山小屋
今からかなり前の話なんだが、けじめをつけるために話す
その時は冬休みで、俺の家族は婆ちゃんの家に行ってたんだ
名前は伏せるけど結構な山奥で尚且つ雪国だから、近くの山でソリとかで遊べるんだ
だから、暇なときはいつもそうして遊んでた
それが婆ちゃん家に行く楽しみでもあったんだ
俺は婆ちゃん家に行くと決まって遊んでた友達がいた
小6と小4の兄弟で、上が俺と同い年なんだ
小6の方をA、その弟をA弟とする
その日は晴れてたし夕方まで遊びまくるぞーって意気込んでた
でも朝からずっとソリで遊んでると飽きてくるわけだ
それで俺たちは昼食の後、かまくら作ろうって平地を探して少し奥まで入ったんだ
今思えば馬鹿だったと思う
朝晴れてたところで午後からどうなるか分からないし、家の近くで作れば良かったんだ
でも、当時の俺たちは秘密基地みたいなのに憧れてたんだと思う
それで、作り始めて少ししたら案の定雲行きが怪しくなってきた
俺とA弟は帰ろうと言った
でも、Aがかまくらがもうちょっとで出来そうだからって帰ろうとしなかった
放っておくわけにも行かず手伝っていたんだが、いよいよ雪がちらつき始めた
さすがにAもヤバイって思ったんだろうな
やっと帰る気になってくれた
でも、もう遅かった
途中で吹雪はじめてしまった
いくら雪国で育ったと言ってもまだ子供だったから、パニックでどうしようもなかった
そんな中、明かりを見つけた
山小屋だった
俺たちは無我夢中で入ったんだけど、
今思えばそんな所に山小屋なんてなかったはずなんだよな
でも、そんなこと気づかずに俺は中に入って安心してた
寒かったけど外よりはましだったから3人でくっついて、これからどうするか話してた
悩んだけど、帰るに帰れない状況だから吹雪が止むのを待つことにした
そうと決まると、好奇心旺盛なAが小屋の中を探索し始めた
その間、俺とA弟はくっついて座ってた
そしたら、突然Aが扉があると言って駆け戻ってきた
入ったときは吹雪で全体が見えなかったし、他に部屋があってもおかしくはない
俺とA弟はAに続いてその場所を見に行った
そこには確かに扉はあったんだけど、棚が前に置かれていて3分の1しか見えていなかった
普通に考えたら怪しい
でも、Aは開けようと言い出した
この時は俺もA弟も何故か楽しくなってきていて、3人で棚を動かすことにした
棚の中の置き物とかを出せば、案外軽くてすぐに動かせた
今考えればこの行動は正しかったのかは分からないが、好奇心には逆らえなかった
Aを先頭に、扉を開けた
そこには、鏡台が一つ置いてあった
さすがに俺はゾッとした
それまでに怖い話は読んだり見たりしてたから、なんとなく嫌な感じがした
でも、Aはそんなこと気にしない
興味津々といったふうに鏡台に近づいていった
俺とA弟は入口で突っ立っていた
その部屋はそんなに広くなくて、奥に鏡台が一つあるだけ。
鏡の背は壁にぴったりとつけられていた
俺は霊感とか無かったけど、殺風景な中の鏡台っていうのがすごく不気味で嫌だった
A弟は帰りたいと呟いていた
俺も同感だったが、外は吹雪。どうしようもない
少しして、Aが突然血相を変えて走ってきた
「帰るぞ!」と叫んで部屋から飛び出す
俺たちはわけがわからなかった
Aは鏡台の部屋から出るなり扉を閉めると、棚を扉の前に置いた
そして開かないように棚にたくさんの物を置いていく
その全てが、まるで狂っているかのようで怖かった
目は血走っていたし、かなり息が荒かった
俺は吹雪による寒さとは違う何かを感じた
ようは、悪寒ってやつだ
それはA弟も同じみたいで、兄を見ながらガクブルしていた
その時、たぶんAは既に手遅れだった
完全に発狂していた
再び、「帰るぞ!」と叫ぶ
でも今は吹雪で帰れるわけがない
俺とA弟は必死で止めた
でも、Aは外へ飛び出した
吹雪の中で早く来いと叫んでいる
俺はもう何がなんだか分からなくなり、Aに従うことにした
