『リスト』|洒落怖名作まとめ【天狗男シリーズ】

『リスト』|洒落怖名作まとめ【天狗男シリーズ】 天狗シリーズ

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リスト

450 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:18:48 ID:t+/A2xnX0

 

あれは俺が高校生の頃だからもう10年も前の話だ。
以前も書いたが俺はたまに予知夢を見る。年を取った今では見る頻度も少なくなってきたが、10代の頃は結構よく見ていた。

但し今回の話は予知夢ではなく正夢だ・・・というか半分、夢で半分現実・・・と言ったほうが正しいかも知れない。うまく説明できないが今日の話はその正夢を見てしまった時の恐怖体験をしてみようと思う。

その頃の俺は、とある「記憶法」にハマッていた。
TVで見たのがキッカケだったと思うが、ある特別なやり方で身近なアイテムなどを100個以上、順番通りに記憶できるというものだった。これを読んでる人の中にもやり方を知ってる人もいると思うが簡単に説明しておこう。

1.まず身近な場所など(自宅等)を思い浮かべる。
2.自宅なら門→玄関→居間→キッチン→寝室→・・・など実際に頭の中で連想しやすい順番を思い浮かべ、その連想する順番を決める。1周で10箇所程度がいいだろう。
3.その1箇所1箇所に、覚えたいアイテムを関連付けてゆく。
例えば覚えたいアイテムの1個目がコンビニ袋だったとしたら門にコンビニ袋が引っかかってる風景を連想する。次のアイテムがミカンだったら、玄関の脇にミカンが置いてある風景を連想する。

1周して10個関連付けが完了し、今度は2週目。11個目のアイテムがホッチキスだった場合、門のコンビニ袋の中にホッチキスが入っている風景を連想し記憶する。といった感じに進めてゆく。

上記2~3を繰り返すことによって誰でも少なくとも100個程度は記憶出来るのではないだろうか。

俺はそのやり方で友達とどっちが多く覚えられるか、などと遊んだものだ。そして毎日練習することにより、かなりの数を記憶出来るようになった。関連付けや風景もよりリアルに連想出来るようになった。

そんなある日、夢を見た。
俺は夢の中で自宅の中をゆっくりと歩いていた。あぁ、また例の記憶法の練習かな、と夢だが完全に夢と判断できないあやふやな状態だった。目に見える自宅の中はリアルで、妙な空気感で溢れていた。すると俺は居間でアイテムリストを発見した。

夢の中なのだが練習が始まった。俺はリストに書かれた通りにアイテムを記憶していった。しかしリストには全部で40個ほどしか書かれておらず、夢の中だが俺は物足りない感じがしていた。アイテムもどれも普通のものばかりだった。不思議なことに朝起きてからも夢の中の40個はしっかりと覚えていた。

まさか夢にまで見るとはな。

俺は学校で友達にその夢のことを話した。友達はふ~んと聞いていたが、こんなことを言った。

「その夢の中のリストに書かれてたものはさ、全部おまえん家にあったものなのか?」

俺は、ん?何言ってんだこいつ?と思ったが、確かに全部家にあるものばかりだったので、そうだと答えた。しかしこの時の友達の質問の意味をよく考えていたら、俺はあんな目に遭わなかったかも知れない。

それから数日後、また夢を見た。例の練習法の夢だ。俺はまたか、と思いながらも夢の中で居間に向かった。予想通りリストが置いてあった。ゆっくりと手に取り眺める。1個目は新聞紙だった。
俺は玄関を出て門に向かった。

と、前の通りに誰かがいる。

よく見ると乳母車を押した老婆だった。腰は曲がり白髪。その老婆がじっとこちらを見ている。誰だ? 夢の中だったが、俺の記憶にない老婆だった。俺は無視して門に新聞紙を引っ掛けてその場面を記憶した。

2個目はバール(釘を抜く道具)だった。面白いことに夢の中では必要なものが即座に手の中に現れる。新聞紙やバールもすぐに出てきた。俺はバールを玄関脇に立てかけた。3個目はバットだった。俺は玄関内の下駄箱の上に置いた。

4個目を見てちょっとおかしいな、と思った。「灯油」と書かれていたのだ。気がつくと灯油の入ったポリタンクを持っていたのでそのまま居間に置いた。この時点で気づくべきだった。

