『覗くモノ』|洒落怖名作まとめ【中編・長編】

『千寿江』人形にまつわる怖い話【13】|厳選 洒落怖名作まとめ 中編

シリーズ ストーリーテラー:冷やかしシリーズ 『覗くモノ』 『影のない女』『雨降る祭り』

 

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覗くモノ

 

怖い話とかは好きだけど、霊感なんてまったくない自分が思わずぞっとした経験。
私が通っていた大学はすごく田舎にあって、遊びに行こうにも車がなければ、ろくな所がないようなところだった。
友だちはみんな一人暮らしが多く、車を持ってる子なんてごくわずかで、そんな中で唯一歩いていける距離にあった遊び場がカラオケだった。

 

そこはいわゆる本当の『カラオケボックス』で、
コンテナの使い古しみたいなのがズラッと並んでるようなところ。
お世辞にも清潔とはいいがたいし、田舎だから周りに外灯も少なくて、夜になればかなり暗かったけど、安かったし、当時は歌えればそれでいいというかんじだったので、さほど気にせず頻繁に歌いに行ってた。

 

その夜、いっしょに歌いに行ったのは隣の部屋の友だちで、その子がボックスの入口や窓のあるほうに背を向けて座って、私はその対面の外が見える位置に座ってた。
いつもどおり普通に歌っていたんだけど、途中から雨が降ってきたせいで、外の天気を気にしたりしてた。

で、友だちが歌っているときだったか、自分の歌の間奏のときだったか、ふとなにげなく外を見た。
そしたら、ガラスがはめ込んである扉のガラス部分から、男の人の後ろ半分の姿が見えたんだ。
でもそれは別に体が切れていたとかじゃなくて、前半分は扉に隠れていただけなんだけど、ただ自分がそれを見た瞬間に、最初はただ普通に外を通った人かと思ったのに、なんていうか、理屈じゃない感じで
『見ちゃいけないものを見た』

っていう感じがすごくして、すぐに目をそらして、しばらくは外を見ようという気にならなくなった。

 

その時はただなんとなくすごく嫌な感じがしただけで、そのあと外を見てもなんともなかったから、そんな感覚はすぐに忘れて、また歌に熱中してたんだけど、その帰り道。

友だちと歩いて帰ってきて、お互いの部屋に入る前に、家のドアの前で少しだけ他愛もない話をしてたんだけど、ふと友だちが黙った後に思い切ったように聞いてきた。

「○○ちゃん(私)、霊感ってある? なんか見た?」

もちろん私は友だちに、さっき見た男の人のことは話してもいなかったし、それどころか、それが霊なのかどうかもよくわからなかった。
急にそんなことを言い出した友だちにびっくりして聞いてみたら、今まで言わないようにしていたけど、その友だちは時々霊のようなものを見たり、感じたりするということだった。

とりあえず友だちには、なんだか見ちゃいけないものを見た気がしたけど、それはただ普通に外を通っただけの人かもしれないし、なんだかよくわからないと正直に伝えた。

そうしたらその友だちは、

「私は背中を向けてたから、あんまりわからなかったけど、たぶん私たちが歌ってる間中、ずっと窓の外に立ってこっちをのぞいてたよ」

とぞっとするような怖いことを結構淡々としながら言った。
私のほうはビビりのため、もうめちゃめちゃ怖くなってしまって、その日はその友だちの部屋に泊めてもらい、外が明るくなるまで寝ないでいっしょに起きていてもらった。
(別に怖いことは何もなかった)

 

後日談

大学の卒業間近になって、その隣の部屋の友だちと他の友だちも含めて
いっしょに飲んでいたとき、少しだけ怖い話になって、そういえば…という感じで、そのときのカラオケの話が出た。

そのときは私がメインで話して、隣の友だちは相槌を打ったり、補足をしたりする形で話をしていたんだけど、私が話し終えようとする頃に、最後にその友だちが付け足しのように言った。

「実は、怖がると思ったから今まで言わなかったんだけど、あの日、カラオケからついてきてたんだよね。家までは入ってこなかったけどさ」

その言葉に、私だけでなくいっしょにいたのは友だちもガクガクブルブルしたのは言うまでもなく、やはり淡々としながら話すその友だち自身もなんだか得体の知れない感じがしてちょっと怖かったりした。

あんまり怖くなかったかもだけど、私にとっては洒落にならないくらい怖かった話でした。
あの友だちも少し怖かったけど、今は元気してるかなぁ…。

 

シリーズ ストーリーテラー:冷やかしシリーズ 『覗くモノ』 『影のない女』『雨降る祭り』

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