泣ける話 短編 全10話
新人47歳。警備業界では珍しくはない。
新人が入ってきた。47歳。警備業界では珍しくはない。
定年を迎えて、入ってくる新人も多いからだ。まぁ、新人は立たせておくのが一番いい。
無線を持たせて何か分からないことがあったら、
連絡して来いと言って、ビルの外で立哨させておいた。
折りしも、外は小雪がちらついていた。
長時間ただ立っていると、色々なことを考える。夕飯は何を喰おうか?
今度の休みは何をするか?今までの人生。これからの将来。色々なことが頭を過ぎる。
契約先の人がヒョイと顔を出して、
「外に立っている新人さん、泣いているよ。具合が悪いじゃないの?」と言ってきた。
「何だ?」と思って見に行くと、本当に立ちながら泣いている。
通行人は泣きながら立っている警備員を呆れながら通り過ぎて行く人、
怪訝な顔をする人、笑う人、反応は様々だった。
「どうした?」と声を掛けると、やや間があってようやく振り絞るような声で一言。
「つらいです。」
よくよく話を聞くと、立っている間に今までの人生を振り返り、
何で俺はここまで堕ちてしまったのか?
何で今、こんな所で罰ゲームのようなことをやっていなければならないのか?
そんなことを考えていたら、涙が溢れて止まらなくなってしまったそうだ。
結局、彼はやめた。これ以上、堕ちる場所などないというのに。
母が描いた絵のアルバム
うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった
だから写真の変わりに母さんが色鉛筆で俺の絵を描いて、アルバムにしてた
絵は上手じゃない
ただ、どうにかして形に残したかったらしい
ほぼ毎日、赤ん坊の俺を一生懸命描いてた
絵の隣に『キゲンが悪いのかな??』とか『すやすや眠ってます?』ってコメント付きで
小学四年生の時、家に遊びに来た友達数人に、そのアルバムを発見された
めちゃくちゃ笑われて、貧乏を馬鹿にされた
友達が帰って直ぐ、俺はアルバム三冊をバラバラに破いてゴミ箱に捨てた
パートから帰って来た母さんがそれを見つけて、泣きだした
破いた理由を言っても、変わらず泣き続けた
翌朝起きると、居間で母さんがゴミ箱から絵の破片を集めてセロハンテープでとめてた
「恥ずかしい思いさせてごめんね。でもね、これ、母さんの宝物なんよ」
申し訳なさそうに優しくそう言われると、涙が溢れ、俺はごめんなさいと謝った
あの子はぼくの友達なんです。
あるベトナムの村に宣教師たちの運営する孤児院がありましたが、爆撃を受けてしまいました。
宣教師達と2人の子供達が即死し、その他の者も重傷を負いました。
重傷になったものたちの中でも8才の女の子は最も危ない状態でした。
無線で助けを求めると、しばらくしてアメリカ海軍の医者と看護婦が到着しました。
大量に出血したことにより危ない状態にあり、早く手当をしないと少女は命を落とすことになります。
輸血が必要でした。しかしどうやってそれを行うことができるというのでしょうか。
言葉が通じないため、ジェスチャーを使って子供達を集め、何がおきていたのかを説明し、
誰かが血液を提供することが必要であることを伝えようとしました。
沈黙の時間がしばらく続いた後、一本の細い腕が恐る恐るあがりました。
ヘングという名の少年でした。
急いで少年の準備をすると、苦しむ少女の隣に寝かせ、輸血ようの管をとりつけました。
少年は黙ったまま天井をじっと見つめていました。
しばらくすると、少年は自由になっている手で顔を覆うと、しゃくりあげるように泣いているのでした。
医師がどこか痛いのかと尋ねるとそうではないようでした。
しかし、しばらくするとまた、しゃくりあげ、今度は大粒の涙をこぼしていました。
医師は気になり、再び尋ねましたが、またもや彼は否定しました。
ときどきしゃくりあげていたのが、やがて静かに泣き出しました。
明らかに何かが間違っているようでした。
