『よさぶろう』『オジイサン』など短編 – 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】

『よさぶろう』『オジイサン』など短編 - 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】 短編

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開けて助けて

 

私の弟の友人の話。
その友人の地元にある怖くて有名な廃墟。そこに何人かのグループで、ふざけ半分面白半分で遊びに行った奴らがいた。

廃墟をうろつく中で、ある一つの部屋にたどり着いた。
皆で固まって入ろうと扉を開ける。先頭になっていた女が足を踏み入れた瞬間、彼女一人を部屋に入れたまま扉が閉まった。

最初はふざけてやっているのかと思ったが、そうじゃないみたい。扉は開かないし、中からは彼女の壮絶な悲鳴。

何度も『開けて助けて』と断末魔のような叫びと、ガタガタと何かの大きな音。
3人の男の力を持っても、扉は開かなかった。

ただ事じゃないことに気付き、ひょっとしたら既に中に人がいて、彼女が襲われてるのかも…と思い、警察を呼びに行った。事実、地元の族やヤンキー共がたむろしたりすることもあったようだ。

警察が来て、扉を開けようとするが…開かなかった。
すると、その内彼女の悲鳴と物音が止まった。それまで開かなかった扉がスッ…と開いた。

彼女が倒れていた。身体のほとんどの関節が曲がるはずのない方向に折れた状態で。

これは地元のニュースでも流れたらしい。『変死体発見』という形で。

この廃墟にまつわる似たような怖い話は私も弟も知っていた。

でも、この話をしてくれた弟の友人が、最後に涙ながらに教えてくれた。

彼はだいぶ前にお姉さんを亡くしている。

「コレ、俺の姉ちゃんの話なんだ」

…なんとも言えない気分になった。

 

 

ヘッドホン

 

私は夜寝ながら音楽を聴くのが習慣になっていた。
ヘッドホンをしたまま朝を迎えることも少なくない。

うっすら記憶はあるのだが昨日は珍しく寝付きが悪かった。
いつもならベッドにダイブし10分もあればアッチへ逝けた。

なかなか眠れない時ってなんかドキドキするのね。
何でだかわからないけど心臓が叩いてくるのが感じられる。
音楽でも聴くか!今日は気分を変えてロックにしよっと。
って、眠れるかぃ!!まぁいっか朝まで起きるのも。

オーディオにランダムをかけ好きな歌手の歌をいつもと違う気分で聴く。
でも気に入らない歌は早送り。これでは意味がない。。

しばらく聴いていると寝つきの良い私はすでにアッチに逝きかけていた。
気づけば何曲か過ぎていたり、あぁ、もうメンドクサイこのまま寝よう。
曲をかけたまま寝てると、たまにその歌手の夢を見ることがある。
夢じゃなければいいのにね……。

ランダムで曲が選ばれる――――。長い静寂。止まった?
私はディスプレイを確認したけど、曲は1分55、56と確かに演奏が続けられていた。
こんな曲あったっけな?

しばらくすると微かに音が聞こえてきた。
広い草原を想像させるような心地よい風の音。誰か歩いてくる。

「こんばんは」
女の子の声。かわいらしい女の子だなぁ。声で姿を確認できたような感じがした。

「こんばんは?お姉さん」
その声は私に問いかけているのか。私も挨拶を心の中で返してみた。

「こんばんは、君いくつかな?」
答えが返ってくる。

「17歳です。友達が出来てよかった」
「じゃあ私5歳年上だ!君の名前教えてくれない?あ、私久美子よろしく」
友達という響きが嬉しかった。

「温海、温かい海ってかいてあつみ。久美子お姉ちゃんって呼んでいい?」
「OK!じゃあ温海ちゃんはアッちゃんね」
私達はいろいろな話をしていた。アッちゃんのこと。私のこと…。
アッちゃんの相談にも乗った。アッちゃんはお父さんとうまくいっていないようだ。

私はふと質問した。
「アッちゃん ここで何してるの?」
「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