5個目には「包丁」と書かれていた。

おかしい。さっきから何やら危険なものばかりじゃぁないか俺は何か不安になりながらも、キッチンのテーブルの上に包丁を置いた。6個目を見た。ガムテープだった。なんだ、やっと普通のものが出たかと俺は安心して脱衣所の洗濯機の上に置いた。

7個目は「セメント」と書かれていた。俺は「はあ?」と思いながらもセメントの入った袋を風呂場に置いた。やはりおかしい。この時点でこれは完全に夢だということを理解し、どうするか考えた。
まぁ今のところ危険も無いしとりあえず1周覚えてから考えるか、と思い次へ向かった。

次は俺の部屋だ。入ると現実と変わらない感じだった。8個目はロープだった。俺はベッドの上にポンと投げた。ふと目線がゴミ箱に向かった。何やら黒い物がたんまりと入っているのが見えた。
何だ?と思い覗いてみると、長い髪の毛だった。俺は驚いてすぐに部屋から飛び出した。

廊下で、ハァハァ言いながらいつもと違う夢に違和感を感じていたが、それまで夢で危険な目に遭ったことはなかったので、そのまま続けた。8個目はマイナスドライバーだった。俺はそれをトイレの便座蓋の上に置いた。

9個目はガスファンヒーターだった。俺は2階の部屋の隅にそれを置いた。10個目を見た。ピアノ線だった。9個目まではうちにあるものばかりだったが、さすがにこんなものはうちに無いと思った。と、手の中にグニャッという感触があった。見るとピアノ線だ。え?こんなものうちにあったっけ?? 不振に思いながらも階段の1番下の段にそれを置いた。

よし、とりあえず1周分は記憶した。
おかしな点もあったが、夢だからだろうと思い2周目に進むことにした。しかしそれが大きな間違いであったことに、すぐに気が付くことになる。

玄関から出て門に向かった。リストを見るとライターと書いてある。と、何か音が聞こえる。

カチッ カチッ

門の向こうからだ。何だ?と思い見てみると、さっきの老婆が1周目で門に引っ掛けた新聞紙にライターで火を点けようとしているではないか。俺は慌てて老婆からライターを取り上げ、何してんだ!?と怒鳴った。幸い火はついておらず無事だったが、俺はあきらかにこの夢がおかしいことに気が付いた。

老婆はしばらく黙ってこちらを見ていたが、ほどなくして姿が消えた。俺は動揺しながらも奪い取ったライターを新聞紙にくるみ門脇のポストの中に入れて、玄関の前でどうするか考えた。

これって・・・夢だよな?

妙なリアルさと少し異常な進行具合に、このまま続けてもいいのだろうかと悩んだ。今まで幾度となく不思議な体験をしてきた俺の勘が警告を発している気がした。しかし自分では夢だとわかっていたので、いざとなったら目を覚ませばいいか、と安易に考えていた。

リストを見た。雪道用のタイヤチェーンと書かれていた。玄関脇にそれを置くと俺は家の中に入り再びリストを見た。人形と書いてある。そんなもんあるわけねぇべ!と思ったがさっきのピアノ線と同様、いつの間にか握っていた。日本人形だった。どこかで見たことがある気もするが思い出せない。不振に思いながらも俺はそれを下駄箱の上に置いた。

そしてリストを見て目を疑った。

次のアイテムは「火」だったのである。火?そんなものどうやって・・・
俺は嫌な予感がした。ここは居間である。1周目でここには灯油の入ったポリタンクが置いてある。まさかこれに火を点けろってんじゃないだろうな・・・と、その瞬間、玄関からガチャガチャという音が聞こえた。

な、なんだ!?

俺は恐る恐る玄関を覗いた。外に誰かがいる。しかもそいつが、さっき置いたチェーンを玄関のドアノブに外から巻きつけているようだった。

俺を・・・閉じ込める気か・・・?

俺はヨロヨロと後ずさりをした。瞬間、足にポリタンクが当たって倒れ、中の灯油が勢いよく噴き出した。や、やべぇ・・・!と思う間もなく灯油は玄関まで流れ出て、地面を伝って玄関のドアの外まで流れた。

カチッ カチッ

確かに聞こえた。さっき老婆が点けようとしたライターの音だ。
しまった、さっきのライターはポストの中に入れたんだった・・・
きっとそれを取り出して火を点ける気でいるんだ!見ると俺の足元も灯油で濡れている。瞬間俺は猛ダッシュでキッチンまで逃げ込んだ。

ボンッ!