すると別の村からベトナム人の看護婦が現れました。
医師はその看護婦にヘングに何が起きたのか尋ねてくれるように頼みました。
すると少年の苦しそうな表情はゆるみ、しばらくすると彼の顔は再び平静を取り戻しました。
すると看護婦はアメリカ人の医師達に説明しました。
「彼はもう自分が死ぬのかと思っていたんです。あなた達が説明したことを理解しておらず、少女を助けるため、全ての 血液を提供しなければいけないと思ったようです。」
すると医師はベトナム人看護婦の助けを借り、少年にきいてみました。
「そうであればどうしてあなたは血液を提供しようと決心したんですか。」
すると少年は単純に応えました。
「あの子はぼくの友達なんです。」
「おまえ、将来、何かやりたいことはないのか?」
親父の話。
高校1年の夏休み、両親から「大事な話がある。」と居間に呼び出されたんだ。
親父が癌で、もう手術では治りきらない状態であると。
暑さとショックで、頭がボーっとしてて、変な汗が出たのを憶えている。
当時、うちは商売をしていて、借金も沢山あった。
親父が死んだら、高校に通えるわけがないことは明白だった。
そして俺はお世辞にも優秀とはいえなかった。クラスでも下位5番には入ってしまう成績だった。
その夏から、親父は、抗がん剤治療を開始し、入退院を繰り返していった。
メタボ体型だった親父が、みるみる痩せこけていった。
母親の話では、主治医の見立てでは、もって1-2年だろう、ということだった。
ただ、親父は弱音を吐くことはなかった。
親父は「高校、大学はなんとかしてやるから、しっかり勉強しろよ」って言ってたよ。
仕事もやりながら、闘病生活を続けていた。
俺といえば、目標も特になく、高校中退が頭にチラついて勉強は進まなかった。
ただ、ボーっと机に向かって、勉強するフリだけはしていた。
せめて親父を安心させるためだったと思う。
だから、その後の成績も、とても期待に添えるものではなかった。
ただ、親父の「高校、大学はなんとかしてやる」の言葉が、重かった。
「おまえ、将来、何かやりたいことはないのか?」
高校2年の冬、痩せこけた親父に問いかけられた。
俺は、期末テストで学年ビリから2番をとり、担任からも進路について厳しい話をされていた。
言葉もない俺に、怒ったような泣いたような顔で親父は言った。
「・・・ないなら、、医者になれ! ・・・勉強して、医者になって、おれの病気を治してくれ!」
上手く説明できない熱い感情に、頭をガツンと打たれた。
自分への情けなさとか、怒りとか、色々混じったものが込み上げた。
その時、親父には返事を返すことはできなかったが、俺は決意した。
それから、猛烈に我武者羅に勉強した。
高校3年の夏、親父は逝った。
親父は、闘病生活の2年間で借金を整理し、俺の高校の学費をなんとか工面したそうだ。
親父のおかげで、高校卒業できた。
そしてありがたいことに、1年間の浪人生活を経て、俺は地方の国立大学の医学部に合格した。
俺は今、癌専門治療医として働いている。
親父は、「あいつは、将来おれの病気を治してくれるんだ」と母に言ってたそうだ。
まだ、親父の癌を治す力はないが、日夜頑張っているよ。
いつか、親父の癌を治せるように。
感謝の気持ち。
私は中学2年最初までは
部活を真面目にしてましたが
それから部活が嫌で逃避してました。
それから部活を辞め私は自由になり髪染めたりピアス開けたり
タバコ吸ったり酒飲んだりして
中3で不良デビューしました。
私はそれまで頭も良かったんですが中3の二学期からは全て悪い方向にいき親にも見捨てられ
信用出来る相手は友達3人と
先生1人だけ
私は夜遊びをするようになり
友達とダンスホールなど行くようになり麻薬にも手を出すようになりました。
今思えば中学楽しかったけど
自分って弱い人間だなって思います。
学校でタバコばれそうな時に担任がかばってくれて大丈夫でした!
