【有名な怖い話】『S塚廃屋』『堤防の女』など 長編5話

【有名な怖い話】『S塚廃屋』『堤防の女』など 長編5話 長編

洒落怖などネットで割と有名な怖い話の長編を集めて読みやすくまとめました。

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有名な怖い話 長編集 全5話

 

 

『堤防の女』

夜釣りやってたんだけど普通4,5人はいる堤防で一人だった
やったラッキー、仕掛けが横に流れても気にしなくていいと思ってご機嫌で釣ってたんだわ
満月の大潮で条件的に申し分なかったんだけど
その時は月が丁度真正面に来てた
月が煌々と明るいのだけはいただけない
なぜかわかんないけど魚が食い渋る
と、思っていたら頻繁に強い当たりが来る
しかし上げてみると魚が乗って来ない
餌もついたままの場合が多い
釣り師は当たりの特徴から何の魚かを推理するのが好きだが
このパターンは初めてだ

 

変だな・・・
何度か肩透かしを食らいながらもめげずに仕掛けを振り込んだ
今度は仕掛けが沈んで電気浮きがすーっと立つとすぐ横にポコンと丸いものが浮かんだ
海は正面にある月の光を反射して揺らめいていたのでこちらからはその物体は逆光で真っ黒だった
大きさにしてボーリング球ぐらい
ん?係留用のブイか?
しかしその球体はすぐにスっと沈んだ
え?スナメリ?いやスナメリなら止まったりしないし頭を出したら潮を吹く
アザラシ?こんな南にいるのかな、ウなら首がついてるし・・・
その時は何らかの動物が仕掛けにイタズラしていたのだろうという事で納得した

 

それ以来ピタリと当たりが止まり、少し苛立っていた
俺は竿を置いて座っていたクーラーの小口からカップ酒を取り出した
風が止まって海が鏡のように凪いでいる
スルメをモグモグと噛みながらカップ酒を飲み干した
俺は落ち着きを取り戻し「ふぅっと」息をして気を取り直した
クーラーの上で座ったまま体を90度捻ってヘッドランプを点け
クーラーの右隣に置いてあった道具箱を空けると
ベタ凪ぎなら辛うじて見える小さい浮きを取り出した

どんな小さな当たりも見逃さない作戦だ
そしておもむろに体を起こしながら元の体制に戻る目線の軌道上で何か見えた
堤防の際から顔の上半分だけ出して女がこっちを見てる
俺の体は正中線にタイソンのパンチを食らったような衝撃が走った
少し濡れた黒く長い髪を真ん中で分けて鋭い目つきでこちらを見ている
俺との距離約1m




 

心臓と耳と鼻が連動して拍動するほど驚いた俺だが悲鳴は上げなかった
女の顔の質感等は普通に人間だった
どれぐらいの間見詰め合っていたかわからないが段々冷静に見れるようになってきた
こちらを睨みつけてはいるが結構美人だ
俺は声を振り絞った
「myはhにゅあんでゃすきや」
多分そんな感じ、相変わらず黙ってこちらを見ている女にもう一度息を整えて言った
「なななんですきゃ」
女はまるで反応しない

 

俺は強引に釣りを再開する事にした
俺は目を逸らして体を完全に元の位置に戻すと震える手で浮きの交換に取り掛かかる
何度もしくじって最終的にちゃんと結べてたかどうかもわからないが、一応出来た
女のいるであろう方向を照らさないように気をつけながらもう一度横に体を折り曲げて餌を取って針に付けた
そしてヘッドランプを消して仕掛けを振り込む
もう微妙な当たりになんか集中できるはずがない
女は俺の少し右斜め前にいるはずだがその方向の背景は複雑な形をしたテトラポッドであるため
横目で女の頭を確認する事はできない
ここはガン無視でやり過ごすしかない
しばらくして浮きがスポンと完全に沈んだ
おぼつかない手でアワセを入れるとまたもや仕掛けがすっぽ抜けて来た
俺はヘッドランプを点けると空中でブラブラする仕掛けを掴み餌箱が置いてある方を照らした
しかし俺はここで女が気になって恐る恐る地面を照らすヘッドランプの光を女のいた方向に這わせて行った

 

居ない・・・
しかし俺は背後に気配を感じてギクリとした
本当に小さい音だが、ピタッピタッと二回音がした
俺は前だけを見て慌てて道具をあらかた片付けると堤防の先端に移動した
後に俺は自分で突っ込んだ
「移動するんかい!帰る所やろ!」
しかし長年通っていて行動がパターン化していた俺はこの
異常事態でも帰るという発想が出てこなかった
一体なんなんだアレ、頭がオカシな人?それにしても動く気配も感じさせずに
あの体制で堤防にぶら下がったり上がってくるなんて
信じたくないけど幽霊?俺取り付かれたの?
俺は大分落ち着いたものの気持ちがブレていたため
道具箱から意味のない物を取り出しては仕舞ったり
竿を持ったり置いたり餌箱を開けたり閉めたりした

