俺達を寺の中へ案内した。
まずは落ち着きなさいと俺たちにお茶を出す。でもお茶なんか飲める心境じゃない・・・

皆もお茶など飲まずに、下を向き、黙っていた・・・

校長「私達はこの子達の親御さんを、寺の前で待っています。」

住職「そうじゃな。ではわしは、これからこの子達に真相を話す。そして話が終わるまでこの部屋には入って来ないように。もちろん、親御さんもじゃ。
眠っている子は親御さんに返そう・・・その方がいい・・・」

校長「分かりました。」

先生「これがこの子が持っていた写真です・・・」

そう言い、先生は住職に写真を渡す。
そして、校長達はEを連れて出て行った。

住職「さて・・・」

そう住職は言うと、俺たちの前に座り、話し始める。

住職「まずどうやって夢鬼について知った?誰から聞いた?・・・黙っていては何も分からん。
怒らないから話すのじゃ。」

俺達はDの方を見る。Dは泣きそうになりながら話始めた・・・

D「私が皆に夢鬼をやろうと言ったの。夢鬼の事はこの紙に書かれていたの・・・
図書館の本に挟まっていて、それを私が見つけたの・・・あとこの写真も・・・」

そうDは住職に言い、紙と写真を渡す・・・

住職「何故これがここにある!写真の名前も消えている・・・まさか・・・」

住職は電話をどこかへかけ始めた。

住職「・・・ダメだ・・・繋がらん・・・ならば・・・」

住職はまたどこかへ電話をかける。

住職「・・・わしじゃ!お前たちの後に夢鬼をやった子達がいる。
そしてあの子の名前が書いてある写真から、あの子の名前が消えた!
そうじゃ、消えたんじゃ!だからあの子はもう目が覚めているかもしれない。

お前に電話をかける前に、あの子の家に電話をかけたが誰も居ないらしく、電話に誰も出なかった。

だからお前はまずあの子のいる病院へ行き、目が覚めているか確認しろ!
その後にここに来い!いいな!」

ガチャ!

住職は一呼吸し、俺たちに話し始める。

住職「今電話をしたのはお前達の前に夢鬼をやった者じゃ。
そして当時最後の鬼になった者の所に、向かわせた。

じきにここに来るじゃろう・・・だがその前にお前達に話さなければならない事がある。
夢鬼についてじゃ。」

住職はついに俺達に夢鬼の真相を話し始める。
住職「まず夢鬼と言うのは通称の名じゃ。本当の名は[鬼封じ]と言う。
昔、この地域には鬼が居てな・・・その鬼は子鬼を連れて村に行き、常に悪さをしておったらしい。

その鬼は人間等では、相手にならなかった。抵抗はしていたがな・・・そして村はその鬼の好き勝手にされていた・・・

その時、当時この寺の住職だった者が[鬼封じ]を作ったんじゃ。
ある儀式をしてな・・・その儀式についてはわしにも分からない。
その[鬼封じ]というものが、お前達がやった夢鬼じゃ。

住職は鬼に提案した。これをやり、私に勝てばもう抵抗はしない。
お前の言うことは何でも聞く。と言い鬼に提案したのじゃ。

鬼は人間など完全になめていたから、どうせ俺には勝てないと言い、その提案に応じた。
鬼はその時は、面白半分でやったのだろう。

そして[鬼封じ]が行われたのじゃ。でもこれは住職の作戦だった。
[鬼封じ]を行ったのは住職と鬼だけ。そして住職は[鬼封じ]を行った後の事を寺の者に伝えていた。

すぐに私を殺せと・・・そうすれば鬼は目を覚ます事はできない。触れられる者は居なくなるからじゃ・・・

そして[鬼封じ]が行われたあとすぐに、住職を殺し、村の者は鬼の所へ向かい、子鬼達を殺した。子鬼は人間でも殺せたからじゃ。そして寝ている鬼をこの寺に運び、頑丈な箱に入れて閉じ込め、穴を掘り、埋めてその上に岩を置いた。

その岩と言うのが寺の近くにあるあの岩じゃ。
これで何もかも終わったはずじゃった・・・じゃが終わらなかった。

鬼の名前がいつまで経っても消えなかったんじゃ。
名前は目が覚めるか、その者が寝ている時に死ぬかしたら消える。
だが名前は消えていない。という事は鬼はまだ生きている。そう思うだけで、恐怖だったらしい。

村の者達は怖くなり、鬼がまだ本当に生きているのか確かめようとしたのじゃ。
そしてそれを確かめるため、また[鬼封じ]が行われた。行ったのは当時村長だった者じゃ。

掘り返し、確かめる事は、怖くて出来なかったらしい・・・

村長は鬼がいるかすぐに分かるよう、自分の家の場所が書いてある地図の裏に名前を書き、行った。

家の中だったらすぐに鬼に出会えるからじゃ・・・その後、鬼の名前が消えたのじゃ・・・」

!!!!!!

俺「鬼は・・・目を覚ましたという事ですか!!」

住職「多分そうじゃろう・・・でも鬼は出てこなかった。多分、眠り過ぎてもう力がなかったのじゃろう・・・
今となっては死んだか、生きているかは分からない。

じゃが、あの岩の下に鬼がいると言う事は事実じゃ。
もう何百年も出てこないのだから死んでいるだろうがな・・・。
そしてまだ続きがある。その当時は今程の医療設備などない。もちろん点滴などない。

だからこのまま村長は眠り続ければいずれ死んでしまう。だから村人達はある行動を取った。

それは眠っていて死んでしまう前に、誰かが[鬼封じ]を行い、寝ている者の目を覚ますという事じゃ。
村の者達は協力して、その行動を続けたんじゃ。

そして村長が目を覚まし、皆に言った・・・
居たのは鬼なんかじゃない・・・真っ黒い奴だとな・・・

なぜ鬼がその様な姿になったかは分からん。
だが村長の次に行った者、それ以降に行った者も黒い奴が居たと言っている。
だからその鬼だけじゃなく、[鬼封じ]を行なった者も黒い奴になってしまう事がわかったんじゃ・・・