卒業式には今までの思い出が溢れて親の顔見て朝から号泣してました。
本当に先生、お母さんありがとう。
色々迷惑かけてごめんね。
だから今こうして馬鹿なりに高校で真面目にしてるよ。
カーチャンの七不思議
カーチャンの七不思議
夜には疲れた顔してたのに朝には早起きして弁当作っててくれる
夜遅く帰っても他の家族は寝てるのにカーチャンだけ起きてる
俺が疲れてるの何故か把握してて栄養剤出してくれる
俺が逆切れしても困ったように笑ってる
俺が自分で言ったのに忘れてた事をずっと覚えてる
いまだに俺の誕生日祝ってくれる
俺より長生きしてくれない
悪魔とおばあちゃん
「俺様は魔界から来た悪魔だ!あんたの願いを叶えに来た!」
突如暗闇から現れたのは悪魔
悪魔がやってきたのは一人で暮らしているお婆さんのところだった
「おんやまぁ。そんな遠いとっから、ようこそおいで下さいました」
「あ、ご丁寧にどうも…そこまで遠くないんだけどね」
「ほぇ?札幌からいらしたんでしょ?」
「そんなこと言ってねぇー!むしろ1文字もカスってねぇよって…いや、てかまずはビビれし!『ひゃぁ!悪魔!」とかがお決まりパターンだろ!」
「ひゃぁ悪魔?」
「…なんかすっげぇバカにされたみたい。逆にこっちが驚いたわ」
「随分長く生きてきましてぇ。大抵のことは驚かんのですよ」
「ばぁさん歳いくつだよ?」
「今年で満90歳になりました」
「長生き~。むしろオレより年上。あ、ため口ですいません」
「ええよ~そんなこと気にせんで。」
「まぁとにかく、俺は悪魔なんで」
「ひゃぁ悪魔」
「なんかすっげームカつく~!もっと驚けし」
「この間道ばたでタヌキが死んどった時は驚いたなぁ」
「オレはタヌキ以下かよ~!これでも精一杯頑張ってんだよ」
「おつかれさんです」
「はいはい。っておい!とにかく何でも願いを叶えてやるよ」
「そんな見ず知らずの人にそこまでしてもらうなんて~」
「いいんだよ。ただし条件がある。死んだ後あんたの魂をオレがもらう。」
「老い先短いわたしの魂を取るのかい?」
「いや、死んだあとね。だから、それと引き換えであんたの願いを叶えてやるって」
「んー。そう言われっても、ここまで満足して生きてきたからねぇ。とくに何も。。」
「いやーあるでしょ?長生きしたいとか、若返りたいとか」
「そうか?…それじゃぁ……世界を平和にしてくれ」
「規模がでかいよー!それはオレなんかじゃなくて神様に頼んでー」
「それじゃ~この世からすべての争いを無くしてくれ」
「オレには荷が重すぎる~!それじゃあ完全に良い悪魔じゃないの~!いまの二つが叶えられたら、悪いけどオレ悪魔から天使になれるからねぇ!むしろ神様からオファーがくるって~」
「それじゃぁ世界中の人々を幸福にしてくれ」
「だからオレには出来ないって~。それさ天使に言ってくれよ~。」
「なんも出来ない悪魔なんだね」
「カッチーン!今の言葉きいたー。やってやろうじゃないの?ええ?見せてやりますよ!俺の力を!全人類の幸福だっけ?やってやろうじゃないの」
「ほんとかい?出来るんじゃないのー。出来なければこの前のタヌキを生き返えらせてもらおうと思ったのに」
「ええー!?出来るなんて言わなきゃ良かったよ~。まぁでももう契約しちまったからな。何年かかるか分からないけど、絶対にやってやるよ!」
「ほんじゃお願いします」
25年後…
『次のニュースです。ここ20年間で世界の情勢は勢いを増し、あと5年先には全ての国の経済は安定し、貧困や差別は無くなり、それに伴い法を犯す者もいなくなると専門家は話しています』
「み、みてくれ!ばぁさん!これがオレの努力の結晶だ!全人類の幸福まであと一歩だ!!…ばぁさん?」
「どちらさまですか?祖母なら20年前に亡くなりましたよ?」
「えぇ??………やられたー!」
「もしかして、悪魔さんですか?」
「え?あ、はい」
「まぁ!ほんとにいるなんて!祖母から話は聞いてます!あ、そうだ、祖母から、
「悪魔さんが来たら渡すように」って手紙を預かっているんです。」
「手紙?」
そこにはこう書かれていた
『悪魔さんへ
おそらく、あなたが私のもとへ来る頃には、私はこの世にはいないでしょう。
