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『友人の自転車乗りの話』|洒落怖名作まとめ【長編】

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『友人の自転車乗りの話』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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友人の自転車乗りの話

 

友人の自転車乗りの話がちょっと面白かったので紹介(許可は得ました)

彼女は田舎に移り住んだ自転車ロードレースの選手なんだけど、
トレーニング以外にも趣味で長距離を走る
ツーリングのようにカバン背負うと筋肉のバランスを壊す?とかで何も背負わず
競技中のようなカッコで、サドルにつける小さなバッグに工具入れただけで
ただ走り続けて帰るそうだけど、距離が300kmとかになるとやはり暗い中も走ることもある
そういうときの話
自転車用語をや場所を確定する固有名詞を置き換えた以外
彼女の書いた文殆どそのまま、一人称も彼女です
一応、彼女は霊感とか特別な感覚はない、どころか全てに鈍いと言ってますが・・・


ウチは日本の基幹を外れた田舎なので国道ですら街灯も歩道も無い山坂道が殆どなんだが
最近は古道歩きとかお遍路さんみたいのが流行ってて、夜でも時折歩く人を見かけるんだ。
一応自転車にしては明るいライトつけてるけど、やはり車のライトと比べると照射範囲が狭く
スピードが出てると風体まではよく観察できないことが多い。

自分がよく通る山の中の国道で、夜中走ってるとかなり高い確率で人に遇う場所があって。
ウチから行くと、その道路で一番高い標高の峠を越えて2kmくらい?下ったあたり。
峠の頂上付近は、最近走りやすい両通二車線に付け替えられたその新国道と、歴史古道とが近くて
バス停もあり、古道歩きの人たちの現代社会との接点とも言える箇所の一つなので
国道を歩く人がいるのも解らなくはない。
さすがに夜の森の中の古道は怖すぎよね、という意味で。

でも・・・そこを深夜「下ると」、ある場所付近にたいてい人が「立って」るんだよね
対向車線側でこちら向いて。
「歩いてたら何か近づいてきたから振り返ってじっくり確認してた」 と解釈できなくはないんだけど。
かなり先まで見通せるくらい緩いコーナーが繰り返される下り坂でスピードが出せるうえ
道が単調で正確な位置の特定が難しいんだけど、まあ200mも誤差の無い範囲に立ってる。
一瞬でもよそ見すると細いライトの照射範囲の路面情報を逃すかもしれない=大事故、なので
いつも目の端に捕らえるだけだけど、笠被ったお遍路さん的格好の人という感じがしてた。

これまで夜7、8回は下ったけど、2回くらい居なかったか気づかなかった以外は見かけたと思う。
逆に登ってるときは一度も見てない。
登り(=帰路)は大抵夕方から夜早い時間なので、歩いてる人自体はよく見かけるんだが
下り(=往路)は全て夜半過ぎから未明。バス停で寝袋、は居ても
他に歩いてる人はほぼ居ないから、三度目には 「え、また?」と気になってた。
そこは家から僅か50kmほどで昼間なら何十(百?)度と通ってる場所なので
看板・標識やオブジェや鮎の密漁警戒の案山子など、見間違うものは無いのも知ってる。
昼通った時に良く確かめたこともある。

でも、何か不思議な感じはするんだけど怖く感じたことはないから
山中で歩行者がこちらを見た時はいつもするように、軽く会釈をして通り過ぎていた。

で。
先日用事があって、寒い日の夜明け前にそこを通らなきゃいけなかった。
真っ白な息吐いて汗もかけずに登ってきたら、峠の頂上付近の温度表示はマイナス2℃。
前日午前に雨が降ってたので凍結が心配だと、スピードを絞りながら下ってたところ
後ろから来た他県ナンバーのインプレッサかランサーかに横をスレスレで追い抜かれた。

こちらが40km/hちょい程だったので相手は55km/h程度?さほどスピードは出てなかったといえ、
自分もそれなりに端に寄っていて他に車も無く道幅もあるにも関わらず無駄に近かったので
見落としかわざとか知らんが、もちっと気をつけろよー、と思ってたら
その車が直線部分途中で急にハンドルを取られ、そのまま立て直しきれずに
先の(その辺で一番深い)左コーナー反対側のガードレールにちょんとぶつかってしまった。

凍結か、と思ってそーっとブレーキを強めて自転車を降り、押して歩くことにした。
23ミリ幅のスリックタイヤに7気圧なので凍結にはめちゃくちゃ弱いし
ここで滑ったら自転車の場合、谷底真っ逆さまになりかねない場所だったから。

車の破損は幸い大したこと無かったようで自分が追いつく前に走り出す音が聞こえた。
(先のブラインド部で停止してたのがエンジン音とライトの反射で判った)
だけど・・・ずっと歩いていっても凍結というほどの凍結は無かった。
橋の上は塩カルで湿ってたり、その車が滑ったあたりにも多少の霜はあったりで
クリート(ペダルを足に固定するためのプラパーツ)のついた靴では歩きにくかったけど
ああいう走行性能高いはずの車があのスピードでハンドルを取られるようなものじゃなかった。
自分のロードですら、慣れた道だし少し気をつければ大丈夫な程度。
居眠りでもしてたか、自転車に幅寄せしたら勢い余ってやっちゃったのかね、なんて考えた。

すると、右側(対向車線側)から視線を感じた。 あ、いつもの場所だ。
視線は既にほぼ真横になる辺りから。
その瞬間、あることに気づいて一瞬背中がざわっとする、しかし悪い気もしなかったので
平静を装い顔をそちら側に傾けながらも視線は進行方向のまま移さないで、会釈をした。
お気をつけて、といわれた気がしたので、ありがとうございます、そちらも、と呟いておいた。

そこから先は大丈夫そうだと判断して、自転車に跨って先を急いだ。
その後は特に何事も無く、用事を済ませたあとは楽しくサイクリングで
午後明るいうちにその日の300km弱を走り終えた。

視線のほかに悪いものを感じたわけでもないのに視線を向けなかったのは
いつも感じる不自然さの理由に気づいた・・・気がしたからだった。
車の滑った原因を確かめるのに歩いてる間は比較的広範囲を見ていたはず。
少なくともセンターライン付近まではしっかり見ていた。
たった8mほどの幅の道路、対向車線の路肩に人が立っていればもっと早く気づくだろう。

多分その人はガードレールの外にいたのではないかと。
そこはすぐ切り立った崖というか渓谷なんだけど。

実際誰か居たのか幻覚や錯覚なのか判らないけど、これからも確かめようとも思わない。
居るな、と感じたらまた路面見つめたまま会釈だけするだろうと。
夜の山って、本当は人間のいるべき場所じゃないと思うんだよね。
だから夜の山に入って、そこに「居る」何か、誰かに出会ったら、
お邪魔してます、通らせてもらってます、と会釈くらいしておかないと、とは思ってる。
まして、この人誰、なんてマジマジ見て詮索するなんて失礼だよね、
その人の場所かもしれないんだから。

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