山にまつわる怖い話【17】全5話
1本の杉の木
山ではないけど、山林を拓いて造られた自然公園で不思議なものを見た
4月から異動でその自然豊かな公園の側に通勤するようになった
んで、定時上がりなら未だ明るい時節になったので、公園の中を散策がてら帰ることにした
その公園はかなり広くて、芝生の広場や季節の花園やテニスコートなんかもあるけどちょっと外れると
人の手が余り入ってない雑木林だらけで、好奇心にかられて人もろくに通らないそんな場所をずんずん進んでいった
半ば朽ちたアスレチックゾーンを見下ろす場所で一休み
そこから先は、杉林の中をかろうじて小道が通っている本当に鬱蒼とした山道
暗くもなってきたし、さあどうすっぺなーと思いながらメロンパンかじってたら、何か音がする
何だべ?と近くの雑木林を見たら、1本の杉の木が揺れている、枝が、じゃなくて木全体が
幹がミッシミッシ音を立てて揺れていて、でも絡みつくかのように密生している他の木は小枝1本も揺れてない
その杉の木だけ、もちろん風だって吹いてない(微風くらいはあったかな?)
木の根元を人か何かの獣が揺らしてるのかとも思ったけど、そんなものも居ない
変なこともあるもんだなぁと、その時はそう思っただけだった
道があるからには、どこかへ通じているんだろうとその鬱蒼道を進んでみることにした
真っ暗になる前にどっか拓けた所に出るといいなぁと思いながら歩いてたら
「ヴーウゥーッ」って、うなり声みたいな音がした
まさか獣?いや、風が木の枝を揺さぶってそんな音がしたのかもと思い直してまた進む
2回目「ヴゥーウゥーッ」
その瞬間、踵を返して全速力で走った。不味いっ!って頭が思うより先に体が反応した
走りながら、生物の先生が熊は下り坂が苦手っていうのを思い出してさっきのアスレチックまで駆け下りひたすら広場目指して一直線
追いかけてくるものは無かったけど、何かがあそこに居たことだけは確かだと思う
この辺りは、去年の今頃熊が出て地方紙にも載った場所、その熊は未だ捕まっていない
うなり声の主はともかく、あの1本だけ揺れていた杉の木が気になっている
あれは、もしかして「進むな」という何者かの警告だったんじゃないかな、と今頃思っている
1本だけ揺れる木について、何か知っている人はいないかとここに書いてみました
単眼オヤジ
頃は夏。遠縁の田舎へ連れて行ってもらった時の話。
俺が黄色(小坊)2年、弟が幼稚園の時。
場所は岐阜県。他県と接する山間の村で、今回はちょっと差し障りがあるからそこまでしか言えない。ごめん。
〈その1〉
俺たちは山の中腹にある神社の境内でセミ採りをしていた。近所の子供たちは勝手知ったる場所だから、ずっと奥のへ散らばっている。
いくら夏でも、日暮は何となくわかる。もうじき誰かが「帰ろうぜー」と言い、二言三言、言葉を交して家路を辿らねばならない。まだ1匹も採れていない弟は、網を握りしめ、セミの声のする辺りを一生懸命睨んでいる。俺に任せればすぐ2・3匹は採れるのに、どうしても自分で採りたいらしかった。
俺たちの背後から、誰かの足音がした。
隼人か圭一だろうと思ってふり向いた俺は驚いた。
茶色いオヤジゾウリにグレーのズボン、青っぽいジャンパーを腕まくりしている、短いごま塩頭の男がそこに立っていたのだが、そいつの目玉がたった1個。普通2個並んで存在しているはずの場所に、10センチくらいのアーモンド型の目玉、そいつがたった1個しかなかったのだ。
人見知りの激しい弟は、“知らない、変な大人”の出現に怯え、俺の背中に隠れるようにしっかりしがみついている。
しかし、不思議と怖さは感じず、それより、なんだか懐かしい、昔引越していった近所の人に再会したような気持ちだった
そして、驚いたのは俺たちだけではなかった。
「おっ?」
この単眼オヤジも俺たちを見て、何か思いがけないモノを見たような顔をしたのだ。
何でコイツが驚くのか?訳がわからず混乱する俺たちに、単眼オヤジは優しく言った。
「一緒に帰るか?」
?????帰る???どこへ?????
