感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【10】
育児は思っていた以上に苦しい
大学を卒業して、大手企業に就職したばかりの四月、妊娠が発覚した。
「えっ?何で?」
これが私の正直な気持ちだった。
苦労して入った大学、氷河期に死ぬ気でとった内定、やりたい事、やるべき事がまだ山のようにあった。
自身の未来を考えて、即座に堕胎を決意した。
隣町の産婦人科へ行き「おろしますか?」と聞かれたとき、
なぜか「はい」と答えられなかった。
それから会社を辞め、主人と話し合い入籍。
結婚式や新婚旅行どころか、指輪さえもらえなかった。
胎児は順調に育ち無事出産。
しかしここからが本当の戦いだった。
育児は思っていた以上に苦しく、毎日子供に怒鳴りちらす生活。
「お前なんか産まれてこなければよかった!」
「お前がいなければ、私は東京でやりたい仕事をしてた」
「お前のせいで、結婚式もできなかった」
毎日毎日、子供を責め旦那を責め、自身を責めノイローゼになった。
本気で死んでくれないかと思った事すらあった。
子供が1歳になったある日、体調不良で病院に行くことになった。
結果、かなり進行した子宮ガンだった。
私は23歳で子宮を全摘出した。
今息子は2歳になろうとしている。
朝起きると自分がご飯を食べる前に、バナナを私の口に入れてくれる。
私が朝が弱いことを知った上での行為だ。
あの時、堕胎しなくてよかった。
子宮摘出手術が終わったその日、私はベッドの上でおもいっきり泣いた。
悲しかったわけではない。
嬉しくて、嬉しくて涙が止まらなかったのだ。
「息子は神様がくれた最初で最後のプレゼントだったのね」
そう思うと息子と主人に感謝の気持ちでいっぱいになった。
OOOくん本当にありがとう。
産まれてきてくれて、本当にありがとう。
こんなにくだらない私を、ママにしてくれてありがとう。
そしてこの世に出るために、ママを選んでくれてありがとう。
あなたに逢えて本当によかった
うれしくて
うれしくて
言葉にできない
雪が見たい
「ゆきをとってきて…おねがい、ゆきがみたい…」
あなたはそういって、雪をほしがりましたね。
季節外れの雪を。
あれから何年も時が経ちました。
あなたは、ゆっくり休めているでしょうか。
僕に向かって、雪がほしいとせがんではいないでしょうか。
あなたの癌が発覚したのは、ちょうど今頃、梅雨時でしたね。
あなたが一番初めにそのことを報告したのは、両親ではなく恋人の僕。
「私ね、癌が見つかったの。絶対元気になって帰ってくるから、待っててね」
あなたがそう言ったことを、よく覚えています。
あなたがなぜか笑っていたことも。
ここは田舎。大きな病院などあるはずもなく、あなたはここから遠く離れた街の病院に入院した。
僕はできることなら、毎日お見舞いに行きたかったんだよ。
でも…、僕にも大学があった。
行きたかったけど、そっちの講義を受けていたんだ。
あなたも、「大学に行きなさい、あなたの夢をかなえて」って、言ってくれたから。
本当に、すぐ直るんだって思ってたんだ。
でも、癌はあなたの身体を確実に蝕んでいて。
ようやく得た休暇を利用して、あなたの元に駆けつけたんです。
もうすでにあなたは起き上がることすら苦しいというところまで、悪化していた。
それでもあなたは、僕に大学の話をしてくれとせがんだ。
あなたの笑顔は、変わらずまぶしかった。
そしてあなたは言ったんだ。
「ゆきをとってきて…おねがい、ゆきがみたい…」
僕は困った。
こんな真夏の本州に、雪があるはずがない。
でもあなたは、冬は毎週スキーに行くぐらい、雪が大好きだった。
「…今からとってくるよ」
僕がようやくそれだけ言うと、あなたは満足げに笑っていましたね。
僕はあなたのために、スケッチブックを置いていきました。
あなたがさみしくないように…。
雪景色の次に好きな絵をたくさん描けるように…
僕に残されていた道は、一つしかありませんでした。
「富士山に登る」っていう道。
そこぐらいしか、真夏に雪が残っているところなんて、考えられなかった。
