ほっこりする話『我が子との初対面』など短編5話【4】 – 優しい話・体験談まとめ

ほっこりする話『我が子との初対面』など短編5話【4】 - 優しい話・体験談まとめ ほっこりする話

 

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ほっこりする話 短編5話【4】

 

 

我が子との初対面

この前子供が生まれたんですよ、初めてのね。
で、分娩室から看護婦さんが抱いて出てきた子供に対面したわけですわ。
正直最初は我が子との初対面なんて簡単だと思ってたのよ。
みんな普通に対面してるからさ。
あのね、俺が間違ってた。
あれは人が会うもんじゃない。
天使だね、天使が会うものだよ。
最初に触れる時さ、めちゃめちゃびびってちっちゃな手にそろ~っと触ってそろ~っと撫でたのよ。
10秒くらいかけてさ。
でなんか怖くなって指を離しちゃったのさ。
そしたら看護婦さんがさ、「もっと触っても大丈夫ですよ~」とか言うの。
同じ過ちは2度繰り返さないのが俺よ。
だから触ったさ。
えぇ、そりゃもう撫でましたとも。
全てを忘れて慈しんだよ。
ずーっと子供できなくてカミさんと二人で病院に通ったこととか、
心ない親戚の「種か畑かどっちが悪いんだ?」発言で傷ついたこととか色々忘れてね。
だって看護婦さんがさわれって言ったからね。
そしてらエライ事になった。

もうすごい感動の涙と鼻水。
すごい水圧。
水深10000mくらい。
プロジェクトXの「しんかい」だって耐圧構造の見直しが必要。
それで横見たら看護婦さんがすごい勢いで俺の事見てんの。
ホントごめんなさい。
正直「男なら仕事第一だぜ!」なんて見栄張らないで、素直に「生まれるので早退します」って出てきて...ホントよかったと思ったよ。
心の底から生まれてきてくれた我が子と産んでくれたカミさんに感謝したね。
でも分娩室出てきたカミさんに、「なーんか猿みたいだな!これだから新生児は」とか言っちゃってんの。
ホント俺ってダメ人間。

...でも全力で守るから。

 

 

姉が嫁にいく

随分前の話。
遂に姉が嫁にいくことになり、家族揃って最後の晩飯を食った後。
姉「○○。ちょっといい?」
俺「なに」
姉「いいから、そこ座んなさい」
首を傾げてる俺に、姉は深々と頭を下げて

姉「今までありがとう。お前の姉に生まれて、姉ちゃんホントによかった。これからは離れて暮らすけど、これからもいい姉弟でいようね」
俺「なんでそんな事言うんだよ・・・・」
姉「父ちゃんと母ちゃんには式で言えるもの。お前には今しかないでしょう?」
姉ちゃんにボロボロに泣かされたのは、あれが最後だ。
俺も泣いた。

 

 

大っ嫌いだった姉

俺には3つ上の姉貴がいるけど、昔はスゲー仲悪かった。
母がたった二人の姉弟なんだから、と嘆くほど、
ケンカなんて一日何回もしたし、ほとんど憎み合ってた、
といってもいいくらいだった。

姉貴が高校2年、俺が中学2年の時。
姉貴が自転車通学の途中、車の事故に遭った。
俺が病院へ行ったときは、意識がなかった。
頭を打ったらしく、安心は出来ない状態だった。
二日後に意識は戻ったんだけど、事故当時の記憶がなく、
言語障害、運動障害が出てた。(まっすぐ歩けないなど)
ある日、親が用事で、俺が半日くらい付き添うことになった時。

姉貴はなんか俺に言いたいんだろうけど、舌が回らない。
言葉を覚えたての子供が喋ってるようで、聞き取れなかった。
俺は、何とか聞き取ろうしてたんだけど、そのうち姉貴が
泣き出してしまった。
結構美人とか言われてて、運動神経も良かった。
バレー部に入ってて、レギュラーでやってたのに、運動どころか、
歩くことや喋ることもまともに出来なくなって自分が情けなく なったんだろうと思う。
いつもは気が強い姉貴がすごくか弱く小さく見えた。
俺は思わず姉貴を抱きしめて、

「大丈夫、きっと治るよ。もし治らなかったら、俺が姉ちゃんを一生看てやるから」
本気だった。俺が姉ちゃんを守ってやる、と。
姉貴は泣きながら何度もうなづいてた。
打ち所もそんなに悪くなかったのか、姉貴がリハビリを頑張った せいもあったのか、以前のように回復したそれから5年近く経つけど、ケンカらしいケンカはそれ以来した 覚えがない。
姉貴にその時のことを言うと照れ臭いのか
「記憶がはっきりしてないよ」とか言うけど。
あの事故がなかったら、俺達の姉弟仲は、今も悪いまんまだった のかもしれないな…。

