『人形話』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ

『人形話』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ 短編

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人形話

 

主婦さんが叔母様からいただいたという高価なビスクドール。
なんと、椅子にテーブル、人形用のティーセットまで一緒にくれたというその人形。
「人型は入られるから嫌なんだよね」といっても、プレゼントを無碍には出来ないのと、
あと、実際店で見たときに「この子は可愛いなあ、ちょっと欲しいかな」と思ったので
ありがたくいただいたという。

「夜歩いたりしてない?」と聞くと「寝てるから知らないよw」と返ってきたが、
ある日、主婦さんの家に出入りしていた家政婦さんが突然「やめたい」と言ってきた。
主婦さんが結婚したときから世話になっているその方は、留守中のペットの面倒や
花の世話もしてくれる、超信頼のおけるベテラン家政婦さん。
「お掃除しているときに、そのお人形のティーカップを割ってしまったんです、私。」と。
「あー、全然かまいませんよ、そんな、カップなんて買えばいいんだし。気にしないで」と
言うと、「いえ、その後、人形に引っかかれたんですよ」と。
彼女に言わせると、ティーカップの破片を集めていたときに、人形が自分の方に落ちそうに
なったので受け止めたら、ざっくりと手に傷が付き、人形の手にそのティーカップの破片が
あったという。

□ □ □

その後も、掃除中にその人形が睨んでたりとあったという。
とにかく怖いからやめたい、との事。
「もしかしてそれ以外にも何かあった?」と聞くと、「移動してるんです」とベタな内容だった。
「入ってるんじゃなくて、魂を持ってるのかも。」とは霊感主婦さんの見解。
「昔漫画で読んだんだけど、大事に大事にされた人形には魂が宿るとかいう。
そういう事ならまあ・・・悪霊が入ってるんじゃなさそうだし」と。
結局家政婦さんはやめてしまい、別の人をお願いすることになりそうだ、と。

一応念のため、来歴をN夫人に尋ねたら、
「ごめんなさい、実はあの人形、三回返品されてるの。怖いって。だからOさんに
押しつけようと思ったら、うちの顧客はこの程度じゃ喜ばないから引き取れないって言われて。」
「この程度・・・ですか。とりあえず人形用のティーポットで出物があったら教えてくださいね」と
いうことで、その人形は主婦さんの家で猫たちと彼女の家族と仲良くやってる。

その返品の三件さんの共通点は、「人形コレクター」と「犬を飼っている」だったらしい。
「猫は嫌じゃないみたい、うちのもよく寄っていって、なんかうにゃうにゃ言ってるからねえ。」とか。
とりあえず、ピアノの部屋が好きらしいのでそこに人形コーナーを作ってあげたと。
「なんで好きだって解るの?」との問いに。

□ □ □

「んー、最初は気のせいと思ったんだけど、やっぱり歩いてるみたいで。
この部屋によく来るから、居間からこっちに変えてみた。」と。以後、移動はないそう。
一度、大きなガラスのケースに入れたら、中からヒビが入って、まるで「出せ」と言わんばかり
だったそうで。(ほこりよけだったそうで、閉じこめる気は無かったそうですが。
ていうか、「やっぱり歩いてるのねきと」とさらりと言った主婦さんに驚いた。
「怖くないの?」
「怖いというか、なんかどこかでやっぱりね、って思ってるのよ私。」
「やばいもんが入ってたらどうするの?」
「壊すか、返品だけど・・・返品しても、うちには戻ってくると思う。なんか縁が出来たみたい。」と。
女の子を持ってない主婦さんは、「暇だしw」と人形の着替え作りに熱中してるので気に入られたのか。
主婦さんの家は猫も子供も男ばかりなので、彼女的にも楽しいらしい。

主婦さんの息子(下の子)は「妹が出来たみたいー、可愛いー」と可愛がってるし、さすがに長男は
可愛がる年じゃないが、主婦ダンナも「品のいい顔をしている人形だなー」と気に入ってるので、
どうやら人形の方で、居住地と決めた様子です。
で、主婦さんは人形は興味無しなので、この子と、四歳の誕生日に貰ったジェジェしか持ってません。
ジェジェともうまくいってるようで、「全然違うタイプの人形なのに、並べてても変じゃない」とか。

主婦さんて、避けてるけど、好かれるモノには思い切り憑かれやすい人である、という事だけは、
人形の件で解った感じがします。

□ □ □

人形はそもそもはN夫人がフランスの店で仕入れたものらしく、それ以前の来歴は不明だそうですが、売ってくれた人に聞けば解るとのことでした。

主婦さんは
「多分、凄く大事にされてたんだと思う。専用の椅子やテーブルまであるんだから。
子供の遊び相手だったのかな。なんで売られたのかは解らないけど、人が大事な
ものを手放すには、それ相応の理由があるから」と、それ以前については特に興味は無いそうです。

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