この時はまだ、いつものAだと思っていた
ただ、混乱しているだけだと自分に言い聞かせた
俺はA弟の手を取ると、Aを追って走った
吹雪でわけがわからないけど、ただひたすらAを追った
ひたすら走って、前方に明かりを発見した
一足先に着いていたAはガンガン家の扉を叩いていた
追いついて見ると、そこは婆ちゃん家だった
助かった…って俺とA弟はわんわん泣いた
でも、Aだけは血走った目で扉をガンガン叩いていた
すぐに婆ちゃんと俺の両親が出てきた
俺たちを見て両親は安堵の表情を浮かべて、それからAの両親へ電話をしに行った
部屋に入ると既に7時を過ぎていた
かまくらを作り始めたのは昼食を食べてすぐだったし、2時間もかかっていないはずだった
それなのに、なぜこんな時間なのだろう
俺とA弟は顔を見合わせた
Aはじっと座っていた
10分もしないうちにA両親がやってきた
A母は2人を抱きしめて泣いていた
俺は婆ちゃんと両親に事情を聞かれた
全て話すと婆ちゃんの顔からサッと血の気が引いた
婆ちゃんはAに「何を見た?」と詰め寄った
俺を含め他の面々は全く理解できなかったけど、婆ちゃんの雰囲気から只事じゃないのは分かった
婆「引き出しの中に何を見た?」
A「分からない。…けど、変な動物みたいだった」
そこで、Aは暴れだした
ごめんなさい、ごめんなさいと叫んでた
俺とA弟は2人で俺の部屋で寝るように言われた
翌日、俺とA弟が起きるとAと婆ちゃんの姿がなかった
Aの両親の姿もなくて、A弟は俺の家でしばらく過ごすことになる、と俺の両親に言われた
次の日の午後、婆ちゃんが帰ってきて俺たちを車に乗せた
車は知らない人が運転していた
それから3時間くらい乗っていたら、知らない寺の前におろされた
運転手は寺の住職の息子だと言った
俺たちは本堂の中へ通された
そこには住職が待っていた
住職は俺たちを座らせると、Aのことだ、と語り始めた
Aは×××に取り憑かれているらしい
(×××の部分は聞き取れなかった)
引き出しの中で動物を見たと言っていたのは、たぶんこれのこと
ちなみにそれは死骸だったらしい
それは、死骸が綺麗なほど危険度が低い
でも、Aが見たのはかなり喰いちぎられていたらしく、住職には手に負えないと言われた
俺とA弟は絶望した
なんでそんなものがあるのかというと、
あの山小屋は昔民家だったそうだ
そしてそこには両親と娘一人という、3人の家族が住んでいたらしい
しかしその家族は謎の死を遂げた
(一斉に別々の方法で死んでいたらしい)
その後、近所の家の住人が病気にかかったり大きな怪我をしたりしたため、徐々に周りが引っ越していきあの家だけが残ったのだそうだ
しかし、近隣の集落にまで何かが起こってはいけないと、そこに住んでいた人々はある人物にお祓いを頼んだ
その人物が、この寺の住職の先祖だった
先祖がその家に行くとすぐに理由が分かったそうだ
やはり×××が憑いていた
×××ってのはその集落の辺りに伝わるものらしい
憑いた原因はその家が呼び出したから。
詳しいことは教えてもらえなかった
先祖は考えた末、鏡を置いてそこに小動物の死骸を生贄として捧げて×××を祀ることで大人しくしてもらうことにした
なんで鏡なのかというと、先祖から伝わる方法なんだそうだ
しかし、それを俺たちが破壊した
死骸が喰いちぎられていたのはそれに×××が怒ったから。
俺たちは泣きながら、ごめんなさいと謝った
住職はAの元へと案内すると言った
その道中で、住職は一つ不可解なことがあると言った
それは、あの山小屋と俺の婆ちゃん家は数キロ離れているということだった
もうその時点で本当に恐ろしくて仕方がなかった
でも、責任があるからAがどうなったかをきちんと見ろ、と言われたからついて行った
離れみたいなところにAはいると言われた
近づくにつれて悲鳴と引っ掻くような音が聞こえてきた
ぎゃぁぁぁあ!