耳の奥にまで響いてくる、嫌。嫌だ。嫌だ。
断末魔のような悲鳴に恐怖を感じ私は現実に戻された。
ヘッドホンをと――取れない。悲鳴が私を壊していく――
――ああ私はヘッドホンが好き。あぁいつも耳にはヘッドホン。ああ何が面白いのかわからないけど笑みがこぼれてくる。
周りの人は私が変になったとか。暗い人だったから精神的にイッタんじゃない?とか、あああ私は気にしない。だってアッちゃんが居てくれるもん。

あああああここは心地いいあああ ああ あああああ ああアあァあぁ あぁああ

 

 

ザリザリ…

 

あれは僕が小学5年生のころ。
当時、悪がきで悪戯ばかりだった僕と、友人のKは、しょっちゅう怒られてばかりでした。

夏休みのある日、こっぴどく叱られたKは、僕に家出を持ちかけてきました。
そんな楽しそうなこと、僕に異論があるはずもありません。

僕たちは、遠足用の大きなリュックにお菓子やジュース、マンガ本など ガキの考えうる大切なものを詰め込み、夕食が終わってから、近所の公園で落ち合いました。
確か、午後8時ごろだったと思います。
とはいっても、そこは浅はかなガキんちょ。
行く当てもあろうはずがありません。

「どうする?」
話し合いの結果、畑の中の小屋に決まりました。

僕の住んでいるとこは、長野の片田舎なので、集落から出ると、周りは田畑、野原が広がっています。
畑の中には、農作業の器具や、藁束などが置かれた小屋が点在していました。
その中の、人の来なさそうなぼろ小屋に潜り込みました。

中には、使わなくなったような手押しの耕運機?があり、後は、ベッドに良さそうな藁の山があるだけでした。
僕たちは、持ってきた電池式のランタンをつけ、お菓子を食べたり、ジュースを飲んだり、お互いの持ってきたマンガを読んだりと、自由を満喫していました。

どのくらい時間がたったでしょうか。
外で物音がしました。
僕とKは飛び上がり、慌ててランタンの明かりを消しました。
探しに来た親か、小屋の持ち主かと思ったのです。
二人で藁の中にもぐりこむと、息を潜めていました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・」
何か、妙な音がしました。
砂利の上を、何かを引きずるような音です。
「ザリザリ・・・ザリザリ・・・」
音は、小屋の周りをまわっているようでした。
「・・・なんだろ?」
「・・・様子、見てみるか?」
僕とKは、そおっと藁から出ると、ガラス窓の近くに寄ってみました。

「・・・・・!!」
そこには、一人の老婆がいました。
腰が曲がって、骨と皮だけのように痩せています。

髪の毛は、白髪の長い髪をぼさぼさに伸ばしていました。

「・・・なんだよ、あれ!・・・」

Kが小声で僕に聞きましたが、僕だってわかりません。
老婆は何か袋のようなものを引きずっていました。
大きな麻袋のような感じで、口がしばってあり、長い紐の先を老婆が持っていました。
さっきからの音は、これを引きずる音のようでした。

「・・・やばいよ、あれ。山姥ってやつじゃねえの?」
僕らは恐ろしくなり、ゆっくり窓から離れようとしました。

ガシャーーーン!!
その時、Kの馬鹿が立てかけてあった鍬だか鋤を倒しました。
僕は慌てて窓から外を覗くと、老婆がすごい勢いでこちらに向かって来ます!
僕はKを引っ張って藁の山に飛び込みました。

バタン!!
僕らが藁に飛び込むのと、老婆が入り口のドアを開けるのと、ほとんど同時でした。
僕らは、口に手を当てて、悲鳴を上げるのをこらえました。

「だあれえぞ・・・いるのかええ・・・」

老婆はしゃがれた声でいいました。
妙に光る目を細くし、
小屋の中を見回しています。

「・・・何もせんからあ、出ておいでえ・・・」

僕は、藁の隙間から、老婆の行動を凝視していました。
僕は、老婆の引きずる麻袋に目を止めました。
何か、もぞもぞ動いています。
と、中からズボっと何かが飛び出ました。