という音と共に玄関から居間まで火の手が上がった。焦げ臭い匂いが部屋中に充満する。おかしい・・・夢なのに熱い!俺はしばらくキッチンで呆然としていたが、火の手は徐々に迫って来ている。
明らかに普通の夢ではなく、悪意のある意思が介入しているのを感じてきた。

このままではここで死ぬ。夢で死ぬということは恐らく・・・俺は怖くなり何か打開策はないかとリストを見た。その瞬間凍りついた。
リストの次のアイテムは「足首」と書かれてあった。うそだろ・・・あまりの事にパニック状態だったが、炎が迫ってきてるので脱衣所へ逃げようとした。

と、その時何かの音が聞こえた。ゴリゴリゴリ・・・ゴリゴリゴリ・・・何かを引きずるような音だ。ふと目線を下げると、さっき下駄箱の上に置いた日本人形が1周目で置いたバットを引きずって歩いてきてるではないか。

これはヤバイ・・・

明らかに意思を持って動いてる。夢とはいえ尋常ではない。咄嗟に飛び越えて脱衣所へ向かおうとしたが、怖ろしいほどの速さでバットが足元にHITし俺はその場に倒れた。うぐぅぅ・・・猛烈な痛さだった。夢なのにこんなに痛いなんて・・・激痛でのた打ち回る俺に更なる激痛が走った。

見るとさっきの人形が1周目で置いた包丁を持っているではないか・・・

そして・・・なかった。すでになかったんだ。俺の右足首が。人形は無表情で俺の足首を拾い、キッチンのテーブルの上に置いた。俺は、このままでは殺されると思い、這って脱衣所まで行った。幸いさっき置いたガムテがあったのでそれで止血をし、頭を整理した。

間違いない、俺は攻撃されている・・・
そしてこれは完全な夢ではない・・・かと言って現実でもない・・・

このままでは死ぬと思い目をつむって起きようと思った。しかし何度念じても起きられない。おかしい、夢ではないのか・・・しかし現実ではないのはわかってる。一体どうしたらいいんだ・・・と、目の前にまたあの人形が現れた。俺はギョッとしたが体に力が入らない。そしていつの間にか両手足がガムテで縛られていた。

呆気に取られていると風呂場から ジャリ・・・ジャリ・・・と音がする。

う”・・・セ、セメントだ・・・セメントと水を混ぜて固めているような音が聞こえてきたのだ。
咄嗟に俺はリストを見た。次は「手首」と書いてある。その瞬間、物凄い力で風呂場に引き込まれ、左手首を固まりかけたセメントの中に突っ込まれた。まるで石化の呪文のようにピキピキピキと瞬時に固まったかと思うと、また凄い力で引き離された。

バキャッ

俺の左手首がもげた。一瞬だったが俺にはスローモーションのように感じた。見るともうセメントは消え、人形は俺の左手首を拾っていた。感覚が麻痺してきたのか痛みを感じなくなってきていた。俺は這って自分の部屋を目指した。窓から外に逃げようと思ったからだ。

這いながら考えた。これは一種の呪いの結界ようなもので、その対象範囲は恐らくこの家の敷地内のみだ。そして一体誰がこんなことをしているのか・・・まったく心当たりがない。だからこの結界の外に出てしまえば、きっとこの「正夢」から出られるだろうと考えた。

グサッ

ぐおお!? トイレの前で背中を刺された。恐らくマイナスドライバーだ。階段の前を通り過ぎて自分の部屋へ進もうとした瞬間、俺はまた凄い力で2階へ引っ張り上げられた。2階の廊下に叩きつけられた俺は、すぐさま異様な匂いに気が付いた。

ガスだ・・・

よく見るとファンヒーターのケーブルに傷がつけられガスが漏れ出していた。すでに充満している。ここにいたらヤバイ・・・と、またあの音がした。

カチッ カチッ

誰かがあのライターで火を点けようとしている。俺は咄嗟に階段から転げ落ちた。ボンッ! 凄い勢いで炎が2階を埋め尽くすのが見えた。
と、同時に1階へ落ちた。

ブツン

うぎゃ!? 右耳が取れた。階段に置いてあったピアノ線がなぜか両柱に縛られ張られていた。俺の体はすでに痙攣をし始めていた。
心が負ければその時点で死んでしまう。すでに家の半分以上は炎に包まれていた。俺は最後の力を振り絞って自分の部屋まで這って行った。

