恋愛の泣ける話【3】 短編5話
やさしくなくなるんだなぁ
今年の5月まで付き合っていた彼の話。
料理が好きで、調理場でバイトしていた。
付き合い始めのころ、私が作った味噌汁に溶け残りの味噌が固まって入ってたことがあった。
飲み終えてから気づいて、恥ずかしさから
「どうして早く言わないの?!」
と怒った私に
「好きな人が作ってくれたものはみんな美味しいんだよ」
って言ってくれた。
彼は、よくおいしい料理を作ってくれた。
私よりかなり上手。
私の料理がまずければ正直に「まずい」と言うようになった。
「料理が上手になってほしいから」
って。
料理するたびに文句を言われるから、
『長く付き合うと、やさしくなくなるんだなぁ』
なんて思って、せがまれても作らなくなった。
彼とは5月に別れた。
彼のことをすきかどうか分からなくなって。
彼は、優しかった。
彼から別れをきりだした。
私の気持ちに気づいていると思わなかった。
次第に冷たい態度をとっていってたんだと思う。
自分の鈍感さに、非道さに気づいて泣いた。
何度も謝ったけど、彼への仕打ちは消えない。
好きな気持ちが離れていくのを、彼はずっと気づいていた。
どうすることもできず、いつものように振舞って、ついには自分から私を手放した。
望んでないのに。
私よりずっとキツイ仕事をしているのに、
通ってきてくれて、
料理を作ってくれて、
愛してくれた。
思えば、別れの数ヶ月くらい前から
「俺のこと好き?」
って聞くようになった。
冗談のつもりで「嫌い」って、私。
寂しそうな顔は演技だと思ってた。
今になって思う。
まずくても、不恰好でも、それでも私の手料理が良かったんだよね。
彼より下手で、それを気にする私に、料理を教えようとして正直な感想を述べててくれてたんだよね。
なのにそのことに気づかず、努力もせず、手伝いもしないでご飯を作ってもらってた。
ろくにお礼も言わなかった。
今更遅いけど、ごめんね。
こんな女が最初の彼女でごめんね。
こんな私を愛してくれて、本当にありがとう。
料理をすると彼が思い出される。
連絡をしたらきっとまた傷つけてしまう。
伝えたいけどもう伝えられない、感謝と後悔。
まだ好きでいてくれたら
俺が25くらいの時の話。
当時働いていた職場に、2つ年下の女の子がいて、めっちゃいい子だった。
当時はお互い恋人がいたから付き合えなかったけど、お互いかなり意識はしていたと思う。
でも決定的な告白はできず、数年して俺が一年間の海外出張に出る時、
「帰国の日に、もし、まだ俺の事好きでいてくれたら空港のロビーに来て。」
とだけ言って出張に行った。
出張が終わりかけになるにつれて、
「なんであんな事言ったんやろ・・・。」
って自己嫌悪に陥ったりもした。
そんで帰国した日、空港ロビーに着くと、案の定いないでやんの。
「やっぱりな~。一年も経てば心変わりくらいするわな~。」
とか思ってたら、ふいに後ろから声をかけられて、振り向いたらその子がいたんだ。
一年前より美人になってやんの。
俺が目丸くして何も言えずにいたら
「来ないと思ってた?」
とか聞かれて、普通に
「うん、ってか覚えてないと思ってた。」
て答えた。するとその子は、
「あの時、言われた瞬間に行くって決めてたよ。」
って言われて泣きそうになった。
「幸せにしてくれるんでしょうね~?」
とか笑いながら言ってきて、そこで俺こらえきれんようになった。
涙目で
「あったりまえやんか!期待しとけや~。」
とか強がってみせたけど、あん時は涙でほとんど前が見えてなかった。
あれから2年、もうすぐ結婚します。
細やかな気配り
その日は付き合って3年目の記念すべき夜だった。
しかし、仕事が長引いてしまって約束の時間に帰宅する事ができず、
せっかく彼が用意してくれた手製の料理が冷め、台無しになってしまった。
いつも通り軽く詫びを入れて事を済まそうとしたが、その日の彼はいつもとは違い、私に対してきつくあたった。
丁度その時私は気分も優れず、仕事のストレスもあってか、そんな彼と話していくうちに強烈な憤りを覚え、つい言ってしまった。
「もういい!こんな些細な事でそこまで怒る事ないでしょ!あなたは自分の都合でしか物事を考えられないの!?」
…彼は黙った。
少しの間の後で、私も少し言い過ぎたと思い、黙って席を立ち、界隈を散歩して頭を冷やそうと思い、一旦家を出た。
いつも通う小さな喫茶店で、30分少々の時間を潰した。
あの人もただ単に怒りに任せて私に怒鳴り散らした訳じゃない。
それだけ今日のこの日の事を大切に思っていたからこそではないか、と考えた。
そんな彼の気持ちを思うと明らかに私の振る舞いは最低だった。
身勝手な自身を忘れ、改めて彼に謝ろうと思い、家に向かって歩いた。
しかし、彼は家には居なかった。
料理も、携帯電話も、机に置いたままだった。