 

そして何とか準備して餌をつけ、仕掛けを振り込もうと
手元から海に目線を移すと女が居た
やはり顔を半分だけ出して睨んでいる
「キターーーーーーーー!」
本当にそう叫んでしまった
俺は少し泣きが入った
「・・・・もう・・・やめてよ・・・グスっ・・・うぅ・・うっ」
女は全く反応がない
「なんか用?グスッ、この世に未練あるの?グスッ、俺何も出来ないよ・・・グスッ」
俺はクーラーボックスの取り出し小口からカップ酒を取り出した
「飲む?」
相変わらずただこちらを睨みつけているだけの女の顔の前に恐る恐る
カップ酒を置くとビクッと手を下げた
「スルメも食べる?」
スルメの袋の開いた方を差し向けて同じようにカップ酒の横に置いた
「俺霊感とか無いし・・・こんなの初めてだし・・・なんで出てくるの?お願いだから帰って」
俺が泣きながら懇願すると女はすーっと下がって見えなくなった

 

俺はしばらく硬直していたがおそるおそる腰を浮かせて海を覗き込んだ
何もない、堤防に当たる波がちゃぷちゃぷと音を立てている
俺は目の前に置いてあるカップ酒をひったくると蓋を開けてズビズビと
勢いよく飲んだが違和感に咽て酒を吐き出した
味が無い、確かにアルコールではあるのだが日本酒の味がしない
ちなみにスルメを噛んでみたがこちらもあまり味がしない
俺はもう一つクーラーからカップ酒を取り出すと慌てて飲んだ
ズビズビ音を立てながら一気飲みした

その後、突然魚が釣れ始めた
釣れに釣れた
しかし心ここにあらずの俺はゾンビのように黙々と作業して
翌朝帰る頃にクーラーの本体蓋開けた俺は二度見した
「誰が食うんだよこれ」

 

それ以来女は現れなかったが気配を感じる事がある
浮きの横に波紋が立ち、しばらくすると近くに来る
俺は用意しておいたカップ酒とスルメを差し出す
そういう日は魚がよく釣れた
結局女の正体はわからないままだった




 

『背乗り』

大学4年生の11月、Aの就職がようやく決まった。
本人は小さな会社だと言っていたが、内定を貰えたことに変わりはないし、
晴れて仲間内全員の進路が決まったことで、1月に旅に行く運びとなった。

旅の発案をしたのはAだった。
レンタカーを借りて、東京から日本海側を北上し青森を目指す計画だ。
当時運転免許を持っていた僕とCが交代で運転をする代わりに、
AとBとDがレンタカー代とガソリン代を払うということで話が折り合った。
僕を含めて5人の旅だった。

僕たち5人は大学のサークルで知り合った仲だ。
僕とCは同じ学部で同じゼミを専攻していたが、AとBとDは別の学部に通っていた。

 

旅の2週間程前に奇妙な出来事があった。
宿の手配や旅の詳細な計画が概ね完了した矢先だった。
Bと全く連絡が取れなくなってしまったのだ。
電話をしても繋がらないし、家に行ってもBは留守だった。
Bと仲が良かった別の友人にも連絡をしてみたが、Bの所在は分からなかった。

出発の5日前、最後の打ち合わせをするために集合した。
依然としてBとは連絡が取れないままだった。
さらにAとDの様子がおかしかった。

 

打ち合わせの結果、3日前になってもBと連絡が取れなかったら旅を中止することに決まった。
たしかに個人的にも、Bがいなければ旅をする意味が半減してしまう気はしていたし、
何よりも心配だったので、このままBがこなければ中止という意見に違いはなかった。
しかし、AとDが異常なほどに旅は中止だ中止だと強く言っていたことが気がかりだった。

帰り道、僕は仲間内でも特に仲が良いCと個別に話をした。
無論Bの事と、打ち合わせの時のAとDの挙動についてだ。

僕もCも同じことを考えていた。
Bの身に何かあったのではないか。ということと
その事にAとDが何か絡んでいるのではないか。ということだった。

その日の内に僕とCはBの家に行くことにした。

 

相変わらずBは家に居ないようだった。
諦めずに隣の部屋の住人に聞いてみるとBのことは知らなかったが、
大家さんの連絡先を教えてくれた。
早速電話し事情を話そうとしたが、大家さんからの一言に絶句した。
「Bさんという方は知りませんが、この家に住んでいた人は1ヶ月前に引っ越されましたよ」
住んでいた人の名前も確認したがBではなかった。
無論、AとDにはこの事は話さなかった。

 

出発の3日前が来た。
結局Bとは連絡が取れなかったので、予約した宿にキャンセルの電話をした。
3日前にキャンセルすること事態が申し訳ない気持ちだったので、
少しでも早いほうが良いのではと思い、朝一番で電話をしたのだ。

