【名作 長編】『私有地立入禁止』|本当にあった怖い話・オカルト・都市伝説

【名作 長編】『私有地立入禁止』|本当にあった怖い話・オカルト・都市伝説 厳選

 

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私有地立入禁止

 

俺バイク乗りなんだ。あまり地図見ないでテキトーにぶらぶら走り回るのが好きなんだけど、いっぺんそれで怖い目にあったんで書いてみる。以前バイクでぶらぶらしてた時に、とあるど田舎の山中の自販機でお茶買って飲んでたら地元のオッサンに話しかけられた。

『どこ行くんだ』「テキトーに走ってます」『でかいバイクだな。あれか、いつかはハーレーとか乗るのか』「いやー僕はああいうのはいいっす」といったよくある他愛もない会話をするうち、微妙に仲良くなった。

『またここ来いよ。うちこの辺にあるから寄ってけ』「そっすねー是非」というこれまたよくある会話があって別れたんだけど、1年後くらいかな。

またバイクでぶらぶら走ってたらまたその辺に来たんで、いっちょオッサンの家まで行ってみよーかなって気になった。もちろんアポなし。

電話番号も知らないから。『おおおお!!よく来たな!!!』というウルルン的展開を期待しつつwwでも家の場所がわかんないんだよね。自販機からみて『この辺』ってぐらいしかわからない。とりあえず例の自販機のとこまで行って、あとは人に聞いて探そうと思った。

なかなか人が通りかからなかったけど、農家のおばあちゃん的な人をつかまえて聞いてみた。オッサンの名前と風貌、あと聞いてた職業を話すと、『あ~ ○○さんね。この山ひとつ向こうの上の方に住んでるよ』と教えてくれた。

よく分かるもんだ。しかし山ひとつ向こうって。田舎の『この辺』ってこういうことがあるから注意だ。バイクを走らせ山ひとつ向こうまで来たものの、まだここからの道がわからない。

『上の方』を目指して上りの道を見つけては走っていくんだけど、道がどんどんすぼまっていって引き返さざるを得なくなる。そもそも民家を見つけられない。

「無茶だったな…」と思い始めたころ、今度は農家風のおじさんを見つけたのでオッサンのことを聞いてみた。『あ~ ○○さん。そこ行ったところに斜めに上る細い道があるから登ってけ』と教えてくれた。今度は『そこ』が遠かったんだが。

『そこ』に行くまでに道のわきにちょっとした空き地があった。

砂地。車がすれ違う場所なのかと思った。俺のバイクはオフロードなんだけど、当時バイクを買ったばっかで粋がってた俺は、そこでやっちゃいけないことをやってしまった。アクセルターンって知ってる?片足ついたまま後輪を回して滑らせてバイクの向きを180度回転させるやつなんだけど、アスファルトだとタイヤが滑りにくいから、俺は砂地見つけては練習してたんだよね。そこでやっちゃったんだよ。

初心者なりに思うのは、アクセルターンはスロットルを開ける思い切りが大事で、変にびびって遠慮するとタイヤが滑らずグリップしちゃって倒れちゃったりするんだよ。
で倒れた。倒れ際に未練がましく握ってた右手(スロットル)のせいで、バイクが変に暴れて草むらにすっ飛んでいった。その時“パキッ”てバイクが倒れた音らしくない乾いた音がした。

あれっ何か割れたかなって思ってバイクに駆け寄ると、バイクの下敷きになった草むらの中に、釘のささった板が何枚か見える。もともとは何か一つのものだったみたいで、それにバイクを突っ込ませて壊してしまったんだと悟った。

まずいかなと思い、周囲を見渡したが田舎なので誰もいない。そもそも草むらの中にあるようなものだし、それほど重要でもないだろう、せいぜい『私有地立入禁止』の看板だっただろうと思って、そそくさとバイクを起こして逃げるようにその場を去った

その後、農家風のおじさんが言っていた『そこ』らしきところにたどり着き、細い道を登っていったらそれらしい家があった。オッサンの家だった。日も落ちてきたころのようやくの到着だった。

マジで『おお!よく来たな!』っていうウルルン再会的展開になって、オッサンが『今日は泊まってけ』と言ってくれて、泊まることになった。奥さんもいい感じの人で、田舎風なあったか料理を出してくれてみんなで一緒に食べた。

一人暮らしの俺は久々のファミリー感にうっとり酔っていた。しかし夕飯を食ってる最中に、頻繁に電話がかかってくる。奥さんが主に出るのだが、電話の内容はこうだったそうだ。

