とり憑かれた携帯
「お母さんありがとう」
今日は私の誕生日。私は生まれて初めて新しい携帯を買って貰った。
でも、携帯の使用料は私が自分で払うし、高校2年生ってちょっと遅すぎる気がしたけど。
それでも、私は嬉しくて涙が出そうだった。
「かなり着うた取ろーっと」
「コラッ。菜美(ナミ)!!あんたのバイト代で稼いだ金で払いきらないならお母さんは払わないよ。その時は、携帯とめてもらうからね」
「は・・はぁ?い…」
ニコニコしながら携帯ショップを出て歩く親子は誰が見ても、幸せそうに見えた。
その日の深夜、私は自分の部屋のベッドに座って携帯をいじりまくった。ふと時計に目をやる。夜中の2時だった。
「んまぁ…冬休みだから…夜更かしぐらい良いよね」
そう思いながら視線を携帯に戻す。………
「あっ…」
(着うた無料サイト!!フルもあり)
という見出しの広告が目にとまった。
「本当かな?変なサイトに繋がってたりするかなぁ?………まぁ無料って書いてあるしクリックぐらいなら」
と勝手に解釈しクリックした。クリックしたら新しいページが出てきた。
そのページには赤色の文字で[着うた無料サイト]
と大きな文字で書いてあった。そのサイトを見ていたら分かった事があった。無料で登録なし。今話題の曲を毎日配信。カバー曲じゃない。
「こんな良いサイト見つけたなんてラッキー。」
携帯初心者の私はためらいも無く、そのサイトに書いてあった通りにブックマークした。
「よし。あとは好きなように曲を………」
私は好きな曲を検索して【Download】の文字を押した。
するとすぐに次のページが出てきてそこには、こう書かれていた。
「Downloadする前にこの着うたフル(無料)をDownloadしてね。」
「えっ?」
したにカーソルを動かしたら、
(呪いの曲)
と書いてあった。
私は恐怖感を募らせながら、Downloadした。すると、
っと出てきた。
[再生する]
っと書いてあったけど私は怖かったので、再生せずにサイトに戻ろうとBACKボタンを押そうとした時だった!!
「あれっ!?」
私は驚いた。電源ボタン押してないのに勝手に待受画面まで戻ったのだ。
確かめたが、電源ボタンを押した形跡も無かった。
「多分知らない間に指に触れたのかな」
と思い。ブックマーク一覧からアクセスしようとした。
「あれ?」
ブックマーク一覧にさっきのサイトが無かった。あれ、ちゃんとブックマークしたけど…。
私はアクセス履歴一覧を調べた。しかし、アクセス履歴一覧にも【無料着うたサイト】は無かった。
私は気味が悪くなってすぐに寝た。
朝になり私は同級生の友達に電話し、その事を話した。真剣に話したつもりだけど…友達は笑いながらこう言った。
「菜美って騙されたんだよ。そんな上手い話ある訳ないじゃん…っていうかブックマークしたのもサイト開いたのも夢じゃないの?っていうか今度その呪いの曲聞かせてよ」
「美沙(ミサ)もあの立場になったら絶対怖いって……ってか今の本当の話だからね。そういえば私も呪いの曲聞いてないよ。後で聞いてみ……」
「う゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!」
「キャッ!?……もう…美沙!!さっき何か言ったでしょ?」
「えっ?何も言ってないよ!!私何も聞こえなかったよ!!」
「嘘ぉ……?何か怖くなった…ゴメン。もう切るね……」
「う…うん。バイバイナミ?。何かあったら相談乗るからいつでも電話してね」
「分かったぁ…。ありがと…」
『プツン』
私は大きくため息ついた。何だろ?さっきの声…
低い声で…確かに女の声だったような……空耳かな?私はリビングへ行き、とりたくもない朝食をとる。私が顔色が悪いのを察したのかお母さんが
「あんた顔色悪いよ?どうしたの?どうせ夜中もずっと携帯いじってたんでしょ。」
っと軽く笑いながら流した。お母さんにはあの事は言わない方が良いかな?っと思った。どうせ笑われて軽く流されるのがオチだろう。
朝食を終えた私は部屋に戻った。
「呪いの曲聴いてみよ」
私は携帯を開いてさっそき再生を押した。
曲は44秒だった。
『スー…』
っと3秒間続いたあと
『殺してやる……殺してやる……殺してやる…』
っと37秒間続いた。
私は携帯を持つ手を震わせた……最後の4秒間は
『う゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!!』
とうめき声が聞こえ、曲は終わった。私は一時、凍りついた。曲自体も怖かったけど、最後のうめき声が美沙と話していた時に聞こえた声と全く一緒だった……
「何これ………?」
