2度あることは3度ある
今から4年前のこと。
同い年で、通ってた高校が隣同士で、話が意気投合して付き合い始めた。
私には2年ぶりにできた恋人だった。毎日が楽しくて楽しくて。
よく、高校生の頃の思い出話をしていたんだけど、ある日
「俺、その頃車にはねられたことあるんだ」って言った。
意識不明が2日ほど続いてかなり危なかったらしい。
でも、全然意識が戻ったら、後遺症もなくすぐ元気になったそうだ。
で、「しかも、大学の時、もう1回はねられたんだ」と言う。
それは全くたいしたことがなかったらしいんだけど、
その話を聞いた時は、運が悪い人なんだなぁ~って笑った。
私がそう言うと
「あの時、死んでなくてこうして2人は会えたんだから
運が悪いなんてことないよ」
と言った。
正直、胸が詰まった。照れ隠しで
「2度あることは3度あるっていうから気をつけてよ!」って言うと
「そうするよ」と言い、優しく笑って、抱きしめられた。
何だか泣きたくなる程幸福感を感じた。
その3度目が来るなんて、思いもしないで。
いつだったかに夢を見た。
彼とバイクで2人乗りしている夢。
背中にぎゅっと抱きついて、安心感に包まれて、幸せな夢だった。
そんな夢のことなんて忘れた頃、突然彼が「俺バイクの免許取ろうと思って」
と言い出した。
あ、夢でみたのってこれだったのかな?と思い出した。
その話はせず、「そうなんだ、取れたら乗せてね!」と私は言った。
ほどなく、彼は連休を利用して合宿であっという間に免許を取ってしまった。
思えばなんでも器用な人だった。
念願のバイクも購入して、もうすっかり夢中だった。
私はしばらく遊んでもらえず、ちょっと妬けてしまうくらいだった。
とにかくバイクにハマってしまってからは、放っておかれるような日が続いた。
ある日そのことで喧嘩になってしまった。
喧嘩、というか、私が一方的にスネたというか・・・。
それに、まだ1度も乗せてもらっていなかったし。
そう言うと
「まだ運転に自信ないんだよ、もっと慣れてからじゃなきゃ。
○○を危ない目にあわせたくないからね」
そんなのごまかしじゃん、と言って更に困らせたりして本当にウザい女だったなぁ、私。
それでも、あの夢で見たことは、きっと近いうち実現するんだって信じてた。
ツーリングが最高に気持ちいいだろう5月のいい季節。
夜中突然、電話が鳴った。
彼の友達で、私たちを会わせてくれた人からだった。
その人は、彼に「3度目」が起こったことを告げた。
あの時のことはちょっと今でも言い表せない。
ただ、自分の目で見るまでは信じない!って叫んでた。
「3度目」は、彼が夜にバイクに乗っていた時に起こった。
前を走っていた車を彼が追い越そうとした時、突然右折してきて接触した。
スピードが加速していた状態だから、かなりの衝撃で跳ね飛ばされたらしい。
自分の目で見ても、信じることはできなかった。
信じたくなかった。
でも本当だった。
こんな馬鹿なことってあるか。ただの冗談だったのに。
あんなこと言うんじゃなかった。
こんなの嘘に決まってる。夢に決まってる。
どんなにそう思っても
もう「4度目に気をつけてよ」なんて言える日は来ない。
それから葬儀が済むまでの2日間、どうやって過ごしたか今でも覚えてない。
初七日が済む頃、電話をくれた友達から連絡があった。
彼の家の人が、私にみて欲しいものがあると言う。
いまだに実感しないでいたから、フラフラとその人に支えられて
彼の実家へ行った。
お父さんが「多分、息子があなたに用意したものだから」と
彼の部屋にあったというそれを持ってきて言った。
ヘルメット。レディース用の。
火がついたように泣いた。
葬儀でもこんなに泣かなかったのに、というくらい。
あの日、彼の困った顔を思い出して。
あの夢が実現される日がもうすぐ来るんだったと知って。
そして、もうそれはかなわないんだと思い知らされて。
立ち上がることが出来なくて、随分長い間突っ伏していた。
お父さんもお母さんも友達も泣いていた。
あの日から4年、よく歩いてこれたなぁと自分でも思う。
周りの人には、本当に感謝してる。
今年、私は春にバイクの免許を取った。
これがものすごい時間かかった。
しかも普通2輪。これでも精一杯。
本当は彼と同じ大型が取りたかったんだけどね。
きっと彼は私が免許取るなんて言ったら大笑いしただろうなぁ。
私はあなたと違ってどんくさいから。
でも、取れたんだよ、ようやく。
あのヘルメットは絶対に無駄にしたくなかったから。
肝心のバイクがないから、まだかぶってないけどね。
でも、この4年目の5月が終わったら、バイクを買おうと思ってる。
きっと私が最初に走り出す時、見ててくれると信じてるよ。
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