山にまつわる怖い話【45】全5話
八王子城趾
八王子城趾は有名な心霊スポットで、数多くの怪談話が伝えられていますが、
それも納得できる程、落城の際は壮絶な戦死者を出したそうです。
城兵達の流す赤い血は近くを流れる城山川に溢れ、
次から次へ、太く真っ赤な蛭と成って泳ぎ始めました。
それ以来、城山川は異様に蛭が多く棲み着いているのだとか。
また、ここの蛭は地元に人間には決して吸い付かないそうですが、
ある時、越後から来た行商人が、足を洗おうと川に入ると、
足を踏み入れるや否や、無数の真っ赤な蛭が行商人に吸い付き、
たちまち吸い殺してしまったそうです。
八王子城を滅ぼしたのは、加賀の前田や越後の上杉、信濃の真田など、
北方の大名たちだったので、
蛭に生まれ変わった城兵達は北国の人間に祟るからだそうです。
私は、両親が富山県出身なので、
この話を聞いて以来、八王子城趾には近づかないようにしています。
真っ暗な集落
自分が体験したちょっと不思議なこと。
一昨年の3月くらい。
ドライブからの帰りにスキー帰りの渋滞に巻き込まれてしまった。
うんざりしてきたんで、国道を離れて山の中を突っ切る道で帰る事にした。
車一台が通れるくらいの道を、真っ暗の中走っていると、
山の中で小さな集落に出た。
はじめは何とも思わなかったんだけど、ふと気がついてしまった。
どの家にも灯りがついていない。
暗いとはいえまだ6~7時くらい。普通の家なら一家団欒の時間のはず。
それなのに灯りのついている家は一軒も無かった。
廃村か?とも思ったけど、どの家も荒れた様子は無く、むしろ生活感があった。
何かヤバイものを感じて、追われるかのように車をとばして帰った。
その間なぜかバックミラーを見ることができなかった。
大きな人影
私が中学生だった頃の話。
その中学の教室の窓からは、牛女の話で有名なK山を見る事が出来た。
そのK山と共にR甲山系の山々も当然見える。
その山の一つには、大きな岩が幾つか有った。
ある日、授業に飽きた私はぼんやりとその岩を眺めていた。
動くものが見えた。その岩をロッククライミングしている人間がいるらしい。
しかし、何か異常な事に気がついた。
周りの木々と比較して、人影があまりにも大きいのだ。
変だなあ、と思っている内に、授業が終わった。
次の時間は理科室で授業だったので移動した。
その後、教室に戻ってきた時には人影は居なくなっていた。
今でも、あれはなんだったのか?と不思議だ。
カッパ
友人が子供の頃に体験した話らしい。
自分の爺さんが、河童にあったなんて話すから、そんな事件が起きた
と言っていた。爺さんだけ河童を見たのが悔しくて、近所の男子を
みんな呼んで河童を釣ることになった。
潜って探す奴。釣り竿の針に胡瓜を付ける奴。重りと針を使って
川底にキュウリを仕掛ける奴まで居た。
結局昼になっても見つからず、みんなして火をたいてジャガイモを焼いて食っ
てたときだった。岸に刺さってた竿が、ズルリッと川底に引っ張られて
ゆく。次いで川底の罠にもかかった。みんな我先にと、罠の縄を
つかんで引っ張ったが、男子が7人がかりでも引き上げれなかった・・・
そのうち一人が、「潜って捕る!」と言い出すと、
「おえもだ」・「一緒にあべ」・「いくどぉ!」と言い、
ジャガイモと火をほったらかしに、裸やパンツ一丁でみんな竹槍を
持ったりして川に潜った。
すると、川底に罠はなく、ひもの先は川底の泥に刺さっていた。
みんな対岸にあがって
「なんだべ・・・あえは」
「だえがやったんだべが?」
「人だ見てるとこであっただことできるわけねぇべった!!」
「んだやなぁ・・・」
と言っていると一人が、
「あえはなんだっ!?」
と言った。そこを見てみると串に刺さったジャガイモを持って
口には胡瓜の入った箱の縄をくわえ、その先には石の重りがある。
目は鋭く、巨大な犬歯が口から見える。頭に皿はなく、
背中に甲羅があり、甲羅の終わりと、頭から、コケのような毛が
長く生えていた。そいつはニッと笑うと、四つんばいで犬のように走り、
柳の林の中に消えていった。
2つの目
冬のある日、近所の山にある池に行った。
夕方頃になった。暗くなり始めたので急いで車に戻ろうと、歩いて5分程の距離を歩いた。
その道は鬱蒼と木々が生い茂って昼間でも薄暗い。
夕方ともなると、真っ暗と言えば言い過ぎかも知れないが、かなり暗い。
その時・・・、真冬の寒さの中、ある場所を通った瞬間生暖かい空気が顔にあたった。
同時にただならぬ危機感を感じた。
顔を上げてはいけない。本能でそう思った。
木々の生い茂る遊歩道脇の山の斜面に何かの気配を感じながら、
しかし、けっしてそちらを見る事はなく足早に車に向かった。
斜面の草木が不自然にガサガサなっている。
(クマは生息していない地域です。)
内心焦りながらも、やっと車に到着して そそくさと乗り込んだ。
その時気づいた。
車がその山の斜面の方に向かって停まっていることを。
エンジンをかけ、ライトを付けた時、人間でもなく野生動物でもない
2つの目がライトにうつしだされた。
体は見えなかった。
全身に鳥肌が立った。
車を動かしてなんとか走り出した。
それは後を追って来ることは無かった。
車にも不調はなかった。
あれはなんだったのだろうか・・・。
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