でも最初はあの鬼じゃったから、皆、黒い奴になることを鬼になると言っていた。

そして医療が進歩し、寝ていても死ななくなるまでの時間が長くなってからは、何年かおきに行っていたらしい・・・
わしがまだ若い頃も行っていたよ・・・
その頃からはもう、夢鬼と呼ばれておった。そして写真などでも出来るという事も知られていた。」

俺達「・・・・・・・」

俺達がやった夢鬼とはこんな昔からあり、それが鬼を封じる為のものだったのか・・・

そして話に出てきた鬼は、今もあの岩の下にいる。
親達が寺には近づくなと言って当たり前だ。

住職「じゃがこのままでは解決などしない・・・誰かが犠牲にならなけばいけない。

その為には誰か[鬼封じ]をやり、そのまま死ぬしかなかったのじゃ・・・
[鬼封じ]を行い、誰にも鬼にさせることなく死ぬ、それが[鬼封じ]を終わらせる方法じゃった・・・

その後、誰を犠牲にするか会議が行われた・・・わしもその会議に参加したんじゃ。

そして犠牲者が決まった。それはわしの妻じゃった・・・

妻はその時42歳、わしは45歳じゃった。妻は自分から犠牲になると言い出した。

昔から正義感の強い人で、これ以上若い子達にやらせてはいけないと言って志願したんじゃ。

わしはもちろん反対した。でも妻は譲らなかった・・・妻がやるならわしがやる。
そう思ったがそれは無理だった・・・

[鬼封じ]にはルールがあっての、一度行った人間、そして[鬼封じ]を行った人間と血の繋がりが強い者は、もう出来ないのじゃよ・・・
何故このようなルールがあるかと言うと、鬼が目覚めないようにこのルールはある・・・
子鬼がもし[鬼封じ]を行ってしまっては、鬼は目覚めてしまう・・・

だから[鬼封じ]を作った住職はこの様なルールを作ったのじゃ。殺し損ねた時の為にな。

一度行った者がもう出来ないのは、住職の覚悟そのものだったのだろう。
一度失敗すればもう鬼は[鬼封じ]をやってはくれんからのう・・・

血の繋がりは2世代まで。つまりお前さんらのおばあちゃん、おじいちゃん、そして孫までじゃ。それは[鬼封じ]を続けている過程で分かった事じゃ。

わしの祖父が[鬼封じ]をやっておった・・・祖母も、そして母もな・・・

祖母、母、そして妻は別の地域出身だったからの。血の繋がりはなく、[鬼封じ]が行えたのじゃ・・・

わし達の先祖は[鬼封じ]を作った住職じゃ。だから優先的に[鬼封じ]を行う事になっていたんじゃ・・・
だから妻が志願したのかもしれない・・・

そしてもう一つが時間じゃ。
時間は進まない・・・
目が覚めるまで暗いままじゃ・・・
それは鬼に恐怖を与える為のものだと言われている。」
ここで俺のやろうとしていた事が、出来ないと知った。
俺がEを最後の鬼にしてしまった・・・
だからもう一度夢鬼をやり、俺がEの代わりに最後の鬼になろう。そう思っていた。

でももう出来ないんだ・・・俺達は・・・Eを救う事が・・・

そしてやはり時間は進まないんだ・・・じゃあEは今もあの暗い学校に一人で・・・
ここで黙っていたAが口を開く。

A「何で!何でおじいさんの時まで夢鬼が続いたの!
昔の人が犠牲になっていればよかったじゃないか!
何で今まで誰も犠牲になろうとしなかったんだよ!
もっと前に犠牲になっていれば、俺達はこんな事にはならなかったじゃないか!」

Aは泣きながら住職に怒鳴りつけた・・・

住職「それを一番思っているのはわしじゃ!わしじゃってそう思っているわ!
じゃが事実・・・それまで[鬼封じ]は続けられてたんじゃ・・・」

そう言っている住職の目からは涙が出ていた・・・

住職「そして妻が最後の犠牲者になった。最後にわしに「私の分も生きてね」と言ってな。

わしらには子供がいなかったからの・・・
わしは妻が死ぬまで一緒にいようと、毎日病院に通った・・・
毎日、毎日な・・・

ずっと寝ている妻に話しかけながら、面会時間まで毎日いた。
もう二度と[鬼封じ]はやってはならないと、皆が固く、口を閉ざした。

でもある日、事件が起こった・・・妻が目を覚ましてしまったのじゃよ・・・
その時妻は72歳じゃった・・・

何者かがまた[鬼封じ]を行ったらしい・・・それが先ほど電話をかけた者じゃ。
その者達はまだその時中学生での・・・噂で[鬼封じ]の事を知ったらしい。

噂程度ではまだあったからの・・・
そしてこの寺に[鬼封じ]の真相が書かれている書物がある事も噂で聞いていたらしい・・・
その書物には代々、[鬼封じ]を行った者の名前、そしてその記録が書かれていたんじゃ・・・
そしてルールと方法もな・・・

その者達はわしが病院に行っている間に、寺に忍び込み、書物を読み、そして肝試し感覚で[鬼封じ]を行ったらしい・・・

書物は代々、寺の仏像の前に飾られていたんじゃ・・・
その事もその者達は知っていたらしい。

そしてまた犠牲者が出た・・・
それがこの写真を持っていた者じゃよ・・・」

住職はDが図書館で見つけた写真を指差した・・・

「それからはひどかった・・・
妻は長年眠っていたせいで口が聞けんようになっていての・・・

そして3年後には他界したんじゃ・・・目覚めてから一言も妻とは話せなかった・・・

皆からは早く殺していればよかったんだなどと言われ・・・
しまいには、寺には近づくななどと言われ・・・
お前が書物を処分していればよかったんだなどとも・・・
全てわしのせいにされたわ・・・

