本当にやった復讐【自業自得 編】短編5話【2】
組長の側近
うちの実家は料理屋をやってる。
私が中学2年の時に、店に変な客が来るようになった。
そいつは頭に入れ墨をして、
いつも同じしまむらで買ったような英字Tを着てる太った男(二十代後半くらい)。
決まって料理の味に文句を付けて、お金を払わずタダで帰ろうとしてた。
当然毎回父が断るんだけど、その度に
「俺は○○組(近所に支部があるヤクザ)の組長の側近やぞ!殺したろか!」
って脅してた。
父は
「ハッタリだろ」
って構わず追い出してたけど、
手伝いで店に出てた私は怖くてたまらなかった。
その客(以下チンピラ)は出禁にしても勝手に店に入ってくるので、
ほとほとまいっていた。
そんなある日、外でそのチンピラにばったり会ってしまい、
そこでスカートをつかまれて胸をもまれそうになった。
思いっきり抵抗したら頭を叩かれて唾を顔に吐かれて逃げて行ったけど、
それまで我慢していたものが一気にあふれて泣き出してしまった。
商店街のはずれだったので近所のよく知ったおばちゃん・おじちゃんが
心配して集まって来てくれて、大泣きしながら
「○○組の組長の側近さんに乱暴されそうになった」
って話した。
おじちゃんおばちゃんは大激怒して父を呼びに行ってくれた。
父は
「ごめん。今度あの客来たらぶん殴ってでも追い出すから」
と約束してくれた。
それで一安心だったんだけど、
ある日中学から帰ろうとしたら校門前にチンピラが立っていた。
私を見ると思い切り腕をつかんできて、ニヤニヤ笑いながら
「自転車の荷台に座れ!」
と言ってきた。
また怖くて叫んでしまって、思い切り叫んで学校内に逃げ帰った。
泣きながら走っている私を部活中の友達達が見つけ、
「どうしたの!?」
と聞かれたので、
“○○組の組長の側近” に乱暴されかけたことと、
今までにあったことを全部話した。
友人達は自分の事のように激怒してくれて、その日は一緒に帰ってくれた。
その日以降、チンピラは店に来るどころか街で見かけることもなくなってほっとした。
それから数年たって大学生になった今年のGW。
久しぶりに地元に帰って
その時のクラスの皆で集まったんだけど、すごい話を聞いた。
私が泣きながら学校に駆け込んだ日、私が思っていた以上に話が広まったらしい。
皆知らなかったんだけど、
下級生に○○組のブロック長の愛人の子供がいたらしく、
その子がこの話を親にした。
お気づきかもしれないけどそのチンピラは組長の側近でもなんでもなく、
それどころか○○組とも関係が無かったらしい。
チンピラの行方は誰も知らない。
いろいろ衝撃だった。
<反応>
・海の底か樹海の奥か…
内臓は、困っている人の役に立っているかも
・嘘吐きは舌を抜かれるのね
恋をするのが怖い
結婚前の修羅場だけど。
取引先との食事会があって、そこで知り合ったひとつ年上の男性と意気投合。
食事会の後で知ったが、取引先の部長さんと私の上司が個人的にも仲が良く、
「お互いに決まった人がいないなら似合いじゃないか」
とふたりがこっそり画策した見合いだったらしい。
正式な見合いじゃなかったし、たまに
「その後どう?」「順調?」
とか聞かれる程度だったが、互いに上司が絡んでいるだけに、その年の暮れには
「そろそろキチンとしようか」
って話になった。
年が明けたら3月一杯までは忙しいし、
「年度末決算が終わったら」
ってことになっていた。
その話をした同じ日に、彼を親友A子に紹介した。
前からA子から「紹介しろ」って煩く言われてて、
たまたまその日にお互いの都合が合い、3人で食事した。
A子は彼をかなり高評価してくれて私も嬉しかった。
が、翌年に入って繁忙期を終えかけた頃、彼の様子に今までと違う何かを感じた。
何がどう・・・って上手く言えないけど、強いて言うなら女の勘としか。
その違和感の原因は割とあっさり判明。
私の姉がA子と彼が手を繋いで歩いているところを目撃してた。
A子に直球で聞いたらあっさり認めた。
「彼とはもう他人じゃないから」
と漫画みたいな臭いセリフが飛び出した。
紹介した時に一目惚れだったんだって。
「声を掛けてみて乗って来なかったら諦める、乗ってきたら全力で奪いに行く」
と決めて会社帰りを待ち伏せしたそうだ。
奪われたことより、その行動力への驚きの方が大きかった。
A子、性格は明るいけど男性に関しては奥手で、
「これまで男性と1対1で付き合ったことがない」と聞いていた。
婚活パーティに2度行ったことがあるらしいが、
「全く成果が無かった」とも聞いてるし。
だから彼を紹介することへの不安とかは考えたことなかったの。
後で悔やんでも遅かったけど。
A子から聞いたことをそのまま彼にぶつけて本当かどうか問い詰めたら、
返事はなかったけど目が泳いで手が震えてたので事実だと分かり、その場で別れを告げた。
知ってしまった以上、私には忘れることはできないから。
翌日、彼から
「A子との事は魔が差しただけだ」
と言い訳して復縁を求めてきたけど、無理なものは無理。
そしたら
「自分たちの付き合いは自分たちだけで終わらせられるものじゃない。
部長らにはなんていうんだ。
俺たちもう、結婚するつもりでいるぞ」
とか言いだした。
本当なら起こった出来事をそのまま理由にして別れた報告したい。
けどそれでは私の上司に対しての彼の上司の顔を潰してしまいかねない。
なので
