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『ヒギョウさま』|洒落怖名作まとめ【田舎の怖い話】

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『ヒギョウさま』|洒落怖名作まとめ【田舎の怖い話】 田舎
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ヒギョウさま

 

今はもう廃業していますが、私の母方の実家は島根で養鶏場をしていました。
毎年夏休みには母親と姉、弟、私の4人で帰省していました。父は仕事が休めず毎年家に残っていました。
母の実家は島根県の邑智郡と言うところで、
よく言えば自然豊かな日本の原風景が広がる土地、まあはっきり言って田舎です。
そこでいつも一週間くらい滞在して、お爺ちゃんとお婆ちゃんに甘えながら楽しく遊びました。

田舎のことですので、お爺ちゃんもお婆ちゃんも朝がとても早く、夜がこれまたすごく早い。
朝4時ころには起きて、一番鶏が鳴く前に養鶏場の鶏に飼料をやり始め、
そのまま糞をとったり玉子を回収したり孵化器を見たりの作業をしつつ、畑の手入れをし、
夕方の5時ころには作業をやめて夕食、そして夜の7時ころには晩酌のビール片手にうつらうつらし始めるのです。
自然と私達も夜の8時ころには布団に入るのですが、そんな早くから寝られるものではありません。
布団の中でその日行った川での出来事や、明日何をしようか等考え始めると目が完全に冴えてしまい、
寝られなくなりました。

□ □ □

夜中、真っ暗な天井の梁を見るともなしに見ていると、
私達の居る居間の隣、お爺さん達の寝ている六畳間のふすまが開く音がし、
廊下をギシギシと誰かが歩き、玄関をあけて出て行きました。

そのまま夢うつつでボーっとしていると、
しばらくして柱時計がボ~ンボ~ンと12回鳴り、ああ、もうそんな時間かと思いました。
すると、5分くらいして玄関の開く音がし、誰かがサンダルを脱ぎ廊下をまたギシギシと歩き、
六畳間へ入っていきました。
お爺ちゃんかお婆ちゃんが、鶏の様子か畑の様子でも見に行ったのだろう。
そう思い、あれこれ想像しているうちに寝たようで、気が付くと朝になっていて、皆もう朝ごはんを食べていました。

□ □ □

夢うつつの状態での出来事だったので、夢かもしれないと思いましたが、
その日の夜、また眠れずに居ると、
やはり同じように夜中に誰かが外に出て、同じようにしばらくして戻ってくるのです。

次の日も、また次の日も、どうやらその誰かは毎晩11時30分に出て行き、0時5分ころ戻ってくるようです。
昼間に姉と弟に聞いてみても、二人ともぜんぜん気付いていない様子でした。
大人のする事にはなんでも興味があった頃のことです。
私は誰が何をしているのか見てみたいと思いました。

5日目、昼間あまり騒がないようにして体力を温存し、眠らないようにして、その誰かの後をつけることにしました。
これまで毎晩眠れなくて困っていたのに、眠らないようにしようと思うと今度は眠たくなるもので、
危うく寝過ごすところでしたが、何とかその誰かの気配で目を覚ますことが出来ました。

気配が玄関を出て行くの待って、私も玄関へ行き、サンダルを履いて外に出ると、
お爺ちゃんが、母屋から50mくらい離れたところにある孵化室の中へ入っていくところでした。

□ □ □

孵化室というのは、鶏の生んだ玉子を孵化器で暖めて孵し、生まれた雛をある程度まで育てる専用の建物で、
本来なら孵化所とでも呼ぶべきなのでしょうが、お爺ちゃんは孵化室と呼んでいました。
私もそっとお爺ちゃんの後に入ってみると、中は照明が付いておらず、
孵化器の中から漏れる、ヒヨコ電球のボンヤリとした赤い光だけが頼りでした。
薄暗いと言うか、コタツの中のような赤暗い中で、お爺ちゃんは凄く真剣な顔で孵化器の中を覗いていました。
そして、たくさんある玉子の中から3つほど取り出し、
玉子から顔をそむけると、いきなりブリキのゴミ箱の中に叩きつけました。
私はビックリして、「なにしょうるん?」と大声で言ってしまいました。
お爺ちゃんは私以上にビックリした様子で、倒れるんじゃないかと心配になるくらいの形相でしたが、
私だと分かると安心したのか、全身の力が抜けたようになって、
「なんじゃ、坊か。ビックリさすなや」と苦笑いを浮かべました。

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