田舎の伝承|怖い話・不思議な話
封印された箱
数年前の年末にあった話。
年末に金はないけどヒマだらけって感じで友達のKの家でダラダラしてたら、Kが家族からちょっと本家に行って蔵に風を通してきてくれと頼まれた。
それで一緒にダラダラしてた友達Bと俺の3人でちょっと離れたKの本家までブラブラ歩いていった。
Kの家は京都の上賀茂という地元でもなかなかの高級住宅街で、結構な家柄のそいつの実家っていうか、普段使っていない本家に大きな古い蔵があった。
到着して早速、風を通そうってことで入り口と窓を開け放して、ヒマついでに目についた古道具なんかを「これはネットで売れるんちゃう?」とか言いながらあさってたんだ。
普段使わない様な物を手前からどんどん放り込んであったせいか、蔵の入り口近くは比較的年代が近いガラクタばっかりだったんだけど、奥の方に行くほど古い道具がたくさん転がっていたんだ。
それで何かお宝でも出ないか奥の方を探ってみようってことで、積み重ねられた道具をどんどん掻き分けて奥の方に入っていった。
しばらくは古い本や年代物の茶碗とかを見つけて「スゲー!ネットで売ったら結構高いんちゃう?」とか騒いでいたんだ。
そうして探っているうちにBが奥の方で古い木の箱が何個か積んであるのを見つけたんだ。
それは角の所が黒い鉄で補強してあって両端に取っ手が付いてる、映画とか時代劇にでも出て来そうな昔の千両箱っぽい感じの箱だった。
かなり年季の入った雰囲気に何かお宝でも入っているんじゃないかってことで、そのうち何個かを外に出して開けてみようって事になった。
一応鍵らしいものが付いてたけど、古いせいか3人で力をかけると開けることができた。
最初に開けた箱にはボロボロの江戸時代っぽい古い本とかが詰まっていた。
何個か開けていったが、だいたいが古い帳簿とかそんな感じの自分たちには大して面白くもない物ばっかりだった。
そうやって何個か開けて行くと、そのうちの一つだけ中にもう一個箱が入っていた。
茶箱みたいな感じの箱で蓋に墨で文字が書いてあった。
薄汚れている上に3人ともアホなので何て書いてあるかは分からなかった。
けど、何か高い物が入ってそうな雰囲気があったので、ちょっとドキドキしながら開けてみた。
開けてみると汚い綿みたいな物が詰まっていたのでそれを取り出すとまた箱が出て来た。
拍子抜けして「箱開けたらまた箱が出て来たりしてw」とか「マトリョーシカみたいに最後まで箱やったりしてなw」とか冗談を言っていた。
ただ、よく見るとその出て来た箱は何か文字を書いた紙がたくさん貼付けてあった。
Bが「何かお宝っぽいなw開けてみる?」と言いながら中身を確かめる感じで軽く振ってみたんだ。
そうしたらなんか中はもう一個箱っぽい感じの音と感触だった。
さすがに厳重に封がしてあるのを勝手に開けるのは躊躇われたんで一旦中に戻す事にした。
そうこうしているうちに日も暮れかかって来て寒かったんで、もう帰ろうってなった。
あさってた古道具の中に3人が欲しい物もあったんで、Kの携帯で写真を撮ってKの親に一応許可を貰う事にしたんだ。あの封がしてある箱も含めて。
それで、その日は3人で飯を食いに行って別れた。
それからしばらくしてKからメールがあって、親に欲しい古道具とかの話ついでに封のしてあった箱の話をしたら、横にいた祖父にエラい剣幕で怒られたそうだ。
