『モーニングコール』|洒落怖名作まとめ【長編】

『モーニングコール』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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モーニングコール

 

かなり昔、付き合って三ヶ月ぐらいの彼女と
ちょっとした遠出の後に夜も遅くなってきたから
彼女も満更ではなかったので初セクロスをするべくちょっと郊外のラブホテルに行ったんだよね。

郊外といっても施設は思ってより豪華で彼女なんか凄いノリノリ。
で、俺達は201号室に泊まる事にしたんだわ。
まぁラブホ行った事のある諸君なら分かると思うが入り口にある。
部屋一覧表のボタンを押すタイプのやつでフロントと余計な接触を避けるタイプ。
俺も結構恥ずかしがり屋だったからこういうのはいいよなと思いながら201号室へ。

部屋についたら内装も綺麗で彼女もわー凄いと言いながらベッドで飛び跳ねているぐらい。
それを見ていたら俺もついムラムラしちゃって彼女に抱きついちゃった。
「駄目、お風呂に入ってから!」と拒否されたんだよね。
まぁ俺は仕方無く今は諦めて彼女を風呂に行かせたんだよ。
風呂後のめくるめく熱いセクロスを想像してティンコをギンギンにしながら待っていたわけだが。

そうこうする内に彼女が風呂から戻ってきて石鹸のいい香りを撒き散らかせながら
「お風呂どうぞ」と言ったものだから俺も風呂に行こうかなと思った時、

ドンドンドンドンドン!ガチャガチャガチャガチャガチャ!
バンバンバンバンバン!ガチャガチャガチャ!

そりゃもう俺も彼女も心底驚いたよ。
静かでいいムードだった時にいきなりドアを叩く音が聞こえるんだから
しかも開けようとガチャガチャとノブを回しているのだし。
きちんと鍵をかけておいたからドアは開かずに済んでいるわけだが。
「びっくりした…酔っ払いさんなのかな…?」
と彼女が怯えながら言ってきたんだよね。

確かに時間も考えたら酔っ払いが部屋を間違えているのかな?と思いつつ
まぁ酔っ払いだったらすぐ静かになるだろと酔っ払いがどこか行くまで
極力彼女を怖がらせない様に彼女の頭を撫でる事にしたんだよ。
彼女も気を利かせて俺の股間のテントを撫でてくれたらどれぐらい幸せかなと思いながらもな。

それから5分ぐらい経ったかな?
どこかへ行くだろうと思ったけど酔っ払いらしき人のノック音はいまだ止む気配がない。
すぐどこかへ行くだろうと思った俺達もこれはやばいんじゃないか?と考え
フロントへ電話する事にしたんだ。

備え付けの受話器を上げフロント直通の番号を押して、プルルルルルルル…の後、
すぐに「はい、こちらフロントです。」と男の人の声で繋がったので
「すみません、なんか外で人が部屋のドアをドンドン叩いたりノブを回したりしているんですが…。」
と今も止まないドンドン音に嫌気を感じながら苦情を述べたんだよね。

そうしたらフロントも分かっている様な感じでこう言ったのよ…。
「あー…申し訳ありません。201号室でしたよね確か?そこの部屋、そのなんと申し上げますか…。
霊感の強い人が入られると出てきちゃうんですよね…そのまぁ霊が…。
ちょっとすればすぐ止むらしいですが、お気に召さない場合は部屋を変えますがどうしましょうか?」
流石に酔っ払いの悪ふざけだと思っていた
俺もまさか霊がどうこう言われるとは思わなかったので
ゾッとしちゃったんだよね。

あまりにも気味が悪いからフロントの好意に甘えて、
「それだったら部屋のチェンジをお願いします。どうしたらいいでしょうか?」
「では一度フロントまでお越しになってキーを返却し、新しい部屋のキーを受け取り下さい。
それではお待ちしております。」
と指示を受けたので受話器を元に戻して彼女にそれを言おうとしたら…
さっきまでうるさかった部屋のノックが急に止んだんだよね。

静かになったものだから彼女もふぅーっとため息をついて、
「やっといなくなったね、で、フロントとはどうなったの?」
と聞いてきたから正直に霊云々の事も話して部屋移動の事も話したら
「何それ…気持ち悪いよね…。とりあえず荷物まとめて部屋出ようか…。」

正直、帰りたいと言われる事も覚悟したが彼女もここまできたら満更ではない様子。
さっさと部屋移動して励みますか!と荷物をまとめる事にしたんだ。
彼女の方は怖さを紛れさせたいのか「着替えるからこっち見ないでよね!」と
わざと元気そうな声をあげていたりしたわけだが。

まぁ俺と彼女もすぐに着替えてさっさとこの部屋からおさらばしたいと
荷物をまとめるのもやたら早くなっていたのよ。
そうしたらさ…またさ…

ドンドンドンドンドン!ガチャガチャガチャガチャガチャ!
バンバンバンバンバン!ガチャガチャガチャ!

