『霊界行き』『線路』など短編 – 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】

『霊界行き』『線路』など短編 - 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】 短編
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のぞき穴

大学生の男は古いアパートで1人暮らしをしていた。

男の部屋の壁には小さな穴が開いており、そこから隣の部屋の様子をのぞき見ることができた。

隣の入居者は若い女性。
女性はのぞき穴の存在に気付いていないらしく、男はこれ幸いとばかりにのぞき行為を続けていた。

そしてある日の事。
夜中の3時をまわった頃、男はドスドスという物音で目を覚ました。

何事かと思えば、隣の部屋から聞こえてくる物音だった。
もしかして男でも連れ込んだか? と思い、喜び勇んでのぞき穴を覗く。

隣の部屋も電気を消しており、詳しい様子をうかがい知る事はできなかったが、人影が2体あることは確認できた。

これは間違いない、と男は興奮したが、すぐに様子がおかしいことに気付いた。
男と思われる大きな人影が動くばかりで、女性のほうは全く身動きしていないのだ。

暗がりに目が慣れてくると、男が女性を殴りつけているということが分かった。
女性は猿ぐつわを噛まされているらしく、微かに「うっ」という声を漏らすだけで悲鳴をあげられなかった。

終には呻き声も聞こえなくなった。
すると、男の人影は隣の部屋から出て行った。

強盗だ!
男は警察に通報しようと思い、電話の受話器に手を掛けたところで、動きを止めた。

もし通報すれば、自分がのぞきをしていたことがばれてしまう。
自分の保身のために、男は通報を思いとどまった。
1週間としないうちに、アパートに警察が押しかけてきた。
やはり隣の女性は殺されていたらしい。