(・・・・・!)
僕は目を疑いました。

それは、どうみても人間の手でした。
それも、子どものようです。

「おとなしくはいっとれ!」

老婆はそれに気付くと、足で袋を蹴り上げ、手を掴んで袋の中に突っ込みました。
それを見た僕たちは、もう生きた心地がしませんでした。

「ここかあ・・・」
老婆は立てかけてあった、フォークの大きいような農具を手に、僕たちの隠れている藁山に寄ってきました。
そして、それをザクッザクッ!と山に突き立て始めたのです。
僕らは、半泣きになりながら、フォークから身を避けていました。
大きな藁の山でなければ、今ごろ串刺しです。
藁が崩れる動きに合わせ、僕とKは一番奥の壁際まで潜っていきました。
さすがにここまではフォークは届きません。

どのくらい、耐えたでしょうか・・・。

「ん~、気のせいかあ・・・」

老婆は、フォークを投げ捨てると、また麻袋を担ぎ、小屋から出て行きました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・・」

音が遠ざかっていきました。

僕とKは、音がしなくなってからも、しばらく藁の中で動けませんでした。

「・・・行った・・・かな?」
Kが、ようやく話し掛けてきました。
「多分・・・」
しかし、まだ藁から出る気にはなれずに、そこでボーっとしていました。

ふと気が付くと、背中の壁から空気が入ってきます。
(だから息苦しくなかったのか・・・)
僕は壁に5センチほどの穴が開いてるのを発見しました。 外の様子を伺おうと、顔を近づけた瞬間。

「うまそうな・・・子だああ・・・・!!」

老婆の声とともに、しわくちゃの手が突っ込まれました!!

僕は顔をがっしりと掴まれ、穴の方に引っ張られました。
「うわああ!!!」
あまりの血生臭さと恐怖に、僕は気を失ってしまいました。

気が付くと、そこは近所の消防団の詰め所でした。
僕とKは、例の小屋で気を失っているのを、親からの要請で出動した地元の消防団によって発見されたそうです。
こっぴどく怒られながらも、僕とKは安心して泣いてしまいました。

昨晩の出来事を両方の親に話すと、夢だといってまた叱られましたが、そんなわけがありません。

だって、僕の顔にはいまだに、
老婆の指の跡が痣のようにくっきり残っているのですから。

 

 

よさぶろう

 

僕が小学校の頃、家に遊びに来ていた従兄弟に、

「夜中の0時丁度に『よさぶろう』と三回唱えると、自分の右側に『よさぶろう』という霊が出る」
という話を聞いた。

夏休みの晩、蒸し暑くて眠れなかった。
ふと時計を見ると、時刻は0時00分。

その時、あの話を思い出した。

僕は迷わず『よさぶろう』と三回唱えた。
そして自分の右側を見た。

しかしそこは壁。
やっぱり出ないかと思い、残念な気分で左側を見た。

すると、扇風機の上に薄汚れた茶色の服と帽子をかぶった上半身だけの男がいた。

僕は怖くなって、目をそむけてそのまま寝た。

しばらくして、あの出来事もほぼ忘れていて、友達とホラー映画を見にいった。

その日は帰りが遅くなって、家に着いたのは深夜0時前。
僕は早く寝たくて、早速風呂に入った。

ホラー映画を見れば怖い事を考えてしまうもので、家族全員が寝ていることもあって、一人でシャワーをするのが怖くなってきた。

早く上がろうと考えていたとき、

バタバタッ

っと足音が聞こえてくる。

穏やかじゃない足音。
家族ではない。

しかし、その足音はだんだん風呂場に近付いてくる。

すりガラス越しにそいつの姿が見えた。
真っ赤な下半身だけが、そのまま風呂場を通りすぎて行った。

怖くなった僕はすぐに風呂を上がり、布団にもぐりこんだ。

いつの間にか寝ていて、なんだか息苦しくなって目が覚めた。

体が動かない。

金縛りだ。

自分の体の上に、誰かが乗っている。
あの上半身と下半身が合体したような人間が乗っている。

両腕を、押さえつけられている。

気が付くと朝だった。
夢だったのか。
いや確かに、両腕には握られたような痕がある。

きっとよさぶろうは、何らかの理由で上半身と下半身が切断され、体を探していたんだろう。

あれから僕は、出来るだけ早く風呂に入ることにしている。

 