人間とは本当に酷い生き物じゃよ・・・他人の事など一切気にせず暴言を吐く・・・

自分だけよければいい・・・
昔の者たちもそうだったのかの・・・
妻は本当にいい妻じゃった・・・
本当に愛していたんじゃ・・・
せめて死ぬまで見届けていたかった・・・
なのに早く殺せばよかったなどと・・・本当に酷い奴らじゃ・・・」

俺達「・・・・・・・」

住職は泣いていた。
俺たちも泣いていた・・・

本当の犠牲者はこの住職なのかもしれない・・・
もし俺が住職の立場だったら・・・と思うと胸が痛い・・・

本当に酷い話だ・・・小学生の俺でも住職がどんなに辛かったかよく分かる・・・

俺なら辛くて自殺しているかもしれない・・・
でも住職は生きている・・・

多分それは住職の妻が最後に住職に向けて言った、「私の分も生きてね」その言葉だけで生きているのだろう・・・
そんな気がした・・・
住職「すまんのう・・・年を取ると涙もろくての・・・すまん・・・

わしはこの写真を持っていた者が犠牲になった後、すぐに書物を処分した。

そして皆、本当に[鬼封じ]を口に出すことを止めたのじゃ・・・

中学生が犠牲になった・・・
それだけで理由としては十分じゃった・・・
そしてこの者が本当に最後の犠牲者になると決めた・・・

皆、もう[鬼封じ]は誰も行わない。この者が死んで終わる・・・
そう皆で決めたのじゃ・・・

それからは一切この寺には誰も近づかず、そして誰も本当に[鬼封じ]について語らなくなったのじゃ・・・

そしてお前達子供がもしも[鬼封じ]について知ってしまったら、好奇心でやってしまうかもしれない・・・

その為、皆、子供達には小さい頃から夢鬼として恐怖を与え、夢鬼とは怖いもの、口にしてはならないものと教えたのじゃ・・・

でもお前達はやってしまった・・・
それも意味がなかった事じゃのう・・・」

俺達は終わるはずだった夢鬼を行い、また犠牲者を出してしまった・・・
本当にとんでもないことをしてしまったんだ・・・

そしてEは最後の犠牲者になってしまうんだ・・・

誰ももう夢鬼はやらないだろう・・・
Eの親には出来ない・・・血の繋がりが強いから・・・

そして俺達にも出来ない・・・
一度やってしまっているから・・・

そして皆、早く夢鬼を終わらせたいと強く願っている・・・

だから誰ももうやらない・・・
俺達のせいでもっと規制がかかるだろう・・・

俺達が誰かにやってと言っても、もう誰もやらないだろう・・・

誰かがまたやったとしてもまた同じ事の繰り返し・・・

皆、死ぬまであの暗い中、一人という悪夢を見るのだ・・・

Eを助けようとする人がいるかもしれない・・・

校長や、先生など・・・
でも止められるだろう・・・
もしかしたらもう夢鬼の経験者、あるいは経験者と強い血の繋がりがあるかもしれない・・・

それに、自ら夢鬼をすると言うことは、自殺をする様なものだ・・・黙っている訳がない・・・

これ以上、犠牲者を出さない、それが一番優先されているから・・・

夢鬼をやってしまった者が悪い、そうなってしまう。

そしてその時の最後の鬼の人が犠牲者になる。その責任を負う。
そう決められているのだろう・・・

だから俺達の前に夢鬼を知った人達の、最後の鬼の人が、この写真の持ち主だったのだろう・・・

その人からEになった・・・

ただそれだけの事なのかもしれない・・・

でも一つ疑問が残る・・・

そう、あのDが見つけたという紙と写真だ!

誰がそんな事をした!あれがなければEは夢鬼をやることはなかったんだ!

その時、誰かが部屋に入ってきた・・・

「住職!アイツが目を覚ましていました!・・・この子達が夢鬼を?」

そう言い、勢いよく男が入ってきた。
歳は20代半ばくらいだろうか・・・

住職「そうか・・・やはり目が覚めたか・・・そうじゃ、この子達が昨晩夢鬼を行った子達じゃ。
・・・
そしてお前達、この者がお前達の前に夢鬼を行った者じゃ・・・」

!!!!!!

この人が俺たちの前に夢鬼をやった人なのか!

この人、いや・・・コイツが居なければEは・・・

俺はこの人に飛びかかろうとする・・・

住職「やめろ!そんな事をしても意味がない!
こやつもお前たちと同じ気持ちなんじゃ!
今までずっと思い詰めて生きてきたんじゃ!それくらい分かれ!
それにお前達も悪いんじゃ!」