「『価値観が合わなかった』とだけ言っておけばいいんじゃないの?」
と提案。
彼は上司に本当の理由を知られることを酷く恐れていたんだけど、
(だったら私もひとつぐらい仕返ししてもいいんじゃないか)
と思い、彼に
「私と別れたからってA子に行くのは無し。
そうなった場合には上司にありのままを報告する」
と言った。
彼は律義にそれを貫き、必死に縋りついてきたA子を振り払って別の女性と見合い結婚。
A子は来年40になる今も独身な模様。
当時のことを何もしらない共通の友人に聞いた話によると、
「二十代にトラウマになるような恋をして以来、恋をするのが怖い」
と言ってるそうな。
ボクシングしようぜ
中学の時にNって同級生がいた。
休み時間に
「俺とボクシングしようぜ!」
と大人しい男子生徒に絡み、断ってもしつこく
「いいじゃん!やろうぜ!!」
「シュッ!シュッ!」
って言いながら腕パンしてくる奴がいた。
大人しい生徒を見つけては絡みまくったのだが、
その大人しい生徒の中に『Nに勉強を教えてる生徒』が2名、
『副教科の授業でNを手伝ってる生徒』が3名いた。
誰だって殴り合いを強要する人間と関わりたくないので、Nが来たら一目散に退散。
Nが授業で分からない問題を質問しても、どこかに走り去る。
副教科の手伝いもなくなり、そこそこ良かったNの成績も徐々に落ちていった。
Nは自分に原因があると思っておらず、
「気が済むまで相手を殴る人間に、何も教えるはずがないだろ?」
と言われても
「何故だ!楽しかっただろうが!!」「無視とか最低な事をするな!」
と反省する様子もなかった。
何度説明しても、
「俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!」
みたいなことを言うので、交通事故で足に大怪我とかしても
転校するまで見て見ぬふりをしてた。
自分の非を認めないのが原因なのか、数年後に顔と制服がボロボロのNに会った。
Nがその後どうなったか知らないけど、因果応報は本当にあると思った。
簡易芳香剤
去年の冬。
知人から、品種とかは知らないがとてもいい匂いのリンゴをもらった。
味もよかったがとにかく匂いがよくて、
家族みんなでリンゴを手に取っては匂いを嗅いで
(あ~いい匂い~)
と幸せな気分に浸ってた。
が、所詮生もの。
いつまでも置いておけないのでわりとすぐ食べてしまったんだが、
剥いた皮も切り取った芯の部分も本当にいい匂いだったので、
適当に刻んで、ガーゼで中身が見えないように包み、陶器のレースの飾り皿に入れて
「簡易芳香剤~w」
なんて言って飾っておいた。
暖房入れてる室内より寒い廊下のとこだし、
匂い飛んだらゴミに出すつもりで暫く楽しんだ。
今月始め、ママ友たちと衣替えの話になったとき、
その流れで防虫剤や洗剤とかの匂いの話になってAさんから
「そういえば去年(私)さんが使ってた芳香剤いい匂いだったわね。どこの?」
と聞かれた。
「実は中身はリンゴの皮~w」
と笑い話にしたらママ友たちにはけっこう受けたんだが、
Aさんにはなんか変な顔された。
(ぶっちゃけ中身は生ゴミみたいなものだし引かれたかな?)
とちょっと落ち込んだ。
ついでに、
(そういえば匂わなくなったから捨て時かな?)
と皿を見たらガーゼ包みがなかったっけ。
(先週の生ごみの時に捨てたんだったかな?無いものは匂わないよな~ボケてんな自分!)
ってなった事を思い出してた。
で、つい先日。
他のママ友から、Aさんが防虫剤や匂い袋とかじゃないけど
香り物をタンスに入れてて衣装をダメにした話を聞いた。
液体が染み出しちゃったそうで、かなり広範囲に染みた上に時間もたっていて、
「何枚もダメにした」
と愚痴ってたらしい。
「ジェルなんとかかな~?」
って話をしたんだが、
リンゴの腐汁だったんじゃないかな~。
しかし中身見なかったのかしら?
…包みの合わせ目ざざっと縫ってあった…縫い目が見えないようにして皿に入れてたわ…。
「乾燥したらポプリモドキにならんかね~」
とか家族で言ってたのに、腐ったのか~Aさんとは疎遠にせねばな~
無礼者のバカ夫婦
時系列で。
1. 妻が妊娠した。
2. それを聞いた『妻の妹の嫁ぎ先の母方の叔母』が
「本家様に無断で妊娠するとは何事か!」
とお怒りになり、妻の妹に
「無礼者のバカ夫婦に5分以内に出頭するよう命令なさい!」
と通達。
3. しかし妻の妹ガン無視。
4. 俺と妻が来ると決めつけていた『(略)叔母』が、
妻に呑ませようとタバコやら農薬やら何かを煮詰めていたら
なんか有害ガスが出て、吸い込んで倒れた。
5. 『(略)叔母』と同居している娘がなぜか妻の妹に電話したらしいが、
妻の妹またしてもガン無視。
6. ちなみに『(略)叔母』の家には、妻の妹の嫁ぎ先からは約40分、
俺んちからだと新幹線込みで2時間くらいかかる。
行ったことないどころか存在も知らなかったのでグーグル先生での推定値。
7. 妻が無事に娘を出産。
8. 明日、娘が小学校の卒業式なのだが、妻の妹が
「こんなことがあった」
と2から5までを今さら教えてくれた。
9. なお、『(略)叔母』の容態は不明。
妻の妹も、「興味も関係もないから」とクビを突っ込まなかったとのこと。
知らんがな。
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