確かに、俺は立て続けに近しい人間が命を落とし続ける状況に、いっそ殺してくれと思い続けていた。
今回も、殺されに来たぐらいの腹づもりだった。
そしてそれは今後も、俺が寿命を迎えるまで続くのか。
絶望的な気持ちで俺は「俺が死ぬまで、続くんですね。」と呟いた。
そしてもうひとつ、どうしても聞いておきたかったこと。
妻と子供は、やはり呪術によって命を落とすことになるのか。
それを防ぐにはどうすればいいのか。
もう久しく親しい友人すら作らなかった俺がまさか嫁をもらうことになるとは、
一年前の俺には想像もできなかった。
妻にはこの話をしていない。
ただ、しつこいぐらい俺と一緒になっては命だって危ないと警告した。
理由を話してくれと何度も言われたが、巻き込みたく無いので話せなかった。
話すことで、恐ろしいことに、それこそ自分が死ぬよりはるかに恐ろしいことが起こるとわかっていたから。
だが妻は受け入れてくれた。
妻は幼い頃、両親と妹を自動車事故で失っている。
同乗していた妻も瀕死の重傷だったが、一命を取り留めている。
「一度無くなってたはずの命だし、ちょっとのことじゃ死なないから、安心して。」と。
彼女と知り合ったのが去年の夏、正式に付き合うことになったのが半年前。
妊娠発覚が1月で今は妊娠6ヶ月だ。
妻と付き合うことになってから、俺は幸せだった。
幸せだった故に恐ろしかった。
いつ妻が死んでしまうか。
いつ我が子が死んでしまうか。
毎日怯えていた。
一番近い、そして唯一の近しい人間。
いまや家族となった妻と我が子、すぐにでも厄災が降り注ぐのではないかと気が気ではなかった。
だが妻はもお腹の子も、今はまだ無事だ。
神主は結婚していることにたいそう驚いていた。
俺は上の経緯を、神主に話した。
神主「これも憶測だが。さっき話した君の厄災は死ぬまで続く、という話だが、撤回しなければいけないかもしれない」
神主「子供ができたこと、今回はこれが幸いしたんだろうな。恐らく男の子だろう。」
その通り、男の子だ。
神主「子供が産まれた後、奥さんに厄災が降りかかる可能性が高い。」
神主「君同様、息子さんは無事に生きるだろう。」
神主「だが息子さんにとって、とても過酷な人生になるだろう。」
神主「君が死んだ後も、続くだろう。君の子供に君と同じ厄災が」
頭が真っ白になった。
神主「心配するな。君とその周りに厄災が降りかからないようにするから。」
神主「君がここに来てくれて良かった。行方知れずだから、私は何もしてあげられなかった。」
神主「奥さんには帰ったらちゃんと話しなさい。」
神主「奥さんと息子さんはここに連れてきてはいけない。」
神主「その代わり、東京にいる私の知り合いを紹介しよう。」
神主「とても優秀な人だ。東京に帰ったらできるだけ早く尋ねてみなさい。」
神主「C君は改めて一度、ここに連れてきなさい。」
神主「このままでは、C君が厄災を一手に引き受けることになってしまい兼ねない。」
涙が出るほど安心した。
が、俺の中にはまだモヤモヤしたものがあり続けた。
Bに呼ばれている、必ずBに会わなければいけない、
そうすれば少しは状況が良くなると思う。
そう神主に伝えると、神主は厳しい表情で否定した。
神主「さすがにあそこに言ったら、君も死ぬかもしれない。」
神主「しかも、その結果は最悪のものになるだろうね、多分。」
神主「Bは簡単に言うと、化け物になってしまったんだ。」
神主「君やC君があそこに行き、死んでしまったら、君らも化け物になるだろうね。」
神主「余計に厄災が大きくなるだけだ、辞めておきなさい。」
後ろ髪を引かれる思いはあったが、
この神主の言うことなら信用しようと思った。
あともうひとつ。
2chにスレを立てたことをオブラートに包みながら神主に聞いてみた。
不特定多数の人間が見れる場所で、
インターネット上でこの話をした場合、どうなるか。
これも神主の憶測だが、何か起こる可能性は低いようだ。
ただ、特別感受性が強い人や、
何か良からぬものを抱えている人には影響が出ることも有り得ると。
そして、俺が考えたように「受け皿」を広めることによって、
俺の周囲への厄災が弱まる可能性もあると。
ただ、広めることによってさらに大きな影響が出る可能性もあるから、辞めておけと言われた。
もしかしたら読んだことによって何か良くないことが起こっている人もいるかもしれない。
それについては、申し訳ないと思う。
その後、今日妻たちを神主が紹介してくれた神社へ挨拶に行って、
ひと段落したので報告でした。
何か悪いことが起こってるなと感じた場合、
塩、酒、酢は利くようです。
一日一度舐めるだけでも、随分違うようです。
それでは。
■話はここで終わりましたが、興味深い雑談が続きます。
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