俺「・・・・・・・・」

確かにそうだ・・・俺達が悪い。
この人を責めても意味がない・・・

男「・・・・本当にすまない・・・
俺達のせいで君達は・・・でも何で君達は夢鬼のことを知っているんだ?
俺達の時でもう終わったと思っていたのに・・・

住職「これのせいじゃよ・・・
これを見てこの子達は夢鬼について知ったらしい・・・」

住職はその男にDが手に入れた紙と写真を見せる・・・

男「なぜこれがこの子達の所に・・・住職まさか・・・」

住職「ああ、多分な・・・それを確認する為に、お前が来たらあの娘(Eの前の犠牲者)の所へ行くつもりじゃ。
お前達も一緒にくるのじゃ!」

そう言われ、俺達はこの部屋を出た・・・

「〇〇!」

俺達は寺を出る。寺の前で待っていたのは、俺達の両親と先生達だった。

母は俺を見て、名前を叫び、抱きついた。
そして俺を思い切り叩く・・・母の目には涙が滲んでいた・・・

母「本当にあなたって子は!・・・自分が何をしたか分かっているの!
あれ程夢鬼とは怖いものと教えてきたのに・・・」

俺「ごめんなさい・・・ごめんなさいお母さん・・・でも俺・・・俺・・・
こんな事になるなんて思ってもいなかったんだ・・・」

そう、母に言い、俺は泣き喚いた・・・本当に知らなかったんだ・・・

そして本当に怖かったんだ・・・
久しぶりに母の顔を見たような気がした・・・

母の後ろには父が立っていた。父は俺から目を反らし、上を見ていた・・・
多分、俺に涙を見せたくなかったのだろう・・・

スーツ姿の父。仕事など後回しで来てくれたのだろう・・・

俺はこの時だけは、夢鬼の事について忘れていたかもしれない。
母と父を見たら、ものすごく安心したのをよく覚えている。

でもそんな事などすぐに消えた・・・

Eが居ない・・・

俺は周りを見渡す。居るのはE以外の親達。そして俺達と先生達、住職、男だけだった。

Eの親、Eはどこにも居なかった・・・

他の皆も、親達に抱きつかれ、泣いていた。
多分皆も俺と同じ気持ちだったのかもしれない。

俺「Eは?・・・Eはどこに行ったの?」

母「Eちゃんは・・・Eちゃんのお母さんが家に連れて帰ったよ・・・
とても・・・見てられなかった・・・Eちゃんは・・・もう起きることが出来ないの・・・

もうEちゃんは、お母さんの顔も・・・見ることが出来ないのよ・・・
そう思うとお母さん・・・とても悲しくて・・・」

母はそう言い、俺を強く抱きしめた。
その後、すぐに父も俺を抱きしめた。

しばらく何も言わず、3人で抱き合っていた・・・
そして俺は、何もかも忘れ、泣き喚いた・・・

だがその時、住職が口を開く。

住職「親御さん、気持ちは分かるが、もうその辺にしてもらえるかの。
この子達をわしは、連れて行かなければならん場所がある。

その後、こいつとわしで無事に家に帰す。だからそれまで、家で待っていてくれんかの・・・」

そう住職は言い、俺達の前に夢鬼をやった男を指差しながら話した。

父「住職、その人は誰ですか?私達がこの子達を待っている時、急いで寺に入っていきましたが・・・」

住職「こやつは・・・この子達の前に夢鬼を行った者じゃよ・・・
あの事件の当事者じゃ・・・」

!!!!!!!
それを聞いた瞬間、父の顔が険しくなり、その男に掴みかかった・・・

父「お前が・・・お前があの時の奴か!なんて事をしてくれたんだ!
お前が居なければ・・・この子達・・・Eちゃんはこんな事にはならなかったんだ・・・
お前のせいでこの子達は・・・」

先生「やめてください!たしかにこの人が悪いです。でも・・・お子さん達も悪いんです・・・
そして・・・この子達をちゃんと見てなかった私も・・・悪いんです!」

そう先生は父に言い、父をその男から離した。父は一言、「そんな事は分かっています。私も・・・悪いんだ・・・」
とポツリと言い、その場に崩れ落ちた・・・

あんな取り乱した父を見るのは初めてだった・・・

住職「親御さん・・・気持ちは凄く分かる・・・だが、こいつも今までずっと辛い思いをし、生きてきたんだ。
ずっと後悔して、反省して生きてきたんじゃ・・・
それだけは分かってはくれんかの・・・」

父「でも・・・でも住職・・・私には・・・この男を許すことは出来ません・・・」

男「・・・分かっています・・・本当にすみませんでした・・・
お子さん達をこんな事に巻き込んだのは私達に責任があります・・・

許してくれなんて思っていません・・・私達は取り返しのつかない事をしたんです。
あなたのお子さんのせいでも、あなたのせいでもありません・・・

全て私達のせいです・・・本当に・・・すみませんでした・・・」

そう男は言うと、俺達の前で深々と土下座した・・・

俺もこいつを許すことなんて出来ない・・・でも俺達も悪いんだ・・・

こいつを責める資格なんて俺にはない・・・
ただ俺は・・・そいつを見ていることしか出来なかった・・・

父「あたりまえだ!こんな事で許されると思うな!
・・・住職、私達はこの子達の帰りを家で待っています。
無事にこの子達を家に帰す事を約束してください。

そしてお前、俺はお前を絶対に許さない!もう二度と俺達の前に顔をだすな!
分かったな!」

男「分かっています・・・本当にすみませんでした・・・」

住職「無事に帰すことを約束する。
だからこの子達が家に帰った時、暖かく迎えてくれんかの・・・」

父「分かりました・・・〇〇、お父さんと、お母さんは家で待っているから・・・」

そう父達は言い、家に帰って行った・・・他の親達も・・・そして先生達も・・・

親達が帰ると住職が俺達を集め、話し始めた。

住職「お前達をこれから病院に連れて行く。そこに居るのはお前達の前に、夢鬼を行った犠牲者じゃ。少し辛い思いをするかもしれん。
だがわしには確かめなければならん事がある。そしてお前達もそれを知る義務がある」

そう住職は俺達に言い、俺達を男(以降Gとする)の車へ連れて行き、俺達を車へ乗せ、病院へ向かった。

車には運転席にG、助手席に住職、俺達6人は後部座席に乗った。
Gの車はワゴン車だった為、俺達全員乗ることが出来た。

これから俺達の前の犠牲者に会いに行く。
そう思うだけで怖かった・・・
なぜ会いに行くのか・・・その時はまだ分からなかった・・・

車は寺を出て、病院に向かった・・・

G「君達、これから話すことは、俺達が夢鬼をやってしまった時の話だ。
この事は、君達には知っておいて欲しいんだ・・・」

そうGは言うと、運転しながら俺達に話し始めた。

G「俺達が夢鬼をやったのは中学校3年生の時。
その頃はまだ夢鬼の噂などがあった。
そして夢鬼の真相が書かれた書物が、あの寺にある事も、噂で耳にしたんだ。

俺達はまだ中学生だ。中学高生活の最後の思い出として、皆で夢鬼をやることになったんだ。

やろうとしたのは俺を含めて10人、まず始めに俺と、もう一人で寺に忍び込み、書物を読み、やり方などをメモしたよ。

誰かが寺に帰ってくるかもしれない、そう思い、夢鬼のやり方、そしてすでに鬼がいて、そいつに触られると鬼になるという事しか読めなかった。

それを皆に見せ、皆にもそれをメモさせた。
夢鬼について話したら、一人がこんな事を言い出したんだ。

「これ、鬼ごっこみたいだよね」って・・・
今まで夢鬼を行ったのは大勢ではなく、一人づつだ・・・
でも俺達は10人でやろうとしている。

最初の鬼につかまるとそいつが次の鬼になる・・・
だから鬼ごっこ。そう思ったんだ・・・
俺達はただの肝試し感覚だった。だから、夢鬼を行い、最初に鬼になった奴は罰ゲームをする。

