感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【24】
彼女から返信が来なくなった
あの日俺は彼女と些細な事でケンカをしていた。
険悪なまま彼女は車で仕事へ行った。俺は友達に会って彼女の愚痴を言いまくってた。
そして彼女の仕事が終わる頃にメールを送った。
相変わらず内容は、あーでもない、こーでもないとくだらないやりとりだった。
そのうち彼女から返信が来なくなったけど、ケンカ中だったし何にも気にも止めなかった。
1時間くらい経って彼女の携帯から電話がかかってきたんだ。
俺はわざとめんどくさそうに出た
「はい。」
そしたら受話器の向こうからは、彼女じゃなくて別の女の人の声で
「あんたのせいだ!!」
「あんたが殺した!」
とか、凄い勢いで怒鳴っていた。
俺が訳もわからず戸惑っていると、今度は落ち着いた男の人に代わった。
彼女は、車で電柱に正面から突っ込んで、死んだ。
「おそらく運転中のメールが原因の不注意による事故でしょう」
電話の向こうで、たぶん警官だと思われる落ち着いた男の人の声でそれを聞かされた。
放心したまま電話を切ると、俺の携帯が1件のメールを受信しました。
それは事故直前の彼女からのメールでした。
「なんか意地はっちゃってごめんね。」
俺は彼女のご両親からひどく避けられ、お葬式にも顔を出させてもらえなかった。
まだ彼女に…
「俺の方こそごめん」
って、返信出来てないんだ。
言いたかった。
ごめんって言いたかった。
そしてホントなら、今もずっと一緒にいたかった…。
別れは突然
私が彼と最初に出会ったのは会社の懇談会でした。
ふとしたことから一緒に遊ぶようになり、付き合いはじめました。
私はもともと打たれ弱い性格だったので、彼にグチってしまうことが 多かったのです。
でも、彼はそんな私に嫌な顔一つせずに、優しい言葉をかけてくれたり、 励ましてくれていました。
彼はグチ一つこぼさず、明るい人だったので、「悩みがないなんていいねー。」なんて言ってしまったりすることもありました。
彼との別れは突然訪れました。彼が交通事故で亡くなったのです。
彼のお葬式に行っても、まったく実感が湧きませんでした。
お葬式の後、彼の両親から彼の携帯を渡されました。
携帯をいじっていると、送信されていない私宛のメールが たくさんあるのに気付きました。
そのメールには仕事のグチや悩みごとなどがたくさん書いてありました。
その瞬間、私は彼の辛さに気付かなかった自分のくやしさや、無神経な言葉を言った 自分への後悔、常に私を気遣っていてくれた彼への感謝で涙が止まりませんでした。
あの日からもう1年以上になりますが、その携帯は大切にとってあります。
白血病の妹
妹が亡くなって2年の歳月が流れました。
妹からの最後のメールを見て命の尊さ、居なくなって残された者の悲しみがどれほど苦痛か・・・
白血病に侵され、親、兄弟でも骨髄移植は不適合でドナーも見つからず、12年間苦しむだけで短い生涯を終えた・・・
14才でした・・・。
妹が2才半のとき、微熱が続き、病院に行ったときには「白血病」と診断・・・
その日から母は毎日病院と家を往復する日々が続き、大型連休で家族そろってレジャーに行く日なんてありません。
妹の面会が我が家の大型連休の消化日課でした・・・
「妹がいなければ遊びに行けたのに!!」当時は妹に憎しみさえ抱いたほどです。
両親が妹ばかり世話し、愛情いっぱいあげてる姿に嫉妬したんでしょうね・・・。
その妹が亡くなって2年。両親は抜け殻がとれたような静けさです・・・
私もですが・・・。
99年の12月中旬、突然妹が「携帯電話がほしい」と、言い出しました。
私がメールばかりしていたので欲しくなったんでしょうね・・・
もちろん大急ぎで買いに行きました。
そしてイブの夜に携帯電話を渡し、一緒にメールの送信方法も教えてやりました。
そして、私が家に帰る頃には正午を過ぎてクリスマスを迎えた寒い夜になっていました。
寝ようと思ったら妹からのメールです。
「さっきはイブだったけど、今日はクリスマスだよ。迷惑ばかりかけてごめんね。おにいちゃん。ありがとう」
・・・これを見た途端母が息を切らして階段を上がり、
「病院に行くから支度しなさい」
…さっき別れたばかりなのにまた行くの?なんで?と思いました。
病院に行くと、さっきまで元気だった妹が顔に白いクロスをかけられて亡くなっていました。
あとで看護婦さんに聞いてわかったことなんですが、携帯電話を強く握り締めて離すのにたいへんだったと・・・
それを聞いて涙がいっぱいあふれました・・・。
妹の携帯電話は解約しましたが、2年経ったいまでも遺影の横にそっと置いてあります。
妹は、私にだけはきちんとお別れして逝きました。
天国でも携帯電話が使えると良いなぁ・・・
あのときの僕を救ってくれた
高2の夏、僕は恋をした。
