『住職への相談』『祖父の家』など全5話|【短編】本当にあった怖い話

『住職への相談』『祖父の家』など全5話|【短編】本当にあった怖い話 短編

 

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住職への相談

大分昔の話。

友達のかあちゃんが運転中に前の車にぶつけてしまった。
保険屋を通しての賠償は勿論、直接相手の元へ出向いたりと誠心誠意謝罪をした。
だが、このぶつけてしまった相手ってのがねちっこいやつで、
更に金を要求して来たり、自宅まで来て大声で怒鳴りたてたりを毎日のように繰り返して来た。
友達のカーチャンは参ってしまってノイローゼ状態。
飯も喉を通らないし、チャイムの音に逐一脅える程にまでなってしまった。
いよいよ困り果てた友達のカーチャンは、昔から何かと世話になっていたお寺の住職にこの事を相談した。
カーチャンの話を聞いた住職は、しばらく黙り込んだ後にこう言った。
「相手がどうなっても良いですか?」
追い詰められていたカーチャンは、藁にでもすがりつく思いで返答し、帰宅した。

それから数日、毎日のようにいちゃもんを付けに来ていた男はぱったりと来なくなった。

カーチャンは相談をしていた住職の所へ現状報告に出向いた。
住職はにっこりと笑って「良かったですね」と言った。
それから、どれだけたっても男が家に来る事は全くなかった。
カーチャンの体調もすっかり良くなって本来の生活に戻っていた。

やがて、男の事なんてすっかり忘れていた頃に、親戚でもあり事故の時に世話になった保険屋から、こんな電話がきた。
「あの男、死んだらしいよ」
死んだ時期を計算したら、カーチャンが住職に相談をしにいった直後だったという。
この寺は未だにある。

 

祖父の家

ガキの頃の体験談をひとつ書いてみる。
幼稚園くらいの話だけど、今も鮮明に覚えてる。

祖父の家が結構近くて頻繁に家族で通ってたんだけど、
祖父の家は関東で、田舎でもなければ都会でもない中途半端な所だったから、
特に娯楽がなく、退屈だからいつも外に遊びに出てた。

その日も退屈して外に行こうと思って、玄関のドアを開けたら何故か夜。
びっくりして、玄関の前にある鉄柵(祖父の家はマンション)から乗り出してみたら、ぜんっぜん風景が違う。
配管がたくさん通ってて、工場みたいな場所。いろいろと機械の凄い音がしてたから、稼動してたのかな?

怖くなって、祖父の家に戻ろうと思って振り向いたら、
玄関のドアが何百年も使ってないみたいに錆びてて、ノブも回らない。
焦って半泣きでドアを蹴る殴るしてもビクともしなくて、座り込んでわんわん泣いてたら、
突然ノブが回ってドアが開いた。
したら中からばあちゃんが出てきて、ばあちゃんも泣きながら俺を抱きしめてきた。
玄関先でわんわんやってたら、両親と祖父と親戚の叔父と叔母と警察が戻ってきた。
どうやら昼過ぎに出てったっきり戻ってこなかったらしく、警察に連絡して親戚一同で探し回ってたという話。
ちなみに、俺が戻ってきたのは夜中の1時。

全力で説明するも勿論誰も信じてくれず、カーチャンに死ぬほど怒られてまた泣いた。
未だに謎の事件。
正月に親戚集まって昔話すると必ずこの話をされるが、俺にもわかんない。

 

