【山にまつわる怖い話】『山の老婆』『天狗笑い』など 全5話|洒落怖名作まとめ – 山編【78】

【山にまつわる怖い話】『山の老婆』『天狗笑い』など 全5話|【78】洒落怖名作 - 短編まとめ 山系

 

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山にまつわる怖い話【78】全5話

 

 

老人の正体

年貢というぐらいだから江戸時代の話でしょうか?

庄屋様の使用人が、山の向こうの代官所まで馬に年貢米を積んで届けに行った。
その帰り道、峠を越えていると道脇に老人がしゃがみ込んでいる。
「爺さま、腹でも痛いのか?」
老人は答えない・・・

もうすぐ日が暮れる。
夜になれば山賊の類いも出るだろうと、使用人は老人を空荷となった馬の背に乗せ帰り道を急いだ。
庄屋様の屋敷の門をくぐり、馬を見ると爺さまがいない。
「いつ降りたのか?」
使用人は不思議に思った。

それからすぐに庄屋様の家は廃れた。
荒れた屋敷の片付けをしながら使用人は思ったという。
「あのとき、オラが馬に乗せたのは貧乏神だったんじゃろうか・・・」

地元紙に掲載されていた昔話です。
昔話といえば教訓めいているものばかりかと思いきや・・・
「語り継ごう!郷土の民話」と元気良く書かれても・・・・この救いの無い話を?

今なら「タクシーが夜、女の人を墓の前で乗せたのだが・・・」みたいなものかな

 

人の声が聞こえる

俺は霊体験も無いが、ただ一つ不思議な話を親父から聞いた。
親父は真面目で嘘をつく様な人間ではない。
毎朝、山仕事で家の近くにある山に行くのが日課になっており、
その日も山で作業をしていた。
人の声が聞こえるから、声のする方に向かったが、声のする方
との距離は縮まらず姿形は全く見えないが、聞こえる声は、
“今日は三人の客が来るから大急ぎで支度をしなきゃならない”
と言っている。一体何事なのかと訝しんでドンドン山奥に入って
いくと、突然声は聞こえなくなり辺りはシーンと静まり返り、
今いる所が何処か全く分からない。

ふと、川の流れる音が聞こえ、その方向に進んでいくと、
小川の向こう岸に蛇・蛙・鼠・鳥など色々な動物の屍骸が、
三つこんもりとした山の形に積まれている光景が現れた。
それを見た親父はどこをどう走ったか、もう無我夢中で駆け、
蒼白の顔をして家に辿り着いた。
それ以来、親父はその光景を見た山に入ろうとはしなかったんだ。

 




 

血痕

小さいころに実際に見たんだが、
俺の家の近くに神社があって、その裏手に小さな山がある。
よくそこで遊んだんだが、ある日山道に血みたいなのが点々と落ちていた。
気になってその跡を追っていたら、山の中腹あたりの草むらに入っていった。
そのまま歩いたら、廃墟になった家があった。
その家の中からトントンという音が聞こえてきて、怖くなって逃げた。
あれって何だったんだろう

ちょいと地元のことを調べてみた。
そしたら俺の地元、やまんば伝説が残ってた。
しかも、ちょうど俺達が遊んでいた山にやまんばが住んでいたらしい。

ありがちな伝説なんだが、

昔村に度々やまんばが現れて人を攫っては食っていたらしい。
ある朝、村に一人の若者が現れて、やまんばの住む山に向かっていった。
そして夕暮れ、若者は村に戻ってきて
「もうやまんばは二度と現れない」
と言って去って行った。
若者の言うとおり、二度とやまんばは現れなかった。

