『小さな小さなお骨』など短編5話【27】 – 感動する話・泣ける話まとめ

『小さな小さなお骨』など短編5話【27】 - 感動する話・泣ける話まとめ 感動

 

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感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【27】

 

 

誰と話をしていたの?

それは私が小学5年生のときのこと。
私はピアノの塾に通っていたのだが、家と塾との間に電話ボックスがあった。
ピアノの練習が終わって帰り道、私は決まってその電話ボックスに入り、話す相手もいないのに受話器を取り、誰かと話をしているように独り言を言っていた。
何を思うでもなく、そんなことが習慣になっていた。
ある日の塾の帰り、私はいつものように電話ボックスに入って受話器を取った。
その時、”コンコン“と電話ボックスを叩く音がして振り向くと、クラスメイトのK君が立っていた。
私は急に恥ずかしくなり、慌てて受話器を置いて電話ボックスから飛び出た。
「誰と話をしていたの?」K君は言った。
「え、お、お母さん……」
誰とも話していないのに一人で話しているなんて知られたらどうしよう。
変わっていると思われる。
いや、すでに変か、と思いつつも嘘を答えた。
しかし、
「お金もカードも入れてないのに、どうやって話をしているの?」
と言われ、返す言葉がなくなった。

この会話をきっかけに私とK君は仲が良くなった。
K君も塾に通っているそうで、帰り際私が電話ボックスに入るのをよく見かけていたらしく、お金のいらない電話を不思議に思っていたらしい。
K君といえば、学校でいつも寝ているイメージがある。
よく先生に頭をたたかれながら起こされているのを見るのだ。
塾にも通っているし、疲れているのだな、と思っていた。
しばらくして、K君は塾をやめてしまった。
一緒に帰ることもなくなったから、電話をするようになった。
学校ではたびたび寝ているK君も電話では元気で、私のピアノも上達したから、K君に聴かせる約束をした。
しかし、K君は学校を休みがちになった。
日に日に痩せて、同時に眠る時間も多くなっていた。
学校でピアノを聴かせても、いつの間にか寝ている。
何回も起こして何回弾いても、曲が終わった頃には寝ている。
さらに、電話しているときも寝るようになった。
返事が返ってこないのだ。
次第に電話もかかってこなくなり、学校に来てもK君は眠りっぱなしで話す機会がなくなってしまった。
残念に思いながら、先生に毎日怒られているのを見ていると胸が痛んだ。
K君は学校に来なくなった。

何日か過ぎて、私は先生からK君が入院したということを聞いた。
脳に障がいがあり、体の機能もうまく働かなくなって眠くなってしまう病気なのだと。
どうすれば良いのだろう。
何ができるだろうか。
お見舞いにも行ったけれど、容態が悪化していると言われ会うこともできなかった。
もう電話をすることもできない。
話をすることもできなくなり、私は自分の無力さが悔しくてたまらなかった。
数日後、K君は亡くなった。
病気の発覚が遅れたため、手術をしても助からなかった。
K君がいなくなって、私はピアノをやめた。
学校にもあまり行かなくなった。
K君が亡くなったことを認めるのが嫌だったからだ。
電話ボックスにも行かなくなった。
もう独りで話すことなどなかった。
しばらくして、私に一本の電話がきた。
K君の母からだった。
それはK君からの伝言で(遺言とも言うのかな)
「これからも電話をしてほしい」とのことだった。
ポッカリ空いた穴がふさがった気がした。
また、塾に通い始めた。
電話ボックスにも寄って、話をしている。
K君に向けて。
K君は私に電話で繋がることの大切さを教えてくれた。
電話は私に人との繋がりを教えてくれた。
それだけでなく、電話で繋がることのできない悲しさも教えてくれた。
高校生になった今も、これからもK君のことは忘れない。
出会いを与えてくれた電話に感謝したい。

 

想像とまるで違う光景

俺は入社以来日々ひたすら数値を追い続けてきた
毎日必死に働き、7年経った今では会社からも業績を認められるようになった
何度か昇格をして部下が何人かいる
重要な仕事も任されるようになっていた
今まで仕事第一で嫁には寂しい思いをさせてきていた
今年は結婚して5年目、お互いの誕生日には食事にでも行こうと約束した
俺の誕生日だけど、今まで支えてくれたお礼に嫁が行きたがっていた高級レストランに行くことにした
嫁が電話したら奇跡的に予約が取れたらしい
事前に会社にも伝えていたが、当日も朝早くから同僚や部下達に今日は早く上がると伝えていた