私は携帯を落とした。この曲は消えたサイトの制作者の悪戯なのか?それにしては、出来過ぎた曲だった。私は怖くなって一時、携帯を拾えなかった。
「この曲消そう…」
誰もが思うだろう…私は呪いの曲を消した。
「ふあぁぁぁ…」
不意に欠伸が出た。昨日夜更かししたので眠くなった。私は昼まで寝る事にした。
私は夢を見た。内容は………………………………
私は変な空間で一人で立っていた。周りは全部赤色だった。手には携帯を持っていた。すると携帯がいきなり鳴りだした…
『殺してやる……殺してやる……殺してやる……殺してやる……』
呪いの曲だった。
私は怖くなって携帯の電源を消した。
『殺してやる……殺してやる……殺してやる……殺してやる……』
その声は電源を消しても聞こえた。
私は遠くを見た。遠くから全身血まみれで赤いTシャツ・赤いスカートを着て、裸足でこっちに走ってくる…………
私は叫ぼうとしたけど声が出なかった。逃げたくても体が動かなかった。女はだんだん近づいて…
私の1メ-トル前まできてぴたっと止まった。女は右手に包丁を持っていた。そして女はこう言った。
『お……おまえ……は私が眠りについて……るのに封印を解きやがった………覚悟しなよ……』
と言って、包丁で私の全身を刺しまくった。
私は叫ぶ事が出来ず、動く事ができず、ただ女の全身に私の血が付くのを見るだけだった。
「キャア!!!」
私は目を覚ました。かなりリアルな夢だったので…怖かった。
時計を見ると、昼だった。物凄い量の冷や汗をかいていた。
私はリビングに行った。お母さんは昼寝していた。とりあえず風呂に入った。
そして風呂上がった後に、冷蔵庫からソーダジュースを取り、コップについで、巻きタオル一つでソファーに座る。
リモコンを手にし、ジュースを飲みながら、電源を入れようとした時だった!!テレビの黒い画面に血まみれの女が写った…
そして女はこう言った。
「消したって無駄だよ……………………」
そう言った瞬間、消えた。
「キャアァァァ!!」
私はコップを落とした。
あの女は間違いなかった……夢に出てきた女と同一人物だと……
「菜美ぃ…いきなりどーしたの?うるさいわよ」
お母さんが私の声にびっくりして起きた。
「ゴメン。お母さん…」
私はそう言って零れたソーダを拭いた。
「幻覚かなぁ?最近寝てないし疲れてるのかな」
っと私は無理矢理解釈しようとした。
「部屋におるね…」
私は一言お母さんに言って、部屋に行く。
私は考えた…
「テレビの中の女は確かに…『消したって無駄』と言った…何が無駄なのだろ……」
私はふと思いだした。
呪いの曲!!
私は携帯を開いて、音楽ファイルを見た。
「何これぇぇぇ!!?」
私は一瞬にして血の気が引いた。消したはずの【呪いの曲】が残っていたのだった。
私は【呪いの曲】を急いで削除した。
「何度でも削除してやる……」
そう思った。
私服に着替え流されるのを覚悟でお母さんに全てを話した。
「あら…菜美…怖い思いしたわね。幽霊って言いたいのかぁ………大丈夫?…………あっ!!そういえばお母さんの友達の知り合いにお祓いをタダでしてくれるお坊さんがいるよ。後で電話してみるね」
この時のお母さんは、素直だった。
「ありがと。お母さん…んじゃ頼むね。んじゃ部屋におるね」
私は部屋に行き、ふと思った。
「タダでお祓いしてくれるって……大丈夫かなぁ?…」
あれから一週間が経った。呪いの曲は毎回消しても消しても音楽ファイルに残った。でも血まみれの女は夢の中でも現実でも現れなかった。
次の日に、私は小さい頃に一緒に遊んでもらった麗花(私の5歳上)に呼ばれて、麗花の家に行った。歩いて10分で着く場所だ。
『ピンポーン』
家のチャイムを鳴らした。麗花は一人ぐらしだ。
「ガチャ」
「菜美ぃぃー!!久しぶりぃぃ」
「麗花ぁぁー!!っていうか髪染めたの?金髪じゃん!!」
「あっ…イメチェンだよ。とにかく入って」
「おじゃましまーす」
私は家に入って、ある物を見せられた。
「何これ!?」
「チェーンソーだよ買っちゃった。」
「えぇっ!!??何でよ?」
「いやぁ……ん飾りたくてぇ…」
「麗花って趣味悪いなぁ……」
「あぁん??何か言ったぁ??」
「いや……別に…………っていうか麗花に話したい事があるんだけど」
私はあの女の事を話した。最初の無料着うたサイトについて……夢の事……消えない着うた……テレビの事……全てを話した。
「菜美ちゃん……頭大丈夫!?」
「れ…麗花!!信じてよ!!!!!!!!!!!」
「嘘だよん。信じるよ。お祓い早くしてもらえると良いね」
「麗花ぁ…。人事だと思って…」
「ゴメンゴメン。っていうかその着うた聴かせて」
「うん…分かった」
私は携帯を開いて聴かせてようとした。その時だった!!