またドアの外から聞こえてきたんだよ。
なんで部屋から出ようと思っていた時にまた…。と思いながら
どうしようと彼女と目を合わせちゃったんだよね。
しかも今回は霊っぽいのがいるという裏事情も知っちゃったわけだしどうしようもない。

フロントの方に助けを求めようかと思って受話器を上げてもう一度フロントへかけたの。
今度はすぐに「はい、フロントです。」と今度は女の人の声で聞こえてきたから
「すみません、201号室ですがまた外で音が出てきたんです、こちらまで来ていただけますか?」
と助けを求めたんだよ、そうしたらさ
「はい、モーニングコールは朝の7時ですね、承りました。」
と意味不明な事を言ってくるんだよ。

俺も頭の中ではぁ?と思いながらも
「いや、こっちが言ってるのはさっさとこっちに来て欲しいのですって!」
と同じ事を何度伝えても

「はい、モーニングコールは朝の7時ですね、承りました。」

「はい、モーニングコールは朝の7時ですね、承りました。」

「はい、モーニングコールは朝の7時ですね、承りました。」
とオウムの様にしか繰り返さないんだよ。

あまりにも気味が悪くなって一旦受話器を下ろして
もう一度フロントの番号を確認してかけてみたら
またさっきと同じ女の人の声で
「はい、モーニングコールは朝の7時ですね、承りました。」
…流石にこれはヤバイと思った俺は受話器を放り投げて怖がっている彼女を抱きしめながら
「ちょっと我慢しろ、すぐ落ち着くから!」
そう言ってどうすればいいんだろうとひたすら頭の中で考えていたんだ。

そうしたら今度はさ、ドアの右側のカーテンがかかっている所からも
窓ガラスを叩く様な音の感じでガンガンガンガンガンと聞こえてきたんだよ。
え、この手のホテルって廊下から見えない様に普通は壁で覆われているよな?
と思いながらおそるおそるそっちまで行ってカーテンをめくってみる事にしたんだ。

…いまでも思う。その時カーテンをめくらなければいいのにと後悔しているが。

カーテンをめくったら窓があったんだが…
磨り硝子だからよく見えないのだが明らかに
子供っぽいのが何人もガラスを叩いているのが見えたんだ。
よくこういう現場は腰が抜けるという表現があるがそれを見て腰が抜けるというのがよく分かった。

顔とかよく見えないけどラブホなのにしかも夜中なのに
何人も子供っぽのがガラスを叩いているんだぜ?
後ろの方では彼女が「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」となんともいえない声をあげていたし。
もうどうしようもなく動転してしまった俺は彼女の所に戻って抱き寄せながら
ひたすら普段は信じていない念仏を唱える事にしてやり過ごす他なかった。
本当にひたすら南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経…と。

それからどれぐらいたったんだろう?いまだ外のドンドン音は鳴り止む気配はなかったが。
いや、鳴り止む気配はなかったけど明らかにドアを叩く音が変わっていたかな?
すると「お客様大丈夫ですか!フロントです!お客様が来られないのでこちらから来ました!」
さっきの聞き覚えのある声が聞こえた時、本当に助かったと思ったかな…。

まぁ俺の不思議な体験はここで終わり。
何時間経ってもフロントに来ないからフロントの人もまさか…
と思って201号室までかけつけてくれたらしい。
「え、今何時?」と時間を聞いたら「電話を貰って3時間程経ってます。」という答えが。
そうかあそこで3時間も耐えていたんだと…。

フロントの人も相当パニくっていたのか数珠やら
線香やら蝋燭を持ってきてたのがちょっと可笑しくてそれで少し救われた。
部屋の移動しますか?と聞かれたが
彼女が凄い泣きじゃくっていてそれどころではなかったので
結局宿泊料無料+迷惑料をいくらか貰って帰る事にした。

で、部屋から出て、廊下に出てふっと右を見たんだよね。
そうしたら本来なら無い筈だけどさっきの体験であるべき筈の窓がやっぱり無かったんだよね。
フロントの人に聞いてもそういうのはお客様のプライバシー上取り付けていないという答え。
…本当、あの窓はなんだったんだろう。

その後はこれといった不思議な体験もなかったが、
その日の帰り道に彼女から「別れよう。」と切り出されて
別れる事になったぐらい、まぁ事情が事情だし仕方なかったが。
その201号室がなんで霊が出るのか結局聞けずじまいだったが、
彼女とその日の内に別れた事実と合わせて考えたら
そういう恋愛絡みのがあったんだろなぁ…と。

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