 

オジイサン

 

これは私の姉の彼氏が体験した話である。

ある日、姉の彼氏(A君)は、友達(B君)の家へ泊まりに行く事になった。
数人でB君の家へ向かう途中、1人が

『Bの家のアパート、家賃月1万だってよ。まじ安いよなぁ』 と言った。
A君は、それを聞いて少し不安になった。

いくらなんでも今時月1万で借りられるアパートなんてあるのだろうか。
第一、こんな何人も泊まれるようなスペースが月1万のアパートにあるのだろうか…。

少ししてB君の家に着いた。

A君は安心した。
アパートはボロボロなわけでもなく、部屋が狭そうな様子も全くなかった。
部屋に入ると、やはり見た目同様、狭いどころか広い方だった。

『なぁB、この広さなのにまじで家賃1万なのか?』

A君が疑問をぶつけると、B君は苦笑いして窓際へ行き、カーテンをあけた。
わけがわからず、窓の外を皆で見下ろしてみた。
すると、すぐ前に小さな墓地があった。

『その墓地、なんか出るって有名なんだ。まぁ、ワケあり物件ってやつ?』 とB君が言った。

A君は納得した。
と同時に、なんだか嫌な予感がした。

その夜、皆でトランプなどをして、A君たちは修学旅行のようにはしゃいだ。 すると1人が、

『何か喉かわかねぇ? 次のババヌキでさぁ、負けた奴があの墓地の自動販売機でジュース買って来るのってどう?!』

と言った。
確かに墓地の隅に自動販売機があった。

A君はなんだか嫌だな…と思ぃながらゲームに参加した。
すると、幸い負けたのはA君ではなくB君だった。

B君は渋々部屋を出ていった。

皆おもしろがって笑っていたが、A君は何だか嫌な予感がして、窓から墓地を見下ろした。

少ししてB君が来た。

人数分ジュースを買っているB君を見ていたA君は、ふと、B君の少し離れた所からおじいさんがB君をじっと見つめているのに気が付いた。

立ち姿がなんだか気味が悪い…。
というよりも、今おじいさんが立っている場所には、入口からA君が覗いている窓のすぐ下を通らないと行けないはずだ。

下を通ったなら、A君が気付かないわけがない。
ならば、どうやっておじいさんはあそこに…。

そんな事を考えていると、おじいさんがよろよろとB君に向かって歩き始めた。

これは…ヤバいかもしれない!!

直感的にA君はそう思い、B君に向かって叫んだ。

『Bー! 後ろ!!』

B君は驚いて振り返り、おじいさんのいる方をじっと見つめた。
が、すぐにこちらを向いて、

『何もないじゃねーか! 驚かすなよ!』と言った。

え…?

見えてない…?

『何言って…後ろにおじいさんが…』

……これは、本当にヤバいのではないか…?!

A君はそう思い、再び力一杯B君に向かって叫んだ。

『Bー!! お前ヤバいぞ! まじでヤバイ! とにかく走れ! 部屋にもどって来い!』

B君は意味がわからないと言った表情をしたが、A君のただならない様子を見て、すぐに走り出した。

すると突然、おじいさんが白眼をむいて

ダダダダダダダダダダダ!!

と、ものすごい速さでB君の事を追い掛け始めた!

確実におじいさんの走れる速度ではない…。

『Bーーー! 走れー! 早くー!!』A君は必死に叫んだ。

B君も必死に走り、やっとのことで入口まで来て、走り抜けた。

その瞬間、おじいさんがボッ…と消えた。

B君はその後、すぐに無事部屋にもどってきた。
他の人もA君の声に驚いて窓際にかけより、すべてを見ていた。
そのため、皆恐怖でその晩は一睡もできなかった。
あれは一体なんだったのか…。
もしB君が逃げ切れていなかったら…。
B君はどうなっていたのか…。

B君はすぐにそのアパートを引越しした。

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