泣ける話『介護』『小児病棟の七夕』など【短編】全5話 |切ない話・泣ける話まとめ

泣ける話『介護』『小児病棟の七夕』など【短編】全5話 |切ない話・泣ける話まとめ 泣ける話

 

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泣ける話 短編 全5話

 

警備業界

新人が入ってきた。47歳。警備業界では珍しくはない。
定年を迎えて、入ってくる新人も多いからだ。まぁ、新人は立たせておくのが一番いい。
無線を持たせて何か分からないことがあったら、
連絡して来いと言って、ビルの外で立哨させておいた。
折りしも、外は小雪がちらついていた。
長時間ただ立っていると、色々なことを考える。夕飯は何を喰おうか?
今度の休みは何をするか?今までの人生。これからの将来。色々なことが頭を過ぎる。
契約先の人がヒョイと顔を出して、
「外に立っている新人さん、泣いているよ。具合が悪いじゃないの?」と言ってきた。
「何だ?」と思って見に行くと、本当に立ちながら泣いている。
通行人は泣きながら立っている警備員を呆れながら通り過ぎて行く人、
怪訝な顔をする人、笑う人、反応は様々だった。
「どうした?」と声を掛けると、やや間があってようやく振り絞るような声で一言。
「つらいです。」
よくよく話を聞くと、立っている間に今までの人生を振り返り、
何で俺はここまで堕ちてしまったのか?
何で今、こんな所で罰ゲームのようなことをやっていなければならないのか?
そんなことを考えていたら、涙が溢れて止まらなくなってしまったそうだ。
結局、彼はやめた。

 

小児病棟の七夕

去年の夏なんだけど、うちの病院に来る定期バイク便のお兄さんが
いつも通り配達に来たら、ハンコ(サイン不可なので)を待ってる間
突然(´;ω;`)ブワッって感じで泣き出した。

目の前に飾ってあった小児病棟の七夕の短冊に、たった一行
「ともだちがほしい:ゆうたろう」って書いてあったのと、隣に
「ゆうたろうくんのおねがいがかないますように:まりな」セットでキタらしい。

 

二歳で病死した兄

私には二歳で病死した兄がいる。
私は兄の死後に生まれた為、兄の事は全く知らないんだが、何回か兄に会った(?)事がある。

中学生の時、両親と折り合いが悪くて、今思うと恥ずかしいくらいにグレた。
同じような友達や先輩とつるむようになり、女の先輩から初めて煙草を渡されて「吸ってみろ」と言われた。
受け取って口に咥えた瞬間、先輩の形相が急に変わり、男の声で
「何やってんだ!」
と怒鳴られてビンタされた。
私も唖然としたが先輩も「えっ!?私何でアンタ殴ったの今!?ごめんね!えっ!?」と混乱していた。
結局煙草は吸ってないし、その後そういう仲間との付き合いも断った。
高校時代に付き合ってた彼氏が寝てる時、寝言で普段の彼氏ではない声で
「こいつは駄目だ、別れなさい」
と言った。
怖くなって別れた後、友達からそいつが二股かけていた事を聞かされた。

就職してから付き合った彼氏もやはり同じように寝言で、あの声で
「この人なら大丈夫、幸せにしてくれる」
と言った。
今、その人と婚約中で来年式を挙げる。

夢に出たり姿を見る事は無いが、私にはあの声は兄だ、という確信がある。
遺影の兄は二歳のままだが、きっといい男になって側にいてくれているんだと思う。

 

 

マジック

俺が小学3年くらいのとき、オカンと行ったデパートでマジックショーをやってたんだ。
で、マジシャン曰く「じゃー、次にお客さんに手伝ってもらいましょー。どなたか〜…アナタ!」
そこでなんと、うちのオカンが指名されてしまった。
オカン、ステージに上がったとたん、机の上に寝かせられて、何やら腹を覆う箱を乗せられていた。
マジシャン「今から、このご婦人の腹を切りま〜す」
俺「ええぇぇぇぇー!!!??」
ちょっと待て。おまい、俺のオカンに何すんだよ、腹を切る?そんなの俺を産んだときだけで
充分なんだよゴルァ!
ヤバイまじヤバイ。オカンの胴体が今まさに切られようとしていた。
俺(オカ───ン!!)
そしてオカンの体は上下ふたつになった。拍手する観客たち。
俺(おまいら、なに、歓声なんか上げちゃってんの? 俺のオカンだよ?
もっと殺伐としてもいいはずだろが!!)
そのへんのヤシの胸ぐら掴んで、おまいは他人の母親はなんと思っているのか問いつめたい。
問いつめたい。小一時間問いつめたい。
マジシャン「じゃ、戻しま〜す」
俺「( ゜д゜)ポカーン」
みるみるうちにオカンの胴体は元通りひとつになり、気恥ずかしそうに笑いながら立ち上がった。
マジシャン「腹は糊でくっつけてありますんで、今日はお風呂に入らないでくださいね。
取れちゃうからね」
爆笑する観客たち。 そしてオカンは笑顔で戻ってきた。

その日の夜。 俺は風呂に入ろうとするオカンを必死で、そりゃもう必死で止めた。
オカン「だいじょうぶだよ〜。強力な糊みたいだし、しっかり止まってるよ〜」
あんたのカーチャンになれて本当に幸せだよ

 

介護

小さい頃からひいおばあちゃんの介護を一人でしてた。しかも義理の。
おばあちゃんたちは先に他界してたから、カーチャンしか見る人がいなかった。
離れに住んでたんだけどいつもいつもブザーがなって呼び出されてたな。
夕飯も自分たちのよりおばあちゃんのが先。寝たきりだから体ふいてあげたり、しもの世話までしてた。
痴呆でぼけちゃってるから食事も投げつけられたり、
誰もいないのに「あそこに女の子がいるからおい払え」とか怖いこと言われたり。
すさまじかったと幼少ながら記憶してる。
介護があるから旅行なんて全くしたこともなかったし、うちに友達を呼ぶのも禁止だった。
小学校高学年のある日、カーチャンがトイレでうずくまって泣いてるの見てしまった。
いてもたってもいられず、思わず手紙を書いた。
お母さん泣かないで、自分も妹と一緒にお手伝い頑張るから、とかそんな内容。
まだ文字も書けない妹に鉛筆持たせて、一緒になまえかいた。
そんで居間のテーブルにおいといて、寝た。
次の日の朝、テーブルの手紙は無くなってたけど、特にカーチャンは何も言わなかった。
結局ひいおばあちゃんは、自分が中学に上がるまえに無くなった。
あれから15年の月日が流れ、自分は25歳になり、去年結婚することになった。
結婚する前夜、カーチャンは色褪せたそのときの手紙を大事そうに持って来て見せてくれた。
そんで、「私はあんたのカーチャンになれて本当に幸せだよ、自慢の子供なんだ。幸せになってね。」
って言って、初めて自分の前で泣いた。自分もないた。
カーチャンみたいに無償の愛情を注げる人間になれるよう頑張るよ。

 

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