恋愛の泣ける話【4】 短編5話
お前の命は無駄にしない
その頃俺は医学生だった。
彼女もいた。
世の中にこれ以上いい女はいないと思うくらいの女だった。
しかし、彼女は若いのにもかかわらず、突如として静脈血栓塞栓症でこの世を去った。
その時の自分はたぶん相当精神不安定に陥っていたと思う。
葬式のとき、彼女の母親が俺にこう告げた。
「あの子、亡くなる直前にあなた宛てにこんな言葉を言ったわ・・・」
『○○君は易しいね。私が死んだら相当落ち込むかもしれないけど、落ち込んじゃだめだよ。
ずっと一緒なんだから。私のような人をたくさん救ってね』と。
そしてそのまま眠るように亡くなったらしい。
その彼女の言葉を聞いた俺は、涙が溢れ出してきた。
今までにない量だった。
彼女の最後の言葉に俺のことで、つまり俺のことが一番大切にしてくれたなんて思うとよけいに溢れてきた。
俺はその時、亡き彼女に誓った。
お前の命は絶対に無駄にしない!と。
そして今現在、俺は心臓外科医をやっている。
もうあんな悲しい結末は経験したくないからでもあり、彼女に誓ったからでもある。
時々彼女は、俺の夢の中に出てきてとびっきりの笑顔をみせてくれる。
その最高の笑顔は、俺の活躍を祝福してくれる。
そして俺を立派な医師になるための道に導いてくれるのだ。
悩みがないなんていいね
私が彼と最初に出会ったのは会社の懇談会でした。
ふとしたことから一緒に遊ぶようになり、付き合いはじめました。
私はもともと打たれ弱い性格だったので、彼にグチってしまうことが 多かったのです。
でも、彼はそんな私に嫌な顔一つせずに、優しい言葉をかけてくれたり、
励ましてくれていました。
彼はグチ一つこぼさず、明るい人だったので、「悩みがないなんていいねー。」
なんて言ってしまったりすることもありました。
彼との別れは突然訪れました。彼が交通事故で亡くなったのです。
彼のお葬式に行っても、まったく実感が湧きませんでした。
お葬式の後、彼の両親から彼の携帯を渡されました。
携帯をいじっていると、送信されていない私宛のメールが たくさんあるのに気付きました。
そのメールには仕事のグチや悩みごとなどがたくさん書いてありました。
その瞬間、私は彼の辛さに気付かなかった自分のくやしさや、無神経な言葉を言った
自分への後悔、常に私を気遣っていてくれた彼への感謝で涙が止まりませんでした。
あの日からもう1年以上になりますが、その携帯は大切にとってあります。
似たもの同士だよね
彼女に大事な話があるから呼び出した。
彼女も俺に大事な話があると言われて待ち合わせ。
別れるって言われるのかと思ってビビりながら、いつものツタヤの駐車場に集合。
お互い大事な事をメールに書いて同時に送信しあった。
俺の大事な話の内容
俺ガンになったみたいであと1年くらいしか持たないんだって。
○○の事本当に愛してるよ。
出会えてよかった。
○○のおかげで凡人の一生の幸せ3人分はもらったよw
お金溜まったら同棲していつか結婚しようって約束は守れなくてごめん。
正直最後まで一緒にいてほしいけど無理にとは言わないから○○の自由にしてくれ。
俺の最後の恋人が○○って運命なのかな?
だとしたら最高の人生だわ。
彼女の大事な話
実は妊娠しました。
生理遅いなぁって思ってて放置してたんだけど、もしかしたらデキてる!?って思って病院いってきた。
「いつか同棲して結婚」って約束したの覚えてる?
その「いつか」ってのすぐでもいい?