すると、泊まるはずだった3つの宿はすべて既にキャンセルされていた。
詳しく話を聞くと1週間前にBと名乗る男からキャンセルの電話がきたとのことだった。
僕はそのキャンセルをした男はBじゃないと思った。
直感だが、AかDのどちらかだ。そう思った。
旅館の人には念のため、僕が今日電話をしたことは黙っていて欲しいとお願いをしておいた。

その後すぐにCに連絡をし、急遽会うことにした。
合流した刹那Cは言った。
「このことはAとDには言わないほうが良い。」
同意見だった。
「キャンセルの電話をこちらでするとカマをかけてみよう。」そう続けた。

 

Aに電話をし3日前になったからキャンセルの電話を入れる旨を伝えると、
案の定、「キャンセルの電話は俺がする!」と言ってきた。
僕は冷静を装いながら、3件あるから分担しようという案を出したが拒否をされた。
この日のやりとりで、AとDがBの失踪に絡んでいることがほぼ間違いないと睨んだ。

僕はAとDに状況を話して問いただそうと言ったが、Cはもう少しだけ時間が欲しいと言った。
どうやら個人的にAとDについて調べるつもりらしい。
僕はあまり気が乗らなかったが、Bについては本当に心配だったので大学にわけを話してBの実家の連絡先を聞くことにした。

 

冬季休暇中の大学は人が少なく、窓口にも誰一人並んでいなかった。
窓口の人に理由を話すと調べてくれたが、AもBもDも僕が通う大学には在籍していなかった。

Bは先の件で偽名の可能性があったが、大家さんから聞いた名前でも在籍がなかった。
もう3人の名前が本名なのかさえ信用できなかった。




 

出発日だった日の前日にAから連絡が来た。
Bが戻ってきたと言うのだ。

その後、2週間振りに5人が揃った。
最初はAの家でと言われたが、そこには行ってはいけない気がした。
そのため、適当な理由をつけて街中のファミレスで落合うことにした。

 

ファミレスに現れたBはBではなかった。
Bに似ているわけでもなく、完全に別人だった。
正直、僕は冷静を保ててはいなかっただろうし、鳥肌が引かなかった。

見た目は普通の人間だが、その顔からは悍ましさ感じた。
僕とCはBじゃないと言い続けたが、AとDはBだと言う。
その間、Bと名乗る別人は僕とCのことを交互に見続けた。

 

聞いてもいないのに失踪の経緯を説明し始め、Bは今日まで泊り込みでバイトをしていたと言う。
そして、そのバイトは期間中に外部と連絡を取ってはいけない仕事だったと話していた。
事前によく説明を聞いてなかったため、そのまま連絡が取れなかったというのが言い分だった。

さらにBは続けて言った。
「明日からの旅行は行ける?」
Bの顔がさらに悍ましく見えた。

 

説明するようにAが言った。
「実は宿はキャンセルしなかったんだ。だから旅は決行できる。」
既に宿がキャンセルされていることを知っているということは、ばれていないようだった。
あるいは、ばれていても良かったのかもしれない。僕は混乱していた。

「3日前に旅は中止と決まっただろ。その際に、俺とこいつは別の予定を入れてしまったよ。」Cが言った。

 

散々引き止められ、断ることに時間を要した。
その間、今すぐにでも逃げ出したかったが、大学はおろか住所も知られているため穏便に進める必要があった。
Cのおかげで俺も冷静を取り戻し、何とかその日は解散となった。
解散となったあと、僕とCは3人の後をつけた。

すると3人は10分ほど歩いたところにある駐車場に入っていった。
しばらく待つと、Aが運転をする車が駐車場から出てきた。
Aは免許も持っていたのだ。

その後すぐに引越しをした。
引越しをするまでの間も家には物を取りにいくための1回しか帰らなかった。
引越しに日に久々に家に戻ると、誰かが侵入した痕跡があった。

卒業まではほとんど大学に行く必要がなかったため、C以外に会うことはなかった。
AとBとDとは連絡も取ることなく春になった。

 

以上が体験した話です。

この話は1年前の出来事です。
1年後にわざわざ書いたことには理由があります。

この1年間もCとは定期的に連絡を取り、数回飲んだりしていました。
そのCから昨日連絡があり夜に会ったのですが、その席で思いもよらない話がでてきました。

Cが先日ふと思い、大家さんから聞いたBが住んでいた家の名義の名前を検索したところ、
その人は1年前に死亡していたそうです。
死亡していた人が、僕たちの知っているBという人物である可能性は非常に高いと思います。

あのBと名乗る別人の顔が浮かび頭から離れません。




 

『城跡』

もう10年くらい前、俺がまだ学生だった頃の出来事。
当時友人Aが中古の安い軽を買ったので、よくつるむ仲間内とあちこちドライブへ
行っていた、その時におきた不気味な出来事を書こうと思う。