『チャン?チャン?♪』
私の着信音が鳴った。私は凍りついた。電話番号が表示されていなかった。非通知ではない。
「菜美。電話でしょ??でれば??」
「う…うん」
私は電話にでた
「もしもし?」
『お前の目の前にいる女をよく見てろよ……………………………』
『ガチャッ』
「えぇっ??」
「どうしたの菜美?」
するといきなり携帯がビクンっと動いた。
「キャアァァァ」
私は携帯を落とした。
っと同時に麗花が倒れた。
「麗花!?どうしたの?」
私は救急車を呼ぶために携帯を拾う。しかし…
「な……何で電源切れてるの??………………しかもつかないじゃん!!」
私は麗花の携帯電話で試した。しかし電源がきられていて絶対につかなかった。家の電話も試したけど繋がらなかった。
するといきなり麗花が立ち上がった。麗花の顔を見た瞬間、気を失いそうだった。麗花の顔じゃなくなった……テレビに写った顔…夢でみた顔と一緒の顔だった。
「こいつの……体借りたよ。お前を殺すには1番手っ取り早いからな……お前の親にとりつこうとしたけどな……この家にチェーンソーがあるじゃないか…ギャハハハハ…」
そういうと麗花の体を操ってチェーンソーの安全装置を外し、線を引っ張った
『ドゥーーーン!!』
チェーンソーの刃は激しく回る。
「キャアァァァ」
私は逃げようと玄関へ逃げ、ドアを開けようとした。しかし開かなかった。窓も無料だった。窓を割ろうとしたけど無駄だった。とうとう麗花に追い付かれた。
『死ねよ……』
麗花はチェーンソーを横に振った。私は間一髪よけた。そして私は近くにあった木刀で麗花の足をおもいっきり殴った。麗花は転んだ。手が滑ってチェーンソーが宙に浮いた。そして麗花の首に目掛けて刃から落ちた。
辺りは血まみれになった。
麗花の首が切断された。辺りは真っ赤に染まった。
「麗花ァァァァ!!」
首が無い体はまだ動いた。
『チッ……足の骨が折れてやがる……使えない体だな……』
麗花の首はそう言うと生き絶えた。体も完全に動かなくなった。っと同時に…私の携帯が鳴った。
お母さんからだった。
「菜美ぃ?お祓い行くよぉ?早く帰ってきて」
「う……うん…わ……分かった……………」
「菜美ぃ?泣いてるの?どうしたの?」
「いや……大丈夫だよ……バイバイ」
電話を切ると…私は決心した。「きっと女は私の携帯の中に…絶対に成仏させてやる!!」
私は血が付いた服じゃヤバイので麗花を着た。
麗花の死体の埋葬などは後回しだ。今の状況じゃ警察に言っても私が疑われるだろう……
玄関は普通に開いた。そして自分の家に帰った。
「あら…菜美?その服持ってたっけ?」
「う…うん。知らなかったの?」
「うん。まぁいいか…とりあえずシートベルトを閉めて。出発するわよ」
私達はお坊さんの待つ、寺へと行った。
「ねぇ菜美ぃ?」
「うん?」
「お坊さんにあんたの事話したら師匠みたいな人を呼んだらしいよ。自分じゃお祓いしても力がないから成仏しないってさ…。有料だけど…成仏は絶対できるってぇ」
「そっちが安心だね」
私達は山の方へどんどん向かっていった。途中で踏切があって渡ろうとした。しかしお母さんは線路のど真ん中で車を止めた。
「ちょっと!!お母さん何してんの?」
するとお母さんはこう言った。
『お前…私を成仏させようとしてるな?ふざけるなよ?……お前はここで死ぬんだ』
「えぇっ?お母さん…」
私はお母さんの顔を見た。
「キャアッッッ!!」
あの女がお母さんにとり憑いたのだ。
『キンコンカンコンキンコンカンコンキンコンカンコン………』
電車が来る合図音が聞こえてきた。数秒後に黒と黄色の縞模様の棒が下りる。
「キャア!!助けてぇー!!」
車のドアは開かなかった…
『ギャハハハハ…ここは人気が少ないんだよ…誰もいないしな……お前らは親子仲良く死ぬが良い…』
私は泣いた…………
「あ…あん…た卑怯よ……友達やお母さんにとり憑いたり……」
もの凄い速さで電車が迫ってくる。私はお母さんの手を握った。
「お母さん……ゴメンね…………」
『ギャハハハハハハ……』
『プーーーー』
電車のクラクションが鳴り響いた。
「ドォーーーーーーーーン!!!!!…………グシャ!!!!!」
車は大破して宙に上がり、やがて地面に叩きつけられた。
…………………………………………………………
…………………………………………………………
「ニュースです。二人の親子が線路に車を止めて自殺を図りました。二人とも即死です。車は大破してます。遺体は潰れて誰のか分かりません。
車の中の物も全部粉々に……。あっ!!携帯がほとんど外傷が無いまま、発見されました。奇跡ですね………」
END
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