そう決めた。これは怖い鬼ごっこなんだと言ってな。

そして俺達は、俺達の中学校を夢鬼を行う場所にしたんだ。

そして、写真を撮り、皆に配った。
夢鬼をやったのは寺に侵入してから3日後。

各自、その日の夜に、夢鬼を決行したよ。

そして、本当に夢鬼が出来たんだ。最初は皆興奮していたよ。

皆同じ夢を見れたんだ。
でも出来なかった奴もいた。
それは後から住職の話を聞いて分かった事だが、そいつは経験者と強い血の繋がりがあったんだ。だから出来なかったらしい。

居たのは俺を含め9人。そして夢鬼が始まった。

でも鬼が全然姿を現さなかったんだ。俺達は怖いと言うよりも、鬼を早く見たい。

そう思い、鬼を探したんだ。鬼ごっこのはずなのにな・・・

そしてしばらくし、鬼を見つけた・・・
君達も見たあの黒い奴だったよ・・・
でも鬼は俺達を追うどころか、逃げていったんだ。
いくら追いかけても、鬼は逃げてしまった・・・」

俺達「・・・・・・」

その時住職の顔をふと見ると、住職は遠くの景色をただ眺めていた・・・

でも目には涙を浮かべていた・・・

G「しばらくし、やっと鬼に追いついた。でも鬼は一向に俺達を捕まえようとはしなかったよ。

そして一人が無理やり鬼に自分を触れさせたんだ。
このままじゃ、面白くないと言って。

そいつは鬼に触れられたあと、すぐにあの黒い奴になった・・・

自分では黒い奴になった事は分かってはない様だったが・・・

そうしたら、最初の鬼が消えた・・・俺達は怖くなり、逃げたよ・・・

鬼に触れられたら、鬼になるという事は知っていたが、まさか黒い奴になってしまうなんて、思ってもみなかったからな・・・

そしてまた一人、また一人と、鬼になり、今、会いにいく奴が最後の鬼になった。

俺は4番目に鬼になった・・・目を覚ましたのは、夢鬼をやってから2日後だ・・・

2日も経っていたなんて思わなかった・・・ずっと辺りは暗かったから・・・
時間の感覚がなかったんだ。

そして目を覚ました俺達は、親達に連れられ、さっきの寺に連れて行かれた・・・

そこで君達と同じように、夢鬼の真相を住職から聞かされたよ・・・
その後、最初の鬼である、住職の奥さんの所に連れて行かされた・・・

住職の奥さんは30年近くも眠っていたんだ・・・
体は痩せこけ、見るに耐えなかった・・・

俺達はそこで、この人の今までの努力を、全て水の泡にしてしまったんだと理解したよ・・・

終わるはずだったこの悲劇を、また起こしてしまったんだと・・・

だから俺達は・・・俺達は・・・もう償っても・・・償っても・・・償いきれないんだ・・・」

そうGは言い終えると・・・泣いていた。

住職も・・・泣いていた・・・そして・・・住職が口を開く・・・

住職「妻は話すことは出来なかったが、この者達が病院に来た時、涙を流していたよ・・・

わしには、自分がこの子達を巻き込んでしまった・・・
また若い子達を犠牲にしてしまった・・・

本当に悔しくて・・・悲しい・・・

とわしに謝っているように見えた・・・
そんな妻を見ている事が、わしには・・・本当に辛かったのじゃ・・・」

住職の奥さんはこの夢鬼を終わらせる為、自ら最後の犠牲者になることを選んだ・・・

でも・・・それは出来なかった・・・

また・・・犠牲者を出してしまったんだ・・・
住職の奥さんは最後まで、終わらせようとしたのだろう・・・

たとえ、数人の若い命を、巻き込む事になったとしても・・・

だからずっと・・・逃げていたのだろう・・・
でも・・・鬼にしてしまった・・・
そして・・・犠牲者は一人になった・・・

住職の奥さんは逃げている間、どんな気持ちだったのだろう・・・

終わるはずだった、夢鬼を、若い者達がやってしまい、自分の元に現れた・・・

終わらせる為には数人の若い者も犠牲にしなければならない・・・
それしか方法がない・・・

さぞ、無念だっただろう・・・

そして結果、犠牲者は一人になった。

今思うと・・・犠牲者が一人だけになった事は、少なからず、よかったのかもしれない・・・

そして俺達が・・・Eを・・・また一人・・・犠牲者にしてしまった・・・

その事だけは・・・何も変わらない・・・

俺達はそれから病院に着くまで、無言だった。

そして、病院に着き、俺達の前の犠牲者の所へ向かった・・・

一つの、病室の前に立つ・・・

そこの病室に書かれていた名前・・・
それはDが図書館で手に入れた写真の裏に、書かれていた名前だった。

この扉の向こうに、俺達の最初の鬼がいる・・・

そこには2人の女性と、医者らしき人が居た。
一人の女性(以降Hとする)は、見るからに痩せこけていて・・・ベットで寝ていた。

窓から遠くの景色を見ている様だ・・

服装がその病院の患者が着る服を着ていた為、この人が俺達の前の犠牲者だと分かった。

いや・・・見るからに・・・この人だって分かったんだ・・・

そしてもう一人の女性(意向Iとする)は、歳からして、この人の母親なのだろうと思った。

それは当たっていた。そして、住職に向かって、Iが口を開いた。

I「住職さん!娘が目を覚ましたんですよ!だからあれ程、娘はいつか目を覚ますって言ったじゃないですか!

