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『バイクと老婆』|洒落怖名作まとめ【長編】

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『バイクと老婆』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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バイクと老婆

 

小1の頃、今の家に引越してきて、新築祝いに親戚が来て昼過ぎに、従姉妹と姉と私と4人で
裏山探検に出かけた。裏山は山頂に神社があって、その周辺は遊歩道があり、大人が歩いても
少し疲れるような感じの小さい丘というか山というか。
遊歩道をぐるぐる歩き回り、夕方になったので最後に神社に登ってから帰ろう、という事になった。
最年少で虚弱だった私はその時点で既に疲れ果てて帰りたかったけど、他の3人が神社への参道の階段
(400段近くある)を登り始めていたので、渋々後から一人で付いてった。

階段の中腹までくると左手に東屋があって、私はそこで休みたいと訴えたけど、3人はどんどん登って行く。
腹立って足を止めてゴネてたら、3人がやっと更に上方にある2番目の東屋で休憩する気になってくれた。

3人が2番目の東屋に先に到着して私を待っていた。
自分はとにかく疲れてて「最初の東屋で休みたかったよ…」と思いながら通り過ぎた最初の東屋を見下ろしながら、
一人遅れて参道を登っていった。
2番目の東屋に到着した時、3人が東屋の入り口で一列に並んで直立不動になってた。
「どうしたの?」と聞いても無言で誰一人応えず、それまで「早く登れ!」などなどキャッキャしてた3人が無表情で立ち尽くしている。
「変だな…」と思って東屋に近づくと、東屋の脇にデカくて立派なバイクが止めてあった。
バイク詳しくないからよく分からないけど、赤い大型バイクでスポーツタイプ。
とにかく大きくて(これは自分が小さかったからそう感じたのかも)、立派で新品のようでピカピカしてた。
汚れまったくなし。「すごいバイクだなぁ…でも、どうやってここまで運んだの?」子供ながらに不思議に思いつつ、
東屋に入ろうとしたら、中のベンチで寝ている老婆がいた。高級そうな着物着て、髪はきちんと結ってあって、
横たわって手を腹の上で組んでいた。顔色がドス黒くて、健康でないのは子供でも人目で分かり、
眠っているのか、もしかして死んでいるのか、よく分からないが微動せずに横たわっている。

自分は「このお婆さんに声掛けなきゃ」と思い、近付こうとしたら、他の3人に止められたんだが、
その時の3人の顔が、なんというか…自分やお婆さんを見ているんじゃなくて、虚空を見ている、というか。
完全に凍ってしまっているような感じになってた。
「でも、おかしいよ。バイクは誰かがお婆さん迎えに来るのかも知れないけど、お婆さん、死んでるなら
救急車呼ばなきゃ!」などなど、私が一人で喚いてても、3人は何かを凝視しているようで、まったく不動。
3人は無反応だし、自分は休めないし…なんなんだ、この変な状況はっ!!と一人憤慨してたら、
従姉妹の一人が突然「忍者だぁぁぁ~!!」と叫んで逃げ出した。他の二人も続け!とばかりに参道の階段を降り出した。
東屋に残された自分は、もっとそこに居てそれ(バイクとお婆さん)が何なのか見たかったけど、先に逃げた姉が戻って来て
私の腕を掴み、無理やり一緒に連れ出した。3人は凄い形相で「追いかけてくる!まだ追いかけてくる!」とか言いながら
休み無く走り続け、結局家までノンストップで走って帰った。凄い剣幕で戻って来たから、親達が驚いたくらいだった。
歩いて走って、死ぬほど疲れる思いをした私は怒り半分「一体何だったの?」と姉たちに聞いたが、「今日見たものは、
絶対親に言うな!!」と口止めされた。叫んだ従姉妹は、何故“忍者”と叫んだのか分からない、と言っていた。