祖父に蔵まで連れて行かれて場所を確認したら、そのすぐ後に祖父が呼んだ親戚連中に蔵が整理されて箱はどこかへしまわれたみたいで、結局その箱が何なのかは分からずじまいだった。
そのあとKは上賀茂神社で厄払いを受けさせられたと言っていた。
その時とった写真のことを聞くともう消してしまったと言って見せてくれなかった。
たしかにコトリバコ臭い話だけど、箱はマジで出て来た。
近々Kと久しぶりに会うので話してOKなら蔵凸してくる。
実際の所、俺も厄払い云々の後日談はKが怖がらせようとして膨らませたネタやと思ってる。
まあ、時間も時間なんでこのスレの事とかを明日Kにメールしてみる。
座敷わらしを囲う家計
突然なんだがうちの家系は代々座敷わらしを囲う家系なんだとさ
バァちゃんの代でそれも途切れたって話を両親からよく聞かされてたわ
途切れた理由は男とデートに夢中で水と食事を与えるのを忘れてたっていう下らない理由
まぁアホらしい理由だよな、豪快でエネルギッシュなバァちゃんらしいっちゃらしいわ
でもさ、座敷わらしって水や食料なんかとるのか?お化けだろ?って聞いたんだよ
そしたら両親は笑ってた。バァちゃんも笑ってた
俺の好奇心は寝たきりのジイちゃんにまで及んだんだよ
そしたらジイちゃんな、「(俺の名前)はテレビや人の言う事を信じているのかい?悪魔や悪霊なんて物は
所詮人間が作り出した物なんだよ」
その後もしばらくジイちゃんと会話してた
ジイちゃんから色んな話しを聞いた。戦争時代やジイちゃんの父、祖父に至るまで
特に戦争時代、前線で活躍してる時右耳の鼓膜破った話しなんかはジイちゃんが輝いて見えた
うちのジイちゃんは物知りでさ、知らない事なんてないんじゃないかと思うほどの人
んで肝心の座敷わらしの件なんだが、それも教えてくれた
なんでも大昔、俺の住んでる所は大飢饉や災害で相当の人が亡くなったらしいんだ
んでここいら一帯の人達は部族のプライドが高く、他の部族を寄せ付けない人種だったんだとさ
そんな人達が他所から新しい血を混ぜて、一族を繁栄させようなんて思う訳も無く
当然、部内で子孫繁栄を目指したんだと
結果生まれてくる子はアレな子も多かった訳なんよ
でもそんな子、誰も育てる余裕なんてないよな
そこで当時いくつも「蔵」を持ってたうちの家系の出番
愛玩用として育てたんだと
大きくなって、♂は貴婦人や未亡人に、♀は独身男性にって具合
それを「お座敷わらべ」って呼ぶんだと教えてくれた
当時似たような境遇の村なども表には出さないがこういう事はよくあった
だから一つ買えば幸運を、2つ買えば子孫繁栄、3つ買えば孫の代まで~みたいな売り言葉ができた訳だ
当時へーと聞いてた俺だが今思えば要は人身売買だわな
おもしろい事にジイちゃんはこの話、河童や妖怪なんかにも通じていると言った
夜中に彼らを運動させに外に連れて歩くんだってさ
そこで事情や自分の村の裏の顔を知らない「子供達」がそれを目撃する
街灯も無く、ロウソクに頼らなければ真っ暗な道でそれを子供達が目撃する訳だ
親たちは子供に汚い大人の世界を教えたくないために河童や妖怪のせいにする
これが日本の妖怪の正体だとジイちゃんは笑ってた
当時お化けは実在しないんだと安心したなぁ
真実とは蓋を開けてみるとこんなにも簡単なんだな
でもよく考えたらバァちゃんの代まで続いてたんだよな?
男とデートって人が餓死するまでデートしてたのか?