・・・そしてあんた(Gの事)ここにはもう来るなって言ったじゃない。
さっきも急に来て・・・
あんた達のせいでこの子はこんな風になってしまったのよ!」

住職、G「・・・・・」

医者「長年眠っていたせいで、今は話す事も、体を動かす事も出来ません・・・
急に目を覚まし、我々も驚いているのです・・・」

住職「そうじゃろうな・・・すまんが少しばかり、席を外してはくれんかの・・・
大事な話があるんじゃ・・・聞かれたくはないのじゃ・・・」

医者「分かりました。」

医者はそう言うと、病室から出て行った。

I「そういえば住職さん、この子供達は?」

住職「・・・この子達がまた、夢鬼をやったのじゃよ。
そのせいで、その子が目を覚ましたんじゃ・・・」

そう住職はIに言い、俺達をIとGの前に出した。

I「そうですか・・・」

そして、Iは俺達の前に立ち、俺達一人一人の頭を撫でる。

「君達が、この子を救ってくれたのね。本当にありがとう。」

!!!!!!

ありがとうだと・・・
ありがとうだと・・・

何故お礼が言える・・・俺達は夢鬼をし、Eを犠牲者にしてしまったんだ。
お礼なんか言われる立場じゃないんだ!

でもこの人はありがとうと言った。
この子を救ってくれてと・・・

そしてこの子はいつか目を覚ますと言っていた・・・

まるで、前から目を覚ますことを知っていたかのように・・・

まさか・・・

住職「奥さん、あなたに聞きたい事がある。これの事についてじゃ・・・」

そう住職は言い、Dが図書館で手に入れた、写真と紙をIの目の前に出した。

住職「奥さん、この写真はこの子(H)のじゃ。
奥さんは、娘が最後に残した物だからだと言い、この写真を持っていったな・・・

でもこの写真はこの子達が手に入れ、そして今ここにある。

そしてこの紙。ここには夢鬼について書かれている。
どういうことじゃ!言うんじゃ!奥さん!」

I「・・・・・・」

Iはしばらく黙った後、Hの所に行き、Hの頭を撫でながら話始めた・・・・
I「私は・・・この子をどうしても目覚めさせたかった。

まだ中学生だったのに・・・これから死ぬまで目を覚まさないなんて・・・
思いたくなかった・・・
でももう誰もこの子を救ってはくれない・・・

誰も夢鬼をしてはくれない。私にも出来ない・・・

なら・・・誰かに夢鬼をやってもらうしかない・・・
そう思い、私は、この写真と紙を図書館の本に挟んだ。

この子の日記に、夢鬼について書かれていたものが、この紙よ。

夢鬼について知っている、大人たちはやってはくれない、だから子供が読むような本に・・・

でも上手くはいかなかった・・・
あまり人気のある本では、図書館の職員に見つかってしまうかもしれない・・・

だから、あまり、人気のない本、誰も読みそうにない本に挟んだわ。

これが、子供が手にする前に見つかったら、もうこんな事は出来ないから・・・

何度も何度も図書館に行き、確認したわ・・・
でも写真と紙はまだ本の間に挟まったまま・・・

だから私は何度も別の本に挟み、誰か手に入れるのを待った。

そして、ついに本が無くなっていたの。

もし、上手くいけば、この子が目を覚ます。
そう思ってたわ。
そしてこの子が目を覚ました。

住職さん、私は悪い事をしたのかもしれない。
でもこの子達がやったのが悪いのよ。

私は本に写真と、紙を挟んだだけだもの。
夢鬼をやってとは頼んでないわ。

この子達が自ら夢鬼をやったのよ・・・

おかげで、この子が目を覚ましたわ。

あなた達、本当にありがとうね・・・」

住職「あんた・・・自分が何をしたか分かっているのか!
あんたのせいで、こんな小さい子達が巻き込まれたのじゃぞ!」

I「そんなの関係ない!私はこの子を救いたかっただけ・・

それに、元はと言えば、あなたの奥さんのせいじゃない!