錯乱する俺に代って即答したのは弟だった。
「イヤだ。まだ遊ぶ」
目の前の怖さより、セミへの執着の方が勝ったらしい。
単眼オヤジはあっさり「そうか」と頷き、神社に向って歩きかけたがふり返り、「早く帰らないと、ヒトに捕られるぞ。気を付けな」
さも心配げにそう言って神社の裏へ姿を消した…
俺たち兄弟が単眼オヤジに会ったのは、後にも先にもこれっきりだ。
あの時、ヤツは一体どこへ俺たちを連れて帰ってくれようとしたのか。
弟と時折その話をするが、いくら考えてもわからない。
そして一番わからないのが、単眼オヤジは俺たちの事を何だと思って声をかけたのか。
今、もし単眼オヤジに会えるなら、あの時の事を酒でも飲みながらじっくり話を聴いてみたい。そんな事を考えている。
足りない
実家に帰った時に、遊びに来た同級生(仮にS)に聞いた話。
その同級生の家の近くには小学校があり、その脇に細い道がある。
そして、その道の脇には小川が流れていて、対岸は竹林でそのまま山になってる。
田舎なものだから、夜になると街灯も疎らで真っ暗だ。
Sは仕事の帰りに原付でその真っ暗な道を走ったそうな。
そうしたら、少し先の街灯の奥で蹲っている人影が見えたそうな。
原付のスピードを落として近づいて行ったら、それは毛布の入ったゴミ袋だったそうな。
そのゴミ袋は数日そのまま放置され、いつの間にか消えていたそうだ。
それから7ヶ月くらい経って、竹林の奥の山で毛布に包まれた白骨死体の入ったゴミ袋が発見されたらしい。
なんでもパーツが足りないんだと。
井戸
私の釣りの師匠が若い頃に源流の岩魚を求め、初めての沢を単独遡行した時の話です。
高巻き(そのまま沢伝いに遡行できない時にする迂回)をしたところ、斜面を登ったところの藪中に頑丈で重そうな木の蓋をされた井戸を見付けたそうです。
いささか疲れていた彼は井戸の蓋に腰掛けて一休み。
握り飯を食べ、良い気分で得意な(私はそうは思いませんが)歌を歌って暫く一人楽しんだ後、帰り道の目印を近くの枝に結んで遡行に戻りました。
辿り付いた源流で良型の岩魚を多数釣り上げた帰り道、彼が井戸のところまで戻ると何故か分厚い蓋がずれて井戸の口が一尺ばかりのぞいています。
周囲に民家はおろか、通り道やその痕跡すらありません。
沢に先行者がいると解っているのに後を追ってくる釣り人は居る訳ありませんから人の仕業であるはずもなく、動物の仕業としても藪にその痕跡が無いのは不自然です。
藪に残る大きな生き物の痕跡は彼のものだけでした。
そもそも、何故そんなところに井戸が掘られているのか?
と言うか、本当にそれは井戸なのか。
急に怖くなった彼は蓋の上に岩魚を何匹も置いて急いで下山し、以来、その沢には行っていないそうです。
源流の単独遡行は危険であるのですべきではありません。
が、遭難や滑落の他にも人知外の危険があるのかもしれません。
狐の嫁入り
仕事で夜中に隣の県から帰宅する時のことだった。
1月の小雨が降る寒い夜中だった。早く帰るために国道とか使わないで山越えする道を選んだ
よくない噂聴いたこと有るけど、何度か走っていたことある道だったからその山道を選んだ
寒いし、雨降るし、おまけに途中で霧がかかるし、何とか車一台通る道突っ走った。
そうして中ほどまで来たときに、カーブ抜けたら横いっぱいに頭から白いベールかぶった
人たちが道いっぱいに歩いていたよ。そこにスピード出して飛び込んでもう事故起こしたと思ったけど
何も衝撃無いんですよ。確かに車の前に半袖着て頭からベールかぶったような人が居たのに
急ブレーキかけて車は止まったけど、そのままとに角走り去りました。
いったい何だったんだろう
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