後味の悪い話【4】『擁護して貰えなかった』など 短編5話収録

後味の悪い話【4】『擁護して貰えなかった』など 短編5話収録

 

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後味の悪い話【4】 短編5話

 

威圧的な祖父

当時の僕は祖父が苦手だった。
ゲームしたり絵を描いたりして遊んでいるといつも近くに寄ってきて「何してんだ?」
と威圧的な声で話しかけてきたからだ。祖父は「男は外で遊ぶものだ」と信じている人だった。

ある夏の日のこと。その日は家に友達を呼んで誕生日に買ってもらったゲームをしていた。
当時の新作だったゲームソフトには、友達の少ない僕でも5、6人のクラスメイトを呼べる力があった。
普段はおとなしかった僕だが、その日ばかりは興奮してかなりはしゃいでいた。

しかし、暑い夏の盛りに男子が家の中にこもりっきりでゲームをしているのが祖父の癇に障ったらしい。

何度も部屋に顔を出しては「外で遊べ」と小言を重ねた。
友人に囲まれている僕は気が大きくなっていたために
ついに「うるさいなぁ」と普段はしない口答えをしてしまった。それがいけなかった。
祖父はその言葉を聞くとゲームを目の前で叩き壊してしまった。

僕はその日以来学校でいじめられるようになった。僕は祖父が大嫌いになった。

それからしばらくの時間が経ち、冬休みに入った。

年が明けたある寒い日の夜。食事が終わって席を立った祖父が突然倒れた。
なんの前触れも無くやってきた突然の事件に僕は驚きあわてた。
その日は僕と母しかいなかったため、急いで母が救急車を呼ぶ電話をかけにいった。
廊下から母の緊張した声が聞こえるなか、祖父は苦しそうにうめき声を上げていた。
電話を終えた母は救急車が来るからと祖父を僕に任せ、外へ出て待っていた。

僕は苦しむ祖父と二人きりになった。

祖父は意識が朦朧としているようで、焦点がハッキリしなかった。
何か喋っているがうまく聞き取れず何度か聞き返したが結局わからなかった。
呼吸も苦しそうにゼィゼィと音を立てて、手は胸をかきむしるような動きをしていた。
普段は家で威張っている祖父がこんなに弱っているのを見ていると
なんだか不思議な気持ちが沸いてきた。

今、こいつの首を絞めたら誰にも知られずに殺せる。

なんとも不思議だった。
あれだけ威圧的で強かった祖父が、自分の目の前で涎をたらし苦しんでいる。
絶対的強者の命が自分の手の中にあることが僕に奇妙な興奮をもたらした。

ゆっくりと祖父の首に手をかけると、祖父は釣られた魚のように激しく暴れだした。
僕は驚き、思わず手を引っ込めた。しかし、驚きと同時に燃え上がる闘争心のような
目の前の獲物を必ず仕留めなければならないという使命感とさえ思える強い殺意が
僕の心に芽生えた。今度は馬乗りになり、暴れられないようにして祖父の口を押さえた。

祖父は意識が無いのか、目がぐるぐると回るように色々な方向を見ていたが
僕はそのまま体重をかけて口を両手で押さえ、苦しそうな祖父の様子を見ていた。

突然祖父の目が僕の目を捉えた。弱者となった彼の瞳には恐怖と怒りが見て取れた。
その目を見て、僕は彼がこのまま生き延びてはまずいことを悟った。

焦りが生まれた。

救急車がつけば当然すぐに母が戻ってくるだろう。
ひょっとしたら今すぐ様子を見に戻ってくるかもしれない。

祖父の目に見つめられた僕は突然冷静に状況を判断し始めた。
そして、何よりこいつが生き延びれば僕が殺そうとしたことがばれてしまう。

見つかるかもしれないという恐怖は僕の手により一層力を込めさせた。
祖父は抵抗するほどの力が残っていないようだったが、その目は僕から離されることは無かった。
しかしいくら力を込めてみても祖父は一向に事切れる様子を見せない。

当然だった。僕は自分が祖父の口しか押さえていないことに気づいていなかった。
気づいたのは彼の鼻から苦しそうな呼吸音が聞こえてきた時だった。

祖父が暴れないように体重をかけたまま、抵抗されないように慎重に彼の鼻を左手でつまんだ。
苦しそうに顔を歪め、祖父は辛うじて自由になっている左手で僕の胸ぐらを掴んだ。
その瞬間に意識がなくなったのだろうか。
祖父の体から力が抜け僕は思わずバランスを崩しそうになった。
また意識が戻るかもしれない。母が戻ってくるかもしれない。
二つの不安を抱えた僕はしかし、罪悪感を感じることは無かった。

祖父の体が小さく痙攣していた。

遠くから救急車のサイレンが聞こえてきたときにはもう僕は祖父の体から降りていた。
母が救急隊員を連れて部屋に入ってきた時、いったい彼らの目に僕はどう映っていたのだろう。
僕は恐怖と歓喜と不安と安堵をごちゃ混ぜにしたような感情の波に捕らわれていた。

その後のことはよく覚えていない。
ただ、葬式のときに泣き崩れる母を見て後悔とも憐憫とも言えない
奇妙な気持ちになったことだけはなぜかはっきりと覚えている。

今でもあの日のことを思い出すと淡い奇妙な興奮を感じる。
あのことを後悔したことは無い。
しかし、今日みたいな寒い日には思い出と同時に胸ぐらを掴まれた感触が冷たく蘇る。