とか
がりがり
とかいう感じ。
A弟はずっと泣いてた
離れの戸を開けると、しめ縄みたいなやつの長いやつで囲まれた隅にAがいた
昔の面影はなかった
俺はそこで気を失った
本当にヘタレだと思うけど、怖かったんだ
目が覚めると本堂に戻っていて、近くに住職がいた
婆ちゃんも、俺とAの両親もいた
なんか、すごく真面目な顔をしてたのを覚えている
俺と一緒にA弟も目を覚ました
すると、住職の前に座るように言われた
Aはもう帰れないらしい
そして、それを見ていた俺たちの身にも何が起こるか分からないそうだ
両親は泣いていた
それから俺たちは会うことはなかった
俺はすぐに自分の家に帰ったし、A一家は引越した
Aがどうなったかは俺には分からない
ここまで聞いてくれてありがとう
俺、これからA弟に会ってくる
はじめに書いた通り、全部けじめのためなんだ
これから会うっていうのは、A弟と寺に呼ばれたから行ってくるんだ
たぶん、Aの話なんだと思う
もし書き込みできたらまた報告に来ようと思う
質問があったらまとめておいてくれるとありがたい
結論から話すと、俺は無事
Aは残念ながらダメだったそうだ
A弟はやっぱり泣いてた
変わらないな、とか思った
あの日俺たちが寺から帰った後、Aは1日中叫んでいたらしい
もう会えないのが分かったのかなー、って俺は思った
そんなわけないんだけどね
それで、Aは一週間耐えたらしい
住職もお経?(というか祓う言葉)を唱えたり、息子に協力してもらったりしてどうにか助けようとした
でも、ダメだった
それだけ、Aに憑いてたやつは凶悪だったんだな
なんで何年も経った今、そんな話をされたのかというと、
今回俺たちが話を聞いたのはあの住職の息子からなんだ
あの住職はもう亡くなったらしい
でも、普通の死に方じゃなかったんだって。
やっぱり、Aを祓おうとしたからかな
住職が取り憑かれたんだろう
それで、息子以外は住職の奥さんも息子の嫁も子供もやられたそうだ
この寺はもう息子一人になったから、最後に俺たちを呼んだらしい
そして、真実を話した
俺たちはこれを聞いたことで、それに憑かれるかもしれないと言われた
でも、真実を知ってほしかった、と。
俺とA弟はもう仕方ないって思ってたから、諦めた
息子は泣きながら謝ってた
これはあの日の責任だからな
勝手に立ち入ってしまったこと、Aを止められなかったこと
Aが死んだのは、俺たちのせいでもあるから
A弟は結婚していい奥さんもらって、子供も1人いる
自分はどうなってもいいから、家族は守りたいって言ってた
Aの両親と俺の両親は健在
俺の婆ちゃんは少し前に亡くなった
普通に病気だった
俺も一応嫁がいる
子供はいないけどな
正直、憑かれるのは怖いけど周りには迷惑かけないようにしようと思う
ここに書いたのは、お前らにこんな目に遭ってほしくないからだ
好奇心が皆を泣かせることになってしまうってことがある
お前ら、あんまり怪しい場所には不用意に入るなよ
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