『逆吸血鬼と存在しない町』【逆吸血鬼シリーズ – 1】|洒落怖名作まとめ

『逆吸血鬼と存在しない町』【逆吸血鬼シリーズ - 1】|洒落怖名作まとめ シリーズ物

 

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逆吸血鬼シリーズ 【1】

 

 

逆吸血鬼と合わせ鏡

 

俺が小学生のときの話なんだが、昔「木曜の怪談」という番組があって、そのせいで暗闇を極度に恐れるようになっていた時期があった。

 

夜外に出れないし、自分の家だって行く先々の電気がついてないと進めなくて、電気のスイッチを求めて廊下を這っているような有様。

昼間ですら、暗い校舎の影や、人気のない路地裏には近づけない。で、ついたあだなが「逆吸血鬼」

しかも、家の近くには5年近く動いていない下水処理場の廃墟や、ペット墓場になってる森が存在してるから幽霊がでてもおかしくないと当時は本気で思ってた。

で、木曜の怪談で最初に見た話が合わせ鏡になっていたのが救えない。

当時「地獄先生ぬ~べ~」で鏡に潜む悪魔の話をやっていたこともあって、いつも鏡に幽霊がいないかとおびえる毎日。

 

風呂に一人ではいるのは、夏休みの宿題など生ぬるいくらいの苦行だった。

だって、髪洗っているときに鏡から自分が除いていたらすごく怖いよね?

洗面所で、「鏡の向こうのドアの隙間からもし人がにらんでいたら」と思うと死にそうになるので、ドアや隙間は必ず閉めて、壁際にたって歯磨きしていたくらい。

00時におきてるなんてとんでもない!

当時廊下の途中に鏡があったから、それまでに寝るか、00時になったら二階の寝室に行けず、一階で親が寝るまでがくがく震えていた。

 

そんなわけで、自分は21時になったらビビリながら二階に上がって、すぐ布団をかぶり目を粒って震えながら寝ていたんだが、

急に腹痛で目が覚めた。

時計を見たら23時半、もうすぐ00時。二階の廊下には鏡があり、しかも二階のトイレの真正面にある。

とてもじゃないが、行きたくない。しかし、一階にいくのはさらに嫌だ。

そんなこんなでで悩んでいるうちにも腹痛はひどくなっていく。

 

このままではもらしそうだった。

すでに11時45分になっていた。

こうなったら速攻でトイレに行って、速攻で出して、00時になる前に速攻で戻るしかない。

そう決意し、布団から起き上がり、廊下の鏡を見ないよう目をつぶりながら、廊下の壁を手探りで這っていって、ようやくトイレについた。

すぐスイッチを閉めて、ドアを閉めて、パンツ脱いで、至福の瞬間を味わっていた。

ようやく腹痛が落ち着いた後、トイレットペーパーをとろうとしてふと置いてあった時計が目に入った。

 

後一分足らずで00時になろうとしていた。

ヤバイ!すぐにでないと、でもいまでたら間違いなく00時になっている。

ドアを出たら鏡がある。

合わせ鏡じゃないけど、手鏡程度で異次元の扉が開かれるなら、ドアの取っ手(真鍮)で合わせ鏡にならない保証がどこにあるんだ!?

と本気でなやんだあげく、篭城することを決めた。

合わせ鏡はたしか00時00分から00時01分までのあいだだから、その間、この中にいれば安全だ。

その後、トイレから出て鏡を見ずに速攻で部屋に戻ろうときめた。

ダンダンダンダンダン!!!!

いきなりドアをたたかれた!

俺は、うわあああああ!!!って叫んだ。

考えても見てくれ、ただでさえ幽霊にびびってる小学生が深夜トイレに篭ってたら、いきなりドアを叩かれたんだから。

いまでも、ビビル自信がある。

でも怖いのはそんなところじゃない。

何が怖いかって、親は今二階にいない。

親は必ず00時30分以降じゃないと二階に上がらないから、わざわざ二階のトイレを使う理由が思いつかないし、第一下から来たなら足音でわかる。

まさに不意打ちだった。

じゃあ外にいるのは?

いまだにドアを叩き続ける何者かのせいで俺完全パニック。

必死にトイレの端に寄ろうとして、便器の上によじ登っていた。

そしたら、ドアを叩く物音がぴたりとやんだ。

かわりにガチャリと鍵をかけていたはずのドアが開いてゆく。

俺もうくぁwせdrftgyふじこlp状態、たぶん走馬灯が流れてたかもしれない、俺死んだと思ってたもん。

そこにいたのは、同い年の子、同じパジャマを着ている、というか俺だった。

 

そいつと眼があいそうになったところで、自分の中の何かが切れた。

便器から飛びおりて、まずドアを蹴飛ばした。

ドアから体半分を除かせていたそいつは、その一撃で予想外にぶっ飛んだ。

まるで体重がないかのように、吹っ飛んだそいつはそのまま鏡の中に吸い込まれる。

すぐに、トイレのすぐ近くの勉強部屋に入り、目の前にあったランドセルからアルトリコーダーを取り出した俺は下半身丸出しで鏡に突撃していって、その鏡を叩き割った。

実を言うと、ドアを開けてそいつと眼があいそうになったあとの記憶は残っていない。

だから、鏡を叩き割ったや、そいつが鏡の中に吸い込まれたとかいうのは状況証拠からの推測である。

気づいたときには、騒ぎを聞きつけて二階に上がってきた親に羽交い絞めにされていた。

手にはアルトリコーダーをもち、地面には鏡の破片が散らばり、下半身丸出しだった。

当然、家は大騒ぎになり、こっぴどく怒られた上に、翌朝速攻で病院に連れて行かれた。

足をガラスで切っていたからだ。

しばらくは学校まで車で送り迎えされ、体育の参加もままならなかった。

それから、あの鏡は粗大ごみとして捨てられた。

 

結局、あれが何だったのかはわからずじまい。

幽霊なのか、ドッペルゲンガーなのか、それともただの妄想だったのか・・・・・

あの鏡に何かいわれがあったのかもしれないが、親にきいても心当たりはないらしい。

その後、鏡のあった場所には鳩時計が置かれるようになった。

これも深夜に突然鳴ったりするので、それでまた怖い思いをしたがそれは別の話。

ただいまだに俺の中でしこりのように残っている気がかりなことがある。

それはたまに自分がトイレのドアから自分を覗いているという夢をみること。

そして自分が左利きであること。

はじめ、親に左手で箸を持っていることを咎められ矯正されたが、いまだに箸と鉛筆以外は左を使っている。

もう10年以上も前の出来事だから、記憶違いしているだけかもしれないが、どうも自分はあの事件が起こる前は右利きだったような気がしてならないのだ。

何故なら、あの事件以来足を怪我していることを差し引いてもしばらく様々な面で不自由を強いられたようなきがするからだ。

いまでも、鏡を見ると鏡の中の自分がにらんでいる、ような気がするだけの話である。

 

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