ほっこりする話『パーッとお金使いたくなって』など短編5話【11】 – 優しい話・体験談まとめ

ほっこりする話『パーッとお金使いたくなって』など短編5話【11】 - 優しい話・体験談まとめ ほっこりする話

 

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ほっこりする話 短編5話【11】

 

 

ガリガリの子猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。

両親にせがんで家に連れて帰り、その猫を飼う事になった。
思い切り可愛がった。
猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来てくれるようになった。
しっぽをパタンパタンしてくれるのが可愛かった。

いつも一緒に帰っていたけれど、六年生の林間学校に泊りがけで行っているときに車に轢かれて死んでしまった。
もう、猫は飼わないと思った。

年月が過ぎ、私は就職してバス通勤をするようになった。
仕事がうまくいかず、やめようかどうしようか迷っていた。
バスを降りるといつも我慢していた仕事の悩みが噴出して、泣きながら暗い夜道を歩いていた。

そんなある日、バスをおりて歩いていると、少し先に白い猫がいた。
その猫は振り返りながら距離をとって私の前を歩いてく。
坂を上がり、いくつもの曲がり道を曲がって行く。
私の家に向かって。
家の前に出る最後の曲がり角を曲がると、その猫の姿はなかった。
数日そうやって猫に先導されるように家に帰る毎日が過ぎた。

ある日、いつものように待っていてくれる猫を見て気が付いた。

しっぽをぱたん、ぱたんとゆっくり上げて下ろす仕草。
小学生の時に飼っていた猫と同じ。
思わず猫の名を呼んだ。
振り返った猫は一声鳴いて、また家に向かって歩いた。

涙が出てしかたがなかった。
心配して出てきてくれたんだね、ありがとう、ごめんね。
大丈夫だからね、もう、安心して、いるべき所に帰っていいよ・・・。

後ろ姿に向かってつぶやいた。
最後の曲がり角を曲がる前に猫は振り返った。

近づいて撫でたかったけど、近寄ったら消えてしまいそうで、もう一度つぶやいた。
ありがとうね、大丈夫だからね。
そして、猫は曲がり角をまがった。

ふと、後ろが気になって振り返ると白い小さな塊がふっと消えて行く所だった。
そこは林間学校に行って帰らない私を待ち続けて猫が車に轢かれた場所だった。
それからもうその白い猫は二度と姿を見せることはなくなった。

 

 

自分の名前を呼ばれるのが好き

長女が「何であたし、こんなにママが好きなの?」
と嫁さんに真剣に聞いてた。

嫁さん「人ってね、自分の名前を呼ばれるのが好きなのよ。
長女ちゃんも次女ちゃんも長男くんも、生まれてからママが一番たくさん名前を呼んでるからみんなママが好きでしょ?
長女ちゃんもママ、パパ、ばば(近居の嫁母)の順に好きじゃない?
それは長女ちゃんの名前をたくさん呼んだ順じゃないかな?」

なるほど、ここ10年オレの名前を一番呼んでるのは嫁だ。
だから嫁がいつまで経っても好きなのか。
納得した(娘も納得してた)。

 

パーッとお金使いたくなって

昨日の嫁。

今日は嫌な事があったからパーッとお金使いたくなって買い物してきちゃった。
って言うから見せてもらったら

俺のセーターだった。

ジャケットの下に着てもいいし中にシャツ着ても素敵よね!
ってニコニコしながら話してた。
しかも自分のおこづかいで買ってくれたらしい。
最近自分の洋服も買ってないのに。

嬉しかった。

 

 

口うるさい母

GW,
大学進学のため、上京して一人暮らしをしている俺のアパートに母が来た。
相変わらず口うるさく、イロイロ言うのが、ウザくている間中、小さい口げんか状態だった。

いよいよ帰る日、駅のホームで見送ることになって・・・

電車のドアが閉まろうとしてる時、
「あんたにイロイロ買ってやろうとヘソクリ持ってきたんよ。でも使わんかった。
お母さん、電車に乗ったらもうお金使うことないし、これ、持っていきな。」
と、財布をポンと投げてくれた。

俺が、返答を考えている間にドアが閉まり、ゆっくりと電車が動き始めた。
笑顔で手を振る母・・・

財布には万札より千円札の方が多い計9万円

 

 

扇風機のおかげ

貧乏だったため、十年近く同じ扇風機を使っていた。
今日、その扇風機が不自然な壊れ方をした。
突然羽が折れたのだ。
毎年猛暑の度、「もう少し頑張ってくれよな、相棒」と俺が話しかけても、
ひたすら首を横に振り続けた扇風機。
そんなことを思い出して、少し寂しくなった。

今年は経済的に少し余裕が出来ていたため、これを期にクーラーを買ってみることにした。
電車に乗って、チラシを見ながら某家電量販店に向かう。
その日は蒸し暑かったため、買い物ついでに少し、冷房の効いた店で涼んでいくことにした。
携帯を適当に眺めていたとき、不意に地面が揺れ出した。

後に知る事になるが、そのときの地震は震度6になる大地震だったらしい。
店内にいて事なきを得た俺だったが、もしあの日、扇風機が壊れていなかったとしたら。
怪我も無く家に帰れた俺は、箪笥の下で首を変な方向に曲げた扇風機が、
俺にお帰りとでも言うように、首を振って待っているのを見た。
ありがとう、と俺は独り言のように呟いた。

扇風機は、その日初めて、首を縦に振ってくれた。

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