あなたがすぐに殺さなかったからじゃない!
そしてあんた(G)達のせいよ。
この子は何も悪くない。

だから、犠牲になるのは間違っている!
だから私がした事は当然のことよ!」

住職はしばらく黙り、悲しそうな顔をして、Iに口を開いた。

住職「・・・・・そうじゃのう・・・誰も・・・悪くないかもしれんの・・・

わしが・・・全て悪いのかもしれんの・・・
奥さん・・・もうここには二度と来んよ。」

I「はい、もう来ないで下さい!」

そう言い残し、俺達は病室を後にした・・・
この時の俺達は何が何だかわからず、ただ黙って住職に言われるがままに、病室を出るしかなかった・・・

俺達がした事は間違いなく、悪い事だ。
そのせいで、Eという大切な友達が犠牲になった。
それは間違いない事。

でも・・・でもありがとうと言われた・・・

こんなに悪い事をしたのに・・・感謝する人間がいる・・・

それが凄く・・・怖かったんだ・・・

Iにとって俺達がした行動は、いい事なのかもしれない・・・

でも・・・でも俺にはいい事をしたなんては絶対に思えない・・・

ただ俺達は・・・一人の犠牲者を救い、そしてまた犠牲者を出したんだ・・・

ただ・・・それだけの事なのかもしれない・・・

そして俺達はGの車で、家に帰された・・・
Gは送る途中に

「Hのお母さん(I)は去年、旦那さんを亡くしたんだ・・・
原因は分からないが、多分、自殺だと思う・・・

自分の子供が目を覚まさない・・・親にとってそれは本当に辛い事なのだろう・・・

それからだ・・・あの人は住職に「この子は目を覚ます」と言っていたのは・・・

俺達は、面会を断られていたから、住職に、Hの状況を聞くしかなかったんだ。

まさかIがこんな事をしているなんて思わなかった・・・
ただ、精神を、おかしくしてしまったものだと思っていた・・・

旦那さんも亡くなり、寝ている娘しか、居なくなった訳だから・・・

Hがこんな事になるまでは、本当にいい人だったんだ・・・

自分が一人になり、耐えられなくて、今回の事を起こしたのだろう・・・
そうさせたのは、俺達だ・・・君達は何も悪くない・・・

君達はこれからとても辛い思いをするだろう・・・
俺もそうだった・・・

でもどんなに辛くても絶対に逃げてはダメだ。
住職の様に、最後まで、背負い、生きるんだ・・・

俺達の中には、その辛さに耐えられず、自殺した奴も居たんだ・・・

だから辛くても、絶対に死ぬな!生きることが、唯一出来る、償いなんだ。

これは、住職が俺達に、かけてくれた言葉だ・・・

そして・・・本当にすまなかった・・・」

そう言っていた・・・
住職は最後まで、口を開くことはなかった・・・

Iの行動を予想できなかった自分を、悔やんでいるのかもしれない・・・

そして、また犠牲者を出してしまった事に・・・

自分の奥さんのせいにされた事に、傷付いていたのかもしれない・・・

そして、この時はまだ、この言葉の本当の意味など、分からなかった・・・

そして俺達は家に帰宅した。
俺の家では、玄関で、父と母が俺の事を待っていた・・・
そしてまた、抱きしめる・・・

家の中に入り、俺は先ほどの事を、全部話す・・・
すると母からは、意外な一言が返ってきた・・・

母「こんなことを言うのは、間違っていると思う・・・
でも・・・お母さんはね、あなたが犠牲にならなくて本当に良かったと思っているの・・・

Eちゃんには申し訳ないけど、〇〇の方が、大事なのよ・・・
そして、Eちゃんの前の犠牲者のお母さんの気持ち・・・
凄く分かる・・・

お母さんも・・・もしその人の立場だったら・・・
同じ事をしていたかもしれないわ・・・

〇〇、親と言うものはね・・・自分の事よりも、子供の事の方が大事なの・・・
〇〇も親になれば、その時分かるわ・・・」

そう俺に母は言い、泣いてまた、俺を抱きしめた・・・

そうなのだろうか・・・子供の為だったらどんな事をしてもいいのだろうか・・・

じゃあ、Eのお母さんも・・・この様な事をしてしまうのか・・・

結局終わらないじゃないか・・・
俺はその時は、そう思っていた・・・

それからは俺達にとって辛い日々が待っていた・・・
Eの事が頭から離れない・・・
毎晩あの夢を見てしまう・・・
Eが最後、俺に怯えて、震えているあの顔が頭から離れない・・・

その度に、後悔し、涙が出てくる・・・
もう取り返しの出来ない事をしてしまったと・・・毎日後悔する・・・

俺はこの事を、ずっと耐えながら、生きていくしかないのか・・・

そう思うと、とても怖かった・・・そして・・・辛かった・・・

学校も休みがちになり、先生はよく、家に様子を見に来てくれた。

「〇〇君、辛いのはよく分かる・・・でもね、一番辛いのはEちゃんなの・・・
だから〇〇君は、前を向かなくちゃダメなのよ・・・
Eちゃんの分も、生きなきゃダメなの・・・」

そう言い、俺を慰めてくれた・・・この時だけは、少し、心が癒された気がする・・・

俺は、辛くて、辛くて、何度もこの現実から逃げようとした。
でもその時、Gのあの言葉が頭を過ぎる・・・

生きることが唯一出来る償い・・・

そうだ、Eの方が俺達の何倍も辛いんだ・・・俺達なんてまだ良い方じゃないか・・・

Eはあの暗闇の中、ずっと一人なんだ・・・それに比べ、俺達は・・・
そう思い、俺は辛くても、生き続けた・・・

Eへの面会は、Eの誕生日だけ許されていた・・・
自分の子供をこんな事に巻き込んだ奴の顔など、出来れば見たくはないだろう・・・

でもEの母親は、誕生日だけは、会う事を、許してくれた・・・
誕生日くらい、大勢で、祝ってあげたいと言って・・・

Eは将来、教師になりたかったらしい・・・
自分も先生(俺達の担任)みたいな、優しい先生になるんだと・・・

でも・・・その夢も、俺達が壊してしまった・・・

この事は、一生、変わらないんだ・・・

Eは幼くして、父親を亡くしている。

それからずっと、母親と二人暮らしだった・・・
その母親を、一人ぼっちにさせてしまったのも俺達だ・・・
その事も、一生変わらない・・・

俺達はこの家族を不幸にしてしまった事も・・・

そして、俺は20歳を迎えた・・・

Eはまだ、目覚めていない・・・

そしてEが、もう少しで、20歳の誕生日を迎えようとしていた時だ・・・

事件が起こった・・・

2009年、11月15日、Eは死んだ・・・
正式には殺された・・・自分の母親に首を絞められて・・・
この事は、夢鬼の事がある為、公にはされなかった。

Eの母親は重い病気にかかっていたらしい・・・
自分の娘が一生目を覚まさない・・・それによるショックも原因だったのかもしれない・・・

Eの医療費は全部、母親が出していた。俺達の親も責任を感じ、毎月づつ、少しだが渡していたらしい。
母親は毎日働きながら、Eの看病をしていたらしい・・・
毎日、毎日、Eの手を握り、話しかけていたらしい・・・

皆早く夢鬼を終わらせたいと思っている・・・
だから地域の人達はEにお金など何も出さなかった。
Eが死ねば全て終わるのだから・・・

皆、Eが早く死ぬことを望んでいた・・・
前回の事もあったため、Eの母親は、注意深く、監視されていたらしい・・・

自分が死んだら誰もEの面倒を、見てくれる人が居なくなるかもしれない・・・
本当にEは一人ぼっちになってしまう・・・
誰からも見放され、死んでいくのかもしれない・・・

それなら私がEを殺す・・・そして私も死ぬ・・・
もうEをあの悪夢から開放してあげたい・・・
開放するにはEは死ぬしかない・・・

もう、この子に辛い思いをさせたくない・・・
E・・・お母さんを許してね・・・
そして・・・あの世では・・・笑って生きてね・・・

これはEの母親が残した遺書に書かれている内容だった・・・

そこまで、思いつめていたとは、誰も気がつかなかったらしい・・・

Eが夢鬼の被害者だと言うことは、ごく一部の人間にしか、伝えられていなかった。
それは、Eを殺させない為、そして、俺達を守るためだった・・・
それはHの時にも言える事だ。