ある3連休、俺たちは特にすることもなく、当然女っけもあるわけもなく、意味も無く
俺、A、Bで集まってAのアパートでだらだらとしていた。
そしてこれもいつものパターンだったのだが、誰と無くドライブへ行こうと言い出し
て目的地もろくに決めず出発する事になった。

 

適当に高速へと乗ると、なんとなく今まで行った事の無い方面へと向かう事にな
り、3~4時間ほど高速を乗りそこから適当に一般道へと降りた。
そこから更に山のほうへと国道を進んでいったのだが、長時間の運転でAが疲れ
ていたこともありどこかで一端休憩して運転手を交代しようという事になった。
暫らく進むと車が数台駐車できそうなちょっとした広場のような場所が見付かった。
場所的に冬場チェーンなどを巻いたりするためのスペースだろうか?とりあえずそ
こへ入り全員降りて伸びなどをしていると、Bが「なんかこの上に城跡」があるらし
いぞ、行ってみようぜ」と言ってきた。

 

Bが指差した方をみると、ボロボロで長い事放置されていただろう木製の看板が
あり、そこに「○○城跡 徒歩30分」と書かれ、腐食して消えかかっていたが手書
きの地図のようなものも一緒に描かれている。
どうも途中に城跡以外に何かあるらしいのだが、消えかかっていて良く解らない。
時間はたしか午後3時前後くらい、徒歩30分なら暗くなる前に余裕で戻ってこれる
だろう。
俺たちはなんとなくその城跡まで上ってみる事にした。

 

20分くらい細い山道を登った頃だろうか、途中で道が二手に分かれていた。
看板でもあれば良いのだが、あいにくそういう気の効いたものはなさそうで、仕方
なくカンで左の方へと進んでみる事にした。すると、先の方を一人で進んでいたA
が上の方から俺たちに「おい、なんかすげーぞ、早く来てみろ!」と言ってきた。
俺とBはなんだなんだと早足にAのところまで行ってみると、途中から石の階段が現れ、
更にその先には城跡ではなく恐らく長い事放置されていたであろう廃寺があった。

 

山門や塀、鐘などは撤去されたのだろうか、そういうものは何も無く、本殿は形をと
どめているが鐘楼やいくつかの建物は完全に崩壊し崩れ落ちている、本殿へと続く
石畳の間からは雑草が生え、砂利が敷き詰められていただろう場所は一部ほとんど
茂みのような状態になっていた。
ただ不思議なのは、山門などは明らかに人の手で撤去された様な跡があったにも関
わらず、残りの部分は撤去もされず朽ちていてかなり中途半端な状態だった事だ。

 

時間を確認すると、まだまだ日没までは余裕がありそうだ、俺たちはなんとなくその
廃寺を探索することにした。
が、周囲を歩き回っても特に目に付くようなものはなく、ここから更に続くような道も
見当たらず、Aと「多分さっきの分かれ道を右に行くのが正解なんだろうなー」と話し
ていると、本殿の中を覗き込んでいたBが「うおっ!」と声を挙げた。

 

Bの方をみると本殿の扉が開いている。
話を聞いてみると、だめもとで開けてみたらすんなり開いてしまったという。
中は板敷きで何も無くガランとしている、見た感じけっこうきれいな状態で中に入って
いけそうだ。

中に入ってみると、床はかなりホコリだらけで恐らくだいぶ長い事人が入っていない
のが解る、なんとなくあちこちを見回していると、床に何か落ちているのが見えた。
近付いてみると、それはほこりにまみれ黄ばんでしわくちゃになった和紙のようで、
そこにはかなり達筆な筆書きで「うたて沼」と書かれていた。




 

なんだなんだとAとBも寄って来たので、俺は2人に紙を見せながら「うたてって何?」
と聞いたのだが、2人とも知らないようだ。
そもそもこの寺には池や沼のような物も見当たらない。
本殿の中にはそれ以外なにもなく、「うたて沼」の意味も解らなかった俺たちは、紙を
元あった場所へ戻すと、城跡へ向かうために廃寺を後にした。

 

元来た道を戻り、さっきの分かれ道を右の方へと進むと、すぐに山の頂上へとたど
り着いた。
ここには朽ちた感じの案内板があり「○○城跡 本丸」と書かれている、どうやら
ここが目的地のようだった。
山頂はかなり開けた広場になっており、下のほうに市街地が見えるかなり景観の
いい場所だ。
と、なんとなく下のほうを見るとさっきの廃寺も見えた。

 

3人でさっきの廃寺って結構広い敷地なんだなーなどと話していると、ある事に気
がついた。
寺の庭を回った時に一切見かけなかったはずだが、庭の端の方に直径数mくらい、
大きな黒い穴のようなものが見える。
「あんなものあったっけ?」と話していると、寺の庭に何か小さな動物が出て来ていた、
そしてその動物が庭の中を走り出した瞬間、その穴のようなものが「動いて」まるで
動物が穴の中に消えてしまったように見えた…

 