しかし、あなたが私のもとに来たということは、世界は平和になり、みんなが幸せに暮らせる時代が来たということでしょう。あなたには本当に感謝しています。
あなたがこの世界を平和にした価値は、私の魂なんかより数千倍も、数百万倍も価値があるのです。
それでも約束ですので私の魂が欲しいというのであれば、私のひ孫、もしくは、その子供の魂を貰ってください。私は生まれ変わって子供となり、必ずあなたの前に現れます。その私の魂をぜひ貰ってください』
「祖母の手紙には何て書かれてましたか?あ、そうだついこの前、私に孫が出来たんですよ!見てください!」
そこには、あのおばあさんの面影がある赤ん坊がいた。
「あら。この子ったら笑ってるわ。普段は人見知りなのに。よほど、悪魔さんが気に入ったみたいですね」
「あなたは、僕をみて驚かないんですか?」
「だって祖母から、良い悪魔さんがいたって話を小さい頃から聞いていたんですから」
「キャッキャ!!」
「あら、また笑ったわ。」
「…へへ…さすが…あのおばあさんの……子供だ…」
「泣いてるんですか?」
「いや、ちょっと、汗が目に…はいって…。とりあえず、僕はいきます。まだ完全に平和にしたわけじゃないですから。」
それから5年後、世界は歴史上初の平和の時代に突入した。
しかし、悪魔がやってくることは二度となかった。
「あの新入り。よく働くなぁ。」
「なんでも、もと悪魔らしいですよ。神様が直接天使になってくれとお願いしたみたいです」
「へぇ。あいつかー」
「神様!それでは地上に降りて、人々に幸せの種をまいて参ります!」
パンチパーマの神様
自分が小学5~6年生の頃の話ですが、当時の親父がダメダメの多重債務者で、怖い借金取りがしょっちゅう家に来てました。
母は朝から晩まで勤めに出てたので当然ガキの自分が応対し、大声で怒鳴られたり小突かれたりしてたんですが、近所の人も親父が借金踏み倒してたんで誰も助けてはくれませんでした。
そうこうしてとある日、小学生の自分でもそれとわかるものすごい迫力の人が尋ねてきて、
「おぅボクー、お父ちゃんおるかー?」
とずかずかと家に乗り込んできました。
親父は数日前から帰っておらず、絵に描いたような貧乏アパートで半べそかいてひもじそうな自分を見て同情してくれたのでしょう。
「ごはん食べたか? おっちゃんがなんかおごったろ」
と黒塗りのでかい車に乗せてハンバーグ(いまだに忘れません)を食べに連れて行ってくれました。
そうして家に戻ると、いつも見る取立ての人が玄関の上がり口にどっかりと腰をおろしており、またいつものように「コラガキ*@§☆」とまくし始めたのです。
そこにド迫力のおじさん登場、
「ゴルァおんどれー、子供になにぬかしとんじゃ、ワシは○○会の☆☆ゆうもんや、ワシに同じことゆうてみい!」
とその取立人を追い返してくれました。
帰り際にその人は、「また同じような奴が来たら、これ見せたらええわ」と大きな名刺をくれて去っていきました。
その後その名刺がたびたび威力を発揮し、取立てが止んだのは言うまでもなく、しばらくして親父と離婚した母とその町を出ました。
あのおじさんにはその後会うことは無かったんですが、子供だった自分にはヒーローでパンチパーマの神様でした。
ボディーガードロボ
エフ博士はボディーガードロボットを作った。
このロボットは人の思考を読み取れる優秀な電子頭脳と、体内に仕込んだ爆弾をも見破れるセンサーを搭載している。
そして警護対象に危害を加えようとしている人を見つけると、内蔵した電撃銃で相手を気絶させてしまうのだ。
そもそもエフ博士は極端な心配性で、外出するたびに誰かに襲われやしないかとびくびくする始末。診察中に何をされるか分からないので病院にいったことすらない。
エフ博士はせめて安心して外に出られるようになりたいと思ってこのロボットを開発したのだった。
そして完成したロボットを前に、エフ博士は指示を出した。
「さて、君には私の警護をお願いしたい。私をいかなる危険からも守ってくれたまえ」
「ハイ、承知しました」
返事をしたロボットはしばらくエフ博士の姿を見た後、突然彼に向かって電撃を発射したのだ。不意打ちを受けたエフ博士はその場に崩れ落ちてしまった。