ちょっとも罪の意識は無かったんだろうか
今は途切れたって事はその最後の子が亡くなって終わりって事だもんな
まぁこういう訳で、座敷わらしはもう存在しないかもってお話しでした
遺言書…
私は中学二年の時、祖父が死にその葬儀に行く事になった。
当時、北海道に住んでいた私にとって 本州に住んでいる父方の祖父とは会う機会も少なく、
また祖父の性格も寡黙で孫を可愛がると言うよりは我が道を行くタイプだったので、
あまり身近な存在ではなく正直そんなに悲しい気分にもならなかった。
むしろ学校を休んで遠い所へ旅行に行けるくらいの気分だった。
仏教で言う通夜と告別式は神式で行われ、お坊さんが読経を上げるお葬式しか知らなかった私は
平安時代のような恰好の神官が暗闇の中で行う儀式を弟と「なんか格好良いね」などとコソコソ言い合い興味津々で参加していた。
そうして一連の儀式は無事終わり、「次は火葬場へ移動か?」と思っていたがなかなか皆動こうとしない。
近くにいた叔母に聞いてみると
「火葬はやらんよ。ここらはみんな土葬なの。だから大仕事の前にちょっと休憩よ。」と言う。
土葬なんて未だにやる所があるんだとびっくりすると同時に、これは学校で話のネタになるなと考えた。
しかし大仕事って何だろう?遺体を埋める穴掘りの事だろうか?
しばしの休憩が終わり、父や親戚のおじさんが祖父の遺体を縁側に運び始めた。
そこで遺体を入れる桶が庭に運び込まれた。座棺とよばれる木でできた凄く大きい桶だ。
ドリフ好きの私は「志村のコントのヤツだ!!」と内心大喜び。
しかし弟が明らかにニヤニヤ私に合図して来て、あまり分かりやすく喜ばれると私まで怒られてしまうので慌てて弟から離れると、ギリギリセーフ。
母が弟を連れて家の中へ入って行った。
危なかった。大事な場面が見られない所だった。
気が付くと従兄弟たちもどんどん家の中へ連れて行かれている。
これはマズイなと思い、あまり声を掛けてこなそうな村の人達に紛れて身を隠してみた
そうしてしばらく経つと周りはシンと静かになり、座棺を取り囲み目を閉じて頭を下げ始めた。
私はどうやら参加できるらしい。
父を含めた親戚の男四人が祖父の遺体を持ち上げ桶の中に入れようとしているが
死後硬直をしている遺体はまっすぐ延びたままになっている。
ああ、このまっすぐな体を曲げるのが大仕事なんだなぁと思っていると、
ゴキッ、ゴキゴキ グッガキッ…
背筋が凍りそうな嫌な音が響き始めた。
ゴキゴキュッ、バキッ…
驚いて顔を上げてみると、父や叔父たちが祖父の骨を折っているのだ。
静まり返った中で、骨を折る音だけが響き渡る。
怖くなった私は逃げ出そうにも、皆が一様に黙礼し静止する中で動く事が出来ず、
必死に下を向いて耐えた。
頭にこびりつきそうな嫌な音は、祖父が桶の中で膝を抱えて座るようなポーズが出来上がるまで鳴り続けた。
やっと終わったと思って顔を上げた瞬間、
グキャッ
と一際嫌な音と共に首が後ろへ曲がる。
思わず手で顔を覆ってしまった私を見て隣にいた中年の男が
「生き返ったらいけないからね」と言った。
その日、私は何も食べる気にならなかった。
次の日、父があまり会社を休めないと云う理由で少し早いが遺言書を開く事になった。
父の兄(長男)が
「本当は死んだらすぐ遺言書をあけてくれって本人には言われてたんだけど、葬式も終わってないのに遺言書を見る訳にはいかんからな。」
と言うと、父が
「今更遺言書って言われても、もう内容わかってるしな。」
と返した。
祖母はすでに亡くなっていた為、実家の家と土地は面倒を見てくれた長男に、後の現金は兄弟仲良く6等分だと生前祖父がよく言っていたらしい。
皆も納得していたので、公正役場や弁護士は通していない手紙形式のいわば遺書のようなものだ。
長男が遺言書を読み上げ始めて、一同が戸惑いの表情を浮かべた。
「葬儀については、親族のみの密葬で執り行うこと。
村の煩い奴らは火葬を厭いバカにするが、自分は子供の頃から土葬の骨折りがとても恐ろかった。
孫も怖がらせたくないし、どうか火葬で弔って欲しい。」
コメント