Hはあれから、遠くに引越したらしい・・・その事は、Gから聞いた。
空気が綺麗な所で、Iと一緒に今は暮らしているらしい・・・

医者も、Hが夢鬼の被害者だとは知らなかったらしい。だからHが目を覚ました時、驚いていた・・・
Eの時は、さすがに教えられたみたいだが・・・

住職はあれから5年後に亡くなった・・・
俺達は毎年お盆には、住職の墓に墓参りに行っている。
住職は住職の奥さんと一緒の墓に入っている。
あの世で、やっとまた二人で、会話などをしているのだろうか・・・

そう思いながら、毎年、墓に手を合わせた・・・

俺達6人は、Eの葬式に出席した。
そこにはEと、Eの母親が隣同士で寝ていた・・・
Eの顔を見る・・・

本当に寝ているような顔だ・・・
とても死んでいる人間の顔には見えなかった・・・
もう、あの悪夢は見ていないのだろう・・・

それだけでも・・・幸せなのかもしれない・・・

Eの葬式では「やっと死んだか」「これで本当に終わったな」
など口にしている奴がいた・・・

よくそんな事が言える・・・

Eは・・・Eはずっと一人ぼっちで・・・

あの暗い学校に居たんだ・・・
ずっと辛かったんだ・・・

辛い訳がない・・・

まだ小学生だったんだ。
それから一度も目が覚めることなく・・・死んだんだ・・・
恋愛をすることも、夢を叶える事も・・・何も出来ないまま・・・

そうさせてしまったのは俺達だ・・・
そして、俺達が、Eを殺した様なものだ・・・

俺達は・・・Eの手を握り、謝る事しか出来なかった・・・

そして・・・夢鬼は・・・終わった・・・
俺達はEの葬式のあと、夜のファミレスに行き、皆で話し合った・・・

Eはこのまま忘れさられてしまう・・・

俺達が死ねば、Eの事はだれも覚えていない・・・
俺達が、一番若い、夢鬼を知っている人間だから・・・

こんな悲しい事を、忘れてほしくはない・・・
こんな悲しい事が、現実にあり、多くの人間を巻き込んだ・・・
その事を、少しの人にでも知ってもらいたい・・・

そう話し合い、俺は、このサイトに「夢鬼」の事を書くと決めたんだ。
俺が、Eを最後の鬼にしてしまったから・・・
俺が、書くと決めた・・・
そう言うと、皆も納得してくれた・・・

実際書くと決めたが、当時の事を思い出すと、やっぱり辛い・・・
辛くなり、なかなか、書けなかった・・・

でもなんとか間に合った。

今日はEの誕生日・・・20歳の誕生日の日なんだ・・・

どうしても俺は、今日までに、書き終えたかった・・・
深い理由などはないけど・・・どうしても、今日、書き終えたかったんだ・・・
そして、誕生日おめでとうと・・・言いたかった・・・

そして俺は今、大学に通い、教師を目剤している。
他の皆も、夢に向かってそれぞれ頑張っている。

それは、Eの夢だった、教師になるという理由もあるが、小学校の時の担任に俺は、凄い救われたから・・・
俺は、先生に、大切な事を、いっぱい学んだから・・・
だから俺も、教師になりたいと思ったんだ。

そして子供達にも教えたい・・・

少しの好奇心で、一生後悔する事がある

少しの好奇心が、人を一生不幸にする事がある

そして、自分が不幸だと思っても、絶対に自分より、不幸な人間がいるという事。

だから、どんなに辛くても、逃げてはいけないと言う事。

俺が学んだ事を、子供達にも、教えていきたい・・・

それが、俺に出来る、唯一の事だから・・・

もちろん、夢鬼の事は語らずに。

俺は、子供達に、生きると言う事の、難しさと、大切さを、教えていきたい。

Hの母親や、Eの母親がした事を正しい事だとは思っていない・・・
でも、二人とも、自分の子供の事を思ってした事・・・
そして、昔の村長達がした事も、他の人を思ってした事なんだ・・・

だから俺は、この人達を、責める事は出来ない。

そして、俺は一人の大切な友達を、犠牲にしてしまった事も・・・

絶対に忘れない・・・

「E、誕生日おめでとう」

最後まで読んでくれた方々、本当にありがとうございます。
当時を思い出して書いていましたが、途中、やはり、辛くて、書くのを止めようかと思った時もありました。
でも、Eの事を少しでも知ってもらいたい、そう思い、今まで書いてきました。

これは現実に実際に起こった事です・・・
実際にあの寺もあり、そこにはあの岩もあります。
だから、俺が経験した事を、そのまま書きました。

そして、謝らなければいけない事があります。

それは夢鬼をやる方法について・・・

気付いている人もいるかもしれない
それは夢鬼を行う為に唱える言葉。それが本当は違うんです。
正式には、「夢鬼さん」と唱えるのではなく、あの岩の下に居る、鬼の名前を唱える事。
だから、何故、夢鬼という言葉は、通称の名なのに、夢鬼と唱えれば夢鬼が出来るのかと、思った人もいるかもしれません。
何故、この様な事をしたかと言うと、この話を読んでいる人に、夢鬼をやらせない為・・・
好奇心で、やってしまう人もいるかもしれないと思ったからです。

今はもう鬼はいない・・・だからもし、夢鬼をやってしまったら、目覚める事が出来なくなるかもしれない・・・
もしかしたら、もう何も起こらないかもしれません。
それに、俺はただ、Eの事を、書きたかった・・・
Eの事を、少しでも知って欲しかっただけだから・・・
だから、話を分かりやすくする為に、嘘の方法を書きました・・・
そのことについても謝ります。

そして、俺は今でも、あの悪夢を見ます・・・
でも俺は、これからもずっと、一生懸命、生きていくつもりです。
それが俺に出来る、唯一の償いだから・・・

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