若者は誰だったのか、やまんばはどうなったのか。
祖父ちゃんとかに聞いてみたんだけど、誰も知らなかった。

俺が見たのってもしかしてやまんばの家だったのかな。
だとすると、あの血の跡と廃墟から聞こえてきた物音って……

調査報告。
似たような体験をしていた人がいた。
少し違うんだが、血の跡が残っていたのは一緒。
血の跡を追っていたら、やっぱり草むらに入っていった。
だけど、そいつは草むらに入らなかった。
なんか、カラスっぽい鳥の死骸を持った女の人(ワンピース姿だったらしい)
が草むらの向こうでこっちに背中向けて立っていたらしい。
そいつ、なんかよく分からないがやばい感じがして、
逃げようとした時にその女の人がハッと振り向いたらしい。
なんというか、どこにでもいそうな平凡な顔立ちの女性だったみたいで、
こっちを見てかなり驚いてたみたい。
こっちが叫び声あげてあっちも叫び声あげて、
そいつ、気付いたら神社にいたって言ってた。

今日の昼ごろ、昔の友人達と一緒にその山に入ってくる。

 

山の老婆

山菜目当てに山をうろついていると、いかにも地元の村からやってきたという風情の老婆から声をかけられた。
峠の土産物屋を家族で経営しているとかで、まあ、店の宣伝も兼ねて声をかけてきたらしい。
話をしていると、地元では有名なゼンマイやワラビの群生地へ案内しようと言ってくれた。

もしかしたら、観光客向けに山菜を栽培している場所が山の中にいくつかあり、採取した山菜を自分の店で新鮮なうちに調理し、手間賃を徴収する商売なのかもしれないと思ったが、まあ、それならそれで良いと思った。

山に慣れた老婆の足は速く、ついていくのが精一杯だったが、やがて老婆が立ち止まり、
「こっちにゼンマイ」
「ほれ、あっちがワラビ」
礼を言いながら老婆に追いつくと、確かに一面、特徴ある形のそれら山菜で溢れかえらんばかりだ。
「こっちの隅から取れ」

言われるままに老婆の指し示す場所に屈み込み、ゼンマイを摘み始めた。
ややあって、老婆の声
「じゃ、頼んだよ」
ん?頼んだって?
顔を上げようとして、目が合った。
老婆とではない。

頭蓋骨。
その眼窩が、まるで俺をじっと見上げているようだ。
眼窩から一本伸びたゼンマイ。
無論、老婆の姿はすでに無い。

 

天狗笑い

箕面の山奥にある廃墟群に行ったときは散々だった。
鹿に追いかけられるわ天狗笑いに遭遇するわ。

廃墟群の所在を知って箕面山中に行ったわけです。連れと二人で。
そこはグリーンロードから離れた京都へ通じる山道なんですが、勿論のこと外灯なんてありゃしない。
ハイビーム、フォグランプで視界を確保し、暗闇の中をとろとろと進みました。で、目的地到着。
そこは緩やかなカーブの途中にあって、山側に廃墟が群れを成しているんです。推察するに、放逐された新興住宅地だったんでしょう。
崖側には煌びやかな夜景が広まっています。
さて、降車し、安全措置を図り、装具点検を終えた私たちは意気揚々と廃墟へ向かいます。
バトンサイズのマグライトで道先を照らし、階段を上ると複数の廃墟が身を寄せ合っています。
で、探索と撮影を済ませ、鹿に追いかけられ、へとへとになりながら車へ戻りました。
装備を外し、車に積んでいるときです。
山側から大きな大きな笑い声が響き渡りました。即座に身構える私たちですが、硬直と言った方が正しいかも知れません。
只、取りあえず車を遮蔽物に崖側に集まりました。
「今、聞こえたよな?」
「聞こえた。誰かおったか?」
「いや、見てへん」
そっと車から顔を出し、向こうを覗き見ますが、勿論のこと何も見えません。月の明かりは暗く、うっすらと木々と空の境目が判るくらいです。
退避すべきだと思い、私は運転席のドアを開けました。連れ合いはそのまま後部座席へ。なるべく音を立てないよう努めながら。
そして乗車、エンジンスタート。途端ににぎやかな騒音が辺りに響きます。
兎にも角にも離れよう。車のドアを勢いよく閉めようとしたときです。
再び男の野太い笑い声が聞こえました。が、ドアを閉めたので終端までは聞こえずそのまま峠を下りました。

まあ、今思えば他に探索者がいたんでしょうけれど、絶妙のタイミングでやらかされたので、非常に怖かったです。

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