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『ママもやってたもん』|洒落怖名作まとめ【長編】

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『ママもやってたもん』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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ママもやってたもん

 

結婚、家庭を巡って、何年にも渡って恐ろしい目に遭った。
先日やっと心が落ち着き、誰かに聞いてほしくてこの話を投稿する次第だ。
長文になることを許してほしい。

元妻と結婚したのが10年ほど前。私の会社でバイトとして入ってきたのが出会いだった。
同棲を経て結婚に至ったのだが、元妻は家族とは仲が悪かった。
お互いの家族には散々反対されたが、私たちはそれを押し切って結婚した。
まもなく子供が生まれた。女の子だった。(仮にAとする)
それから3年ほど経って、第二子が誕生。男の子だった。(仮にBとする)

二人ともすくすくと成長し、Aが来年幼稚園に入園となった年。
Bがよく怪我をするようになった。
擦り傷や打ち身という大したことのない傷だが、
転べば泣き喚くのが子供だろうに、元妻はまったくそういった現場に居合わせていないという。

最初は元妻の虐待を疑ったが、
どんなに子供が泣き喚こうと根気よくなだめたりしていて、
ストレスを溜めている様子はなかった。
元妻はBから目を離さないように、料理や洗濯のときも、
必ず視界に入る場所にBをいさせるようにした。

ある日、元妻がトイレに行って戻ってきたときのことだった。
Aが嫌がるBの口を手で塞ぎ、顔を力いっぱいつねっていたのだという。
元妻は動転しながらBからAを引き離し、叱ったそうだ。
「どうしてこんなことするの!?」と。
するとAはあっさりとこう答えたそうだ。
「だって、ママもやってたもん」
元妻は背筋が凍ったという。

確かに家族とは仲が悪かったという話は聞いていた。
私たちが結婚するというとき、最後まで止めようとしていたのは妹さんだった。
元妻は否定するが、おそらく妹さんは、元妻にいじめられていたのだろうと、
このときおぼろげながら思った。

「ママがそんなことしてたって、どこで聞いたの?」
さりげなく元妻が聞いてみたらしいが、Aはまったく答えなかったという。
ただただ「知ってるから知ってるんだもん!」と叫ぶばかりだったそうだ。
Bの怪我の原因はすべてAだったらしい。
BはすっかりAといるのが嫌になったようで、
Aが部屋に入ってくると、元妻の足元に逃げ込んでくるようになってしまったらしい。

それから元妻は、Bを自分の周りから離さないようにした。
それがさらにAには面白くなかったらしく、とうとう元妻がいる目の前でBを叩いたりするようになった。
止めて叱っても、「ママだってやってたからいいんだもん」と聞く耳を持たない。

そうしている間に、Aが入園の時期を迎えた。
これで少しはBも気楽に家ですごせるだろうと元妻が安堵していると、
幼稚園から電話が入ったそうだ。
Aが他の園児と、毎日のようにケンカをしているのだという。

それも、悪口を言い合ったり、多少の取っ組み合いだったりなどという生半可なものではないらしい。
Aとケンカになった園児の一人は、後ろから押されて前のめりに倒れ、口の中を切ったとか、
気の弱い園児は校庭?の真ん中でパンツを脱がされたりと、
ハイレベルないじめ行為だったらしい。

元妻は騒ぎの度に幼稚園に行っては謝り、
被害者の園児の家に行っては謝り、かなり疲れ果てていた。
幼稚園の先生が叱っても、やはり返事は「ママがやってたことだもん」の一点張り。
当然ながら、元妻の評判は園内ではガタ落ち.
それも元妻の負担になっていた。

家に帰ってきたら帰ってきたで、Bのおもちゃを隠す、壊すなど。
Aは私の言うことにもまったく耳をかさず、元妻もノイローゼ気味になり、
とにかく家は家庭崩壊寸前だった。

