『一緒に行きたかった場所』など短編5話【52】 – 感動する話・泣ける話まとめ

『一緒に行きたかった場所』など短編5話【52】 - 感動する話・泣ける話まとめ 感動

 

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感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【52】

 

 

太った体で俺のことを守ってくれてた

母のおなかを殴った記憶がある。

小学校5年生のときの確か授業参観日だったかな、親も参加してのドッジボールで、
ルールは
・親に当たっても退場しない
・子に当たったら親と一緒に退場
・外からボール投げるのは子だけ
・復活な
ってかんじだったかな?よく覚えてないや。

今考えると俺の母は太った体で俺のことを守ってくれてたんだな。
でも当時の俺には邪魔してるようにしか思えなくて、ゆるいボールがきて俺がキャッチしようとしてるのに立ちふさがる母。
そんでね、取れなくて、悔しくて握ったコブシを母の腹に叩き込んだ。
そのとき母はわずかに顔を歪ませながらにっこり笑って「ごめんね」って、言ったのよ。

その日以来、母に親孝行は、してきたつもりだった。

んで先月なんだけど、小4の息子に八つ当たりのようにハラ殴られたのがゲロ痛かったのね。
肉体労働のこの俺が。
でも本当に痛かったのは、あの思い出の方で。

それと「親孝行してきました」なんてツラ下げて生きてきた俺の姿を思い返してホント吐いた。
嗚咽したよ。
息子びびってたね。
でも思春期になったらコイツ俺のことナメて来るんだろうな。
そのとき俺はどうするかわからんが、あの時母はにっこりわらったんだったな。

母はまだ元気だ。
でも、過ぎた日を取り戻す親孝行なんてできない。
母生きてんのに、生きててくれてんのに。

だからこの辛さを一生胸に刺したまま、母とこの体に流れてる血とそしてこの血脈を継いでくれた妻と息子の幸せを一生懸命考えるよ。

 

 

一緒に行きたかった場所

東京で単身赴任してたとき、連休とかにはいつも嫁が来て、家のことなどしてくれていた。
母にも、たまには東京来いよと言ってたんだけど、人混みが苦手だと決して来なかった。

そんな母が脳梗塞で突然死んじゃって、呆然としたまま遺品を整理していたら、東京のガイドブックが出てきた。

皇居とか、浅草とかベタなところに一杯赤鉛筆で線引いてあって、何度も読み返したらしくボロボロになってた。
親父に聞いたら、行きたかったんだけど嫁の方ががいいだろうって我慢してたんだそうだ。

自分は肉が嫌いなくせに、俺の好きそうな焼肉屋とかにも一杯線引いてあって、俺と一緒に回るのを夢見てたみたい。
俺は、お義理で誘っただけなんだけど、誘われた後は何回も何回も息子が来いと言ってくれたと喜んでいたらしい。
一緒に行きたかった場所には、俺の名前が書いてあって、それがたくさんたくさん書いてあって…

死に顔を見たときよりも、葬式の時よりもすっごく泣いた。
田舎に戻った今でも、生きてる間に呼ばなかったこと後悔している。

 

母さんの宝物

うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった。
だから写真の変わりに母さんが色鉛筆で俺の絵を描いて、アルバムにしてた。
絵は上手じゃない。
ただ、どうにかして形に残したかったらしい。
ほぼ毎日、赤ん坊の俺を一生懸命描いてた。
絵の隣に『キゲンが悪いのかな??』とか『すやすや眠ってます?』ってコメント付きで。

小学四年生の時、家に遊びに来た友達数人に、そのアルバムを発見された。
めちゃくちゃ笑われて、貧乏を馬鹿にされた。
友達が帰って直ぐ、俺はアルバム三冊をバラバラに破いてゴミ箱に捨てた。
パートから帰って来た母さんがそれを見つけて、泣きだした。
破いた理由を言っても、変わらず泣き続けた。

翌朝起きると、居間で母さんがゴミ箱から絵の破片を集めてセロハンテープでとめてた。
「恥ずかしい思いさせてごめんね。でもね、これ、母さんの宝物なんよ。」
申し訳なさそうに優しくそう言われると、涙が溢れ、俺はごめんなさいと謝った。

 

 

母さんの飯

本当はいろいろあって、仕事もだめで免許取消になって、周りには人がいなくなって。
ほんとクズなんだけど、三年ぶりに実家に帰った。
母さんに挨拶してから死ぬつもりだった。

母さんの飯、久しぶりに食べた。
何も連絡せずにいきなり行ったんたが、母さん、何か
「あんた帰ってくる気がしてた」って、俺の好物作ってた。

帰り、仕事があるからと嘘ついて出て行くとき、
「辛かったらいつでも帰ってきや」と。
玄関で声出して泣いた。
母さんは、なんかもう勘で分かっていたんだろうな。
全然、驚いてなかった。

「人生そんな悪い事ばかりじゃないよ。」
母さんがそう言うてたから、間違いないよ。
そうして俺はまだ死ねていない。

 

 

罪悪感

小学4年生のとき、友達とちょっと遠くの公園までチャリで遊びに行く事に。
なのでおこづかい頂戴って親に言ったら300円しかもらえなかった。
「皆1000円持ってきてるから1000円頂戴よ!」って言ったらだめって言われて、あとから親の財布から1000円くすねた。
財布に1000円しか入って無かったのに…

その当日の朝、靴はいてたらお母さんがきて
「もう行くの?しょうがないから1000円あげるね。」って言ってきた。
でも当然そのその財布には何も入って無くて…。
「ごめんね。お財布に1000円なかったからあげられない。気をつけてねいってらっしゃい。」
って笑顔で言われた。

10年以上経った今でも罪悪感で泣きそうになる。
今も描きながら涙出てきた。
お母さんごめんなさい

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