『苦労人で貧乏性の嫁』- ほっこりする話【長編】

『苦労人で貧乏性の嫁』【ほっこりする話 - 長編】まとめ ほっこりする話

 

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苦労人で貧乏性の嫁

 

結婚から約1年、嫁は結婚とともに仕事辞めて専業主婦
出来れば外では働かせたくないんだが、嫁いわく
「お金じゃないの、私が人間嫌いなヒキ体質なの知ってるでしょ?人と関わらないと本当に引きこもっちゃうw」とか
高校時代からずっとバイトとか何とかで働いてきたからか、今の生活が暇で暇で仕方ないらしい
人間嫌いを自称してる割には、職場の年配の人に可愛がられ重宝され、そして何故かやたらと年寄りウケがいい

そんな嫁が俺に内緒で在宅ワークや英会話教室のバイトをしてたのを知った
そんなに金ないけど食うには困らないだろ?体も丈夫じゃないし働けって言ってないだろ?と問い質したら嫁が黙ってしまった
とにかくバイトは禁止というと、嫁はせめてあと3ヶ月だけと泣いて頼んだので渋々許した
泣かすつもりは無かったけど、何を隠してるのか気になった

3ヵ月後バイトを辞めた嫁はちょっぴり元気が無くて、何だかんだ言って外に出たかったんだろうと罪悪感があった
けど嫁は、土産でもらったネズミーランドの菓子のでかい缶を大事そうに差し出した
ずいぶんと重い缶だが、ニコニコ笑顔で開けてと言われ恐る恐る開けてみたら、戸建てのカタログが入ってた
その下も!ってか缶の中全部出して!といわれると新車のカタログと、印鑑と嫁の名前の通帳が出てきた
欲しいものがあって嫁なりに頑張ってたのかと思ったら、もっと罪悪感が出てきた
ねえどっちがいい?と聞かれたが、自分で稼いだ金なら欲しいもんぐらい自分で決めろと苦笑い
普段はあれが欲しい、これが欲しいなんて一切言わない嫁にしてはおかしいと思っていたら

 

「だってその車いいなって言ってたでしょ?一括で買えると思うけど、オプション全部付けたら足りないかな?」
「車いらないなら家はどうかな、一応頭金ぐらいにはなるよね?もし家買うなら私も頑張って働くから」
「だって××(俺)、何が欲しいかずっと教えてくれなかったんだもん。誕生日もクリスマスも要らないっていうし…」
「××は誕生日もクリスマスも私がプレゼントもらわないと怒るのに不公平。どっちかもらってくれないと実家に帰る」
「プレゼントいらないって言うならもう用意しない、でもいつも遅くまで頑張ってるの知ってるから、頑張ったで賞あげる!」

嫁が見てと言った通帳は俺の欲しかったクルマが余裕で買えるだけの額を貯め込んでいた
家の貯蓄とはまた別物、全額嫁が昔からこつこつ貯めてたらしい貯金だった
バイトを3ヶ月だけ続けさせてと言ったのは、目標額にどうしても届きたかったからだという
今は築30年近い小さな賃貸暮らしで、確かに戸建てに憧れはあった
車は数年前に新車で買ったけど、これが駄目になったら次のクルマはアレにしたいな~…ぐらいの呟きを嫁は覚えていた

確かに俺は嫁にプレゼントをもらったことがない、あるとすれば激ウマ手料理と、BVDの下着類ぐらいだ
決して嫁がケチなわけじゃない、10歳近く若かった嫁にそこまで神経を使わせたくなかった
何年も前にプレゼントした靴を大事に履いて、20万キロ越えの中古車を「ト○タは丈夫だからへっちゃら!」って大事にして
服なんて赤札か古着がほとんど、たまにプレゼントをするとこっちが申し訳ないぐらい恐縮しきる
たまに贅沢するときは平日昼間のカラオケか、友達とファストフードに行くぐらい
「ごめんね無駄遣いしちゃったw昔どうしても欲しかったのが安くて」ってネットで買った安い漫画やゲームでご満悦な嫁だ

苦労人で貧乏性の嫁に、どうにかして楽しい思いと楽をさせたいと俺なりに色々と頑張ってみたつもりだった
変なところが義理堅くて古臭い嫁を見てたら、目から水が出て止まらなくなった
どんな思いで貯めてきた金を差し出そうとしたか考えたら鼻からも水が出た
こんな金が使えるわけがない、どんだけバカな嫁なんだ
もうちょっとしたら嫁似の子供が欲しいけど、その金には絶対手を付けない

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