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夜に泣くトランペット 【実話系】

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夜に泣くトランペット 【実話系】 中編
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今から30年程くらい前でしょうか。
私は当時暮らしていた寝屋川市から、千葉県の船橋市に引っ越すことになりました。

アパートは現地の不動産で決めようと思って引っ越したのですが、時期が3月末ということもあってか空き部屋がなかなか見つかりません。しばらく船橋駅近くの不動産屋を巡っていると、黄色い背景に黒い文字で店名が書いてある看板が目に入り、そこに寄ってみることにしました。店内に入って空き部屋があるか尋ねてみると、そのとき側にいた下町のお母さん風の女の人が

「私のところならいいわよ。」

と言ってくれたため、即決しました。
その方のアパートは不動産屋さんから歩いて数分のところにあって、二階建ての一階がその部屋でした。周りが建物に囲まれていて日が差さずジメジメした感じの部屋でしたが、ここから私の新しい生活が始まるかと思うとワクワクしていた記憶があります。

ところが、その部屋に住みだしてみると気になることが幾つかありました。
まず、引越し当日に窓の外から女の人の声で

「立ち退くんだ早くぅ~。」

という声が聞こえてきました。
私は驚いて窓を開けると、近くの建物の二階からこちらを見て女の人が叫んでいます。どうしてそのようなことを言ってるんだろうか?とは思ったのですが、数日すると言わなくなったため気にしないことにしました。

また夜になって近くへ買い出しに出たときなのですが、トランペットの音が物悲しく鳴り響いてきました。その音は重く寂しく鳴り響いていましたが、どこから聞こえるか分かりません。流石に不気味な感じがしたのですが、部屋に戻ってくると聞こえなくなっていたので、この音も気にしないことにしました。

私は仕事先がまだ決まっていなかったので、翌日から就職先を探し始め、一ヶ月後くらいには無事就職先も決まりました。新しい仕事は覚えることが多くて大変でしたが、充実もしていました。

そんなある日、夜に寝ていてふと目が覚めると体が動かないのです。
手を動かそうとしても動かない、寝返りを打とうとしても動かない。目ははっきり開いて天井の様子をしっかり見えているのに、顔も動かない。当時、金縛りというものを知らなかった私は何が起きているかわかりませんでした。

私は怖くなって「う~ん」と唸りながら渾身の力で腕を払うように動かしたら、やっと動けるようになりました。疲れでも溜まっているのかなぁと思ったので、とにかく体を休めようと再度寝ました。

ところがその日以来、私は毎日のように金縛りになりました。そして何度も金縛りになって慣れてくると、今度は身体が動かないだけでなく、体に何か重たいものが乗っていることに気がつきました。あまり細かいことは気にしない性格の私でしたが、得体の知れない体験が怖くなって部屋で寝れなくなりました。とはいっても部屋で寝るしかなかったので、とりあえず電気をつけて寝てみます。不思議と電気をつけて寝ると金縛りにはあわなくなり、やっと安心して寝れました。

しかし数日後の夜、今度はドアの向こうに誰かが立っている気配を感じたのです。
ドアの向こうで私を呼んでいるような感覚…というより声が聞こえたような感じがあり、ドアを開けたのですが誰もいません。気のせいかなぁと思い部屋に戻ったのですが、やはりまたドアの向こうにいる感じがします。正直凄く怖かったのですが、仕事のストレスか何かで精神的に病んできたのかもしれないと思うようにして、音楽を流しながら眠ることにしました。

音楽で気は紛れたのですが…今度はどこかで微かにトランペットのような音がします。
音楽を消すと消えるので、どこからかはわかりません。しかし確実にトランペットの音が聞こえてきます。なんなんだこの部屋はと思った私は、大家さんに自分が体験したことを話しました。
すると、大家さんは

「そう…出たの。 実はあの部屋には前に若い女性が暮らしていたの。彼女は千葉の大学に通って吹奏楽でトランペットを吹いててね。それがある日トランペットの練習を部屋でしていたら、近所の人に煩いと怒鳴られて殴られて、亡くなってしまったのよ…。
それ以来部屋に人が住むと出るようになってね。黙っててごめんね。でもトランペットの音が聞こえたっていう人はあなたが初めてだから…きっとあなたに聞いて欲しかったのかもしれないね。」

と言って、涙を流していました。私は幽霊の存在を信じていなかったし、彼女の姿は見ていません。しかし無念な死に方をしてしまったので思いが強かったんだろうなぁと思うと、彼女が不憫に思えて仕方がありませんでした。

後日大家さんから彼女のお墓を聞き出した私は、お参りに行きました。

 

それ以来、部屋での恐怖体験はぱったりとなくなりました。
彼女はきっと、天国でトランペットを心おきなく吹いているんだと願いたいです。

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