終わりです。
これが僕の小学校時代の初体験です。

 

自身を持って

今を生きるエキスパート~あなたの中の自信~

あなたは父親の精子と母親の卵子で作られました
精子は億単位の中のナンバーワンです

人生を歩むというゴールを目指し
多くのライバルが卵子を目掛け競争しました

しかし、たったひとつの精子だけしかゴールを許されません
たとえ卵子にたどり着いてもすでにゴールをしている精子にしか
人生を歩むという賞品を与えられないのです

考えてみてください
あなたのご先祖様もあなたと同じように作られました
それを何世代も繰り返してあなたが今、子孫としてこの世にいるのです
気づきましたか?あなたの遺伝子は
歴代チャンピオンの精子で作られているのです

とても強く、最後まであきらめず、困難を乗り越えて
ほかのライバルよりも一番に卵子にたどり着いたチャンピオン達の
遺伝子を持っているのです

あなたは生まれながらにして一番名誉な自信を持っています
もしあなたが心折れそうな時は私の言葉を思い出してみてください
あなたは生まれながらにして自信を持っているということを

擁護して貰えなかった

理不尽な扱いを受けて、血の繋がった人からすら擁護して貰えなかったら
もう何も信じられなくなるよね

俺が小学校の時
俺の兄は、スポーツも勉強も出来て、出来の悪い俺と違って
友達もいっぱいいて、アホな俺にも優しい自慢の兄だった

ある時、道を歩いていたら、前から兄が友達を連れて歩いてきた
俺が「あ、兄さん」って声をかけると
友達連中が騒ぎ出した。

「何、コイツww」「うわっ、キモイ」「こんなのがお前の弟なのかよ」
「お前可哀想だなwwwこんなヤツと兄弟なのかよwww」
俺は当然兄が俺を庇ってくれると確信していた。

ところが兄は
「こんなやつ弟じゃないよ」と言って俺を突き飛ばしさっさと行ってしまった。

ショックを受けて家に帰ると先に帰っていた兄が言った
「あんまり人前で俺に声をかけるなよ」
と言われた。

このことを両親に話すと
「お前が悪い」「お兄ちゃんの気持ちも考えなさい」と逆に怒られた。
その後どんな気持ちだったか良く覚えてない
多分、泣いたんだと思うけど、記憶が飛んでいる。

覚えているのは、それ以来、事務的な用件以外で
家族と会話をしなくなったということだけだ

大学を卒業して家を出て十年経つが、
一度も家族と連絡をとっていない。

 

オタク息子

駅前のちょっと大きなゲームショップにソフトを買いにいった。
夏休みで周りはガキばっか。

そこに20代中頃の無精ひげを生やし太った、一目で判るようなオタク息子と、
母親(酷くやつれていて祖母さんかも)らしい二人連れが入ってきた。
財布を持ってオドオドしている母親を尻目に、息子はPS2を抱えてレジへ。

いい歳こいて、ひでぇ息子も居たもんだ、と見ないフリして見ていたら、
急に息子が、
「ステルビャー(?)くれ!!あるんだろ!早く!!売ってくれよ!!」

店内に響きわたる大声で怒鳴り始めた。
店員は怯えきった表情を浮かべながらも説明していたが、息子は怒鳴り散らすばかり。

店内のガキたちの目は、レジ釘付け。それに気づいた母親が息子をなだめ始めた、と思った瞬間、息子が母親の腹をパンチ!

見るに耐えない酷い光景だった・・・しかし母親は耐えて、店員に謝って
PS2とゲームの代金を支払って息子を連れて帰って行きました。

 

就活

つい先日の出来事。

就活生のオレはいまだに内定が取れず色んな企業の選考に足を運んでいた。
んで無理だろうと思っていたそこそこ大きめな(地元では)企業から内定のメールがきた。

信じられなかった…元々敷居の高いところってのと
面接官の態度や質問が圧迫面接なんてレベルじゃ済まされない程クソで、
口論して部屋を出て行ったからだ。
大人げない事したなと後悔してたが、逆に評価されたのかと思い何とも言えない気分だった。
そしてメールで歓迎会でBBQやるから来いと連絡がきた。

同期の人間の顔も見たことないし凄く楽しみにして現地の河原に向かった。
かなりの人数が集まっていてオドオドしていると口論した面接官が
「お、○○君!こっちこっち。」と手招き。そこには同期らしき人間が並んでいた。

「初めてだし自己紹介は恥ずかしいだろうし俺から簡単に説明するね。」と
端から順に面接官が紹介していった。
最後に俺だった。

面接官「コイツが面接中にキレて出て行ったアホw個人的に教育したくて嘘の内定メールだしたら本当に来てしまったみたいですw ○○君よくわかったかぁ?あんま調子乗るとこうやって恥かくから気をつけろよw」

そいつは俺に交通費と称して5千円札を握らせると「釣りいらねーからw」と一言。
周りからは「カッコイイぞw」だの「やりすぎだろw」だの野次が行き交っていた。

俺は恥ずかしさと怒りでパニックになりながらその場から逃走。今は就活する気起きない。

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