そこに僕はクーラーを持って行って、ちょっとだけ雪を持って行ったんだ。
あなたのために。
山を下りたころには溶けかかっていたけれど、それでも僕はあなたの元に運びました。
だけど、僕が帰った時には、あなたはすでに旅立っていました。
彼女の母から話を聞くと、僕がいなくなった途端、容体が急変したらしい、享年19だった。
最期までそばにいればよかった。
僕が後悔したとき母親は、
「これでよかったんです…」
と答えた。
理由を聞くと、雪が見たいというのはただの口実で、本当は僕に心配をかけたくなかったからだって…
「あの子の彼氏でいてくれて、本当にありがとう」
たくさん、感謝された。
あなたとあなたのお母さんに一番感謝しているのは、僕の方なのに。
ああ、くそっ。
間に合っていれば。
悲しくて涙も出なかった。
その時、病院のベットのわきにあるサイドテーブルの上に、置いてあるものを見つけた。
僕が渡したスケッチブックだった。
そこには、一面の銀世界が描かれていた。
あなたが書いた、最後の絵。
その裏に、メッセージが残してあった。
「私がいなくなっても、悲しまないで!私は、雪と一緒にいつもあなたのそばにいるから!!大好きだったよ!ありがとう!!」
今度こそ本当に、涙が零れ落ちた。
あなたは苦しい息の下で、僕のことを気遣ってくれたというのですか。
「…ありがとう」
僕は泣きながら、いつまでも感謝の言葉を呟いていた。
雪を渡すのは、間に合わなかったけれど、あなたはそれでもよかったのですか
最期の時に一緒にいてあげられなくて、ごめんなさい。
でも、一つだけ言わせてください。
僕も、あなたのことが大好きでした。
いいえ。あなたのことが「大好きです」。
今も。
雪を見るといつもあなたを思い出します。
あなたの大好きだったものだから。
上司と俺
毎日、1000円も飯おごってもらってたwww
上司と仲いいの、今年入社した俺だけwwww
百均で買った置物wwwwww
プレゼントしたら、大泣きwwwwww
俺が死んだらお前に全部やるってwwwwww
うはwwwwwwww
残業した帰りなんか、
ラーメン2人で食べてたwww
仕事が遅延してたら、手伝ってもらってたwww
2人だけの部署wwwwww
俺が来た時、嬉しそうだったwwwwww
お前は、これから一人かもしれん、辛かったら俺に相談しろってwwwwwww
笑って、大丈夫ですよって言ったら、そうか………だってwwwww
ガラケーなのに俺に合わせてiPhoneにして、困っててワロタwwwww
俺達は縁の下の力持ちだってwwwww
俺が家の事情で大学やめざる得なかったって話たら、大泣きしてやんのwwwww
なんでも、はいはい言って、イエスマンになってたら、怒られたwwwww
俺が別の部署に応援しに行って、怒られたら、何故か上司が仲裁入ってやんのwwwww
8ヶ月間も2人、これから1人www
人事が飾りだけの定年退職の言葉を言いに来てたwwww
10日にボーナス入ったwwww
毎日、出勤するたびに休憩中のジュース、お菓子、昼目で1000円出費してやがるwwww
1ヶ月に2万円wwww
馬鹿すぎワロタ
8ヶ月で16万wwwwwwww
寿司好きだってwwwガキかよwwww
仕方ねぇから、連れて行ってやったwwwww
回らない寿司wwwwwクッソワロタwwwwww
でも、うめぇwwwwww
上司と食う飯うめぇwwwwww
支払いは俺がって、上司払おうとしててワロタwwwww
俺がもう払ってるよwwwwww
寿司屋の前で頭下げたったwwwwww
俺がwwww
頭下げたったwwwww
目が潤見すぎワロタwwwww
百均で買った置物に入社当時2人で撮った写真入れて渡してやったったwwwwww
いままで、ありがとうございました
あなたのような素敵な上司に出会えて幸せでした
これからも……………がんばります…………
…………私は……あなたのように、なろうと思います…エヘヘ…………
二人だけの誕生会
僕が小学校4年生の時、10歳の誕生日会を開くことになった。
土曜日に仲の良い友達、みんなに声かけた。