しかし夕方頃、外出中の部下から信じられない電話が入った
1番の取引先に対してあり得ないミスをしたらしい
すぐに取引先の部長さんと電話で話をしたが、普段温厚な方がもの凄い勢いで激怒していた
とにかく取引先の工場に行って責任者に謝罪をしてから本社に来てくれと言われた
急いで工場に向かい、落ち合った部下と共にとにかく謝罪した
取引先の部長さんと詳細を話していたからなのか、工場の責任者とはすぐに話が終わった
取引先の本社に向かう途中で嫁に連絡を入れた
「大変な状況みたいだから仕方ないよ。レストランの予約はキャンセルしておくね。」
嫁は俺の立場を分ってくれていたけどやはり残念そうだった
申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、それどころではなかった
受付で第一会議室へと案内された
1番端にある、1番大きい会議室だ
取引先の主要社員が数名待機しているのだろう
ドアの前で一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせた
さっき聞いた部長さんの激怒した声が思い出された
とにかく謝るのみだ
俺はノブに手をかけ、そっとドアを開けた
ドアを開けた瞬間、俺の目には想像とまるで違う光景が飛び込んできた
俺の頭の中は真っ白になった
完全にフリーズしている

パン!パン!パン!
「○○課長!お誕生日おめでとうございます!!!」
クラッカーを鳴らしたのは、会社にいるはずの俺の部下達だった
いつもお世話になっている、激怒していたはずの取引先の部長さんもゆっくりと俺に近づいてきた
「○○さん、誕生日おめでとう」
見慣れた温厚な普段通りの笑顔だった

俺は何が何だかわからない状態となった
一生懸命頭の中を整理しようとしても、混乱している
会議室であるはずの場所はパーティー会場のようになっていた
未だ俺1人呆然としていると、聞きなれた声がした
「あなた、お誕生日おめでとう」
ついさっき連絡を取った嫁がそこにいた
俺にとって人生初めてのサプライズ誕生日会だった
全てが計画されたものだったのだ
俺の部下が提案してお世話になっている取引先の部長さんと一緒に計画を立てたらしい
嫁にも電話をして協力してもらったのだと聞いた
高級レストランの予約電話も本当はしていなかった
全員、共犯だったのだ(笑)

怒られる緊張感と会社に多大な損害を出してしまうかも知れないという恐怖から解き放たれてホッとした俺は、みんなからの止まないおめでとうコールを受けて人前だというのに泣いてしまった
こんな大それた計画を立てて心配をさせた部下を怒る気持ちもあったけれど、みんなからの暖かいお祝いを受けて良い部下を持って幸せだと思った
取引先の広い会議室で数十人に祝ってもらった誕生日は、俺にとって一生忘れない思い出となった

 

 

小さな小さなお骨

今年2月…あなたがママのお腹の中に来てくれたのがわかりました。
ママとパパはやっと2人目が出来てすごく嬉しかったなぁ。
ママとパパとお姉ちゃんでお出かけした先で、いつも寂しそうに兄弟がいる他の子たちを眺めていた。
あなたのお姉ちゃんにもやっと兄弟ができると思うと、その日から世界が変わったように毎日がキラキラして見えました。
順調にお腹も大きくなり、検診であなたがおしゃぶりしている様子がエコーで見えました。
しっかりとした心音も聞きました。
病院の先生も元気に成長してるね、と言ってくれました。
性別も男の子だとわかりました。
そして、やっと妊娠6ヶ月目に入りました。
ママはそんな悪夢が迫っているなんて思いもしませんでした。
急に破水してしまい、夜勤から帰ってきて寝ているパパを叩き起し、病院へ向かいました。
覚悟はしていたけど、破水してしまったら陣痛が始まり、お産が進む。
薬でも止めることも出来ない。
まだ小さいあなたはこの世界に誕生しても生きていく事ができないと説明を受けました。
そしてママはそのまま入院し、次の日の朝あなたが生まれました。
破水して、陣痛が来て、生まれる寸前まであなたがお腹の中で動いてるのがわかりました。
でもお腹から出てしまったら、自分で息をする事も、自分で泣くことも出来ない。
出来ることならママはあなたをまだお腹にいさせてあげたかった。
ママの思いがどう、もがいても繋がることが出来なかったの。…ごめんね。
そしてあなたは生まれてすぐに、息を引き取り、天使になり、お空へ帰ってしまいました。
ママはあなたが生まれた日に退院しました。
そして、2日後。小さな小さなお骨が小さな小さな骨壷に仕舞われてお家に帰ってきました。