わけが解らない現象を目の当たりにした俺たちは「…今あの穴動いたよな?なんだ
あれ…」と唖然としていると、更にとんでもない事が起きた。
その物体が突然宙に浮くと、かなり高い距離まで上りそのまま移動し始めた。
その時になって、俺たちはあれが穴などでは無く、真っ黒で平面のなんだか良く解
らない物体である事に気がついた。

 

その平面状の物体は結構な高さを浮いて、俺たちが来た道の上を山頂へと向かっ
て進みだした。
その時、恐らく移動する物体にびっくりしたのだろう、木の間から大きめの鳥が飛び
出し、宙を浮く平面状の物体とぶつかった。
が、鳥はそのまま落ちる事も物体を通り抜ける事も無く消えてしまった…
何がなんだか解らないが、とにかくあれは何かヤバそうなものだ、そしてそのヤバ
そうなものは明らかに俺たちの方へと向かってやってきている、その事だけは理解
できた。

 

とりあえずここからすぐに退散した方が良さそうだ。
3人でそう話して気がついた、あの物体は俺たちが登ってきた道沿いにやってきて
いる、ということは、来た道を戻れば確実に鉢合わせしてしまうという事だ。
とりあえず逃げようと言ったは良いがどうしたら良いのか解らない。すると、Bが
「ここ通れそうだぞ!」と茂みの方を指差した。
そこへ行ってみると、近くまで行かないと解らないであろうくらい細い獣道のような
ものが下へと続いている。ただし、この道がどこへ続いているか全く解らないうえに、
俺たちが登ってきた道とは完全に反対方向だ、当たり前の事だが逃げれるには逃
げれるが車からは遠ざかる事になる。

 

その事はAもBも解っていたのだろう、この獣道を下るかどうか躊躇していると、
突然耳に違和感を感じた、感覚としては車で山を登っていて気圧差で耳がおかしくなる
感じが一番近いだろう。AもBも同じ違和感を感じたらしく戸惑っている、その時俺は
ふと下のほうを見た。すると、例の物体はもうすぐそこ、恐らく二の丸であろう平地の
部分までやってきていた。

 

もう迷っていられるような余裕も無い。
俺は2人にもうあれが凄くそこまで来ている事を伝えると、おもいきって獣道のある
茂みを下る事にした。
2人もそれに続き、殆ど茂みを掻き分けるように道を下っていくと、後ろの方からA
が「ヤバイ、もうすぐそこまで来てる!急げ!」と言ってきた。
俺が後ろを振り返ると、例の黒い物体がもうあと10mくらいのところまで近付いてきて
いる。
俺たち3人は最早草や木の枝をかき分けることすらやめ、がむしゃらに獣道を
駆け下りた。

 

どれくらい走っただろうか、暫らくすると木の間から舗装された道路が見えてきた、
俺たちは泥だらけになりながらも必死で殆ど転がるように道を下り、なんとか舗装された
所までたどり付くことが出来た。
その時、突然金属質の耳鳴りのような音が聞こえ、次いで後ろから「バチンッ!」と何
かが弾けるような音が聞こえてきた。びっくりして後ろを振り向くと、そこには例の黒い
物体はなく、爆竹か何かを破裂させたような、そんな感じの煙が漂っているだけで、
俺たちは呆然としてしまった。

 

その後、民家も無いような山道を散々迷い、殆ど真っ暗になる頃にやっと最初に車を
停めたところまで戻る事が出来た。
結局その後もあれが何だったのかはわからない、そもそもあんな体験をしてまた
同じ場所へ戻る勇気などなかったし、そんな事をしても俺たちに何の得も無かった
からだ。




 

『S塚廃屋』

これは何年か前の今頃の季節の話。俺の実体験に基づいた話です。
ほんと大した話じゃないですが、個人的には洒落になってなかった話です。

ある日俺は、地元の友人と夜遅くまで遊んでいた。
飯を食べたあと、そのまま「S塚」という京都の山まで行くことになった。

S塚というのは京都ではそこそこ有名な夜景スポットで、
今度皆でそこに遊びに行く予定があるので、その下見に行ったのである。

時刻は日付変更前後。
暗い国道を道なりに車を走らせS塚へ向かう。
入り込んだ山道へ入り、途中にある火葬場は煙をあげることなく静かに眠っていた。
その時の俺らは恐怖心などカケラもなく、意気揚々と夜景スポットを目指したのだった。

 

車を走らせること30分。
目的のS塚まで辿り着いた。

場所は意外と人で賑わっており、いくつも車が停めてあった。
京都の夜景を一望できるその場所には、恋人同士や家族連れなど、
集まってきた多くの人たちがその眺望に恍惚の笑みを浮かべていた。

「流石は夜景スポットやな…」
俺らはそんなことを口々に言いながら、夜景を堪能してから帰ろうと思った。

その時俺はあることを思い出した。
S塚は、地図的な距離では某神社と極めて近い場所にあるはず。
標高差はあるにしても、S塚から神社まで充分歩いていける距離なのである。
恐らく10分もかかるまい…。