そんな折、決定的な事件が起こった。
Bが死んだのだ。
私たちが寝ている間の真夜中、寝かしつけたはずのAが、Bの首の上に馬乗りになり、
『おうまさんごっこ』をやっていて、窒息したのが原因だった。
最初は息があった。トイレに起きた私が急いで病院に連れて行ったのだが、助からなかった。
医師にいろいろ聞かれたが、何と話していいかもわからず、わからないとしか言えなかった。

元妻はいよいよ心労が募り、胃を壊したり、高熱を出すことが多くなった。
Bの一件から、Aの様子はほとんどかわらない。
幼稚園から小学校に上がっても、悪戯はエスカレートする一方でしかなかった。
ママがやっていたことだと主張しながら・・・

元妻には悪いと思いつつも、私は元妻の両親に連絡を取り、彼女の子供時代の話を聞くことにした。
Aがあんなになってしまう原因が何かわかれば、と思ったからだ。
私はそれまで元妻の両親とは連絡を取っていなかったが、意を決してAの事をすべて話した。
予想通り、元妻は妹さんをいじめていたらしい。両親に隠れて。
元妻の両親は青ざめて、『確かにいじめてはいたけど・・・そこまで酷いことは・・・』とのこと。
現に妹さんは、結婚して家を出てしまっただけであって健在だ。
だが、妹さんの小さい頃の写真を見せてもらったのだが、Aにそっくりだった。

妹さんとの関連の疑いが濃くなってきたので、
「妹さんに話を聞けないか」と掛け合ってみたところ、電話をしてくれた。
しかし、彼女は両親から話を聞いただけで、私と話すことは拒否。
『関係ない人間に責任を問うのはやめてほしい』と言われてしまったそうだ。
しかし、Aの病気?の原因は元妻と妹さんの関係にある気がしてならない。
私は妹さんに、「元妻は連れて行かない。私とAだけであなたに会いたい」と両親を通して伝えてもらい、
最初は嫌がっていた妹さんだったが、渋々会ってくれることになった。

Aを連れて待ち合わせの場所に着いたとき、妹さんはAの顔を見た途端、絶句した。
自分に似ていることにすぐ気づいたのだろう。彼女もさすがに驚いたらしい。
下手に疑うような目で見るのも失礼だったので、そこには触れずに彼女から過去を聞いた。
具体的な話はできないが、兄弟間の諍い程度で済む話ではなかったことは確かだ。
だからといって、やはりこれをAと結びつけるのにも無理があった。
しかし妹さんも、あまりにも自分に似ているAを見て動揺したようだ。
とりあえずその日は、私は妹さんに私の連絡先を教えて帰った。

帰ったら、またとんでもないことになっていた。
Aが寝込んでいる元妻に馬乗りになっている。
Bの時の悪夢を思い出し、動転しながらAをどかした。
元妻は多少咳き込んだだけで、意識もしっかりしていたし、怪我などもなかった。
私も妻も、この頃には完全に疲れ果てていた。

離婚の話が持ち上がったのが、この事件のすぐ後だった。元妻が限界に達したのだ。
普通の親なら親権を奪い合うものだが、私たちは押し付けあった。
散々もめた挙句、元妻の実家が引き取ることになった。
妻はその後、私の援助を受けながら精神病院に入院し、程なくして自殺してしまった。
Aと妹に罵られ、追い回される夢にうなされ続けたらしい・・・

離婚とともに引っ越して、身の回りが落ち着いた頃、会社に元妻の妹さんから電話が来た。
(当時は携帯は普及してはいたけど持っていなかったので、会社の内線番号を教えていた)
別れたと両親から聞き、気になって連絡を遣したのだという。
元妻が精神病院に入院した後自殺たという話をしたら、なんとも複雑な声で、
『あの・・・つい先日、Aちゃんに会ったときに、『よかったね』って言われたんです・・・
何のことだかわからなかったけど、ひょっとしてそのことだったのかも・・・』

やっぱりAには、彼女の生霊がついていたんだろうか。
彼女は何も知らない振りをしながら、元妻に復讐したんだろうか・・・
今ではもう妹さんとも連絡は取れず、
私も元妻とその周りとはは関わりを絶ったので真相はわからない。

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