『ドアの向こうにいるもの』|洒落怖名作まとめ【長編】

『ドアの向こうにいるもの』|洒落怖名作まとめ【怖い話 - 長編】 長編

 

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ドアの向こうにいるもの

 

去年からバイトに行ってるところに4つ年上の人がいて、私は入った時から片思いしてたんだ。
で、頑張って頑張って仲良くなって、年末頃にはデートしてもらえるようになってた。
告白するタイミングをうかがってたら、年明けて彼の家でまったりデートの誘いがあった。
私はその日に告白しようと気合を入れて、夜になって遊びに行ったんだ。
彼の手料理食べたりビデオ見てたりしたらなんとなくしっとりした雰囲気になり、押し倒された。
でも先にそーいう風になるのは嫌だったから、「ちゃんと付き合って欲しい。彼女にして欲しい」とどきどきで告った。

 

返事はOKで、もう嬉しいやら安堵感やらで、されるがままに目を閉じてたw
「ふふ」と声がした。テレビがついてたので、初めはそれだと思った。
またした。また、またした。テレビの音声と合ってないことに、その時やっと気づいた。
じゃあなに?その時は怖いとも思わずいた。

 

そーっと薄目を開けて私の上にいる彼の様子を伺ってみたけど、そんな声は出してない。
やっぱテレビかなと思いながらなんとなく部屋を見回してみた。
そしたら彼のわき腹の横あたり、位置は部屋真ん中あたりじゃないかな。
栗色のセミロングくらいの頭があった。その場から見えたのは多分後頭部。

頭を見つけた私は大混乱、だってこの部屋には私と彼しかいないはず。なのにあれは誰!?
パニクりながら彼に言おうと口を開きかけたら、また「ふふ」が聞こえた。その声は頭の方向からした。

 

あの頭だ、頭が笑ってたんだ。その時やっと気づいた私は、一気に手が冷たくなった。
もう怖くて怖くて仕方なくて、けど彼にはなぜか言っちゃいけないと思ってしまい、ただ目をつぶって終わるのを待ってた。
終わってからも目を開けるのが怖くてしばらくつぶってたけど、思い切って開けてみたら、あの頭はなかった。

 

彼が話しかけてきてたんだけど、もうそれどころじゃなくって、窓閉め忘れたかもしれないって嘘ついて帰ってきた。
家に帰ったらちょっと冷静になれて、いままでそんなもの見たことないし、きっと目の錯覚なんだと思うことにした。

次の日彼に電話して、昨日慌てて帰ってしまったいい訳をして(嬉しくてテンパったって言った)、また何日かは普通に遊んでた。
でも彼の家には行かなかった。正直行きたくなかったし、否定してもしきれない自分もいたんだ。
10日くらいたった日、彼の自宅への誘いをやんわりかわしてホテルに行こうと誘った。
勿論OKで、一緒にお風呂に入ろうと思い、浴槽にお湯を張ってた。
そしたら、目の端にあった鏡の中に、茶色い頭が一瞬見えた気がした。
え?と思って鏡を見たら、私しか写ってない。あの時の恐怖心がぶり返してきたけど、気のせいだと自分に言い聞かせた。

 

お湯がたまったので、一緒に入ってた。
彼が頭洗ったりしてるのを湯船から見てたら、すりガラス?のドアの向こうで何かが動いた。
見たらいけない、見たくないと思って見ないようにしてた。
けど見間違いかもと思い、視界のはじっこに恐る恐るドアを入れてみた。
いた。頭が、頭だけがドアの向こうにいた。体がなくて、細い木の幹で頭を支えてる感じ。
そんなシルエットがあった。手が冷たくなって、お湯の中で膝が震えてた。
さすがに彼も気づいたらしく、「どうした?」って聞いてきた。
言おうかどうか迷った。けど彼の部屋で見てるものがここにもいるってことは、彼についてきてるってことだ。

 

そんなこと言われたら嫌だろうし、変なこと言う女だと思われてふられるかもしれない。
でも言いたい、この怖さから解放されたい。悩んだ末言おうと決め、「あのね・・・」と言いかけたら。
「だめだよ」って言われた。はっきり聞こえたの、「だめだよ」って。
「もう許せないけど、告げ口はもっと許せないから」って、可愛いけど、ちょっとノイズのかかった遠くからの声。
もうだめだと思った。その時には目があってたから、ドアじゃない部屋に面したガラスのむこうにいたから。
セミロングの茶色い頭、色白の顔は整って、大きな目の真ん中に、点のような黒目があって、無表情にこっちを凝視してた。

 

首が伸びきったようになって下から伸びてて、それが頭にくっついてる。
その時自分がどんな風にふるまったは、全然覚えていなくて、ただそれと冷たくなった手のことだけはっきり覚えてる。
具合が悪くなったから帰ろうと、それだけ言って帰ってきた気がする。
急に様子が変わった私を心配して、彼が何か言ったりしてくれてたと思うけど、それどころじゃなくて覚えてない。
家についても怖くて怖くて、泣きながら友達に電話してきてもらった。
その子はけいちゃん(仮名です)と言って、私はけいちゃんに全部話してしまった。

 

霊感とかはないけどとても肝が座ってるけいちゃんは、あんまり信じてるふうではなかったけど、
私が落ち着けるように、その日は泊まってってくれることになった。
うちの父・母・兄とおばあちゃんとけいちゃんとご飯を食べて一緒にテレビ見てたりしたら元気になってきて、
やっぱ気のせいなのかなと思えてきた。でもあの顔が忘れられない。

 

次の日はバイトも学校も休みで、けいちゃんとなんとなくだらだらしてたら、下からおばあちゃんにお茶に呼ばれた。
けいちゃんと二人でおばあちゃんの部屋でお茶飲んで話とかしてたら、おばあちゃんから急に
「ひーちゃん(私)、最近変わったことない?」と聞かれた。
びっくりしたけど、彼が出来たことは親にも言ってなかったのでうやむやに返事をして、「なんで?」と聞いてみた。

「昨日ねぇ、じいちゃんが夢に出てきたのよ。ひーちゃんが心配じゃーて寝てられんわて言って」
けいちゃんと私は顔を見合わせてしまった。二人ともきっと顔がひきつってたと思う。
「ひーちゃん、ほんとになんもない?じーちゃんがねぇ、早く離れにゃいけんぞーて何度も言ってたよ」
おばあちゃんはほんと心配そうに聞いてきた。きっとじいちゃんも心配してくれてたんだ・・・
私は泣きながら全部話した。そして、別れたら彼が一人になってしまうから、それが心配なことも話した。
おばあちゃんはうんうん聞いてくれて、大変な思いしたんだねぇって言ってくれた。

 

ごめん、時間なくなってきたからかいつまんで書くね。
その後私はなんとか彼を助けないとと思い、でも多分彼に自分のことは言うなと警告?されてるので彼の友達にそれとなく、
昔女の人と揉めたことないか聞いてみた。

 

何人かは言い渋ったんだけど、彼と同じ地元の人が「内緒だよ」って教えてくれたことがあった。
地元に長く付き合った彼女がいて遠距離してたんだけど、けどこっち出てきて彼が遊び狂ってしまってずっとほったらかし状態。

彼女は絶対別れない、責任とってもらうって(なんか殴られたり貢いだりしてたらしい)、ずっと待ってるんだって。

生きてるんだよ彼女。私が見たのは、その人だったんだ。
彼がとんでもない男だというのがわかったので何も告げずに別れたんだけど、それまでの間けいちゃんも巻き込んで霊障あったりもした。

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