断っておくが、その神社は決していわくつきのものではなく、
お祭りシーズンでは一際賑わう、親しみやすくも荘厳な神社なのだ。

ちょっとした山道を歩く事になるだろうが、このドライブは下見も兼ねているので、
神社まで友人と歩いて降りる事になったのだ。

 

夜景が見える場所から少し離れた明かりの無い場所、その向こうに神社へと通じる道がある。
この時も恐怖心など微塵もなく、心持ちはひどく穏やかだった。

常闇の中へ足を進めていく。
夜は一層暗がりを深め、視界に映るのはかろうじて見える道の概形だけだ。

携帯のライトを片手に道を進んでいく。
目が順応して慣れてくると、少しずつ道の輪郭が見え始めた。
深い茂みだけでなく、近くには小さな家があるようだ。
見るからにもう廃屋となっており、人など住んでなさそうだが…。

そんな事を考えながら二人で進んでいると、大きな道は途中で終わっており、
そこから先は砂利道で先細り、他には細い山道が派生しているだけだった。

茂みを掻き分けて細い山道に入るのは躊躇われたため、
一応大きな道の延長と見て取れる、砂利道を進んで行く事にした。

廃屋を横目に見ながら。

そして。

「 ち ょ っ と 待 て 」

不意に、誰かに話しかけられた。




声の主は、白い服を身に纏った老人だった。
廃屋には小さなテラスがあり、そこの椅子に腰をかけているようだった。

「この先は行ったらあかん」
老人はそう繰り返していたので、どうやらこの道の先に行かせたくないようだ。
私有地なのかな?そんな事を考えながら、
「あーすんません、僕ら●●神社に行ける道を探してるんですよ。
おじーさん、知らないですか?」
そう尋ねた。
繰り返しになるが、この時の俺は、特に恐怖心は感じていなかった。

「あっちやで」
老人が指差したのは、俺らが先ほど無視して進んだ、
道ともいえない細い山道の一つだった。

あそこから行くのか…。そう思いながら、
「ありがとうございます~」
老人に礼を行って、俺らはそっちの道を進むことにした。

 

生い茂る草木を割って山道に入った瞬間、背筋に戦慄が走った。

視界に飛び込んできたのは、おびただしい量の経文だった。

紙いっぱいに書かれた理解不能な言葉、その経文紙が大小入り交じって
幾つも連なり、山道の脇という脇を埋め尽くしていた。
経文を縁取った赤と青の不気味な配色は夜の闇に融け、
その毒々しさを際立たせている。

言葉を失う二人。
山道は確かに麓へと続いていそうだが…

ヤバい。これはヤバい。
降りていったら絶対帰ってこれない。
ここに来て初めて恐怖を自覚した俺。

二人して、慌てて元の道へ戻る。
廃屋の方へ目をやったが、さっきまでいた老人が何処にもいない。
そんな馬鹿な…、帰ったのか?一体どこへ?廃屋の中へか?
そもそもあの老人は一体なんだったんだ?
人間だったのか?それとも…

 

そんなことを考えながら、全速力で車に戻って一息つく。

…まぁ多分あれは人間だろう、そしてきっと、あーいうのを霊だと勘違いして、
みんな心霊心霊と騒いでいるんだろう、そんな結論に達した。
というか、怖すぎてそういう理由でしか自分を納得させられなかった。

その後、皆でS塚へ行く計画は頓挫したため、もう行くことはなくなった。
だけど、あの異常な経文は何だったのだろう。そしてあの老人は。
もう二度と行くことはないだろうし、今さら調べることもないだろうから、
今となっては分からない話だ。




 

『隣のサトウさん』

高校を卒業し、進学して一人暮らしを始めたばかりの頃の話。
ある夜部屋で1人ゲームをしていると、下の方から大勢の人がザワザワと騒ぐような声が聞こえてきた。
俺は「下の階の人のところに客が一杯来ているのかな?」とも思ったが、耳を澄まして良く聞いてみると、声の感じから数人という事はなさそうだ、もっと大勢の人の声のように聞こえる。

気のせいかもしれないが、まるで大きな駅とかなどの雑踏のざわつきのような感じだ。
その時は「そういう映画かテレビ番組でも見ているのかな?」と考えながら、それ以上気にせずにいた。
が、寝る頃になっても一向に「ざわつき声」がなくなることは無く、そこまで大きな音では無いのだが深夜3時頃まで聞こえていたせいで、結局気になってその日は殆ど寝る事ができなかった。

 

