ほっこりする話 短編5話【16】
かわいい表紙の日記
当時私が小学生だったころ。
本が大好きで、家にある、自分が読めそうな本を読み漁っていた。
ある日、何気なく母の本棚を漁っていたら、かわいい表紙の日記を見つけた。
どうやら私が小さかったころの成長記録らしい。
母はこういう細かいことが好きで、よく日記とかつけていた。
私は面白半分で日記を開いてみた。
◎年☆月◇日
今日、○○(私の名前)ちゃんが初めて寝返りをうった。
うつぶせになっていたから、一瞬ヒヤっとしたよ。
でも、寝返りがうてるようになったね!
●年△月□日
今日、○○ちゃんが“あいうえお”を読めた。
すごいすごい!偉いネ!
次は“かきくけこ”に挑戦だ!
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日記には、私が赤ちゃんのころからの成長記録が丁寧につけられていた。
内容はほとんど覚えていないけど、一言一言がすごく愛おしかった。
いつの間にか私の視界は涙でぼやけていた。
私は誰にも気づかれずに、静かに泣いた。
その時は、なんでこんな日記を読んで泣いているのかとか、母親の愛情とかがよくわからなかったけど、なんだか胸が熱くなった。
お母さん、私を産んでくれてありがとう。
苦労ばっかりかけてゴメンね。
母の日に携帯電話を贈った
15年前の話です。
今でもそうだが人付き合いの苦手なオレは、会社を辞め一人で仕事を始めた。
車に工具を積み、出張で電気製品の修理や取付の仕事。
当時まだ携帯電話は高価で、俺は仕事の電話をポケベルに転送し、留守電を聞いてお客さんに連絡するという方法しか取れなかった。
生活さえギリギリだった。
ある日 母親が九州の実家から関東の俺の家まで訪ねてきた。
遠くから来た親をいたわることもせず、無愛想な俺、ホントにバカだ。
俺を心配し、掃除、洗濯 料理を作り山ほど食糧を置いて母は帰郷した。
バカ息子は見送りもしない。
仕事から帰宅した俺は母の手紙を見つけた。
「仕事頑張って下さい、少しですがこれで携帯電話でも買って声を聞かせて下さい。」
手紙にはお金が同封されていた。
手紙を手に俺は、わあわあ泣いた。
カメラやメールなんて出来ない。
メモリーも50件しか入らない初期の電話。
でもこの電話にどれだけ助けられただろう。
俺には最高の宝物。
母の日に電話を送った。
ちゃんとお礼をいわなければ。
「おかあさん どうもありがとう」と。
じゃんけん
前を歩いていた80歳くらいの老夫婦。
お婆さんがかなりいっぱい荷物持って、お爺さんは手ぶら。
なんてひどいお爺さん…と思っていたら、
少しして
「じゃんけんぽん!」
「やっと交代だ」
「負けちまったか」
と二人とも満面の笑顔。
いくつになってもこんな素敵な関係でいられる2人がとても羨ましかった。
義家族
両親事故で他界、祖父母も私が生まれる前に鬼籍、叔父叔母は某宗教な家で父母も毛嫌いしてたから頼れない状況だった。
幸いなことに私には十歳離れ成人してた姉が居た。
ただ当時は主に私の口の悪さが原因で仲が悪かったから姉に頼るということが選択肢になく中学生だった私は「ヤバい詰んだ?」と父母の死を受け入れ冷静になった瞬間震えが止まらなかった。
姉は結婚して妊娠してたからそれこそ私の面倒なんて見れなかった。
でもお姑さんにお願いしてくれて色々面倒見てくれた上に姉の義実家に住むことになった。
私は他人なのにごめんなさいとお姑さんに言ったら
「家族だからね。貴女が嫁に行くまで私達が傍に居るからね」と抱きしめてくれたのが衝撃だった。
なんだかんだと義兄の弟に告白されお付き合い開始、私の24歳の誕生日が先月、交際5年目でプロポーズされた。
姉夫婦は同い年で彼は5歳下、私はさらに5歳下。
姉夫婦は転勤先、義兄の弟は高校大学とスポーツ特待で寮暮らしでずっと私と姑さんの二人暮らしだった。
舅さんは昔に病気で他界されてた。
最近は姉とどちらが姑の介護をするか引き取るかで揉めている。
姉も私のこと含め姑さんには返しきれない恩が有ると私と同じく姑信者だから譲らず。
まだ姑元気で「いや施設に入れてよ。やだよ嫁に下の世話とかさせるの」と苦笑いされてる。
嫁に負担をかけたくないという良姑。
来週末は新居を見に行く。
義実家の近所には過疎で空き家や空地が結構有るのでスープの冷めない距離に引越す予定。
余談だけど姉の息子十歳は幼い頃に働き出した姉の変わりに私が面倒見ることが多かった。
そのため私に懐きすぎて本人の叔父であり私の婚約者にいつも悪戯するのを眺めるのが最近の楽しみ。
背中に氷入れたり靴に玩具の虫入れたり毎回違うから面白い。
きっかけになった犬
義弟、引きこもりってほどじゃないけどとてもおとなしい人で、
話しかけても蚊が泣くような声でボソッと一言返事をするだけって感じ。
仕事はちゃんとやってるし、家族に迷惑かけるわけでもないけど
なんか取っつき難くて苦手意識があった。
義弟はまだ独身で夫実家で同居中。
私たち夫婦はその夫実家から徒歩圏内で暮らしている。
一昨年、我が家が犬を迎えた。
それで犬の散歩がてら夫実家に行くことが増えたんだけど
休日にそうやって夫実家を訪問すると、
それまでは殆ど部屋から出てこなかった義弟が出て来るようになった。
「もしかして犬好きなん?」って聞いたら照れくさそうに頷く。
義弟が犬好きって、夫も知らなかったらしい。
これまで飼ってたこともなかったらしいし。
うちの犬、義弟には義父母より懐いてるし
私が義母とおしゃべりしてる間とか義弟が庭で楽し気に遊んだりしてた。
義母も我が子ながらこんな一面があったとは・・・とビックリw
そうこうしてるうちに、義弟の職場の同僚が飼ってる犬が子供を産んだとかで
その中から1匹貰ってきて育て始めた
引きこもりがちだった義弟はなんだったの?ってぐらい
犬連れて出掛けることが増えて、
あの義弟が来月結婚する。
お相手は犬をもらった同僚らしい。
「職場の同僚って女性だったんかw」って思わず言ってしまったw
まぁ結局それが縁でよく話すようになって、こうなったみたいだけど
何がきっかけで人生変わるか分かんないもんだね。。
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