 

マーチからの手紙

私は今日車を買い換えることを子供たちに伝えた。
主人が結婚する前に、私をくどくために買ったマーチだった。
私を射とめ結婚しそれから6年間乗ったのだからもうそろそろ新しい車が欲しいね、と彼は言った。
わたしも別段反対することもなく、子供たちにも普通の会話のつもりで話した。
そこで話は終わるはずだった。
子供たちの反応は私たち夫婦のとは異なり、今にも泣き出さんばかりであった。
「こわれちゃったの?」「もうあえないの?」確かに普段から、ものにも心があるのだ、だからものを粗末にしてはならないのだ、と教えてはいたが、彼らがマーチに対してこれほど思いを抱いていたとは知らなかった。
私たち夫婦は彼らの優しさに心を打たれ、それをほほえましくまた誇りにさえ思ったが、実際今度生まれる三人目の子供のことを考えると、今の車では小さすぎるのだ。
だから私たちは彼らが傷つかないように根気よく彼らを説得した。
その夜わたしはかれらがいつまでもその心を持ち続けることを願って床についた。納車される前の日に、上の子が手紙を持って私の前に座った。 別れゆくマーチのために手紙を書いたのだった。

マーチへ。
いままで いろんなところに つれてってくれて ありがとう。 これからも げんきでね。

文字の書けない下の子はマーチの絵を上の子の手紙の挿絵として書き加えていた。
マーチは自動車販売店に下取りされることが決まっていた。
そこのお店の人の迷惑になるかもしれないと思いつつ、息子たちの手紙をマーチに忍ばせ、わたしたちはマーチを見送った。
それから新しい車が来て、私たち家族は久しぶりに少し遠くまで出かけた。

それから9ヶ月がたったころ、マーチから息子たちへ手紙が届いた。

あつし ゆうき へ
げんきにしてるかな ?
ぼくはげんきです。
あつしとゆうきとわかれたあと、ぼくはあたらしいかぞくにであいました。
おとうさんとおかあさんとけんたくんのさんにんかぞくです。
けんたくんはまだまだちいさくてあまえんぼうさんです。
おおきくなったらけんたくんもあつしやゆうきのようにやさしいこになってほしいな。
いつまでもげんきでね。
マーチ

かわりに読んでいたわたしは、途中で主人に代わってくれといい、彼もあと少しで涙するところだった。
上の子は、まだたくさん泣いていい年頃なのに泣くのを必死にこらえている。
「悲しくないのにね、何で泣いちゃうんだろうね。」
一生懸命笑おうとしておかしな顔になっている息子を見て、わたしたちも泣きながら笑った。
下の子はよく分かってないみたいだけど、一緒に笑った。
たった一台の車が、よく出来た夫と優しい息子たちをわたしに与えてくれた。
そして、けんたくんのおかあさんがやさしい贈り物を贈ってくれた。
私は今何気ない日常の中で嬉し涙の味をかみ締めている。

 

 

今は永遠だと思っていたあの頃

子供の頃。
今は永遠だと思っていた。
明日も明後日もずっとこうして続いていくような気がしていた。
大人になるってことは自分とは無関係だと思ってた。
大人っていう生き物は自分たちとは別の生き物だと思ってた。
学校へ行って、友達と昨日遊んだ事を話して。
授業中、女子の手紙を別の女子に渡しながらノートに落書きして。
休み時間、誰かが打ったホームランのボールの軌道を青空の向こうに見上げてた。
昼休み、給食のメニューに一喜一憂して、牛乳早飲み王決定戦に参加した。
先生に怒られてからはその目を盗んで開催した。
放課後、今日は誰と何して遊ぼうか。
公園、駄菓子屋、友達の家。
僕らは遊びの天才だった。
何をやっても楽しかった。
誰かの家でした、気になる女子の話。
「いいか?誰にも言うなよ?男同士の約束だぞ?」
「う、うん。約束する」
「お前から言えよ。」
「やだよ。おまえからいえよ。」
「じゃあ、じゃ~んけ~ん・・・」
小さな恋は叶わなかったけれど。結局誰にも言わずに今まで守られた、小さな男同士の約束。
夏休みに自転車でどこまでいけるかと小旅行。
計画も、地図も、お金も、何も持たずに。
国道をただひたすら進んでいた。
途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。
ペダルを漕がなくても。何もしなくても。
ただ、ただ気持ちよかった。
自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。
子供心に凄く遠いところまできた事を知り、一同感動。
滝のような汗と青空の下の笑顔。
しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。
不安になる。怖くなる。いらいらする。
当然けんかになっちゃった。
泣いてね~よ。と全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。
交番で道を聞いて帰った頃にはもう晩御飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるは、蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。
でも次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。
絵日記の1ページになっていた。
今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。

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