『重なる映像』|洒落怖名作まとめ【家・家系・地域系】

『重なる映像』|洒落怖名作まとめ【家・家系・地域系】 中編
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重なる映像

前編:『木が生える人』

 

以前 人の背中から木が生えるのが見える人の話を書いたものです。
未だ原因も不明でその後の話を書くつもりも無かったのですが。先週の土曜日にとある事件が
起き、それが以前の話と関係していそうなため、なんら進展はありませんがまたここに書こうと
思います。
今回の話は例の木の見える彼女とその友達が出てきますが、便宜上木の見える方をA美、
その友達をT子とします。

その日の夜、俺は前々日にあった実験のレポートがひと段落したため、そろそろ晩飯でも
買いに行こうかと準備をしていると、携帯にT子から電話があった。
「T子から電話とは珍しいな」と思いつつ電話に出ると、彼女はかなり慌てた様子で俺に
「○○(俺の名前)って前の話本気で信じてる?そこをまず確認したい」と唐突に言ってきた。
俺は意味が解らず「前の話?」と聞き返すとT子は「A美の木の見えるって話!覚えてない?」
と言って来た。
俺はそこで「ああ、あれか」と思い出し「そりゃ信じるも何も、あれだけの証拠見せられたら
信じるしかないだろ、それより何かあったのか?」と聞くと、唐突にT子は「わかった、ちゃんと信じてる
んだね?じゃあ今すぐ私の家に来て、ちょっとやばい事起きてるから…」と言い出した。
何がなんだか解らず「別にいいけど、そもそも俺お前の家知らないんだけど」と言うと、T子は
「じゃあ○○駅の近くにあるファミマで待ってるから」というと一方的に電話を切ってしまった。

○○駅は俺の住んでいる場所から結構遠い、3駅先で乗り換え更に4駅先なので「めんどくせー」
と思いながら準備をして電車に乗った。
その時は俺はこの出来事をかなり軽く考えていた。

1時間ほどでT子が指定した駅に着いた。
初めて降りる駅だったので土地勘が無く、ファミマを探すのに苦労するかな?と考えていたが、
ファミマはすぐに見付かった。
店の前まで行くと、T子の横にA美がしゃがみこんでおり、どうやら泣いているらしい、T子も真っ青
な顔をしている。
事態が全く飲み込めない俺だったが、それでも状況が結構深刻なことだけは2人の雰囲気から
何となく解り、話の出来そうに無いA美ではなくT子に「で、何があったんだよ」と聞いてみた。

するとT子はこう答えた「A美と2人で家でご飯を食べていたらテレビがおかしくなったんだけど、
口では上手く説明できないからとにかく見て欲しい、テレビの故障とかじゃないと思う」という。
何か漠然としすぎていて要領を得ないが、内心俺は「たぶんA美に色々あったから、テレビの
故障か設定ミスを大げさに考えすぎたんだろうな」と勝手に解釈し、まだ泣いているA美の手を引っ張り
歩いていくH子の後を着いて行く事にした。

現地につくとそこはマンションだった。
T子はそこの3階で独り暮らしをしているらしい。
マンションのエレベーターに乗ると、T子に慰められていたA美はやっと泣きやみ、一言「変な事で
呼び出してごめん」とだけ言って来た。
部屋の前まで来ると、T子がとりあえず中のテレビの様子を見てきてくれという。
流石に女の子の部屋に1人で上がりこむのは躊躇われたので「いいのか?」というと、「見なきゃ
説明できないでしょ!」と言うので、しかたなく一人で入りテレビの場所へ向かった。
部屋に入るとテレビがついており、一見すると特に変わった様子は見られない、余程慌てて
出てきたのか、食べかけの食事がテーブルの上にあるが、特にそれ以上なにかあるように見えない
ため、俺は玄関にいる2人に向かって「何も無いけど?」と聞いてみた。

するとA美が「テレビを良く見てみて、そうすれば解る」と言って来た。
仕方なくテレビの画面をもう一度見てみるとおかしな事に気が付いた、テレビでは何かバラエティー番組らしき
ものがやっているのだが、その映像に重なる形で別の映像が映っている。
始めは画面の映りが良くないのかと思っていたが、そうではなくよーく注意してみると薄っすらとだが森?か林?
のような場所を大勢の人が奥に向かって歩いていく映像である事が解った。
俺はちょっと気持ち悪いな…とは思ったが、まあテレビの混線か何かだろうとチャンネルをいくつか変えてみたが、
どこでもやはり同じように画面に薄っすらと同じ映像が映りこんでいる。
更におかしなことに、混線ならば「その映像」が映っているチャンネルもあるはずなのだが、どこにチャンネル
をあわせてもそのような番組がやっている場所が無い。

そこでテレビの裏へまわりアンテナ線を抜いたりさしたりしてみたのだが、それでも何も変わる様子が無い。
ちょっとビビり始めた俺は、ひとまずテレビの電源を切ろうとリモコンのスイッチを押してみた。しかし、なぜか
テレビの電源が切れない。
それならばとテレビ本体の主電源を押してみたのだが、なぜかそれでもテレビは消えないうえに、おかしな事に
テレビの主電源の横のランプは点いてすらいない。

俺はかなり混乱し始め、「これは電源か何かの故障だ」と自分に言い聞かせながら、今度はテレビ本体の
コンセントを抜いてしまう事にした。
が、そこで俺は「うわっ!」と声をあげてしまった。

コンセントが刺さっていない…

コンセントはテレビやDVDプレーヤーなどの電源が刺さっているタコ足ごと抜けている。
もう何がなんだか解らず完全にパニックになった俺は、玄関にいる2人に「なんだよこれ?」と聞いた。
するとT子は「だからおかしいって言ったでしょ、コンセント抜いてもついてるんだよ、どうすればいい?」
と言う。
どうすれば良いと言われても俺にもどうしたら良いのかなんて解らない。

女2人に一応頼られている手前、俺としても良い格好したいのはやまやまだが、電源が抜けているにも
かかわらず映像を映し続けるテレビなどと言うものをなんとかする知識は俺には無い。
パニックで嫌な汗をかき始めていた俺は、ハッとある事に気付いた。
さっきアンテナ線を抜いたら、少なくとも映像は消えたような…

そこで俺は急いでテレビの裏手に回るとアンテナ線をいっきに引き抜いた。
すると一瞬ザッ…という音がしたあと、どことなく機械的な、低く抑揚の無い男の声のような

ああああああああああああああああああああああ

という音が数秒続いた後、テレビは「ブツンッ!」という音と共に電源を落としたのと同じ状態になった。
テレビの前でしりもちをつき、暫らく放心状態だった俺は、A美とT子の「どうなった?大丈夫?」
という声で我に返り、一応消えた事を伝えた。
その時は2人を不安にしてもいけないと最後の「声」の事はその場では言わなかったが。

テレビに映っている映像ですが、俺もT子も普通に森か林の重なった映像が見えていました。
ちなみにどちらも人の背中に生える木は見えません。

木を見る能力がない人にも見えていたのが本当に不思議ですね
ここで電器屋さんを呼べば、もっといろいろ分かったかも…
いや呼ぶのは神主さんかお坊さんかな?

最近増えた木の生えている人の木も、以前からの木もどちらも成長は遅いようです。
去年から一斉に生え出した木も、個人差はあるようですが大きくてもまだ1mにも満たないそうです。

書きたかったのは、今までの木の成長スピードから考えて、「一斉に生え出した黒い木」とは無関係という意味です。

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