なんで破水なんかしたんだろう…
風邪気味だったのがいけなかったのかな…
何か悪いものでも食べたかな…
いつものお腹の張りを軽く考えすぎてた…
戻れるならあの日に戻りたい。
毎日そんな事ばかり考えてしまう。
あなたがいなくなったお腹の軽さにまだ体が慣れない。
妊娠中だからと控えてたコーヒーやお刺身も、今では食べれる。
今まであんなに食べたかったのに、食べられることが切ない。
そんなの一生食べられなくてもいいから、あなたがお腹にいた頃に戻りたい。
抱っこしてあげたかったな…おっぱいも飲ませてあげたかったなぁ…オムツだって交換してあげたかったな…
お姉ちゃんと、あなた。
いくらうるさくされてもいい。
それが幸せなんだから。
だから出来ることなら帰ってきてほしいよ…
でもね、そんな事ばっかり言ってたら、あなたが安心して眠れないでしょ!ってあなたのひぃおばぁちゃんに、ママは言われました。
その時やっと我にかえりました。
そうだよね。あなただってこんなママをおいて、安心して逝けないよね…
ママは今寂しさにつぶされそうだけど、負けないであなたにまた逢える日まで頑張ることにしました。
あなたが待っているかと思うと、死ぬ事さえ怖くないと思えました。
だけど、ママはまだそちらには逝けそうにありません。
パパやまだ幼いお姉ちゃんを残して逝くにはあまりにも心配で…心配で…
なのでママがいつかあなたのもとへ行けた時、いっぱい抱っこしてあげるね。
いっぱい甘えていいんだからね。
それにいつもママの中にあなたがいる事を忘れないでね。
毎年、あなたのお誕生日も、クリスマスも、こどもの日も、みんなで一緒にお祝いしようね。
ママとパパのもとへ来てくれてありがとうね。
あなたはママとパパの大事な息子。
お姉ちゃんの大事な弟です。
あなたは精一杯ママのお腹で生きてくれました。ちゃんと生んであげられなくてごめんね…
あなたもお姉ちゃんと同じように愛してます。
また逢える日まで…

あなたのママより

 

 

育ててくれたのはあなたじゃないですか

おじいちゃんは老いから手足が不自由でトイレも1人では厳しい。
だから、いつもはおばあちゃんが下の世話をしてた。
おばあちゃん以外が下の世話をするの嫌がったからだ。
ある日、家に私とおじいちゃん2人になった。
おばあちゃんが倒れてしまい母と兄は病院、父は会社から直行したからだ。
おじいちゃんと留守番してると申し訳なさそうに
「モモちゃん、悪いんだがトイレに…」って言った。
私は本当に馬鹿だなって思った。
一人じゃ行けないの知ってたくせに気が付いてあげられないなんて
孫、それも女には言いづらかっただろうなって。

トイレに行くとパンパースが小と大で汚れてた。
たくさん我慢させてしまった。
私はおじいちゃんの気を反らそうと学校であった笑い話を精一杯明るく話した。
お風呂場で体を洗ってパンパースつけてホッとした。
同時におばあちゃんは毎日これをしてるんだと思うと何とも言えない気持ちになった。
そして「悪かったね、ありがとう」って五千円をくれようとした。
おじいちゃんは本当に馬鹿だなって思った。
私が赤ちゃんの時、両親は共働きでした。
おしめを変えて育ててくれたのは貴方じゃないですか。
幼稚園だって塾の送り迎えだってしてくれたのは貴方じゃないですか。
あれは無償の愛でしょ?
私はおじいちゃんが大好きだよ?
だからお金なんかいらないんだよって言った。

2人してちょっと泣いた。

 

 

一番大切なお金はどれですか

知的障害のある女の子が両親と暮らしていましたが、お母さんが病気で亡くなりました。
父娘で一緒に暮らしたかったのですが、周りの人の勧めもあり、女の子は施設にあずけられて、お父さんと別々に暮らすことになりました。
施設では、社会に出ても通用するように、お金の訓練をします。
女の子も一円から五百円までの硬貨を順番に並べてお金の価値を勉強していました。
試験の時、先生が「一番大切なお金はどれですか」と女の子に聞くと、女の子は笑いながら十円を指しました。
先生が何回も、「五百円が一番大事だよ」と教えても、女の子は繰り返し十円を指しました。
困り果てた先生は、「どうして十円が大事なの?」と聞くと
女の子は、
「だって、この十円をあの公衆電話に入れたら、 大好きなお父さんの声が聞けるから!」

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