鮎釣り

山奥の渓流に、鮎釣りに出掛けた時のこと。
その河原に鮎師の姿は無かったが、その代わりに色々な道具が置いてあった。
無造作に投げ出された、高価そうな鮎竿。
天然木で作られた綺麗なタモと、水に半分浸けられた囮缶。
使い込まれた風なクーラーボックスとザック、仕掛けを作るための道具箱等。
鮎竿は組まれた状態で、仕掛けもちゃんと付けてある。
ただ、仕掛けの囮鮎が死んでいた。
誰かが釣りの途中で場を外したのだろうかと思ったが、どうも様子がおかしい。
近くに寄るとタモの上に、これまた死んだ鮎が載っていることに気がついた。
まるで、釣り上げた鮎を針から外した直後に、当の釣り人がパッと宙に消えた。……そんな情景を想像してしまった。
「誰かいませんか?」
そう呼ばわりながら、囮缶を開けてみた。
白い腹を上にした囮鮎が何匹か、その中に浮いている。
やはりすべての鮎が死んでいた。

どうにも不気味だったので、別のポイントで釣ることにしてそこを離れた。
帰り際にも覗いてみたが、道具は彼が見た状態のままで捨て置かれていた。
釣り人が帰ってくる気配はない。
一応漁協に報せておいたが、今に至るも詳細は不明のままである。

「事故じゃなかったのならいいんだけど、ちょっと気持ち悪いよね」
そんな事を言いながら、彼は相も変わらずそこの沢に通っているそうだ。

 

ひょっとこのお面

俺の爺さんには従兄がいたらしいんだが、10代前半で亡くなっている。
それがどうも不自然な死に方だったというので、
死んだ当時は親戚や近所の連中にいろいろ騒がれたんだそうだ。

戦後すぐの物がない時代のある日、
その従兄は友達と何か売ったり食べ物と交換したりできるものはないかと、実家の蔵の中をあさっていた。
その従兄はうちの本家の人間だったので、
蔵にはガラクタとも骨董品ともつかないものがごちゃごちゃとあったらしく、その中から何か見つけてやろうと思ったらしい。
探しているうちに、ひょっとこのお面を見つけたそうだ。

そのお面が気に入ったのか、従兄はそれをかぶって通りに飛び出し、でたらめに踊りだした。
もちろん一緒にいた友達連中にもバカ受けで、ひとしきり大騒ぎして、
そのまま夕方までひょっとこの面をかぶって遊んでいたらしいんだが、
そのうちに従兄が何かにつまづいたか、突然転んで道に倒れて動かなくなった。
最初はふざけてるのかと思ったが、呼んでもゆすっても返事がないので様子がおかしいと思い、
すぐに抱え上げて、本家の座敷に連れて帰った。
倒れたままの状態で身体はほとんど動かないが、かすかな声で「面を・・・面を取ってくれ・・・」とうめくのが聞こえる。
あわててひょっとこの面を取ると、顔色は土色、唇は紫、すっかり生気がなくなっていて、まさに死人の顔だったという。
もうほとんど呼吸もはっきりしない状態の従兄をみて、家族も半ば覚悟して医者を呼んだ。
従兄が倒れてから医者が来るまで、実に30分と経っていないはずだった。
しかし、駆けつけた医者は従兄をすこし見てすぐに、厳しい調子で家族に言った。
「どうして放っておいたんですか!?亡くなってから半日は経ってます」

 

長い毛が絡みつく

中学生くらいから髪の毛が手に絡みつく。
皆経験があると思うが、洗濯後のタオルや洋服とかに髪の毛が付いてるアレだ。
母親や妹の髪の毛だと思ってた。
必ず1本だけ、服を着る・タオルを使う・顔を拭く時に指に絡みつく。
高校は男子校なので、それこそ短髪だらけの男の園。

制服に長髪が1本、これは電車か何かで長髪の女性の髪の毛が付いたものと。
何だかんだで長髪の毛が指に1本絡みつく生活が20年続いた。

転勤でウィークリーマンションに住んでいた時、バスタオルに長い髪の毛が付いてるときがあった。
枕元に長い髪の毛が1本だけ落ちてるときがあった。
ノートパソコンのキーボードに長い髪の毛が1本落ちてるときがあった。

何の変哲も無い事なのに、ありえない状況化で実際に起こると恐怖を感じる。
俺は自身の生活圏内で、長い髪の毛を持つ『人間』が居ないことに気が付いてしまった

 

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