『同族企業』本当にやった復讐【長編 – 1】

『同族企業』本当にやった復讐【長編 - 1】- 実際に行動した体験談

 

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同族企業

 

俺が某中小企業協同組合の事務局で働いていた時の話。
この協同組合の仕事は、中小企業が集まって、
資材を大量に購入して組合員に安く売ったり、
入札参加して大きな仕事を取ってきて組合員に割り振ったり、
関係省庁や役所なんかと折衝する事務局のことね。
面接時は「普通の会社と変わらないから」といわれて就職したんだが、内部が腐り果てていた。
まず、理事長の一族による放漫経営。
具体的には、一族の長男が会長、会長の従兄弟が専務、次男が常務…
という感じで、役員のほとんどが会長の血脈。
残る部長格も、血脈たちの後輩やら親族。あとは関係省庁や役所からのコネ。
全職員数500人のうち、コネ入社が三分の一。
コネが全くなければ課長になるのが精一杯みたいな組織。

 

だから、みんな、仕事にヤル気なんかない。
頑張って働いても、昇給も昇格もコネ入所には負けるから。
なんとなく働いたフリして、簡単な仕事でもわざと時間をかけて、
仕事ながなくても残業代のために居残る。
俺は、当時、結婚を考えていた女もいたし、若いからヤル気に燃えてたんだよね…
前任者が3日かけてやってた仕事を1日で終わらせ、
自前のノートPC持ち込んでマクロ組んだりしてさ。
まさか、それが徒になるとは思わなかったんだよ。

一般職員は「出世を諦めて、のんびりと楽にやって定年を迎える」しか考えてないし、
コネ職員は「自分たちの天国が安泰でさえあればいい」しか考えていないわけだから、
俺みたいなのは「異分子扱い」されちゃうわけだ…

一般職員からは「むきになるなよ」と言われ、わざと資料やデータを出さなかったりされ、
コネ職員からは、いちいち難癖を付けられて、仕事のやりなおしを命じられる。
どういうレベルかといえば「報告書の枠を、あと2mm増やせ」
「タイトルの文字をゴシックではなく明朝体で」とか。
俺は、それも自前でDTPソフトを買ってきてクリアーしたんだが、
最終的には資料室勤務にされた。
定年間近の室長と俺の二人きりで、午前中は新聞の切り抜き、
午後はその切り抜きを部署に配布。
昼の二時過ぎに、関係省庁に行ってプレスリリースを貰ってきてファイリングする日々…
このままじゃ頭がおかしくなるんじゃないか(実際、抑鬱症と診断された)、って頃に、
珍しく室長から酒を誘われた。

 

赤提灯で呑みながら、室長は「キミは、こんなところで腐っちゃイケナイ」と転職を勧められ、
室長の大学時代の同期が社長の、情報処理系企業のシンクタンクに転職した。
協同組合入所から5年で転職… 一部のコネなし同期だけが送別会をやってくれた。
シンクタンクに入社してからは、とにかく忙しかった。でも、給料も良かったので晴れて結婚。
シンクタンクの仕事にも慣れた転職から3年経った頃、
参加プロジェクト途中で部長から呼び出された。
「キミ、この協同組合に居たよね?」
「この組合のメインバンクから、この組合を建て直して欲しいという依頼が来てる」
喜んで引き受けたよ。これで、あの組合をまともにしてやれるって。
メインバンクからの資料を見ると、俺が辞めてから3年で、協同組合の売り上げは半減していた。

 

職員へのボーナスカットでしのごうとしていたけど、余分な資産の売却などは一切していない。
俺は、まず、ここを責めた。組合は保養施設を7つもっていたが、
そのうち、一般職員が使える施設は2つだけ。
うち3つは幹部職員だけが使える施設で、
残り2つは会長一族のみが使える実質的な別荘。
会長一族は、そりゃ反対した。「うちは職員を大事にしてるんです」って。嘘つけ…
次に、会長の親戚しか働いていないショールームと配送センターの廃止。
どちらも会長一族所有の土地に建てられ、年間一千万円以上の賃貸料。
相場から考えたら、異常な高値。
これらは、普通に帳簿を見てるだけじゃ、すぐにはわからない。実に巧妙に隠してあった。

それをすぐに嗅ぎつけてくるのはオカシイ、
密通者がいるんじゃないかと、内部で噂が流れたところでリストラ。
やり方は簡単。コネ入所の職員を、俺の知る限り、リストアップ。
コネ入所でもまともな人は居たから、その人たちにのみ面接。
面接会場は、組合所在地から離れたホテルの一室。
面接者は、メインバンク、シンクタンクの上司、そして俺。
みんな、俺の顔を見て、アッと驚く。話すのは基本的に俺がメイン。
「○○さんは、あの組合において珍しいまともな人だったので、こちらにお呼びしました」
「まだ、私の知らないコネ入社の社員いますよね? その人の名前を、今、このリストに記入してください」
「そのリストの中で、まともに仕事をする人の名前には○をつけてください」
「プロパー(コネではない)社員の中で、この人は仕事が出来るという人を10人書き出してください」

 

最初は「仲間を売れない」とか「親戚だから」と渋っていても、
こちらが無言で5分も眺めてると、すぐにリストを書き出したよ。
そのリストを元に調整して第二次リストラ。あえて役員には手を出さず、
一般職員を中心にリストラ。
役員=会長一族は、自分たちは安泰だから、ホイホイと首を差し出してくれる。
計算上、現在の売り上げと利益だったら、問題ない組織へと無事にスリム化。
その間に、メインバンクと上司で、組合員である中小企業社長たち巡り。
仕上げに緊急総会を開いて、会長一族を一斉に解雇。
仕事が出来て、ヤル気のあるプロパーを中心に経営陣刷新。
社内経理システム、昇給昇格システムの一新などなど…
2年がかりの建て直しという名の復讐をしたのであった。

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