好きで好きでたまらなかった。
その相手を好きになったきっかけは、
僕がクラスでいじめにあって落ち込んで、生きる意味すらわからなくなって一人教室で泣いていた時に彼女がそっと僕に近寄って来て、
「○○に涙なんて似合わないぞ。ほら、笑いなよ!私、笑ってるあんたの顔好きだよ。」
といってくれた。
それからは僕は、いじめられてもずっと笑ってた。
泣くこともやめた。
そうすると次第にいじめもなくなって気がつけば友達もたくさんできていた。
あのときの僕を救ってくれたのは間違いなく彼女の一言だった。
それ以来ずっとずっと彼女を想い続けて気がつけば高校の卒業が近づいていた。
その間何度も何度も告白しようとした。
でも好きだから、好きすぎたから失うのが恐くて実行はできなかった。
しかし、卒業が間近になってようやく覚悟を決めた僕は卒業式の日に彼女に告白することを決心した。
そんな卒業式の三日前の朝、
いつものように彼女におはようを言おうと思って教室を見回したが彼女の姿はない。
入試も近いし、今日は休みなのかと気を落としていた。
そのとき担任の先生が暗い顔をしながら教室に入ってきていきなり僕たちにこう告げた。
「××さん(彼女の名前)が昨日、学校の帰りに車にはねられ意識不明になり、今朝病院で亡くなりました・・」と。
何を言ってるのかわからなかった。
状況が理解できない僕はみんなが泣いてる中で泣くことすらできなかった。
そしてお通夜の日、棺おけの中にいる清められた彼女の姿を見た時になってようやく涙がこみ上げてきた。 祭壇に目をやると彼女の写真が目に映った。
彼女は笑ってた。
そのときふと彼女が僕に言ってくれたあの言葉を思いだした。
僕は笑った。
他の参列者の目には人の死を前にして笑顔を浮かべる僕はどう、うつっただろうか?
それでも僕は彼女の写真を見ながら笑った。
彼女の死から2年がすぎ、クラスで同窓会をした。
その時にクラスの女子から高校のとき、彼女が僕を好きだったという事を教えられた。
僕はその瞬間初めて泣いた・・。
声をあげて泣いた・・。
それからまた僕は笑った・・。
大人になる
子供の頃。
今は永遠だと思っていた。
明日も明後日もずっとこうして続いていくような気がしていた。
大人になるってことは自分とは無関係だと思ってた。
大人っていう生き物は自分たちとは別の生き物だと思ってた。
学校へ行って、友達と昨日遊んだ事を話して。
授業中、女子の手紙を別の女子に渡しながらノートに落書きして。
休み時間、誰かが打ったホームランのボールの軌道を青空の向こうに見上げてた。
昼休み、給食のメニューに一喜一憂して、牛乳早飲み王決定戦に参加した。
先生に怒られてからはその目を盗んで開催した。
放課後、今日は誰と何して遊ぼうか。
公園、駄菓子屋、友達の家。
僕らは遊びの天才だった。
何をやっても楽しかった。
誰かの家でした、気になる女子の話。
「いいか?誰にも言うなよ?男同士の約束だぞ?」
「う、うん。約束する」
「お前から言えよ。」
「やだよ。おまえからいえよ。」
「じゃあ、じゃ~んけ~ん・・・」
小さな恋は叶わなかったけれど。結局誰にも言わずに今まで守られた、小さな男同士の約束。
夏休みに自転車でどこまでいけるかと小旅行。
計画も、地図も、お金も、何も持たずに。
国道をただひたすら進んでいた。
途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。
ペダルを漕がなくても。何もしなくても。
ただ、ただ気持ちよかった。
自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。
子供心に凄く遠いところまできた事を知り、一同感動。
滝のような汗と青空の下の笑顔。
しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。
不安になる。怖くなる。いらいらする。
当然けんかになっちゃった。
泣いてね~よ。と全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。
交番で道を聞いて帰った頃にはもう晩御飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるは、蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。
でも次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。
絵日記の1ページになっていた。
今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。
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