マメなあの人が携帯電話を忘れるのは珍しく、近くにいるのかと思い、私は家を出て近辺を歩き回った。
しかし見つからない。
公園や近くの空き地も見たが、彼の姿は無かった。
彼の実家や、携帯を調べ、彼の友人宅等にも電話を入れたが、来ていないと言う。
家に帰り、2時間が経過した。
私はその時考えていた。帰ってきたら頬をつねってやろうと。
幾らなんでも心配させすぎだ、悪戯が過ぎる、と。
明日は休日だからこんな事をするんだろう、と…
それが彼との最後の夜だった。
事故現場は家周辺の一方通行の十字路だった。
横から飛び出してきた車と衝突、即死だったそうだ。
時刻は10:20、丁度私が家を出て10分経過した時間だった。
その際彼が持っていた遺品は、
缶コーヒー1本、女性用のガウンジャケット、現金で120円だということを聞かされた。
私のガウンジャケット、まだ未開封の缶コーヒー、私の為のジュース代。
細やかな気配りの中に、彼の深い愛情と優しさが感じられた。
一緒に帰りたかった。
その言葉を心の中でつぶやいた。
同時に私の目から涙がとめどなく溢れた。
改めて、彼という存在の大きさに気付いた。
ただ、情けなくて、悔しかった。
ずっと見守ってるぞー
昨日、恋人が死んじゃったんです。
病気で。
そしたらなんか通夜が終わって病院に置いて来た荷物とか改めて取りに行ったら
その荷物の中に俺宛に手紙が入ってたんです。
で、よく見たらなんか
「わたしの人生は普通の人よりも短かった、だけど〇〇君と一緒に
過ごせたことで普通の人よりもずっと幸せな日々を送れた」
とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、そんなこといまさら言ってんじゃねーよ、ボケが。
死んだ後だよ、もうお前いねぇんだよ。
なんか最後の方はろくに起き上がれもしなかったくせに。
弱々しい字で必死で書いてたのか。おめでてーな。
よーし〇〇君のことずっと見守ってるぞー、とか書いてるの。
もう見てらんない。
お前な、俺だってまだ言いたいこと沢山あったんだから生き返ってこいと。
愛の言葉ってのはな、もっと生きてるうちに伝えるべきなんだよ。
初めて出会った頃みたいにドギマギして恥ずかしさの余りいつ心臓が破裂してもおかしくない、
言おうか言わざるべきか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。
今になってこんな事言い出すやつは、すっこんでろ。
で、やっと涙堪えながら読み終わったと思ったら、最後の方に、「わたしの事は忘れて他の人と幸せになって欲しい」、
とか書いてあるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、俺はお前がホントに死んだなんて信じらんねーんだよ。
ボケが。
得意げな顔して何が、見守ってる、だ。
お前は本当にこの世にいないのかと問いたい。問い詰めたい。
小1時間問い詰めたい。
お前、これは全部タチの悪い夢でホントはどっかで生きてるんちゃうんかと。
独り残された俺から言わせてもらえば今、お前に対してできる供養はやっぱり、 お前の事を忘れないこと、これだね。
たとえジジイになってボケたとしても。
これが俺の生き方。
お前との思い出ってのは俺には辛すぎる。そん代わり忘れない。
これ。 で、それにお前の事をずっと想い続ける。
これ最強。
しかしこれを貫くと次から恋人が2度と出来ないかもしれないという危険も伴う、諸刃の剣。
軟弱者にはお薦め出来ない。
まあお前みたいな寂しがりやは、俺がいつかそっちに行くまで待ってなさいってこった。
天国に会いにいきたい
俺も元カノ死んだよ。もう何年も前だけど。
中学のころ親父が死んでもたいして泣かなかったが、これはボロ泣きした。
彼女とは3年ちょい付き合って、俺のわがままでうまくいかなくなって俺から別れた。
「いつかまた絶対迎えにいくから」
「何ゆってんねん~もうその頃には結婚してるわ!うぬぼれんなよ~♪」
当然、駄目でも迎えに行くつもりでした。
でもなかなかいけず、4年彼女待たせました。
んであいつは若いのに癌であっけなく死んだ。
家族からも本人からも一言も病気のことは連絡なかった。
葬式はいきました。昔仲良かった彼女の母親が寄ってきて
「あの子、ずっと待ってたよ。○○○君のこと」
「仲良かった頃の手紙ずっと枕元に置いて読み返してたよ」
もう俺も30近いけど、結婚する気もしませんな。
一人でぼちぼち生きて一人で死にまっさ。
彼女の分まで幸せになろうなんて全く思わない。
ただ、
マジで天国あるなら早く死んで彼女に会いにいきたい
とは思う。
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