当然、警察はのぞき穴の存在を発見し、何か見なかったかと男に聞いた。
男は、

「壁の穴なんて気付かなかった。その日もなにがあったか気付かなかった」
と言った。

他にもいくつか質問されたが、警察は男のことを疑っている様子は無かった。

殺人の瞬間を目撃したことは忘れられなかったが、通報しなかった事への罪悪感はすぐに薄れていった。

事件から2週間たっても、犯人は依然として捕まらなかった。

そしてある日の事。
夜中の3時をまわった頃、男は再びドスドスという物音で目を覚ました。

しかし、隣の部屋は事件以降、新たな入居者は入っていないはずだった。
それでも、その物音は間違いなく隣の部屋から聞こえてくる。

恐る恐るのぞき穴をのぞいて見たが、動くものの気配は無い。
気のせいか、と思い穴から離れようとした瞬間。

狭い穴の視界を埋め尽くすように、かっと見開かれた血走った目が現れた。

男はがっちりと目を合わせたまま、驚きのあまり身動きが取れなかった。

そして、かすれた女の声で一言……

「見てたでしょ」

鐘の音

それはあたしが小学2年生の頃の話です。

通っていた学校のすぐ隣には、お寺とお墓が立っています。 校舎から3メートル程度かと思います。
掃除時間のときの事です。

私たちの班は男子2人、女子3人それぞれがトイレに分かれます。
掃除時間は約15分、トイレのドアを閉めると開始です。

初めは雑談をしながら楽しく掃除をしていたんですが、トイレの窓の外から

チーン…チーン…

と、墓参りのときに叩く鐘の音がしてきました。

私だけかと思い、気にも止めず掃除をしていたら、あとの2人にも聞こえていたらしく

「ねえ、さっきから鐘の音しない?」 と聞いてきました。

「うん、聞こえてた。なんなんだろうね?」

「…音、大きくなってきてない?」

私たちは怖くなり窓を閉めました。

ですが、音は止みません。 それどころか大きくなるばかり。

トイレから出ようとドアに手をかけましたが、開きません。

そのときです。
閉めたはずの窓が、ゆっくり開きました。

私たちは声も出ません。
怖くて体を寄せ立っているのが精一杯でした。

すると、窓から手が見えました。

しかし見える筈がないのです。
私たちは3階にいるんですから…。

手が中に入ってきました。

髪が長い女の人でしょうか? 頭も見えます。

トイレに入ってきてるんです。
私たちの元へきているのです。

私はここで気を失ってしまいました。
友達も同様、気を失いました。

気づいたときは保健室にいました。

私たち3人、掃除からなかなか帰ってこないのを心配し、先生が見に来たそうです。

ドアを開けると個別に一人ずつ入っており、壁に寄りかかっていたそうです。

開けてよー

わたしが母方の田舎に帰ったとき良く遊んでいた、サキちゃんという女の子がいたのですが…。

当時小2の夏休みでした。

実家の裏山でいっしょに遊んでいるときに、いたずら心からか山中の空き地に放置されていた冷蔵庫にサキちゃんを閉じ込めてしまったのです。

子供の頃は好きな子に逆にいたずらとかをして気を引こうとしてしまう、そんな行為からでした…。

すぐに冷蔵庫を開けてあげるつもりでした。
ところが一度閉まってしまった冷蔵庫は、わたしがどんなに引っ張っても開かなかったのです…。

そこで事の重大さに気づきました。
わたしは「開けてよー開けてよー」と泣き叫ぶサキちゃんを後に、その場を立ち去ってしまったのです…。

もちろん親を助けに呼ぶためでした。
しかしいざ家に着くと、このことを話せば酷くしかられるのでは…。そう思った私はなかなか言えずにいました。

そして昼食を出されたとき、わたしの記憶からそのことがすっかりと抜け落ちてしまったのです…。

昼食後、私は眠気に襲われそのまま眠ってしまいました。

気がつくと、父親がものすごい形相で私を起こしていました。

「おい、お前サキちゃんを知らないか!?」

それを聴いた瞬間、私は体中が一瞬で冷たくなっていくのを感じ、とっさに「知らない」と返事をしていました。

あたりはすでに夕暮れでした…。

「まさか…まだあの冷蔵庫の中に…」

その夜、捜索隊など地元の人たちが総出で山中を探したそうですが、未だにサキちゃんは見つかっていません。

捜索隊が出たなら冷蔵庫も発見されて中も調べられているはず…。それでも見つからないのは、きっとサキちゃんはどうにかして冷蔵庫から出れたんだ…。その後山の中で迷ったのか誘拐されたか…。

きっとそうだ、とわたしは自分に思い込ませています…。

ですが、今でも冷蔵庫だけでなく…戸棚やドアを閉めるたびにサキちゃんの

「開けてよー開けてよー」

という声が聞こえてくる気がするのです…。

霊界行き

ある男が夜遅くバスで家に帰ろうとした。
が、駅に着いたときにはもう深夜近く、バスがまだくるかどうか分からない。

しかし家までは遠く、とてもじゃないが歩ける距離ではなかった。
彼は意を決してそこでずっと待っていた。

もうこないかと諦めかけたとき、突然バスが現れた。

彼はうれしくてそそくさと乗った。
と同時に、ふと違和感を感じた。

こんな夜中なのに何故か混んでいて、座れる席は一つしかない。
しかも人が大勢いるのに、誰もが口を閉ざし、バス内は静まり返っていた。

不審だと思いつつも、彼は唯一空いてた席に座った。

隣には一人の女性がいた。
彼女は声を押さえ彼の耳元でこう囁いた。

「あなたこのバスに乗るべきではないよ」

彼は黙って続きを聞くことにした。
彼女は続けた。

「このバスは霊界に行くものよ。あなたのような生きてる人がどうしてここにいるの? このバスに居る人は誰も霊界にいきたくないよ。あなたはすぐ彼らに捕まって誰かの替わりとして死んでしまうわよ」

彼は怖さのあまり言葉もでなかった。
身を震わせながら、どうすればいいかさえわからず途方に暮れていた。

その時、彼女が

「大丈夫、私が助けてあげる」

と言い出した。

そして突然!
彼女は窓を開けて彼を連れて飛び降りた。

バスの乗客が「ああ!! 逃げられちまった」と大声で叫んだ。

彼が落ち着いたとき、彼女と二人で荒れた丘に立っていた。
彼は彼女に「助けてくれてありがとう」と伝えた。

その瞬間、彼女の口元が歪み、筋肉を痙攣させながらニタッと笑った。

そしてこう言った。

「これであの人たちと奪い合わなくてもいいわね」

線路

私の彼氏の友達が、実際に体験した話です。

その友達(以下Sさん)が住んでいる地域には、よく人が自殺する川や線路があるそうです。

ある年の夏、Sさんとその友達(Dさん、Aさん、Nさん)、合計4人で肝試しに行こうと言うことになり、自殺が多発している線路に行ったそうです。

線路に着いたものの、辺りが真っ暗なだけで、これといって怖い事はなかったそうです。

S「何だ、なんもねーじゃん」

N「どうする? 帰る?」

など話をしている時、Sさんは、『携帯のカメラで写真を撮ろう!』と思ったそうです。

そこで、

S「なぁ、携帯で撮らねぇ? 何か写るかもよ」

と3人に提案しました。3人は

「いいねぇ! やろうよ!」

と乗り気だったので、Sさんは自分の携帯でパシャ! と線路全体を写す感じでシャッターをきりました。

しかし、撮り終えた画面はただ真っ黒なだけで、白い影が写ってるとか、赤い線が写ってるなどはなかったそうです。

S「何だ! なんも写ってないじゃん」

A「うわっ! 面白くないなあ!」

D「もう、帰ろうぜ!」

Sさんの友達が帰ろうと言い出したので、4人は帰る事にしたそうです。
4人は横一列に並び、あの先輩がどうだとか、あの女はどうだとか、くだらない話をしながら歩いて帰ったそうです。

10分程歩いた時、ふとSさんはさっきの写真が気になり、

S「なあ、さっきの写真もう一回見てみない?」

と、相変わらずくだらない話をする友達に言いました。

D「まあいいけど…?」
友達3人は、『どうした?』という顔をしながら、Sさんの周りに集まりました。
Sさんは先程保存しておいた線路の写真を、出しました。

すると…

撮った直後は真っ黒だったその写真の中央に、白い女の顔が小さく写っていたのです。
Sさんはびっくりして携帯を勢いよく閉じました。
友達もびっくりした様子だったそうです。

A「と、取りあえずもう一回見てみようよ…」

そう言われたSさんは、恐る恐る携帯を開けました。

すると、小さかったはずの女の顔が、今度は画面いっぱいになっていました。
Sさん曰わく怒っているような顔だったそうです。

その顔をみて4人が絶句していると、

バキッ!

と携帯の画面が割れたそうです。
Sさんはそれを見て

S「もう今日は帰ろうか…」

と言い、友達と別れたそうです。

次の日、Sさんは携帯を変え、画面が割れた携帯は携帯ショップに処分してもらったそうです。

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