当時の自分には、とにかく走って疲れた、というのと、バイク&老婆の妙な組み合わせ、
という位しか印象になく、恐怖感も感じなかったので直ぐに忘れてしまっていた。
2週間ほどたって姉から、どうしても気になるから、もう一度確認しにいこう、と言われ、
自分としては既にどうでも良かった事だったが、一応付き合って見に行った。
すると、東屋は最初の1軒しかなく、問題の東屋が建っていたと思われる所には、大きい松が普通に
生えていた(その裏山は、主に松林となっている)。東屋を取り壊して植林したような形跡もない。
さすがにちょっと気味悪くなり、早々に帰った。その周辺をよく散歩していた父にも聞いたが、東屋
取り壊しの工事なんてやってないし、そもそも東屋は一軒しかないだろ、と言われた。
従姉妹たちとは学校が別だったが、姉が中学の時、その時の従姉妹と学校間の行事で会って久しぶりに話した時、
その時の事が話題になった。従姉妹たちも東屋の出来事が気になっていて、一週間後くらいに、
友達の家族とその裏山に遊びに来たという(裏山と言っても大きな公園が併設されていたり、
お花見スポットとして有名な一角となっている)。その時、参道の階段を登って確認したところ、
やっぱり2軒目の東屋は無かった、と。「あの東屋、取り壊されたの?」と姉は聞かれたそうだ。

バイクと老婆の取り合わせといい、消えた東屋といい、「忍者」やら兎に角、未だに訳の
分からん出来事です。私以外の3人は怖い思いをしたみたいですが。自分が怖いなって思ったのは、
未知との遭遇時の3人の顔。なんか人形みたいな、生気のない眼だった。あと、横になってた老婆
の腹部が異様に膨れてたのも気になる。まるで胴体だけドラえもんのようだった。

今考えると、参道の階段は結構急な石段でデカいバイクを運ぶのは、殆ど不可能。
遊歩道から運んだにしても、道幅が細い上にアップダウンの多さ、蛇行する道の流れや東屋
までの距離を考えると、大人でも相当な労力を要するような所です。
そもそも、参道の階段登り口の脇に駐車場があるのに、東屋まで運ぶ意味もよく分からない。

□ □ □

姉や従姉妹たちも、バイクと老婆が見えていた。
なんで逃げ出したって、今となっちゃよく分からんが当時の状況として、従姉妹の一人が
「忍者だぁ~!」って叫んで最初に逃げ出して、もう一人の従姉妹と姉が我に返ったよう
にビクっとなって「キャー!!」と叫びながら、一目散に逃げ出した。私は、一体何が起こったのか
分からずに、しばし、その東屋にいたら姉が戻って来て連れ出されたんよ。前述マンマす。
逃げてる間、3人は後ろ振り返りながら「追ってくる!まだ、追ってくる!」とか言ってたから、
何か他のものが見えてたのかも。ちなみに私には何にも見えず、「何も追ってこないよ~」とか
言いながらチンタラ走ってたけど。「付き合いけれん…」って思い歩き始めたら、3人に「バカ!捕まるよ!」
とか言われて、マジで怒られて引っ張られた。
逃げ帰ってきた直後、4人で話したのは、4人ともバイクと老婆を見たって事。
「忍者だぁ~」って叫んだ従姉妹は、なぜ叫んだか本人でも分からず、気づいたら叫んでた、と。
私は3人に「何か居たの?追ってきてたの?」って聞いたが、3人は黙って何も言わなかった。
年長の従姉妹が「今の忘れよ。親に言っちゃダメだよ、また追っかけてくるから」
私「ダメだよ~お婆さん死んじゃうよ、何が追っかけてくるんだよぅ?」
3人「いいから忘れな!!」こんなヤリトリで終わったな。
姉はその晩、「夜、また、アレがやって来るかも知れないから、すぐ寝る」とか言ってた。
私「あれってなんだよぅ?」姉「わかんなければ、いいよ!」そんな感じだったな。

自分でも、その体験がちょっと普通じゃないなって感じる部分があったし、
姉たちの怯え方が尋常じゃなかったから、なんとなく聞いちゃいけないってい言うのが
不文律のようになって、今に至る。
今思えば、この世のモンじゃないな…とも思うし、今もその裏山の近くに住んでるから、
追求して気味悪い目に遭うのも嫌だしね。
ちなみに老婆の顔は、歴史の資料集に写真で出てくるような、昔の日本人の顔。目が細くって
頬骨と顎が張ってる感じ。優しさとかは感じられない厳格な顔だったよ。

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