お金ないけどやってけないこともないだろうし。
本当に○○と出会えてよかったと思うよ。
いままで男に裏切られたけど、○○は違うってわかった
「もしかしたら運命の出会いなのかも」ってちょっぴり思ったよw
でも、無理はしなくていいからね。
もし改めてプロポーズしてくれるなら早めにね。
もうちょっと待ってって言われたら待つから。
子供産んで3人で幸せになりたいけど、○○が好きなようにしていいからね。
お互いメール見た後に彼女が
「前から思ってたけど私達似たもの同士だよねw
あと1年しか一緒にいれないのかぁ。
自分の体の事で結婚を辞めるってのはやめてね
○○が死んじゃっても私一人で頑張るから。
残りの1年、最高の時を過ごせる気がするから」
お前の最期
いっぱいの幸せをありがとう。
私は幸せ者だ。
だって最期にあなたの顔を見れたから。
これも日頃のなんとやろなのかな?
病室のベッドで手を握りながら彼女は言う。
最期ってなんだよ。
お前は死なない、そうだろ?
泣きながら返す僕を見て笑いながら
○○前言ってたよね?
私が先に死んだら俺も後追うよって。
震えた声で彼女が言う。
あぁ、すぐに行くから先行って待っててな!
俺は本気で返した。
彼女がいない世界なんてきっと色のない世界と同じだと思うから。
ありがとう。
でも、絶対に来ないで。
その言葉が聞けただけで私は満足だよ。
あぁ、幸せだなぁ。
いい?
あなたは絶対に違う人を見つけて幸せになってね?
私の事は忘れて下さい。
大好きなあなたの足枷にはなりたくないの。
絶対に私の後を追わないで!!
約束しないと化けて出ちゃうよ?(笑)
返事が出来なかった。
ここで返事したら彼女がもうすぐ死ぬ事を
認めてしまうようで怖かった。
頭では理解してるつもりだが本当に認めたくなかったのだ。
ゆーびきーりげーんまんうーそついたら…
そうかすれた声でいいながら彼女は天国へ旅立ちました
あれから2年
好きな人は出来ないや。
だってお前じゃなきゃ意味ないもん。
お前とじゃなきゃ楽しくないもん。
でもな、後を追おうと思ったけど
約束守って追わなかったよ。
俺まで死んだらお前との思い出が
この世界から消えてしまうから。
辛いよ、毎日本当に辛いよ。
いつかは俺もそちらに行きます。
その時はいっぱいいっぱい話しようね?
いっぱいいっぱい抱きしめて
いっぱいいっぱい頭なでて
いっぱいいっぱいキスをしよう。
幸せをありがとう。
あとすこし頑張って這いつくばってでも、
生きてみます。
ずっと並んで歩こう
交通事故に遭って左半身に少し麻痺が残り、
日常生活困るほどではないけど、歩くとおかしいのがばれる。
付き合い始めの頃、
それを気にして一歩下がるように歩いてた私に気付いて
手をつないで一緒に並んで歩いてくれた。
家に帰ってから訳を聞かれて
「○君に恥ずかしい思いをさせたくなかったから」
って言ったら
「どうしてそんな考え方をするんだ」
と怒られたので
「大好きだった○君と付き合えてるだけで幸せだから。
私と付き合うことで○君に少しでも嫌な思いをさせたくないから」
と言ったら
泣きながら私の両手を持って
目の中を覗き込むようにして諭してくれた。
「俺はお前と付き合ってあげてるわけじゃない。
俺がお前を好きで一緒にいたい、
付き合いたいと思ったから付き合ってるんだ。
お前の体のことなんか、ずっと前から知ってたけど、
一緒に歩いて恥ずかしいなんて一回だって思った事はないよ。
お前がそんな風に考えてるのが俺は悲しい。
俺に気を使わないで。自分の事を恥じないで。
もっと自信をもって胸を張ってほしい。
ずっと並んで歩こうよ。お前は俺の自慢の彼女なんだから」
私のことをここまで思ってくれる人には絶対会えないと思う。
すごく嬉しくて、涙が止まらなかった。
今は、どこに行くときも並んで歩いています。
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