それから数日間、毎日ではないが夜10時頃から深夜3時頃まで、頻繁に「ざわつき声」が聞こえてくるので俺はろくに眠る事ができず、いい加減苦情を言おうと階下の人のところへ行く事にした。
呼び鈴を押して暫らくすると住人が出てきた、歳は俺より2つか3つ上くらいだろうか、見た感じ学生っぽく見える。
俺が上の階の住人である事を話し苦情を言おうとすると、その人はいきなり不機嫌になり
「あんた毎日毎日真夜中に何やってんだ、煩くて仕方が無いんだが」と逆に言われてしまった。

(ややこしくなるので、ここからは下の階の人を仮にサトウさんとしておきます)

意味が解らない俺は、事情を最初から話して下のほうから殆ど毎日のように大勢の人のざわつき声のようなものが聞こえてくると話すと、
サトウさんは「ざわつき声」が夜になると“上から”聞こえてきて、そろそろ大家か不動産屋に苦情を言おうと思っていたと話し出した。

その話を聞いて、俺は理由は良く解らないが何かいやな感じがしてきた。
あれは明らかに人の声だ、何度も聞いているから聞き間違いは無い、それにサトウさんも「大勢の人のざわめき」である事は間違いないという。
暫らくの沈黙の後「…天井裏に何かあるのかな?」とサトウさんが言ってきた。

 

「天井裏行ってみる?」サトウさんがそう切り出してきて、俺の返事も待たずに懐中電灯を持ち出してきた。
が、俺は勝手に解決しようとして万が一にも天井踏み抜いたり、そうでなくとも何か壊してしまったら後々色々問題になるかもしれない、ここは管理している不動産屋に事情を話して来てもらったほうが良いんじゃないかと提案し、行く気満々のサトウさんを説得した。

そして俺は「ざわつき声がする」と言うと不信に思われるので、その辺りははぐらかし「床下から何か異音がする」と不動産屋に白々しく電話を入れた。
すると不動産屋はどうやら天井裏にネズミか何かが入り込んだと思ったのだろうか、数日以内に業者を連れてそちらに向かうと言ってきた。

俺はなにか結果的に騙しているような感じになってしまってちょっと引け目を感じたが、その事をサトウさんに話すと「まあ、異音がするのは事実だしとにかく来てもらおうよ」という事で、特に問題ないだろうとの事だった。

 

当日、結構早い時間にサトウさんが俺の部屋にやってきた、不動産屋と約束した時間にはまだかなり余裕がある。
彼が言うには、どうも急な用事が入ってしまって今日は立ち会えないとの事で、不動産屋が来たら問題ないから合鍵で勝手に部屋に入ってしまってかまわないと伝えてほしいとの事だった。

「そんな事自分で電話しろよ…」俺はそう思ったが、まあ仕方が無いので了解し、不動産屋との待ち合わせの時間まで待機する事にした。

 

昼少し前くらいに不動産屋が駆除業者と一緒にやってきた。
不動産屋がサトウさんと連絡が取れないが何か聞いていないかと言うので、今日の早朝にあったことを話すと、
少し困った顔をしたが一応サトウさんの部屋へ行く事にした。

話を聞くと、1階と2階の間を調べるにはサトウさんの部屋のバスルームの天井から入るしか無いらしい。
サトウさんの部屋に行くと、合鍵で開けてほしいとの事だったが、なぜか部屋のカギは開いていた。
流石に俺が入るのは問題があると思うので、業者と不動産屋に任せて外で待っていると、突然中から
「うわ!大丈夫ですか!?」という声が聞こえてきた、何事かと玄関のドアを開けてみると、不動産屋と業者が真っ青な顔をして出てきて「警察に電話を…」と言ってきた。




その間色々あったのだが長くなるので結論から書くと、サトウさんがバスルームで死んでいたらしい。
それから色々大変だった。

 

パトカーや救急車がやってきて大騒ぎになり、俺も警察から色々と事情を聞かれた。
朝にサトウさんと話したときは、不信な様子は少なくとも俺の見た感じでは一切なかった事をはなし、一応天井裏の事を警察に話すとそれも含めて調べていたようだが、何か見付かったのかとかそういう事はなにも教えてもらえなかった。
結局俺としては天井裏の「ざわめき声」も含め、サトウさんの死因も何もかもあやふやなままになってしまった。

 

その日の夜。
色々ありすぎたので疲れてしまい、さっさと寝てしまおうと早めに布団に入ると、「例のざわめき声」がいきなり聞こえてきた。
が、何かがいつもと様子が違う、良く解らないが違和感を感じる…

暫らくして違和感が何なのかに気がついた、今までは下から聞こえてきていた声が、明らかに横から聞こえる。
しかも今までは床越しに聞いていたので多少くぐもって聞こえていたのだが、今回はまるで「同じ部屋の中」から聞こえてくるように鮮明だ、そう考えたとたんに急に背筋が寒くなってきた。

 

目を開けて声のほうを見てみたい気持ちもあるがぶっちゃけ怖い。
そうは言ってもやはり声の正体は気になる、俺は意を決してベッドから起き上がり、声のする方向を見た。
そしてとんでもないものをみた。