ジリジリと炎に焦がされながらも部屋の中へ入った俺は見た。

部屋の天井からさっき置いたロープが垂れていた。まるでここに首を入れろと言わんばかりに。そしてゴミ箱の中で何かが蠢いている。俺は無視して窓へ向かった。すりガラスだが薄っすらと外が見える。気が付くとさっきの人形が窓枠に立ってこっちを見ている。

どうしても俺を外に出さない気か・・・

途端に後方へ弾き飛ばされた。箪笥にぶち当たると俺は、急激に全身から血の気が引いていくのがわかった。意識がもうろうとしてきた。
もうダメかも知れない・・・と思ったその時、ヒラヒラとリストが目の前に落ちてきた。薄れゆく意識の中で俺はリストの最後のアイテムを見た。

鯉のぼり

俺は ハッ!となり、全てを思い出した。
その瞬間、押入れから神々しい光が溢れ出し、もの凄い勢いで炎やアイテム、俺を襲った人形達を飲み込んでいった。そして聞いた。人形の断末魔のような声を。

う”お”お”お”お”ぉ”ぉ”・・・

しばらくして目が覚めた。

俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。起き上がり手足を見たが何ともない。耳も両方付いている。時計を見ると朝の7時だった。お袋が朝食の用意をしている。俺はキッチンのテーブルに腰掛けるとカレンダーを見た。5月5日だった。

「どうしたの?学校休みなのに。もっと寝ててもいいのよ」
「うん・・・」

お袋はそそくさと俺の前に朝ごはんを並べると、不振そうに俺の顔を見た。俺はしばらく黙っていたが、さっきの夢の事、そして子供の頃、買ってもらった五月人形について話し始めた。

俺は小さい頃、2つの五月人形を買ってもらった。1つは金太郎で、もう1つは源義経だった。俺は金太郎人形が大きくて好きだったんだが、義経のほうは地味であまり好きではなかった。毎年5月になるとこの2つを出してもらい、部屋に飾った。

ある日、俺はおもちゃの代わりに義経で遊んでみようと思いガラスのケースから取り出し、友達の怪獣の人形と戦わせたりした。遊びは次第にエスカレートし川に流したり、ヒモでつないでぐるぐる回したりした。そして事もあろうか、爆竹で・・・

すっかり変わり果てた姿になった義経に俺は怖くなり、そのままケースにしまうと押入れの奥へと閉まってしまったのだった。確かその時、母親には邪魔だからしまった、と言った気がする。俺も翌年から丁度中学生だったので、2体の人形はそのまま出さなくなったのだ。

お袋は黙って聞いていたが、やがてこんなことを言った。

「そっか・・・きっと義経クンは寂しかったんだね」

俺とお袋は朝食を済ますと、押入れから2体の人形を出した。じつに数年ぶりだ。
金太郎のほうは変わらないが、義経のほうは思ってた以上に変わり果てていた。俺は痛んでいる箇所をプラカラーとパテで補修し、鎧はお袋が1日かけてミシンできれいに直してくれた。足りないパーツは山のように積んであるガンプラから流用した。

翌日、以前にも増して勇ましくなった義経人形が出来上がった。

俺は義経に向かって正座し、以前してしまったひどい行為を心から詫び、これからは大切にすることを誓った。そして人形は5月いっぱい、部屋に飾っておいた。

今考えるときっとあの夢は、小さい頃から守ってくれた恩も忘れ、痛んだまま暗闇にしまわれている人形からの「気づかせ」と「戒め」だったのだと思う。それ以降、俺はあの夢は見ていない。

しかし当時は気が付かなかったのだが、今これを書いていておかしな点に気が付いてしまった。門の外にいたあの老婆だ。あの夢の結界は俺の自宅の敷地内だった。しかしあの老婆は完全に門の外、つまり敷地外および結界外にいたのだ。あれ以来、その老婆には出会っていないが、気が付いてしまった今、俺は何か不吉な予感がしている・・・

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