意識を取り戻したエフ博士は、自分が病院のベッドに寝ていることに気づいた。
ロボットが私を病院に運んだのだろうか。しかしなぜ私を撃ったのだ。警護対象を攻撃するはずがないのだが。
そんなことを考えているうちに、病室のドアが開いて医師らしき男が入ってきた。そしてその医師はいくつかの資料とともにこう説明したのだ。
「体内に悪性の腫瘍が見つかりました。自覚症状はほとんどないのですが、放置すると危険な状態になったでしょう。ですがまだ初期の腫瘍なのですぐに対処すればなんら問題ありません。しかしあなたのロボットは大変優秀ですな、あなたを連れて検査を依頼しに来たんですから」
エフ博士はそこで初めて病室にロボットがいることに気づいた。部屋の隅で静かに立っている彼の表情は、少し誇らしげだった。
ある家族の話
サキちゃんのママは重い病気と闘っていました。 死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。 その時、サキちゃんはまだ2歳。 「あなた、サキのために3本のビデオを残します。 1本目はサキの3歳の誕生日に、2本目は小学校の入学式に。 そして3本目は・・・・・の日に見せてあげて下さい。 まもなく、サキちゃんのママは3本のビデオを残し天国へ旅立ちました。
サキちゃんの3歳の誕生日。 1本目のビデオがかけられました。 テレビ画面に病室のママが、映し出されました。 「サキちゃん、お誕生日おめでとう。ママうれしいなぁ。 でもママはね、テレビの中に引っ越したの。 だから、こうやってしか会えないの。 パパの言うことをよく聞いて、おりこうさんでいてね。 だったら、ママ、また会いにいくからね。」
サキちゃんの小学校の入学の日に、 2本目のビデオがかけられました。 「サキちゃん、大きくなったね。おめでとう・・・。 ママうれしいな。どんなにこの日を待っていたか。 サキちゃん、ちゃんと聞いてね。 ママが住んでいるところは、天国なの。 だから、もう会えない。 パパの手伝いができたら、 ママ、もう一回だけ会いにきます。 じゃあ、魔法をかけるよ。 エイッ!ほうら、サキちゃんはお料理やお洗濯ができるようになりました。」
そんなある日、パパに義母がお見合いの話をもってきました。 パパは再婚する気はなかったのですが、サキちゃんの将来を考えてお見合いをすることにしました。 パパが結婚の話をサキにした時、サキちゃんは自分の部屋に走って行き「サキのママはママしかいないのに」とママの写真を見て泣きました。
サキちゃんが結婚を受け入れないまま新しい母親を迎える日がやってきました。 その日が、3本目のビデオを見る日でした。 タイトルには、こう書いてあったのです。 「新しいママが来た日にサキちゃんに」 それはサキちゃんが10歳の時でした。
「サキちゃん、お家の仕事がんばったね。 えらいね。 でも、もう大丈夫だよ。新しいママがきたんだから。 ・・・サキちゃん、今日で本当にお別れです。 ・・・サキちゃん、今、身長はどれくらい? ママには見えない・・・・・・・・・。 (ママは泣き崩れ、カメラを抱え込む姿が映る。) ママ、もっと生きたい・・・。
あなたのために、おいしいものをいっぱいつくってあげたい・・・。 あなたの成長を見つめていたい・・・。 本当は、サキちゃんと友達の話をしたり、ボーイフレンドの話をしたかった・・・。 ひと目でいいからサキちゃんの花嫁姿をこの目で見たかった・・・。 ・・・・サキちゃん、これが最後の魔法です。 それは{ママをわすれる魔法}です。 ママを忘れて、パパと、新しいママと、新しい暮らしをつくってください。
では、魔法をかけます、1・2・3・ハイッ!!」 そこでビデオは終わった。 サキちゃんは魔法のとおりに、3人で仲良く暮らしました。
しかし、「最後にママを忘れる魔法」だけは、サキちゃんにも、パパにも、新しいママにも、効かなかった。 ママは、どんなことがあってもわすれることのない”心の宝石箱”として、ちゃんと残っていた。
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