そこにはスーツ姿の男が1人立っていた。
ただ、厳密には「立っていた」というのとは少し状態が違う。
まるで水面から上半身だけを出しているかのように、床から人の上半身が生えているような状態だ、それだけでもかなり異様な状況なのだが、そのスーツ姿の男は眼球を上下左右に激しく動かし、口もまるで早口言葉を喋っているかのように激しく動いている。

そして、その口から例の大勢の人のざわめき声が聞こえてきていた。
俺はあまりの事に体が動かせず、訳も解らずそのスーツ姿の男を凝視していると、暗がりに目が慣れてきて
もう一つ異様なものをみつけた。

 

サトウさんだ。
サトウさんが床から顔だけを出し、めいっぱい目を見開いて天井を見つめ、まるで魚のようにゆっくりと口をパクパクさせている。それをみた時、なぜか直感的に「あれは何かとてつもなくヤバイものだ」と感じた。

俺は完全に思考が停止してしまい、わけも解らないまま着の身着のままで携帯と財布だけを持って部屋から逃げ出した。
その夜はひとまずマンガ喫茶で夜を明かすと、朝一番で不動産屋へと向かった。
あんな場所にはもう住んでいられないので、引越し手続きをするためだ。

不動産屋につくと、担当の人を出してもらいすぐに引越しの話を切り出したのだが、突然の事にしてもやけに担当の人の様子がおかしい、なぜかどうしても引越しをさせたくないように見える。
不信に思ってしつこく追求してみると、どうも俺はサトウさんの死に関係があるのではと疑われているらしい、だから安易な引越しはさせれないようだった。

 

言われてみれば当たり前の事だ。
サトウさんと最後に会っていたのは俺だし何より「騒音トラブル」もあった、朝の出来事も俺がそう言っているだけで客観的な証明など何一つない、何よりサトウさんの死因はまだ不明のままだ、俺が殺したと疑われても仕方が無い状況だ。
そこに来ていきなり俺が引越しをしたいと言って来れば、不動産屋としても当然疑うだろうし、当然不動産屋だけではなく警察も疑っているだろう。

かと言って、あの部屋に戻るのだけは絶対にいやだ、あんな得体の知れない不気味な物が現れた場所でまた過ごすなどありえない。
そもそもあのスーツ姿の男がサトウさんの死に何らかの形で関わっているのは明白だ、もしかしたら次のターゲットは自分かもしれない。

 

そんな事情が事情だけに、俺としても絶対あの場所に戻るのはいやだ、そこで信じてもらえるかどうかは解らないが、今までの経緯や昨晩の事を正直に不動産屋に話した。すると、不動産屋はこの話を信じたのかどうなのか解らなかったが、とりあえず自分の裁量ではどうにも判断できないので、警察と相談してほしいと言って来た。

仕方が無く、俺は昨日警察から貰った名刺の番号に電話をして、警察署で事情を話すことにした。
警察署につき、担当の人に不動産屋で話したことと同じ事を話したのだが、当たり前といえば当たり前だが当然話は信じてもらえなかった。むしろ「こいつは何を言っているんだ」みたいな態度を取られ、連日の寝不足の事もありイライラしていた俺は、発作的に「だったらてめーもあそこで一晩いてみろよ!」と、大声で怒鳴って担当の警察官に自分の部屋のカギを投げつけた。

 

後から考えれば、理不尽で無茶な要求をしていたのは俺のほうなのだが、警官は俺を落ち着かせると、引越し先はあまり遠くにしない事と、引越し先の住所を報告し警察からの電話には必ず出る事を約束すると、引越しを許可してくれた。

その後俺はなんとか別の場所に引っ越す事が出来、事件の方はどうやらサトウさんの自殺のようだという事も解り、俺への疑いもなんとか晴れた。

 

自殺である事が判明してから暫らくして、俺はまた警察に呼ばれた。
どうもサトウさんのPCから日記が見つかっていたのだが、そこに書かれている内容の一部に俺が警察で話した例のスーツ姿の男と酷似した人物のことが書かれていたそうで、その辺りの事情をもう一度詳しく聞きたいということだった。

 

結局あのスーツ姿の男の正体は今でも不明のままだが、警察から聞いた話でいくつかわかったこともある。
日記の内容から、どうも俺が最初にサトウさんの所へ苦情に行った時点より前に彼は「スーツ姿の男」に出会っており、「ざわつき声」の正体がその男である事も知っていたようだった。

そして、日記にはスーツ姿の男が明らかに悪意のある相手である事が繰り返し書かれていて、サトウさんは身の危険を感じていたらしい。

 

なぜそこまでわかっていたにも関わらず、彼はあんなさも何も知らないかのような態度を取ったのだろうか、警察は何も言っていなかったが、もしかしたら天井裏には何かがあったのではないだろうか。
サトウさんはそこまで知っていて、何らかの理由で俺を巻き込もうとしていたのではないだろうか、今となっては何も解らない。

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