『ばっちゃん – 血の繋がらない、僕の祖母』【長編 感動する話】

『ばっちゃん - 血の繋がらない、僕の祖母』【長編 感動する話】 感動

 

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ばっちゃん – 血の繋がらない、僕の祖母

 

 

31歳大学病院勤務の医師です。
僕の最愛の人のお話です。
僕の母親は、一言で言うとだらしなのない人でした。
水商売をしながら、女で1つで育ててくれましたが、男の家に行っては僕を放置。
見知らぬ男がいつも家にいる。

汚いアパートで、一人っこの僕はいつも一人でした。
そんな時、母が年下の男と再婚。
お腹には彼の子供を宿していました。
僕は小学生二年生でした。

そして、親族の集まりに嫌々連れていかれた時、出会ったのが、最愛の『ばっちゃん』
ボロボロの服を着て、死んだような目をしてた僕を、抱き締めて『私の初孫~!』と微笑んでくれた。

 

母の再婚相手の母親。
血の繋がらない、僕の祖母。
ばっちゃん。

 

ばっちゃんちの近くのアパートに引っ越し、転校して新しい新生活が始まった。
母親からの愛情は相変わらず、薄かったけど。
いつも、ばっちゃんがそばにいてくれた。
ばっちゃんは、僕にスイミングを習いなさいと言った。
実は前の学校にいた頃、クラスの友達がほとんどスイミングを習っていて、羨ましかったけど、うちは無理だと諦めて口にもしてなかった。
まるで、夢のようだった。

スイミングの月謝は、ばっちゃんがパート代から払ってくれていて、毎週火曜日、送迎してくれた!
僕が泳いでるのをずっと楽しそうに見てくれていたばっちゃん。
スイミングが終わると、必ず二人でファミリーレストランに行った。

ファミリーレストランに連れてってくれたのは、ばっちゃんが初めてだった。
毎週火曜日が来るのが待ち遠しかった。
火曜日以外も、ほとんどばっちゃんについて歩いた。
そして時が経ち、弟が生まれた。

僕が恐れていた事は、母親の愛が弟にとられるよりも、大好きなばっちゃんの『本当の初孫』が誕生した事だった。

しかし、ばっちゃんは何も変わらなかった。
そして、一切弟を抱っこもしなかった。
ある日、ばっちゃんの息子である義父がばっちゃんに何故、弟を抱かないと抗議した。
それでも、ばっちゃんは、特に何も言わずに黙ってた。

子供ながらにも、解ったよ。
大人になった今は痛いくらいに解る。
あなたからの優しさと愛情が。
僕への配慮だったこと。

 

それから、五年生になった時、ばっちゃんが急に、僕に言った。英語を習いなさいと・・・・
とりあえず、大好きなばっちゃんが言うならと、始めた。
高校生になった頃かな。

ばっちゃんに何故英語を進めたのかと聞いたら、テレビで今時は英語が出来ないと生きていけないとやってたからと笑いながら答えた。
ばっちゃんの言う通り、受験にかなり役立ったよ。英語。

 

中学の時は塾も行かせてもらった。
ばっちゃんのパート代で月謝を払ってもらったな。
そして、小学生の頃の話に戻るが、母親と義父が僕を置いて、弟を連れて旅行に行くと言った。

やはり、子供ながらに切なかった。
ばっちゃんは、笑いながら、行っておいでと、母親と義父に言った。
それが、一番悲しかった。

 

旅行に行く三人を見送った直後、ばっちゃんが、あんたも準備しな!と言って、驚く僕の手をひき、新しい服を着せて、ディズニーランドに連れてってくれた。
生まれて初めてのディズニーランドだった。
どんな時も僕を守ってくれたばっちゃん。
とにかく、ばっちゃんが大好きだった。

 

高校生の時かな、初めて出来た彼女に、ババコンとか言われてふられたっけな。
ばっちゃんに恩返ししたい一心で医学部合格して、外科医になった。
ばっちゃんは、とても喜んでくれた。

ある程度稼げるようになって、ばっちゃんと食事に行く時、僕が払おうとするのをばっちゃんは、嫌がった。
孫にご馳走されるようになったら、私はおしまいだと。
優しいけど頑固でプライドの高い人なのは、僕が一番よくわかってたから、
良い年した医者という自分のプライドがチクチク痛んだけど、ばっちゃんが喜ぶから、ご馳走になったこともあったっけな。

 

そして、ばっちゃんにマンションをプレゼントしたくて、一切贅沢せずに貯金して、28歳の時に、ようやく金がたまり、やっと恩返し出来ると思ってた矢先、ばっちゃんは乳ガンで全身に転移してて手遅れだということが発覚。

悔しかった、側にいたのに、最愛の人の病気に気付けなかった。
何のために医者になったんだよ!自分が情けなかった。
そして、三年前ばっちゃんは亡くなった。

 

ボロボロの服を着た僕に、綺麗な服を着せてくれた。
初めてファミリーレストランに連れていってくれた。
憧れてたスイミングを習わせてくれた。
いつも側にいてくれた。

いつも味方でいてくれた。
血の繋がった孫よりも、血の繋がらない僕を一番に愛してくれた。
優しい人だった。

だから、きっと自分の孫も愛したかっただろう。
でも、僕を孤独にさせないために僕だけを可愛がってくれた。
血なんか繋がらなくても、本当の孫だといつも言ってくれたよね。

ばっちゃん、でもごめん!
オレ、ばっちゃんを祖母だなんて思ったことないし、今も思えない。

あなたは、俺にとって、たった一人の『最愛の母』です。
ありがとう。

 

亡くなる間際に、聞いた。

『ばっちゃん、俺の事ばっかりで、俺と出会ってから自分の事なんて、なんもしてこなかったでしょ?ばっちゃんの夢とか、やりたいかととかないの?』

『りょうたの、子供が見たい』

『じゃあ、長生きしてよ。後は?』

『・・・・後は、もう叶った。りょうたが立派になったから。もう充分だよ。
初めて会ったとき、あんたこどものくせに目が死んでたんだよ。可哀想で可哀想で。
あんたの笑顔が見たかった、この子は私が守らないとって思ったの。
言っちゃ悪いけど、あんたの母さんはろくでもないわ、あ!私の息子もね。
だから、私があんたを守ろうって決めたの』

 

そう言って笑って二日後、ばっちゃんはこの世を去った。

先月、娘が生まれたので、ばっちゃんへの報告もかねて書き込んだ。
ちなみに、娘にばっちゃんと全く同じ名前をつけた俺・・・妻は本当にババコンねと、笑いながらも快諾。
ばっちゃん。最後に一言。
ありがとう。

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