「明日来てくれる?」って。
みんな、「うん!絶対行くよ!」って言った。
俺は引っ込み思案で誕生日会なんて開くの初めてだったからドキドキしてた。
母さんは張り切ってケーキを買ってきた。
プリンアラモード?の小さいやつをみんなの分。
人数分。
当日ドキドキしながら待ってたけど。。。。
来ない、だれも。
10時、12時、ずーと待って3時近くなった。
「電話してみたら?」母さんは言った。
電話したけど誰も出ない。
いや、親とかは出るけど「出かけた」とか「用事がある」とか。。。
最後の一人。
「あの○○君いますか?」
「ちょっと待っててね」
いた。
「もしもし、今日来れる?」
「ごめん、用事が出来て。今日はいけない。ホントにごめんね」
「そうなんだ。わかった、じゃあね」
「うん、じゃあね」
僕は聞き逃さなかった。
電話の向こうに誕生日会に誘った、みんなの笑い声が聞こえた。
あー、こいつの家にみんないるのか。
そのうちに雨が降り始めた。
雨はどんどん強くなって、土砂降りになった
もの凄い寂しさに包まれて、一人で泣いてた。
「みんなの分食べちゃおうか?」
母さんは言った。
「・・・いい、いらない」
食べる気にはなれなかった。
腹がキューッと締め付けられて、無理だった。
雨が土砂降りで更に哀しさを煽った。
『ピンポーン』
5時くらいかな、家の呼び鈴が鳴った。
「はーい」
俺はグズッてたから母さんが出た。
「みー君来たよ」
俺は赤くなった眼をこすりながら玄関に行った。
そこにはずぶ濡れのみー君が立っていた。
「ごめんね。塾があって、こんな時間にきて」
俺はびっくりした。
みー君とは昔はよく一緒に遊んだけど、クラスが代わって、あんまり遊ばなくなった。
と言うか、呼んでなかった。誕生日会に。
彼は俺の誕生日を覚えていてくれた。
「はい」
みー君はビニール袋を差し出した。
中古のファミコンのソフト。
今でも覚えてる、『コナミ ワイワイワールド』が入ってた。
「じゃあね。」
みー君は帰ろうとした。
俺は「待って」と言った。
「ケーキ、食べない?」
母さんはみー君の家に電話をかけていた。
『遅くなってもいいですか?帰りは、お宅まで送りますので』
俺と、みー君はファミコンをして、母さんの料理を食べて
みんなの分のケーキを食べた。
たくさん、たくさん
ほんの2時間ぐらいだったけど、最高に楽しかった。
みー君、あの時はホントにありがとう。
みー君、元気かな。今頃何してるだろう。
母親を守れるくらい強くなりたい
半年ほど前に、「強くなりたい」と自分から入部してきた子。
はっきりいって運動神経もなく、体もひ弱です。
あまりここに書くのもはばかられるのかもしれないんですが、めちゃくちゃ切ない過去を持つ子供なんです。
なんでも、父親に虐待されて、母親と一緒に実家に逃げてきたとか。
母親が殴られて泣かされるところを、何度も見てきたそうなんです。
それで、「母親を守れるくらい強くなりたい」と。
自分の足で相撲道場をしらべてやってきたそうです。
こんな子供が、本当にいるとは・・・・。
家庭環境の話など、聞いていて目頭が熱くなりました。
稽古は、驚くほど真剣に取り組みます。
一度でも倒されると、「もういっちょお願いします!」と立ち上がる。
おでこから血が流れても、かまわず必死にぶつかる。
申しあいの時も、積極的に前にでて取り組みます。
ゲロを吐いて、「少し休め」といっても、「まだまだ!」といって稽古を続ける。
泣きそうになるのを奥歯をかみ締めて我慢している姿を見ると、
「絶対強くしてあげたい」
と思うようになります。
ただ、体格が悪いのと、ちょっと気が弱いため、まだまだ勝てるレベルには到達していませんが。
しかし、必死に稽古を頑張っている姿は、周りの子供にも少しずつ影響を与えはじめています。
家でも努力しているようで、毎日四股腰割りを100回以上するそうです。
股割がだんだんとできるようになってきました。
しかも、家ではお母さんのために皿洗いをしたり、肩をもんであげたりするようです。
まさかこんな子が現代にいるとは・・。
この子の成長が楽しみです。
コメント