『外に停まっているバイクはどうしたんだ?』
『お宅の家を探す余所者がいたがどうなった?』
『今日はにぎやかなようだがどうしたんだ?』

俺が今日出会った人、俺を目にした人からの電話だ。都会に慣れていると忘れがちだが、そういえば田舎の人のネットワークとはこういうものだった。

周りがすべて他人という都会とは違い、周りがすべてつながっているのが田舎なのだ。自販機で会ったおばあちゃんも、農家のおじさんも、道ですれちがった車のドライバーもみんなつながっているんだ。これが田舎の人のネットワークなのだ。風呂まで沸かしてもらい、しかも一番風呂までごちそうになりながら俺は冷静に考えていた。

ここに来るまでに、俺は誰かに無礼な真似を働かなかっただろうか…?このネットワークの中での出来事は即座に知れ渡る。もちろんここの家のオッサンにも。やさしい奥さんにも。

明日帰る時に道ですれ違う全ての人にも。俺の頭の中では草むらの中の板きれがチラついていた。

あれはまずかったか…? 誰かに見られていたか?
風呂上がり、浴室の戸をカラカラと開き真っ暗な廊下に出ると、怒号のような声とガシャっと電話を打ち付けるような音が居間の方から聞こえたところだった。

また電話が来たんだ。今度は何なんだ。居間のふすまの前に立ちつつも、俺はどうしても開けられなかった。

『 ……ほこら…… どうす…  ……ば…が……』

オッサンと奥さんの会話が聞こえる。俺はどのタイミングで開ければいいんだ。アレだ。ついに例の件が伝わってきたんだ。やっぱりアレはまずかったのか。オッサンは今どんな顔をしているんだ。俺はどんな顔をしてこのふすまを開ければ

バッ!!!!!!とふすまが勢いよく開いた。オッサンが目の前に立っている。オッサンの妙に涙目になった目に一瞬睨みつけられたような気がして俺は腰が抜けそうになったが、次の瞬間には、オッサンは食事中の時の目に戻っていた。
『聞いたか』

『お前かな』と問われた。

この唐突なやり取りだけでオッサンが言わんとしてることが分かった。「ぁ… え」と俺がうろたえていると『布団がしいてるからもう寝なさい』と有無を言わさない声で言われた。閉じられるふすまの向こうで、奥さんがはっきりと俺を睨んでいる様が目に焼きついた

こんなの寝られるわけがない。外はもう墨をぶちまけたみたいに真っ暗なのにまだ夜9時。明日の朝6時くらいまでの辛抱か。

このいたたまれなさがあと9時間続くのか。もう帰りたい。なんとか気を紛らわせたくて、布団の中で俺は携帯をいじっていた。その時 ギシッと背後のふすまの方から床のきしむ音がした。人がいる。

なぜ俺に声をかけてこない。ケータイの光が漏れてるのはわかるだろう!!俺が起きてるのはわかってるのになぜ声をかけない!!こっちをうかがってるのか!!!???
俺は怖くなりすぎて、ふすまに背を向けたまま逆に間抜けな寝とぼけ声で話しかけた。
「トイレですかぁ~?」キシ…と足音が遠ざかる。

返事はない。返事をしてくれ!!!1なぜ存在を隠す!!こっちをうかがってるんだな!!!1俺が寝てたらどうする気だった!もうここにはいられない。俺は深夜2時頃しずかに荷物をまとめ、一応「ありがとうございました、急な用事があるので帰ります」という旨の書置きをした。

足音には十分気をつけたが、きしむ音は防げない。神にいのるような気持ちで居間の前を抜けた。砂を踏みしめる音が出るのが怖かったので靴は手に持ったまま靴下で玄関から出た。バイクの鍵を外し、ここでエンジンをかけるわけにはいかないのでバイクを押そうとすると、ひどく重くぐにゃりと嫌な手ごたえがあった。前後輪とも、タイヤの側面がぱっくり切られてパンクしていた。

なんか変な笑いがこみあげてきた。ああ俺とんでもないところでとんでもないことやっちったんだ。

もうやべえよ。何かどうでもよくなってその場でエンジンかけてタイヤばこばこ言わせながら走って逃げたんだけどガソリンも抜かれててすぐ止まっちゃって結局オッサンにつかまちゃって今オッサンの家でこれ書かされてるの。たすけてなんつってっ冗談ですよ。冗談n すみなせん

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